ONE PIECE -Bounty Hunter- 作:ハンマーしゃぶしゃぶ
世界を賑やかすニュースには事欠かない。
今頃、世界経済新聞のドン、モルガンズは大笑いしながら新聞を刷っているだろう。
実際には部下と社員達がやっているのは当たり前だが、世間の人々はそういうジョークを飛ばしあって、今日も他人の不幸を笑っていた。
今年に入って、世界を震撼させたビッグニュースは既に二件。
一つは、去年の末に勃発したフレバンス戦争の顛末だ。
最近はめっきり露出が減っていたジャンゴ・フェットが、久々に本格的に大暴れしたという証言が得られた事もあり、世間の注目度は高かった。
しかもそのジャンゴ・フェットが、圧倒的劣勢であり凶悪疫病の珀鉛病が蔓延するフレバンスに与したというから世間は恐怖した。
フレバンスに味方するということは、封鎖された国境を突破して世界中に珀鉛病を撒き散らす事と同義なのだ。
まさに〝金さえ積めば悪魔にも味方する傭兵〟であった。
そして今年の頭…ジャンゴ・フェットはフレバンス軍を事実上の勝利に導いた。フレバンスは完全に滅亡し、殆どの国民を失ったが絶望的包囲網による鉄の国境を乗り越えて生き残りを世界中にばら撒いた。
四方を囲まれ、数に劣り、軍事力に劣り、フレバンス人そのものも珀鉛病で弱っていたのに、ジャンゴ・フェットはフレバンスを率いて世界に深い爪痕を残したのだ。
人々は思い出した。
ジャンゴ・フェットは危険な傭兵であると。
ジャンゴ・フェットに金を積めば、不可能を可能にしてくれると。
ジャンゴ・フェットを雇えれば、どんな敵にも抗えると。
暗黒街の者達は、今頃血眼になってジャンゴ・フェットを探しているだろう。
彼に依頼を通せれば、ダグラス・バレットだって倒せるし、弱小国一国で、世界を相手に戦うことだって出来るのだから。
二つ目は、フィッシャー・タイガーによるマリージョア襲撃。
冒険家として名高かった魚人のフィッシャー・タイガーが、レッドラインをよじ登って、天竜人が住まう聖地マリージョアを襲い、奴隷達を解放して回るという前代未聞の事件だ。
まさか誰も、レッドラインを、それも単身登ってくるなどと思いも寄らず、しかもマリージョアを襲ってくるなどと夢にも思わない。
ごく一部、神の騎士団のフィガーランドなどはマリージョアへの侵入者を警戒していたが、そんな彼もジャンゴ・フェット追跡調査に忙しく、フィッシャー・タイガーを見落としていた。
結果、タイガーのマリージョア襲撃は成功。
種族の区別なく奴隷を次々に解放し、タイガーの排除に出撃してきた神の騎士団の序列下位すら撃退し、序列中位が出陣してようやくタイガーは逃げ帰っていった。
世間は知る由もないが、彼の予想以上の強さには、やはりというかシルバーズ・レイリーが関わっている。
ボア三姉妹共々、レイリーが〝ちょっとした手解き〟をしてやり、教え子の潜在能力を押し上げていたのが原因だ。
フレバンス戦争の顛末も、結局はフレバンス王家の情報捏造が発覚し、珀鉛病は感染病ではないと判明した事で、市民達はこの事件を政府と王家への痛快な一撃と扱うようになったし、マリージョア襲撃は、誰もが大っぴらに言えやしないがやはり痛快事だ。
人々の口に戸は立てられず、今もフレバンス戦争とマリージョア襲撃は、酒場の酔いどれ達の格好のネタであった。
この直近の事件において、大きく影響された組織が特に二つ在った。
戦争を商売とする傭兵国家ジェルマ。そして、結果的に王家を追い落とし市民の脱出に繋がった活動を評価した革命軍だ。何としてもジャンゴ・フェットと接触したいようで、水面下で積極的に活動していると言われている。
しかし、フレバンス以降、またも白銀のバウンティ・ハンターの行方は杳として知れない。
