ONE PIECE -Bounty Hunter-   作:ハンマーしゃぶしゃぶ

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Episode1 ジャンゴ・フェット

世はまさに大海賊時代。

海の上は勿論、陸の上にすら海賊が蔓延り、今日も悪事を企んで欲望を満たす時代。

時代に合わせて海軍も拡大路線の一途を辿っていたが、それでもとても犯罪の抑制には追いつかない。

そうすると必要になるのが民間の協力だ。

つまりは〝懸賞金〟と〝賞金稼ぎ〟の存在。

 

名の有る海賊ともなれば、その首に賭けられる金は莫大な額になる。

数千万ベリー、数億ベリーを一夜にして得る事も夢じゃない。

しかし、悲しいかな大半の実力者は〝ワンピース〟を求めて海原を彷徨うが為に、賞金稼ぎの質は海賊よりも一歩劣るというのが世間での評判だ。

だが、この男は一味違った。

常に全身をボディアーマーで覆い、その鎧に仕込まれた無数の武器で戦う。

背に負うメタルの背嚢にはミサイルとジェット推進機を仕込み、空を自在に飛びながら、光の弾丸を吐き出す二丁拳銃で獲物を仕留めた。

その男の名を聞けば、大海賊すらも震え上がる謎多き賞金稼ぎ。

そいつの名は、『ジャンゴ・フェット』といった。

 

 

 

 

 

 

 

世に突如として、一切の経歴が分からぬままに現れた正体不明の賞金稼ぎ。

彼は、この世界の強豪達の中では比較的珍しく、銃使いであったが、その武器も戦闘スキルも世の常識をはるかに超えているのだという事を、今からこの海賊達は身を以て知ることになる。

 

「そこまでだ、海賊(パイレーツ)

 

港町で略奪行為を働いていた海賊達に、少しの怯えも無い声でそう言い放った男。

そいつはジェットパックを背負って空から颯爽と現れた。そいつ(銀色の戦士)が、賞金首であるその海賊に向かって銃を突きつける。

 

「ヌマママママ!おいおい、そんな銃がこのおれに効くとでも思ってるのかァ~~~~!?」

 

間抜けな賞金稼ぎだぜ、とその海賊は笑った。

そいつはヌマヌマの実を食した能力者であり、新進気鋭の注目株海賊だ。

海賊行為を始めてからそう日が経っていないが、その賞金額はすでに億を超えている。

 

「ロギアを無敵と思っている能力者は短命…。そういう評判はよく聞くが、実際よォ~~~~、おれのヌマヌマの力はそんな豆鉄砲相手には無敵だぜェ~~~~ヌママママ!」

 

悪魔の実の能力者たる海賊は驕っている。

驕ってはいるが、その驕りも彼の今までの経験と知識から来るものであった。

彼は、経験上、弾丸にまで充分な覇気を行き渡らせるのは高等技術だと知っていたのだ。それこそ、七武海だとか四皇だとか、上澄み中の上澄みの真なる海の猛者だけに許されたテクニック。

それ故に、彼は白銀の銃使いを舐めきっていた。

 

「死体は三割値引かれる。お前だってもう少し生きていたいだろう?お互いの得の為に、抵抗をするな」

 

「はっ!いっちょ前に、伝説の傭兵一族マンダロリアンみたいな格好しやがって!殺れるもんなら~~~~やってみろよ~~~~!!バウンティハンター!!」

 

底なし沼と化したヌマリオンの体がアメーバのように広がり、バウンティハンターを飲み込まんと流動した。

幾つかの泥沼の触手が高速で迫るその瞬間、銀色の戦士は前に飛び込むように身を引くくし、同時にトリガーを引いた。

風を切り裂く、重々しい高音が響く。

 

「ッ!?ぎゃっ!!!?」

 

バウンティハンターの銃から飛び出た弾丸は、ただの鉛玉ではなかった。

光熱エネルギーで対象を殺傷するプラズマ兵器であり、様々な不可思議が跋扈するこの世界でも、ブラスター銃など希少を通り越して幻の武器だ。

海軍大将の黄猿か、世界的大天才のベガパンクしか、光学兵器など用いない。手に入れられない。

だが、それをこの一介の賞金稼ぎは所持し、誰よりも使いこなし、そして当然のように覇気にも熟達していた。

 

