他人が見る夢   作:9Q

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※原作の事件に関するネタバレがあります。ご注意ください。時系列はベルモット編の途中です。

※原作沿いですが展開はかなり変わっています。苦手な方はブラウザバックしてください。

















浪花の剣士と大阪城

近畿剣道大会の会場に向かうために、セァラはコナンと同じ新幹線に乗り込んだ。

 

(せっかくですから、片手間に結果だけでも見ておきましょうか)

 

手元の端末で情報を集める。その途中で、セァラは手を止めて画面を見つめた。

 

(新内大学の人たちも来ているんですね、この大会。確かあそこは去年、新入部員を1人殺していたはずですが。殺した人間は……内定していた会社が潰れた? これはまた、事件の火種になりそうな……)

 

会場には服部平次がいる。滅多なことにはならないと思うが、先に向かっておいた方がいいかもしれない。

 

(……なんて、流石に心配しすぎですね。服部くんなら大丈夫でしょう)

 

新内大学から来ている剣道部員の強さを調べて、セァラはそう結論づけた。そして彼女はコナンたちと共に、試合の会場へ行くことにした。タクシーに乗ったコナンを追って走り、会場で事件の話を聞いて苦笑する。

 

(服部くんが無事に解決するところまで、全て予想通りでしたね)

 

服部家に泊まって大阪観光をする彼らを護衛しながら、セァラはのびのびとしていた。彼女の動きが変わったのは、大阪城での1件の後。コナンたちに話しかけたツアー客を見た時だった。

 

(整形歴のある強盗殺人犯が、何でこんな所にいるんです? それに、彼らが話しているツアーとは……?)

 

セァラはすぐに懐の機器を取り出して、ツアーのことを調べ上げた。

 

(発案者の平野さんは来ていませんね。それに、秀吉の宝の噂……)

 

調べれば調べるほど嫌な予感がしてきて、セァラはため息をついた。

 

(できれば、服部くんの前には出ていきたくないんですよね)

 

セァラは公安の協力者になったこともある。というか、各国の秘密組織の間では、彼女はそれなりに有名だ。

 

(大阪府警察本部長なら、セァラの名とその能力くらいは耳にしているでしょうし)

 

セァラはコナンと蘭の様子を見ながら移動した。彼らは昼食を取った後に、和葉が落とした財布を探すために大阪城に戻ってきた。雨が降り出す。セァラは傘も差さず、雨の中に(たたず)んでいた。和葉と蘭が財布を探しに土産物屋にいく。2人を待っていたコナンたちが、あの時のツアー客に会う。そしてその直後。天守閣の上から大きな音がして、人が燃えながら落ちてきた。

 

(さて、これはどちらの仕業でしょうね。強盗殺人犯の糟屋さんか、それとも祖父の復讐をしようと思った脇坂さんか……まあそれは、この後彼らが突き止めてくれるでしょう。東西の名探偵が揃っているんですから)

 

セァラはトリックが分かるワケではない。ただ、集めた情報から動機を推測しているだけだ。具体的にどうやったのかは、考えないし興味もない。

 

(私が知りたいのは、警戒すべき人物の顔と名前だけです。糟屋さんと脇坂さん。犯人がどちらでも、私がすべきことは変わりません)

 

彼女の目の前で、探偵たちが動きだす。彼女は警察が来たのを見てから、彼らを追って走り出した。

 

(コナンくんは天守閣の屋根に上っていますね。命綱をつけているようですし、落ちることはないでしょう。さて。この場は警察に任せるとして……1度、着替えてきましょうか)

 

セァラは近くのホテルに入って顔を変えた。警察に見られる可能性があるのなら、公安の協力者をしていた時の姿になるべきだ。

 

(この顔を使うのは、随分と久しぶりですね)

 

セァラは無意識に笑っていた。何も考えず、何かを――誰かを守るために動けることは、彼女にとって貴重だった。

 

(さて。着替えたことですし、現場に戻るとしましょうか)

 

今度は傘を差して大阪城に戻る。そこでは探偵たちが、顔を突き合わせて捜査をしていた。蘭と和葉が彼らから離れて食事に行く。セァラは少し迷ったが、2人を追うことにした。イタリア料理の店で食事をして、コナンを迎えに行く2人の後ろを、気づかれないように付いていく。そして2人が橋を渡ろうとした、その時。彼女は、人が自分で自分に日をつけて落ちていくのを目撃した。

 

(ああなるほど、脇坂さんの方でしたか)

 

セァラは動きを見ただけで、それが誰か判別できる。ベルモットの変装でも見破れる彼女にとって、橋から落ちた人物の正体を見抜くのは、とても容易いことだった。

 

(しかし……糟屋さんも手下を大勢連れてきているようですし、まだ気を抜くワケにはいきませんね)

 

セァラは無言で、周囲の状況を観察した。警察官の人数。野次馬の声。探偵たちの行動。

 

(……服部くんのお父さんは、何か考えがあるのでしょうが……)

 

息子を殴り飛ばす父親を見て、セァラは目を細めた。

 

(思い出しますねえ。私も父と、よく殴り合っていたものです)

 

ミスター・セァラを継ぐと決めた日から、父は彼女に自分の技を全て伝えた。一人前になったことを認められるまで、彼女は傷が絶えなかった。

 

(その時と比べると、あれは手加減されている方ですね)

 

懐かしい気持ちになりながら、彼女は目の前で繰り広げられている親子喧嘩を見ていた。刑事たちが引き上げて、探偵たちがその場に残る。推理に夢中になっている服部とコナンを追って、セァラは足音を殺して走った。

 

(糟屋さんは手下を大勢連れてきていますが、ここには刑事さんたちも来ています。私の出番は無いかもしれません)

 

コナンと服部が、古い倉庫に入っていく。糟屋の手下が彼らを追う。倉庫の中に刑事たちが張り込んでいることにも、セァラはとっくに気づいていた。彼女はコナンが大滝警部に保護されたのを確認して、ようやく警戒を解いた。

 

(これで一件落着ですね)

 

全てが片付き、帰り支度をするコナンたちを追って。彼女は再び新幹線に乗った。

 

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