※原作沿いですが展開はかなり変わっています。苦手な方はブラウザバックしてください。
幽霊騒ぎの後に、セァラは光彦が行方不明になったという話を聞いた。いつものようにコナンたちの後を追って、群馬県までついていく。
(ああ。あの連続殺人犯。逃げたんですね。まあ、会ったら捕まえるくらいで良いでしょう)
沼淵己一郎。一般人にとっては恐ろしい男でも、セァラの敵ではない。そんな男より、この森のどこかに居るという光彦を探す事の方が大切だ。
(……さて。子供1人で行ける範囲なんて、限られていると思いますが……)
セァラは少し考えた。コナンから離れて、探しに行くべきかどうか。その時、セァラが持つ仕事用の携帯に連絡が入る。
(誰かと思えば、コナンくんですか。ええと、何々?)
届いたのはメール。文面は簡素な物だった。
『一緒に光彦を探してくれる?』
セァラは携帯を閉じて、ため息をついた。
(……仕方がないですね。コナンくんは一応、刑事さんと一緒にいます。頼りない方ですが、居ないよりはマシだと思うことにしましょう)
コナンたちから離れる。神経を研ぎ澄ませて、森の中を最高速で駆け抜ける。この森の地図は、既に見ている。彼女は1度見たものなら、目を
(どこに居るんでしょうか、光彦くんは)
現在地は、既に把握できている。後は彼を見つけるだけだ。息づかい。気配。そういったものを手がかりにして、人を探す。光彦だけではない。余裕があるので、沼淵もついでに探した。
(先に見つけて、無力化しておけるのなら……それが1番良いですし)
コナンが危険なことに巻き込まれる確率も下がる。そう考えて、走り続ける。そして。彼女は小川の近くで、沼淵と光彦が向かい合っている所を見た。判断は一瞬。沼淵が『一緒やな…』と呟いた直後に、彼女は彼に手刀を食らわせて気絶させた。光彦が、目を見開いて固まる。
「あなたは……?」
セァラはその言葉を聞いて微笑んだ。今は、以前会った時とは違う顔だ。初めて会った人間を装って、彼女は彼に笑いかける。
「覆面警官だ。……君は、迷子かな? 私はこれから、沼淵を警察に引き渡しに行くつもりだ。君も一緒に来るといい」
そう言って、彼女は沼淵を担いだ。光彦の表情が明るくなる。彼は掠れた声で、礼を言った。
「あ、はい。ありがとうございます」
セァラは優しい笑顔を浮かべた。彼を安心させるために。
「酷い声だね。無理はしないように。……これも私の仕事だ。気にしなくてもいいんだよ」
光彦が無言で頷く。彼女は彼が付いてこられるように、ゆっくりとした足取りで歩いた。そうしながら、彼女は思考を巡らせる。
(丁度、コナンくんが近くに来ています。そこまで行きましょう)
木々の間を抜けて、小川のある場所に出る。コナンはすぐに気づいて、駆け寄ってきた。
「光彦! 良かった、無事だったのか!」
「は、はい! このお兄さんに、助けてもらって……あれ?」
光彦が横を見る。そこには、気絶して縛られた沼淵が転がっているだけだった。
「変ですね。さっきまで、確かにここに居たんですけど……」
「あー……大丈夫。その人は多分、シャイなだけだから。それよりオメー、やっぱりホタルを捕まえに来てたんだな」
コナンは苦笑した。そしてすかさず話を逸らす。遠くから、博士たちが駆けてくる。山村刑事は、倒れている沼淵を見て首を傾げた。
「え? なんで?」
その場が一気に騒がしくなる。セァラはその様子を、離れた場所から見ていた。
(一件落着、ですね。……っと)
メールが届く。文面には1言、ありがとうとだけ書いてある。彼女は笑って返信した。
(これは貸しです。いつか返していただきますね……と)
牽制のつもりだが、果たしてどれだけ効果があったのかは分からない。メールを見たコナンには、特に変わりは無かったから。彼は灰原と何事かを話した後に、光彦の背を押した。光彦が、組んでいた手をゆっくりと開く。その手の中から、ホタルが出てきた。
(……なるほど。そのために、ここまで来たんですね。子供らしい発想です)
ホタルの淡い光を見て、セァラは目を細めた。日本の夏の、風物詩。
(確かにこれは、綺麗ですね)
子供たちが喜んでいる。その様子を、彼女は笑顔で見守った。