※ここから捏造展開が多くなります。原作には無い話が増えるのでお気をつけください。
14時50分。セァラは新大阪駅のホームで、蘭とコナンを見守っていた。
(電話中のようですし、邪魔をしてはいけませんね)
正直、拍子抜けだった。ベルモットからの依頼だというのに、不気味なほどに何も起きない。
(まあ……組織が関わらなければ、こんなものなのかもしれませんが)
新幹線が到着して、蘭とコナンの電話が終わる。毛利たちを追って車内に乗り込んだセァラは、そこで警察に護送されている被疑者を見つけた。気を引き締めて、周囲を見る。
(相手は1人。警官は2人。あの顔は確か、バスジャック事件の時にも見かけましたね。本庁の方でしょうか)
被疑者は手錠で拘束されている。今のところ、特に問題はなさそうだ。男性の警官が被疑者から離れて、何かを呟きながら移動する。彼が毛利たちの横を通り抜けようとした、その時。毛利たちが彼に気づいて、話しかけた。セァラは彼らに気づかれないように、少し距離を開けて見ている。だから話の内容までは聞き取れないが、どうやら彼らは知り合いらしい。
(面倒な……)
彼らの話を盗み聞きして、セァラはため息をついた。被疑者は覚醒剤の密売人。ひょっとしたらこの車内にも、ヤクザかマフィアの関係者がいる可能性がある。
(……私が知っている人間であればいいんですが)
セァラは即座に手元の機器で新幹線の乗客リストを調べた。手に入れたリストに目を通して、裏社会との関わりがありそうな人間を探す。
(大物は居ませんね。小物が何人か居るようですが……)
裏の薬の流れから、乗客に紛れ込んでいる被疑者の仲間を探していく。やがてセァラは、1人の男に目をつけた。その男は最後尾のトイレにカバンを置いてから、被疑者がいる方向をずっと見つめ続けている。セァラは男から目を離さないようにしながら考えた。
(どうしましょう。こんなところで下手に関わって、護衛の仕事に支障が出る方が問題ですが)
蘭とコナンの位置を確認して、彼女は手に持っていた機器を懐に入れた。
(まあ、今のところは何も起きていませんし……相手は1人。被疑者が逃げても2人です。制圧するのはいつでもできるでしょう)
セァラは正義感が無いわけではない。ただ、優先順位を決めているだけだ。被疑者がどうなろうと彼女の知ったことではないし、それで警官がクビになったとしてもそれは彼らの責任だ。
(事件が起きる前に止めるのは、コナンくんと蘭さんを誰かが狙っている時だけです。それが私の仕事ですから。……それに、急に話しかけても警戒されるだけでしょうし)
(それでも、何かできないかと思ってしまうのは……私の甘さですね)
最後尾のトイレに入った客が騒ぎ出す。乗務員が刑事に連絡する。セァラは目を付けていた男が被疑者の横を通っていくのを、黙って見ていた。
(事件を起こすのなら、刑事が被疑者から離れる瞬間。つまり……)
被疑者と刑事が立ち上がってトイレに行く。同時にセァラもトイレに立った。新幹線がトンネルに入る。隣のトイレからうめき声が聞こえてきて、セァラは少しだけドアを開けた。ドアの隙間から外が見える。若い男の刑事が、慌てた様子で出ていった。トイレの前を、例の男が通りがかる。セァラは彼の背後を取って、声をかけた。
「……すいません。そこで、何を?」
男が驚いた様子で振り返る。セァラは笑って告げた。
「うめき声が聞こえましたが……」
「うるせえ!」
男がナイフを振りかざして襲ってくる。セァラは素早くその手を取って、男を新幹線の床に引き倒した。若い刑事が仲間を連れて戻ってくる。刑事はセァラと男を見て、驚いた様子で立ち止まった。彼の後ろからコナンが顔を出す。コナンと目が合ったセァラは、内心で頭を抱えた。