「―――?………あ?」

 

あらゆる物理攻撃を液状になって無効化するはずのヌマリオンの脳天に、焦げた風穴が空いていた。

ヌマリオンの目玉がぐるりと回転して白目を向き、そして倒れた。

 

「船長ォ~~~~!!?な、なんでロギアの船長が…な、なんなんだよ、あの光る銃は!?レーザーってやつか!?」

 

「あの銃のせいなのか!?それとも、あいつがとんでもねェ覇気使いって事か!?」

 

「ひ、ひぃーーー!!船長が、船長が、やられたァーー!!!」

 

「よ、よくも船長を…!こ、殺してやる!!!」

 

船員達が動揺する中、副船長だけが恐怖を怒りで塗りつぶして突進する。

だが、バウンティハンターの動きは彼を圧倒的に上回っていた。

 

「お前にも億超えのバウンティが賭けられているぜ。船長の後を追うんだな」

 

ブラスターの早撃ちが、副船長の頭に風穴を開けて、彼はその巨体を力なく倒れさせた。

もう息はしていなかった。

脳天に空いた焦げ穴は、船長と同じ場所だった。

 

「ひ、ひぃぃぃ!!や、やべぇぞコイツ!副船長まで!!」

 

「に、逃げろーー!!」

 

ヌマリオン海賊団だった船員達が、蜘蛛の子を散らすように逃げ惑う。

バウンティハンターは、高額の賞金がかかっていない三下には興味を示さず、ブラスターのパワーセルが勿体無いとでも言うようにさっさと銃をしまい込むと、出来上がった死体2つを、ガントレットから射出したワイヤーで絡め取ると、そのまま空へと舞い戻っていく。

その一瞬の捕物劇に、唖然としていた港町の民衆は、直ぐ様歓喜の熱狂に包まれた。

逃げ散った海賊達をリンチにかける町の男衆と、そして空に向かって歓喜を叫ぶ民衆の喧騒が、バウンティハンターの耳に微かに残った。

 

 

 

 

 

 

 

 

シャボンディ諸島は、その名に反して島ではない。

世界最大のマングローブの根を島代わりにし、その〝土地〟に人々が施設を建てて住み着いて発生した街だった。

番号が振られた巨大マングローブが1番から79番まで存在し、その番号が街の番地としてそのまま機能する。

海兵本部が近いという事もあり、諸島の外層地は治安も良いが、諸島の中心地…1番グローブから29番グローブの奥地へと行けば、そこは海軍の目が行き届かぬ無法地帯と化す。

そこにはグランドライン後半の〝新世界〟を目指して新進気鋭の海賊達が集う地でもあり、それを狙う賞金稼ぎにとってもメッカと言えたし、なにより1番グローブでは奴隷が公然と売買されるヒューマンショップが存在し、世界で最も横暴な存在である天竜人もそれ目当てによく訪れる。

まさに最悪の地であり、まずカタギの者は誰一人近づかぬ魔境だった。

だが、相応の知識と実力を持つ者にとっては、シャボンディ諸島ほど便利な地はない。

あらゆる分野の情報が集まり、あらゆる分野のトップレベルの実力者が密かに集っている。

ジャンゴ・フェットも、シャボンディ諸島を拠点に活動する事が多かった。

 

シャボンディ諸島13番GRにある、とある酒場。

シャッキー's ぼったくりBARという、身も蓋も無い名を掲げる酒場は、美貌を誇る妙齢の女性が一人で切り盛りする店だが、ここにはシャボンディ諸島全ての情報が集う。そしてそれは世界中の情報が集うのと同義と言っても過言ではない。

ここの女店主はそれぐらいの、()()()()()()()であった。

酒場の扉を開く。

入ってきたのは、銀色の全身鎧に身を包むガンマン。ジャンゴ・フェットだ。

 

「いらっしゃ~~い。あら、ジャンゴ。いつもの席は空いてるわよ」

 