そして、今やフレバンスの一件で生ける伝説となりつつあるバウンティ・ハンターはというと、パートナーが見繕った賞金首を相手にハンティングに精を出していたり、捜し物を求めて大海原を旅している。
「狩っても狩っても、次から次に生えてくる。大海賊時代とは、俺のような男には生きやすい時代だ」
フレバンスでの仕事で、ジャンゴとロビンは3000億ベリーという破格の報酬を得て、もう一生も二生も遊んで暮らせるだけの金を手に入れた。
だがジャンゴ・フェットは、命を危険にさらす傭兵稼業を辞めなかった。
それに、パートナーの望みは金では叶えられない。
パートナー、ニコ・ロビンは世界各地に散らばるポーネグリフをお望みだった。彼らが今も探している〝捜し物〟とは、つまりはこれだった。
賞金稼ぎや傭兵活動の合間に、ジャンゴはスレーヴIを駆って世界のどんな場所にでもロビンを連れて行ってやった。
ロストテクノロジーの塊であるスレーヴIと、それを理解しきって自在に操るジャンゴが揃えば、彼らに行けぬ場所など在りはしなかった。
「…これも違う」
グランドラインの正規航路から外れた小島。
空には乱気流。磁気も狂うこの海域に、こうも簡単に訪れることが出来たのは拍子抜けだが、それは何もかもジャンゴ・フェットのお陰であるのをロビンは理解していた。
「
鬱蒼とした木々の中、朝日が差し込み、巨大な立方体の石碑に樹木が絡まる光景は、実に神秘的でそして幻想的だ。
しかしジャンゴは、そんな風景には興味がないと言わんばかりに周囲の警戒に忙しい。
「ええ。でも、間違いなく本物のポーネグリフ……ありがとう、ジャンゴ。あなたのお陰で、こんなに安心出来る旅で、こんな安全にポーネグリフを見つけれるなんて」
「それも依頼の一つだ。気にするな」
無粋な答えだが、実にジャンゴらしいとロビンはくすりと笑った。
石碑のひんやりとした感触を、ロビンは何度も撫で擦って確かめて、刻まれた古代文字も何度も何度も読み返す。
既に内容は理解していても、古代のロマンそのものに触れ合っている事が、ロビンは堪らなく好きだった。
ジャンゴが周囲に意識を払ってくれているお陰で、思う存分ポーネグリフと向き合える。
思えば、オハラを出て以来ずっとロビンは独りだった。
母と、オハラの学者仲間達と、そしてサウロに貰った温かなモノもどんどんと擦り切れ、目減りしていき、ここ二年ばかりはずっと眉間にシワを寄せて、瞳も鋭く剣呑な光を宿すようになっていた。
なのに、今、ロビンは無防備に背を向けて、他人に命を預けていた。
(安全を貰い、金まで貰い、そして歴史に向き合う時間まで貰っている…)
自分も精一杯に彼の身の回りの世話をして、戦場では彼の愛船を預かって充分な戦果も稼いでいるが、戦場で揮う力もまたジャンゴから授かったものだ。
どうすれば彼に恩を返せるのか。
最近のロビンは、歴史の事以上にそんな事ばかり考えるようになってきていた。
髪型も、彼の好みを探るように小まめに変えて今ではポニーテールにしていたり、化粧も薄っすらとしていたり、料理のレパートリーを増やしたり、彼好みの服装を着るようにしたり、とにかく色々なことに手を出していた。
しかし、ジャンゴの方から、ロビンの髪型や化粧の変化などへの言及が在ったことは一度もない。
それを少し悲しく思うのは、恩人へ報いれない申し訳無さか、自分の至らなさか、それとも別の感情なのか…それはロビン自身にもまだ良く分かっていなかった。
それからも、ジャンゴとロビンのコンビは賞金首を狩り続け、そして時折戦場に傭兵として出現した。
この頃は、ロビンは人前に姿を現す時には、ジャンゴお手製のマンダロリアン文化色濃いブラストヘルメットとアーマーで正体を隠した。
