※原作沿いですが展開はかなり変わっています。苦手な方はブラウザバックしてください。
コナンの捜査は順調に進んだ。眠りの小五郎の推理ショーも、さほど問題はない。犯人が自白して、それで終わる。問題なのは、その後だった。蘭が椅子ごと、横に傾く。セァラはすかさず手を伸ばして、彼女を支えた。
「蘭?!」
コナンが叫ぶ。彼は気が遠くなった蘭に注意を向けていて、その体を支えているセァラのことは見ていない。
「おい蘭!! しっかりしろ!!」
セァラは蘭の熱を手で測った。そして目を細める。
「すいません刑事さん、ベイブリッジの向こうの救急病院に運びます。熱が出ているので」
「おう! あそこなら知り合いの医者がいるし、丁度いい! パトカーなら10分もかからねえからな!」
横溝刑事はそう言った。セァラは少し悩んでから、彼に任せることにした。
(……どう考えても私が走る方が速いと思いますが、まあ良いでしょう。こんな事で議論をする時間も惜しいので)
蘭を抱えてパトカーに乗り込む。コナンや小五郎も一緒だ。サイレンを鳴らして走る車。その中で、コナンは蘭に声をかけ続けていた。その様子は、まるで。
(恋人のよう、ですね。やはり彼は、あの高校生探偵の……工藤新一なのでしょう。何がどうしたらそんな事になるのか、全くもって分かりませんが)
パトカーが病院に到着する。セァラは蘭を病室のベッドに寝かせてから、部屋の壁に寄りかかって立った。そしていつものように気配を消す。医者が来て診断する。過労から来る発熱で、熱冷ましの薬を飲んで少し休めば良くなると。それを聞いて、セァラはようやく心から安心できた。蘭の熱が下がる前に、病室から出ていこうとする。その背に向けて。
「……お姉さん。後で話があるから、ボクに会いに来てくれない?」
コナンはそんな言葉をかけた。セァラが足を止めて呟く。
「……いいですよ。私も丁度、君に聞きたいことがあったので」
その言葉を残して、彼女は今度こそ病室から姿を消した。そして、その日の夜。小五郎が眠りについた後に、彼女は毛利探偵事務所を訪ねた。コナンはまだ起きている。彼はセァラを見て、驚いたような顔をした。
「顔、変えてないんだね」
「この方が、分かりやすいかと思いまして。それで、私に話したい事というのは?」
「……お姉さんって、ボクのことを守ろうとしてくれてるのかと思ってたけど……今日気にしてたのは、蘭姉ちゃんの方だったよね。どうして?」
コナンが鋭い眼光をセァラに向ける。彼女は笑って、それをいなした。実年齢でも高校生。セァラの敵ではない。
「その謎は、君が突き止めてください。君はあの、工藤新一なのでしょう?」
「な、何言ってるの? ボクは子供だよ。新一兄ちゃんは、ボクの遠い親戚で……」
コナンは明らかに
「では、その新一さんに伝えておいてください。いつも守れるとは限らない。セァラの力は、当てにはしないでくださいと。……彼らは、セァラの弱みを探しています。その彼らの前で、セァラだと分かる形で。守ることは出来ません。新一さんが最も必要とするであろう時に、私は
コナンは真剣な顔をした。そして、セァラの目を見つめて告げた。
「……こっちが頼りたい時に、コッソリ連絡を取りたいって言ったら?」
「仕事用の連絡先をお渡しします。何かあれば、そこに」
セァラは四つ折りにした小さな紙を、コナンに渡した。彼は戸惑ったような表情で、その紙を受け取った。
「いいのか?」
「君とは、長い付き合いになりそうですから。最も、依頼料は言い値なので……君では、払いきれないと思いますが」
彼女は平然とした顔をしている。それを見て、彼は呆れたような表情を浮かべた。
「ああそう……それで、そっちがオレに聞きたいことって何なんだよ?」
セァラは迷った。ベルモットのことを、聞くかどうか。迷って止めた。あまり藪をつつきすぎると、蛇が出てくるかもしれない。厄介な毒蛇が。だから、ただ笑って。
「君にというか、新一さんに聞きたかったんですよ。蘭さんと、お付き合いされていますかって。この仕事をしていると、そういう話は縁遠くなるので……少し気になって。どうなんですか?」
「バ、バーロ! 付き合ってるワケねえだろ?!」
コナンは顔を真っ赤にして否定した。セァラは笑みを深めて、立ち上がる。
「そうですか。いつかお付き合いできるといいですね」
そんな言葉を残して、事務所から出ていった。残されたコナンは、言い返そうと思って追いかけた。けれど彼女の姿はどこにもなく、結局彼はため息をつくことしか出来なかったのだった。