※原作沿いですが展開はかなり変わっています。苦手な方はブラウザバックしてください。
変装用のマスクは湿気に弱い。薄着では肌が隠せないし、水着は詰め物をするのが難しい
(だから海で変装するのは大変なんですよね。まあ、海に行くと分かった時点で、それ相応の対策をしてきましたが)
伊豆の浜辺で泳ぎながら、セァラは遠くにいるコナンたちを見つめていた。特注の全身タイツの上に水着を着て、顔には特別製のマスクを被る。彼女はそうして、素知らぬ顔で泳いでいた。
(とはいえ薄着なので、彼らの前に出るのは避けるべきです。後は何も起こらなければ良いんですが……)
コナンが蘭と話している。セァラは浜の方に目を向けて、真剣な表情になった。
(日陰にも入らずに浜辺でじっとしているとは。あの灰原という名の女の子は、何を考えているんでしょうか。蘭さんが気づいてくださらなければ、どうなっていたか分かりませんよ)
灰原哀。江戸川コナンと同じように、戸籍を持たない子供。コナンのようなあどけなさは少なく、常に周囲に気を張っている。
(……彼女、もしかして組織から抜けてきたんでしょうか)
組織は裏切り者を許さない。特にジンは、地の果てまでも追いかけて殺しにくる。
(彼女が裏切り者だとすれば、組織がこの町に来た理由も分かります。ジン、ウォッカ、そしてベルモット……彼らはもう、彼女を探し始めているのかもしれませんね)
セァラは組織と敵対している。ベルモットからの依頼を受けたのも、それが彼女の個人的な頼み事だからだ。組織が探している人間を見つけても、それを報告する義務は彼女には無い。ベルモットも、そのことは当然分かっているはずだ。
(ただ、表立って私が動くと、それはそれで彼らに迷惑がかかりますが)
組織はセァラの弱みを探している。彼らが彼女の弱みになると分かれば、どんな手を使っても捕らえて、人質として利用するだろう。そういう組織だ。
(何も出来ないんですね、私は……)
波打ち際の言い争いを見るともなしに見ながら、セァラは唇を強く噛んだ。血が
(いいえ。きっと、できることはあるはずです。ベルモットと個人的な繋がりが持てたのも、彼らがここに居たからですし……いつか、私は
優先順位をつける。いつもやってきたことだ。けれど、それでも。
(できる限り、一緒に守ってあげたいですね)
まだ組織に居た頃の影響が色濃く残っている少女を見ながら、彼女はそんなことを考えていた。