さすがにベスカー製だとか海楼石を含有する…というわけにはいかなかったが、それでもジャンゴしか知らぬ製法で合金されたそのアーマーは、ロビンにとって心強い鎧だった。何より〝ジャンゴが自分の為に制作し自分にくれた〟という事実がロビンには最高に嬉しかった。
普段は裏方に徹するロビンだが、ジャンゴと共に荒事を生業をしていれば自分が矢面に立つ場面もちらほらある。
その為、ジャンゴはロビンに最低限の腕っぷしを求めた。
能力を理解し、最大限に利用するロビンは、既にある程度の戦闘能力を有していたが、彼女のレベルはジャンゴにとって物足りないものだ。
ジャンゴは、「ハナハナの実の力を最大限活かす為にも、覇気を習得すべきだ」と言い、その時からジャンゴのマンツーマンのレッスンが始まった。
ジャンゴ曰く、ロビンには覇気の才能が乏しいらしいが、それでも覇気は鍛錬次第で生きとし生けるもの全てが宿す事のできるパワーでありフォースなのだと彼女に説明し、ジャンゴは何としてもロビンに武装色と見聞色の基本を叩き込もうとした。
ジャンゴ・フェットは極めて優れた戦士であり、暗殺者であり、そして有能な指揮官であり教導官だった。
かつてトゥルーマンダロリアンのリーダーを務め、そして最近においてもフレバンスで存分に指導者としての辣腕を奮ったのだ。だから、ニコ・ロビンがそれを習得するのも時間の問題だった。
「………できた…!」
「見事だ、ニコ・ロビン」
ロビンの咲かせたハナハナの腕達の花弁は、見事に黒く染まる。黒花が咲き誇っていた。
その時に、ニコ・ロビンの本当の恐ろしさが開花したのだ。
彼女は、殆ど無敵の暗殺者となっていた。
ジャンゴ・フェットと、その相棒ロザッタは、グランドラインの賞金首達を震え上がらせた。
そして、その無敵のコンビの所在をとうとう炙り出し、接触した者達がいた。
「探したぞ、ジャンゴ・フェット。ずっと君を探していた。…随分時間がかかった」
フードを目深く被った男だ。
彼の名は、世界中に鳴り響いていた。
曰く、〝世界最悪の犯罪者〟。
曰く、〝革命家〟。
曰く、〝反逆竜〟。
ジャンゴはフードの男の名を興味深そうに呟く。
「モンキー・D・ドラゴン…裏社会の大物が、俺に何の用だ」
ジャンゴは問いつつも、何か事あらば即座にブラスターを抜けるよう、いつものように掌を開いてホルスターへと近づけ、そして彼の一歩後ろではブラストヘルメットを被るロザッタが構えていた。何時でも黒花を咲かせられるようにだ。
「そう警戒するな…というのも無理からぬ話か」
ドラゴンはフードを脱ぎ、そして若干固い笑顔を二人へと見せた。
「敵意は無い。交渉がしたいのだ。ジャンゴ・フェット……君と」
「俺はバウンティ・ハンターだ。…俺への交渉は何時でも金が物を言う。…あんたらの懐事情は概ね把握しているぜ?俺は耳が良いもんでな」
雇えるわけがない、とジャンゴはそう遠回しに言っていた。
革命家ドラゴンがクライアントとなれば、戦う相手は王権であり、そして
そんな事は簡単に予想できるし、天竜人を廃する為に戦うのはジャンゴとて望む所でもあるが、それとこれとは話が別だった。
ドラゴンの表情から笑顔が消えて、そして少々言いにくそうな顔となっていたが、やがて意を決したのか口を開く。
「おれ達革命軍に参加して欲しい。君の敵は、天竜人と政府のはず…志は我らと同じだ」
「俺の敵がそいつらだと誰が言った?俺がそんな事を言ったか?与太話を信じるものじゃないな…。俺はただ世界に足跡を残したいだけの単純な男だ」
「…遠くマリージョアにも足跡を残したかな?君は天竜人を二人殺した」
ピクリ、とジャンゴの指が動いた。
ここで殺すべきか――
ジャンゴの一瞬の殺気が走り、然しものドラゴンの背にも嫌な汗がじとりと伝う。
しかしドラゴンは敢えて無防備を晒し続けた。
