しばらくして、ホテルから少年たちが出てくる。暗い表情をした彼らは言葉少なにパトカーに乗り込んで、大阪府警に向かっていった。
(……今は声がかけられませんね)
彼女は夜の闇に紛れて、大阪の街を駆けていく。大阪府警の外で毛利たちの事情聴取が終わるのを待って、再び車で移動し始めた彼らを追う。
(今が夜で良かったです)
息を切らさず、車の速度に追いついて並走する。人間とは思えないような身のこなしで、彼女は毛利たちの行き先を突き止めた。
(大阪府警察本部長の家……服部平次くんの実家ですか。流石に、部外者が入り込めるような場所ではありませんね)
大きな日本家屋を見つめて、彼女は目を細めた。次の日の新幹線の時刻を確認して、人目に付かない場所で目を閉じる。護衛として、目立つことを避けるのは当然の心構えだ。
(仕事中に休むのはどうかと思わなくもないですが、この家に無策で夜襲をかけるような人間も居なさそうですし、明日のこともあります。少し眠っておきましょう)
彼女は電子機器のスイッチを切るように意識を落として、夜明けと共に意識を覚醒させた。
(さて。彼らが移動するまでに、昨日の事件について調べておきましょうか)
殺されたのは新聞記者。殺したのはスポーツ選手。犯人が有名人だったことから、ニュースはそのことばかりを報道していた。
(名探偵が2人もいたのに、どちらも推理ショーを行っていないようですね。犯人は自分から罪を認めていますし。自首した理由は、亡くした妻とファンのためだと供述しているようですが……どちらかの探偵が、自首を勧めたのでしょうか)
高校生探偵の服部平次と、「眠りの小五郎」こと毛利小五郎。どちらも名探偵として名が通っている。彼らに犯行を見抜かれて自首する人間がいても、別におかしなことはない。
(……でも、あの時現場にいたのはコナンくんの方なんですよね)
毛利小五郎と江戸川コナン。普通に考えれば、明智小五郎と小林少年のような関係だろう。けれどセァラは知っている。ベルモットが守ってほしいと告げたのは、コナンであって小五郎ではないと。
(あの人は、コナンくんが危険なことに首を突っ込むような性格であることを知っているのでしょうか。だとしたらやっぱり、会ったことがあるということになりますが)
セァラはここ数年で起こった事件を探して、海外のニュースサイトにアクセスした。彼女は昼過ぎまで調べ物をして、いくつかの事件をピックアップした。ちょうどその頃、毛利探偵事務所の面々が動き出す。セァラはピックアップした事件をファイルに纏めてから、彼らの後を追って走り出した。