他人が見る夢   作:9Q

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※原作の事件に関するネタバレがあります。ご注意ください。時系列はベルモット編の途中です。

※原作沿いですが展開はかなり変わっています。苦手な方はブラウザバックしてください。

















血のバレンタイン

バレンタインデー。日本では一般的に、女性が好きな男性にチョコレートを贈る日だ。そしてチョコレートは、市販品より手作りの方が愛が込められているとか何とか。

 

「まあ……恋が成就するチョコレートを作れるなんて話を聞けば、そこに行きたくもなりますよね。場所は吹渡山荘という名のロッジ。日時と時刻は……」

 

セァラはコナンたちが行く日に合わせて、宿泊の予約をした。そして宿泊客のリストに目を通して、真剣な表情になる。

 

「4年前の、2月14日。ロッジの前のオーナーが、客と共に巻き込まれた雪崩。その時泊まっていた客が、今回も宿泊しに来ていますね。何も起きないということは無さそうです」

 

今回ばかりは、外から見ているだけではダメだ。同じ宿に泊まって、彼らの近くで守らなければならない。セァラはそう決意した。

 

―――――――――――――――――

 

その日の朝は晴れていた。セァラは先にロッジに来て、コナンたちの到着を待つことにした。

 

(……ハート型のチョコレートに飾り付け……。定番のものは無くはないですが、なんというか……。今ひとつですね)

 

彼女は一応、この宿にチョコを作りにきたということにしている。客が揃ってから作り始めるという話だったので、その前にチョコに書く内容を決めておこうと思ったのだが……。

 

(全然決まりません。そもそも渡す相手がいないので、当然ですが。……他に手があるワケでもありませんし、こういう時は(しょう)の名を(かける)と読んで使うしかないですね)

 

要するに、自分で自分に贈るチョコを作るという話である。これなら飾り付けに悩む必要もない。彼女がそう思って1人で納得した頃に、コナンたちは吹渡山荘にやってきた。

 

「初めまして。芳月(よしづき)(みなみ)です」

 

適当な偽名を名乗りながら顔を出す。今まさにチョコレートを作ろうとしていた女性陣に混ざって、チョコを刻んで溶かす。ハートの型に入れて固める。後は名前を書いて、小さなハートを描き足すだけだ。

 

「to KAKERU……と。完成です」

 

先に描き終わって、他の女性たちを待つ。完成したチョコレートと一緒に、全員で写真を撮る。その後で、彼女は二垣という名の宿泊客が居なくなった話を聞いた。他の客たちに誘われて、彼女もその人を探しに行く。

 

(とは言っても、夜でしかも吹雪(ふぶ)いているとなると……発見は難しい気がしますが)

 

しばらく探していると、犬の鳴き声が聞こえてきた。彼女は他の人々に合わせた速度で走って、コナンと三郎がいる場所まで来た。

 

(……二垣さんは、もう死体になっていましたか)

 

小五郎とコナンの話を聞きながら、周囲の様子を観察する。殺人事件はどうでもいい。彼女が気にしているのは、銃を持った男たちの動向だ。

 

(どこからどう見ても挙動不審ですね。ここまで怪しいと、いっそ清々しいほどです)

 

ビデオテープを確認してみるという話になった瞬間に慌てだした2人を見て、セァラは目を細めた。

 

(それにしても、黒いニット帽の男、ねえ……。赤井さんでは無いと思いますが。彼が追っているのは組織でしょう。バレンタインチョコにもニホンオオカミにも、さして興味は無いのでは?)

 

セァラは殺人事件より、そちらの方が気になった。赤井のことかどうかは、よく分からないが……蘭とコナンが気にしている、黒いニット帽の男の話。

 

(ベルモットから護衛を依頼されたお二人が、揃って気にされているとなると……その男はやはり、赤井秀一なのでしょうか。蘭さんは彼と会ったことがあるようですね。それはもしかして、ベルモットと出会った時に……?)

 

江戸川コナンと毛利蘭。そしてベルモットと、赤井秀一らしき男。彼らが繋がりそうな事件を、セァラは手元の機器で探した。いくつかの候補はあるが……。

 

(どれも決定的な証拠に欠けるので、断定出来ないんですよね。せめて、コナンくんの正体が分かれば良いんですが)

 

今のところ、名探偵だということしか分かっていない。セァラは難しい顔をして考え続けた。側の部屋から、悲鳴が聞こえてくるまで。コナンと小五郎が走っていくのを、後からゆっくり追いかける。そこでセァラは、あの男たちが被害者の荷物を漁っていた事を知った。

 

(見られてはならないビデオでも探していたんでしょうか。人騒がせな話です)

 

そんなことを考えていたら、いつの間にか眠りの小五郎が推理を披露していた。セァラは気配を殺してゆっくりと歩き、壁に背をつける。彼女は犯人にも真相にも興味がない。男たちが銃を持つ。セァラは身を屈めた。銃声が響き、男たちが過去の罪を告白した瞬間に。風より速く、彼女は動いた。

 

(私を誰だと思っているんですか。この距離で一般人が2人いる程度なら、銃を撃つ前に終わらせることができます)

 

周囲にいる人々は、何が起こったのか分からないという様子だった。無理もない。彼らからすれば、銃声が聞こえて彼らが自分たちのしたことを語った瞬間に、急に倒れたようにしか見えなかっただろうから。セァラは手早く銃を取り上げて、2人を拘束しながら言った。

 

「あらあら大変。貧血ですか? 鉄分は多めに取った方がいいですよ〜」

 

「……お姉さんって、もしかして」

 

コナンが何かに気づいて、口を開く。言葉の途中で、ロッジの扉が叩かれる。出迎えたお婆さんが、ニット帽の男を連れて入ってきた。もちろん赤井秀一ではない。空手家の京極真。鈴木園子の彼氏である。ドタバタのうちに話が流れたことにコナンが気づく頃には、セァラの姿はどこにもなかった。

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