「君の耳が良いように…おれの耳もまた良い。耳代わりになってくれる頼りになる部下達がいる。…それでも確証は無かったが…今の君の反応で確信した。やはり、ジャンゴ・フェットの敵は天竜人だと」
「ブラフというわけか。なるほど…したたかだな」
伊達や酔狂で、最強最大の組織〝世界政府〟に真っ向から対立する気概を本気で抱いているわけじゃないらしい。
ジャンゴは、ドラゴンの評価を数段上げる必要があった。
「おれがその結論に、証拠は無くとも近づいていたぐらいだ。政府も天竜人も、きっとそれに近い結論は出している。ジャンゴ・フェット…率直に言えば、革命軍に来るのが一番安全だ」
「俺は安全等求めちゃいない。俺が求めているのは…〝獲物〟と〝戦い〟…そして金だ」
獲物と戦いを求める。それは本当だろう。
しかし金などは言い訳に過ぎなかった。
ジャンゴは守銭奴ではなく、ジャンゴにとって金は己の戦闘能力を最高の状態に仕立て上げるための消耗品でしかなかった。
そして、既に金は腐る程持っていた。
今のジャンゴは、よりよい敵を求めて血に飢えているとも言えた。
それはかつてレイリーとシャクヤクが危惧した通り、ジャンゴの危険で悪い癖が、より強くより増大して表出しているという事だった。
だが、幾らスレスレのスリルを求めていようとも、バウンティ・ハンターとして足元を見られてはこれからがやり難いし、何よりシンプルに沽券に関わる。プライドの問題だ。
金を稼ぐという行為は、そいつの能力と本気の指標として単純明快だ。
大金を容易するとは、それだけ〝本気〟であると交渉相手に誠意を見せる行為だった。
組織運営に金がかかるのは、ジャンゴとて嫌と言うほど知っている。記憶は朧気だが、彼もトゥルーマンダロリアンという一組織の長だった事もあるのだ。
ドラゴンが、果たして自分にどれだけの価値を見出しているか。どれだけ自分に情熱を見せるか。それが肝心だった。
「残念だが、おれ達革命軍はいつでも資金不足でな……君の期待に応えられるだけの金は工面できない」
ならば話はここで終わる。
ジャンゴはさっさと交渉を終えようとした時に、ドラゴンは「だが――」と続けた。
「確かにジャンゴ・フェットに安全は必要ないだろう…だからこう言い直そう。君に、獲物と戦いを用意できる。そして…君の
その瞬間、今度こそジャンゴは銃を抜き放ち、同時に銃声が響いた。
ドラゴンは身を翻し跳躍し、間一髪それを避ける。
だが、ジャンゴの相棒の能力がドラゴンの首を締め付け、そして地面から生えた無数の黒い腕が彼を捕らえて地面に拘束する。
事態は目まぐるしく動いていた。
ロビンのハナハナの腕が彼を掴んだ瞬間に、地面から十名程の革命志士が大地を破砕しながら飛び出し、ジャンゴとロビンを囲む。
やたらと顔のデカい、派手なメイクの者。
巨人族と見紛うばかりの巨漢の男。
巨漢の男の横に、ぴたりと寄り添う銃を構えた美女。
その他、なかなかに肝の座った者達が身構えている。
「言わんこっちゃないーブル!ジャンゴ・フェットは危険な男!そいつを金無しの口八丁で味方に付けようなんて最初から無チャッブルってヴァターシ、ヴァナタに言ってたわよね!?」
「…ドラゴンを離して貰おう、バウンティ・ハンター」
「アニキ、くまちー、先制攻撃した方がいいんじゃないの!?〝黒花〟のロビンとジャンゴ・フェットだぞ!こいつら相手に、囲んだからって有利取れないだろ!」
能力を行使したロビンの黒花に抑え込まれるドラゴン。
そしてドラゴンに銃を突きつけるジャンゴ。
そんな彼らを、周囲から改造マスケット銃を突きつける者達。
顔の巨大な男と、体の巨大な男の二人は、見た目通りに肉体派なのだろう。構えながらジリジリと隙を伺っていた。
