他人が見る夢   作:9Q

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※原作の事件に関するネタバレがあります。ご注意ください。時系列はベルモット編の途中です。

※原作沿いですが展開はかなり変わっています。苦手な方はブラウザバックしてください。
























新幹線護送事件(後編)

「えー、ではこういうことですね? 谷詰(たにづめ)真由(まゆ)さんがたまたまトイレに入っていたところ、隣のトイレから(うめ)き声が聞こえてきた。それで気になって覗こうとしたら、男に襲われて咄嗟に投げ飛ばしたと」

 

高木と名乗った若い刑事は、セァラが適当に考えた作り話を書き留めながらそう言った。セァラは笑って頷く。翔の名が諜報機関に伝わると面倒なので、名前も偽名だ。まあ元の名もどちらにせよ本名ではないので、同じようなものである。コナンがセァラに近づいて、(いぶか)しげな眼差しで見つめてきた。

 

「それ、嘘だよね? だってお姉さんの顔、ボク見たことあるもん!」

 

コナンが笑顔で告げる。セァラは目を細めて、しゃがんで彼と視線を合わせた。

 

「……おや。それは、どこで?」

 

「大阪だよ! ずっと付いてきてたの、お姉さんでしょ?」

 

尾行していたことを指摘されても、セァラは穏やかな笑みを崩さなかった。

 

「確かに私は新大阪から乗りましたが、それはただの偶然です。私があなた方にお会いしたのは、今日が初めてですよ」

 

「でも……」

 

「それとも」

 

彼女はコナンの頭を撫でて、笑みを深めた。

 

「君には、誰かに狙われるような心当たりでもあるんですか?」

 

「べ、別にないけど……」

 

コナンが口ごもる。セァラは笑顔のまま、周囲にいる人々に目を向けた。

 

「同じ駅から同じ電車に乗っただけで付いてきていると言われても、私も困ってしまいますよ。スパイ映画に憧れるのは分かりますがね」

 

「はあ、そうですか……」

 

高木と名乗った男の刑事が、戸惑ったような様子を見せる。他の人々も似たような反応だ。

 

(……誰も警戒していないんですね。蘭さんも……)

 

ベルモットは、組織のことには関わるなという条件を付けた。そのことから考えても、組織が日本で活動しているのは間違いない。蘭が巻き込まれたことに気づいていないということは、やはりコナンが事の中心にいるのだろう。そう考えて、セァラは横目で彼を見た。コナンもセァラを見ていたらしく、その瞬間に目が合った。

 

「あ、あの……でもさ、お姉さん……」

 

「……そうですね。自分でも余計なことをしたと思います。刑事さんたちがいらっしゃったのに、わざわざ出ていって厄介事に関わるなんて」

 

コナンは複雑そうな表情になって口を閉じた。密売人が仲間と共謀して刑事から逃れようとしていたのは確かだ。セァラがそこに居なければ、もっと大きな事件が起きていたことだろう。そんなことは、彼も当然分かっている。そして、刑事たちも。佐藤と名乗った刑事が、苦笑を浮かべて口を開いた。

 

「いえ、結果的には助かりましたから。ありがとうございます」

 

「そんな。私は売られた喧嘩を買っただけで、大したことはしていませんよ」

 

コナンがセァラの服に発信機を取り付ける。新幹線が東京駅に到着した。

 

「それじゃあ、後で事情を聞きに行くと思いますから……ここに、住所を書いておいてください」

 

高木がセァラにメモを渡す。セァラは偽の住所を書いて返した。高木は何も疑わずにそのメモを受け取って、佐藤と共に密売人たちを署に連行していった。

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