エルフのめん屋さん 作:しょうゆラーメンがすき
◇朝
「さて、今日も営業を始めようかねぇ」
◇夜
「さて、本日の営業は終了だねぇ」
──── 本日の来客者……、ゼロ人。
エルフのめん屋さんはいつも通り今日も賑わっていなかった。
「……今日は誰も来なかったねぇ」
エルフは誰もいない店舗の中で一人、預金通帳を見ながら呟く。
店舗経営者としては本来悲しむべき場面。人間ならばその内資金が尽きて親族か銀行に泣きつくしかなくなるようなそんな現状。
しかしながら、エルフはそんなことは気にしない。
「……やっぱり複利は人類最大の発明だねぇ」
彼女が今まで生きてきた300年という長い歳月、その間魔術学園の教頭という立場であり高給取りであった
人類社会に寄生する似非スローライフエルフ、リナミ・コロリンは今日も元気に魔術学園の近くに店を構えながら暮らしている。
◇翌朝
「さて、今日も営業をしようかねぇ」
リナミはそう呟いて店を開ける。いつも通りのルーティーン。
ドカン、という爆音と激しい光、熱、悲鳴、そして轟音と共に学園が崩壊していく。
いつも通りの日常。
「今日も元気だねぇ……」
「いや、ちょっと待てよ。なんでそんな落ち着いてるんだよ」
「おや、キサラ、学園に行かなくてもいいのかい……?」
「あの地獄に突っ込めと? リナミ婆ちゃんは俺に死ねと言ってるの?? やだよ俺まだ死にたくない」
「そうかのぉ……。お前のひぃ爺ちゃんなら嬉々として向かったぞ」
「ひぃ爺ちゃんは学園を爆発させる側だからな!? 俺みてぇな平和主義者とは違ぇんだよ!」
叫ぶ少年。彼の名前はキサラ・コロリン、リナミの曾孫であり、この物語の語り手である。
◇
俺の名前はキサラ・コロリン、ピッカピカのDAWN魔術学園1年生、15歳の将来有望な魔術師候補! ひぃ爺ちゃんやひぃ婆ちゃん、兄貴や姉貴が通っていた学園についに俺も通えるんだ!とワクワクしてたのもつい先月のこと。今はイカれたあの学園からどうにか逃げ出せないかと考えてるんだ! なんだよ1年に1回は学園が崩壊して新しく作り直されるって。回復魔術で重症でも治せるけど怖いもんは怖ぇし痛いんだよクソが。はーーっ。
「どうしたんだいずっとひとりでブツブツ言って。営業妨害だよ?」
営業とは言ってもまず客は一人もいないじゃないか。もしかしてひぃ婆ちゃんの目には俺には見えない何かが映っているのだろうか。歳なのかな? そんなことをオブラートに包んで声に出すとひぃ婆ちゃんは黙り込んだ。
「…………」
無言の時間、水滴が頬を伝う。そしてリナミは顔を伏せてヒックヒックと声を漏らし始めた。
「ごめん、ごめんて! ひぃ婆ちゃん! 泣かないで!」
慌てて謝るもリナミは泣き止まない。その状況に思わず黙ってしまったがよくよくリナミの声を聞いてみると何かがおかしい。
いや違う。泣いてるわけじゃない、笑ってやがる! ひぃ婆ちゃん水の魔術で嘘泣きしてるじゃねぇか! ずるい!
身体を使って怒りを表現すると、リナミは顔を上げる。清々しい程の笑顔である。
「バレちゃったか……。相変わらず勘がいいねぇキサラ」
本当にいい性格をしている。だから店に誰も来ないんじゃないか? 流石にこれを言ったら殺されそうなので何も言わない……、いや、ワンチャン行けるか? よし言ってみよう。
……ダメでした。