まさに一触即発の空気だったが、この中で極めて落ち着いている者が二人いた。
騒動の中心である二人、ドラゴンとジャンゴその人だ。
「…全員、銃を引っ込めろ。おれは問題ない。ジャンゴ・フェットは、おれを殺す気などない」
首を黒い腕に握られ、銃を突きつけられてもドラゴンは平然としていた。
「そうは見えないが」
巨漢の男、バーソロミュー・くまは相変わらず臨戦態勢で臨んでいる。
周囲の面々も同様だったが、それでもドラゴンは「落ち着け」と再三言った。
「ジャンゴに殺す気があったのは、おれが天竜人殺害を指摘した時だ。もう彼には本気の殺意は無い」
指摘され、ジャンゴは鼻を鳴らして、右手のブラスターを引っ込める。
「俺の相棒の正体に心当たりがあるようだが…」
「無論だ、と言っても…さっきと殆ど同じで確証はない。…ニコ・ロビン……で当たっているかな?」
ジャンゴに視線で促され、ロザッタことニコ・ロビンは黒い腕達を散らせて、そしてゆっくりと自分のヘルメットをとった。
長めのボブカットスタイルの美女がそこにいた。
それを見て、改造マスケット銃を構えるそばかすの美女が、「ビンゴ!やっぱあたしの予想通り!」などと喜色を浮かべる。
くまがすかさず
「さすが情報のプロだ」
と褒め称えれば、そばかすの美女ジニーは「もうやめてよ、くまちー!それ程でもあるけどさ!」などと言ってくねくねと喜ぶ。
どこか弛緩した空気すら漂いそうになっていた。
いや、実際にそうなった。
この中で最後までピリついた空気を纏っていたジャンゴだったが、それを最後にとうとう一切の殺気を霧散させていた。
立ち上がったドラゴンに、ジャンゴは尋ねた。
「そこの女が情報屋か」
「そうだ。革命軍〝東軍〟軍隊長のジニー。情報戦のプロで、噂を集め…君の動きを予想し、ニコ・ロビンの失踪時期を照らし合わせて、この仮説に行き着いたのも彼女がいてこそだ」
褒められた当のジニーは、へへへ、と笑いながら鼻を擦って、そしてバーソロミュー・くまはまるで自分のことのように喜び、そんなジニーを見ていた。
「ヴァターシはエンポリオ・イワンコフよ!見ての通りニューカマー!ヒーハーッ!」
「おれはバーソロミュー・くまという。戦いにならず済んで良かったよ」
くまが一歩競り出て握手を求めるように手を差し出したが、ジャンゴはその要求を拒否した。
「その
あっ、と言いつつ、くまは慌てて手袋をはめ直して、ジニーに「おっちょこちょいなんだから!」と言われて照れている。
見た所、幹部級は今の三名なのだろうとジャンゴは判断した。他の者達は、名乗ろうともせず一言も口を利かない。ドラゴンに厳しく鍛え上げられた側近なのだろう。
革命軍の練度も、どうやらジャンゴの予想以上のものであるらしい。
(…情報のプロがいるとはいえ、革命軍に俺とロビンの動きが察知されるようでは、政府も俺達の側まで忍び寄ってると考えていいな)
政府が本腰を入れて自分達を追跡してくるなら、これから先の事を考えると厳しい状況が増えるだろう。
ロビン自身の実力も相当上がってはいるが、政府の引き出しはまだまだ多く、奥も深いという事は承知していた。油断などできない。
(革命軍か。……ロビンの隠れ蓑には好都合かもしれん)
想像以上に質も良さそうな組織に見えた。
ドラゴンも、そして幹部達の人格も裏がなく邪ではないと思えた。
「…取り敢えずは、ビジネスについて話し合っても良さそうだ」
「感謝する。ジャンゴ・フェット」
何より、ドラゴンという男の〝クソ〟が付きそうな程に真面目そうな反応の数々が、ジャンゴにとっては好感触だった。
アンダーグラウンドな存在とはいえ、ドラゴンは組織の長だ。それが、今もこうして律儀に頭を下げて、単なる賞金稼ぎに礼節を示す。
その時に、革命家とバウンティ・ハンターの運命は交差した。