※原作の事件に関するネタバレがあります。ご注意ください。時系列はベルモット編の途中です。
※原作沿いですが展開はかなり変わっています。苦手な方はブラウザバックしてください。
「えー、ではこういうことですね?
高木と名乗った若い刑事は、セァラが適当に考えた作り話を書き留めながらそう言った。セァラは笑って頷く。翔の名が諜報機関に伝わると面倒なので、名前も偽名だ。まあ元の名もどちらにせよ本名ではないので、同じようなものである。コナンがセァラに近づいて、
「それ、嘘だよね? だってお姉さんの顔、ボク見たことあるもん!」
コナンが笑顔で告げる。セァラは目を細めて、しゃがんで彼と視線を合わせた。
「……おや。それは、どこで?」
「大阪だよ! ずっと付いてきてたの、お姉さんでしょ?」
尾行していたことを指摘されても、セァラは穏やかな笑みを崩さなかった。
「確かに私は新大阪から乗りましたが、それはただの偶然です。私があなた方にお会いしたのは、今日が初めてですよ」
「でも……」
「それとも」
彼女はコナンの頭を撫でて、笑みを深めた。
「君には、誰かに狙われるような心当たりでもあるんですか?」
「べ、別にないけど……」
コナンが口ごもる。セァラは笑顔のまま、周囲にいる人々に目を向けた。
「同じ駅から同じ電車に乗っただけで付いてきていると言われても、私も困ってしまいますよ。スパイ映画に憧れるのは分かりますがね」
「はあ、そうですか……」
高木と名乗った男の刑事が、戸惑ったような様子を見せる。他の人々も似たような反応だ。
(……誰も警戒していないんですね。蘭さんも……)
ベルモットは、組織のことには関わるなという条件を付けた。そのことから考えても、組織が日本で活動しているのは間違いない。蘭が巻き込まれたことに気づいていないということは、やはりコナンが事の中心にいるのだろう。そう考えて、セァラは横目で彼を見た。コナンもセァラを見ていたらしく、その瞬間に目が合った。
「あ、あの……でもさ、お姉さん……」
「……そうですね。自分でも余計なことをしたと思います。刑事さんたちがいらっしゃったのに、わざわざ出ていって厄介事に関わるなんて」
コナンは複雑そうな表情になって口を閉じた。密売人が仲間と共謀して刑事から逃れようとしていたのは確かだ。セァラがそこに居なければ、もっと大きな事件が起きていたことだろう。そんなことは、彼も当然分かっている。そして、刑事たちも。佐藤と名乗った刑事が、苦笑を浮かべて口を開いた。
「いえ、結果的には助かりましたから。ありがとうございます」
「そんな。私は売られた喧嘩を買っただけで、大したことはしていませんよ」
コナンがセァラの服に発信機を取り付ける。新幹線が東京駅に到着した。
「それじゃあ、後で事情を聞きに行くと思いますから……ここに、住所を書いておいてください」
高木がセァラにメモを渡す。セァラは偽の住所を書いて返した。高木は何も疑わずにそのメモを受け取って、佐藤と共に密売人たちを署に連行していった。