セァラはその日のうちに、ベルモットと連絡を取った。
「それで、依頼とは?」
「あら、受けてくれる気になったのね。意外だわ」
「……あの時のあなたの言葉が気になったんですよ。あなたに、守りたい人がいるとは思いませんでしたから」
「理由は聞かないで。組織のことにも関わらないで。その2つの条件を守ってくれるのなら、対象の写真を送るわ。あなたなら、それだけで十分でしょう?」
「分かりました。それでは、失礼します」
互いに用件だけを伝えて会話が終わる。程なくして、セァラの携帯に写真が送られてきた。高校生くらいの女の子と、小学生くらいの男の子。
(……この2人が、ベルモットが守りたいと思う人物。理由は聞くなと言っていましたが……)
セァラは目を細めた。手元の機器を操作して、今までに集めた情報に素早く目を通す。
(こちらが勝手に探る分には構いませんよね。
女子高生の方はすぐに調べがついた。眠りの小五郎として有名になった、毛利探偵の一人娘。毛利蘭という少女だと。
(問題は、少年の方ですね)
名前は江戸川コナン。毛利探偵事務所の居候だ。
(今は帝丹小学校に通っているようですが、その前はどこにいたのかも不明。両親についても、分かっていないことの方が多い。ベルモットが気にしていることを踏まえると、組織に深く関わっている可能性もあります。彼と接触するときは、気をつけた方が良いかもしれません)
セァラは持っていた機械を懐にしまった。いつの間にか、日は沈みきっている。
(ベルモットからの依頼を実行するには毛利探偵事務所に雇われた方が良いのかもしれませんが、それだと少し動きにくいんですよね。組織が動いているのなら、毛利探偵と私の接点は見えないようにした方が良さそうですし。1番楽なのは、盗聴器を仕掛けて彼らの周囲を探ることでしょうか)
彼女は細い道を通って、探偵事務所が入っているビルの裏に張り付いた。
(……まあ、何をするにしても1度、毛利探偵に会っておく必要はありそうですね。依頼者になるのは少し危険すぎますから、彼らが出かけた先で偶然を装って会うとしますか。それまではこの近くで、身を隠していた方が良さそうですね)
セァラは明かりの消えた事務所を見上げて目を細めた。彼女はビルの隙間に入り込んで、闇に溶け込むようにして消えていった。その様子を見ていたのは、空に輝く月だけだった。