竜胆さんの日々   作:どういうこったあ!

1 / 30
……我々は望む、七つの悲劇を。
……我々は覚えている、七つの祈りを。


前日譚∶機械じかけのプレガンド・セプテット
プロローグ


 その夢の中で俺は電車に揺られている。

 

「……結局、こんな結果になってしまいました」

 

向かい側の座席には一人の少女が座っている。

 

「図々しいことは分かっています」

 

逆光で表情を読み取ることは出来ないけれど、きっと悲しそうな表情をしているのだと思う。

 

「それでも、お願いがあるんです」

 

「私の話を忘れてしまっても構いません。

 

「この選択によってどんなに捻れて歪んだ終着点に辿り着こうと、それは私たちの責任であって、あなたの責任ではないのですから。

 

「だから、この電車の向こう側で何気ない日常を愛しても良いんです。

 

「夢や希望。苦難、挫折。あなたが歩み切れなかった物語を、もう一度やり直しても良いんです。

 

「それでも、あなたが私の意思を継いでくれるというのなら、どうか……」

 

「どうか、妹たちを――■■と■■■をよろしくお願いします」

 

そうして私は夢から覚める。

 

◇◇◇

 

 「おはようございます、ルミさん」

 

キヴォトスに来てから早いもので、もう二週間になる。朝の仕込みにも慣れて、レイジョに起こしてもらうなんてこともなくなった。

 

「おはよう、テレス。ネギの刻み頼んだよ」

 

私よりも早くから厨房に来て仕込みをしているこの人は朱城ルミ。

山海経高級中学校所属で、玄武商会っていう商業団体の会長さん。もともとただの商店街だった玄武商会をキヴォトス屈指のグルメ街にしたヤベー人。

 

高校生が商会長? って思うかもしれないけど、キヴォトスでは学校の持つ力がハチャメチャにデカいので、生徒が会社運営するくらい当り前だったりする。

あとケモミミがすごい鋭くて、胸がデカい。

 

「了解です〜」

 

向こうの世界で軽トラに轢かれて廃墟で目を覚ましたときはどうなることかと思ったけれど、案外なんとかなってしまっている。

 

そんなわけでみなさまご機嫌麗しゅう。竜胆テレス、元先生です。

……どこから説明しようかな。

 

 まず、この世界は私が元の世界で遊んでいたブルーアーカイブっていうゲームの世界だ。

プレイヤーが先生として生徒を助ける……みたいなゲーム。

さっきも言ったように、私は向こうで死んで気がついたらこの世界で目を覚ました。

最初は戸惑うなんてもんじゃなかったけど、体感一時間ぐらいたっぷりと錯乱してなんとか落ち着いた。

 

目を覚ましたのが廃墟(人はいないけどオーパーツがあったりする場所って感じで良いと思います)じゃなかったら確実に捕まってた自信がある。

 

なんでそんなとこで目を覚ましたのって話なんだけど、多分アリス(ロボットだけど人との違いはほとんどない女の子)とケイ(アリスの補佐役みたいな)のお姉ちゃんのせいだと思うんだよね〜。

私の肉体がアリスのお姉ちゃんのものっぽいし。

 

顔似てるし。私が目覚めたのは棺の中だったんだけど、その箱にAH-6Sって書いてあったし。奥に似たようなものがあと五つあったし。なんか夢に妹をお願いしますって言ってくる人が出てくるし。(本当はもっとたくさん喋っているのだけれど、なぜかそれ以外の記憶は起きると朧げになってしまうのだ)

ここまで理由があるなら流石にアリスのお姉ちゃんの体だろうってことで。

 

つまりは転生じゃなくロボット憑依ってことですね。勝手はほぼ人間と変わらないけど。

 

 ひとしきり錯乱して落ち着いたあとは、廃墟にいても良いことなんてない! って頑張って街まで出たんだけど、目を覚ましたときって全裸だったのね? 道中で布くらいあるやろってタカをくくってたんだけど、案の定見つからなくて、全裸で街中をコソコソ移動するヤベー女の図ができたわけですよ。(今、考えると廃墟から出られただけでも奇跡みたいなものだ)

 

本気でカンナに見つけてもらえなかったら、どうなっていたことか……。あ、カンナっていうのはヴァルキューレ警察学校ってところの公安局長さんね。ようは偉いお巡りさん。

え? 警察に全裸女が見つかって大丈夫だったのかって?

 

――追い剥ぎにあったって嘘をついて衣食住を提供してもらいました……。元先生として死ぬほど情けなかったです。

でもでも、今はこうして山海経まで来て働いてるから! 晄輪大祭でミレニアムに行くついでに借りた服とお金返すから!

いや、ホントごめんカンナ……。そしてありがとう……。

 

あ、そこでカンナに名乗った名前が竜胆テレスっていう今の私の名前です。

天童アリスのお姉ちゃんの体っぽかったから、天童から一文字変えて、アリストテレスからアリスじゃない方を取っただけの安直な名前だけど気に入っている。

 

 「ネギ終わりました〜」

 

「次は白菜お願い〜」

 

「了解です〜」

 

 えっと、どこまで話したっけ? ああそうそう。山海経に来たところまでだ。

 

なんで山海経に来たのかなんだけど、これは簡単。未来を改変したくなかったから。

私――というか、アリスのお姉ちゃんって存在が原作には登場してなかったから、未来が変わってバットエンドになってほしくなかったんだよね。

冗談抜きで最悪世界が滅ぶ。私にそんな責任を負う覚悟はない。

 

山海経は少なくとも、私が知っている限りでは大きくストーリーに影響しない。だからまずはこの女子高生がそこら辺で銃をバンバンしてるこの世界で生きていけるだけの力をつけようってことで、レイジョに稽古をつけてもらいつつ、玄武商会で働いてる。料理は元いた世界でもやってたから、ある程度はできるし。

 

アリスの試作機というか、言っちゃえば失敗作であるこの体には、ヘイロー(天使の輪みたいなやつ)がない。このヘイローが重要で、これがあるからこの世界の女子高生たちは撃たれても痛いで済んでいる。ヘイローを持たない私が撃たれようものなら痛いどころか一瞬で遺体になってしまう。(激ウマギャグ)

 

 取り敢えずの私の目標は、原作だと消えちゃう(復活フラグも微妙に立ってたけど)ケイって子を助けること。それがこの体の元の持ち主である彼女のから託された意思だから。

 

あとさっきも言ったように展開次第じゃ世界自体が消えるから、この世界の主人公である先生が、私の知る先生と同一なのかを確かめなくちゃいけない。

一ヶ月後に開かれるエデン条約調停式に現れる、小鳥遊ホシノと空崎ヒナの安否で、少なくともここまででバットエンドのルートを辿っているかどうかがわかる。

 

そこが私にとって第一の分水嶺。

 

 んー、あとなんかあったっけ?

 

あっ! 大事なこと忘れてた!

 

当方、竜胆テレス、元男です! TS憑依転生者です! はっはー!! 騙されたな馬鹿め!!

 

「白菜も終わりました〜!」

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。