どうぞ、と呑気な声で奥へと促してくる女店主だが、彼女の手にはいかにも屈強そうなタフガイが、首を掴まれて藻掻いている。

タフガイは血だらけで、涙目で「金、払います…勘弁してください…」と何度も呟いていた。

 

「シャッキー、またぼったくりか」

 

憐れで無知な客に、ジャンゴは欠片程の憐憫の眼差しを送るがすぐにタフガイへの興味など失せる。

 

「可愛くない客が多くて困っちゃうわよね。全員、あんたみたいな上客だと助かるんだけど」

 

「レイリーは?」

 

「今日は、あんたの運勢は上々みたいね。いるわよ」

 

軋む椅子に腰掛けながら、ジャンゴは冷徹な無貌のブラストヘルメットを脱ぎ去って、シャッキーから供された酒をあおった。

油断しない男であるジャンゴがくつろいでいる証拠だ。

シャッキーが、店の奥へ向かって情夫の名を呼ぶ。

ジャンゴは再び酒で唇を湿らせて、足音が近づいてくるのを待った。

大股で、やけにのんびりとした足音だ。

 

「やぁジャンゴ。おはよう」

 

「ああ、おはようレイリー。もう昼だがな」

 

「それは許してくれ。昨晩は、シャッキーが寝かせてくれなくてな」

 

「あら。あなただって乗り気だったくせに」

 

「それはまぁ君は美人だからな。しかもとびきりの」

 

客の眼の前で惚気けだす2人を見ながら、ジャンゴは三度目、酒をあおる。

接客態度は毎度毎度、問題ありだが、やはり味は上等だった。

 

「おっと、すまんすまん。君を置いてけぼりにしてしまった」

 

「ジャンゴもコッチ側の話に参加しなさいよ。いい加減、良い女の一人二人ぐらい見つけたら?家庭を持つのも悪くないわよ。特に、あなたのような人は、妻と子を持つ方が無茶をしなくなる」

 

接客態度の悪さを自覚しながらも、まったく悪びれる事の無い女店主とそのヒモ男を、ジャンゴは好意と敬意を込めた瞳で見ながら酒を空にする。

 

「俺には仕事しかない。女に相手になどされないさ」

 

「それは違うぞ、ジャンゴくん。君がその気になれば私の次くらいには女にモテる。…そんなに仕事が楽しいか」

 

「性に合っている」

 

「もうたんまり金なんて溜め込んでいるだろうに。…マンダロリアンの業という奴かね?因果な男だな、ジャンゴ・フェット」

 

「あんたもな、シルバーズ・レイリー」

 

今では一線を退いている、海賊王の()副船長〝冥王〟シルバーズ・レイリーだが、自分からきな臭い場所に近づいては、様々なトラブルに首を突っ込んで人知れずそれを解決したり、引っ掻き回したりして()()日々を過ごしていた。

現役時代の無茶苦茶さを思えば、それでも充分に静かな余生と形容できるのかもしれないが、トラブルと一切合切関わらず、愛人に食べさせてもらいながらの余生を送れるというのに、彼の性分はやはり〝暴力の世界〟に根ざしたものだった。引き寄せられるように、彼はトラブルへと問いこむ。

ジャンゴ・フェットもそうだった。

どれだけ金を溜め込んでも、命を捨てたがるかのように自ら危険な仕事を続ける。

自分と似た臭いを感じて、レイリーは若きジャンゴを好き好んでいた。

 

「君の〝スレーヴI〟の修理に使いたいと言っていた素材…揃えているよ。奥に仕舞ってあるから、入り用な時には声をかけてくれ。運び出すのを手伝うから」

 

「感謝する、レイリー。あんたに頼めば、大抵は解決するな。…足りるか?」

 

ベリーの札束と金貨と宝石とが詰まった袋が、重々しい音をたててカウンター板を揺らす。

 

「充分だ。…今度はどこのどいつを狩ったんだ?」

 

「ヌマヌマの実の能力者さ。億の大台に届いて浮かれていただけの、典型的なロギアだった」

 

「ジャンゴ・フェットに目をつけられるとは、その男は運がなかった。大成するには運も大事だからな」

 

違いないわね、と女主人は男達へ酒を注ぎながら笑って頷いた。

 

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