竜胆さんの日々   作:どういうこったあ!

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風紀委員長の犬とお好み焼き。そんな日々。

 「うわっ、ガッチガチじゃないですか……」

 

先生の硬くなったソレに、恐る恐る手をかける。

触れると、ピクッと先生の体が跳ねた。

 

「んっ……。最近、忙しかったからなかなかね……」

 

「この辺りはどうですか? 気持ちいいです?」

 

「んんっ……ふぅっ、そこイイ……」

 

少し力を加えて上下に揉むようにして動かすと先生の口から声が漏れる。

先生が気持ちよさそうなところを探して、指を這わせていく。

 

「おっ、ここです?」

 

反応の良かったところを重点的に責めると、先生の顔が段々と蕩けていくのがわかった。

 

「あっ、待ってそこっ。あんまり強くしちゃ――」

 

「なにしてるんですかッ!??!?」

 

うわあっ!? びっくりしたあっ?! 急に飛び出して来ないで?

隣の部屋にいるのはわかっていたとはいえ、心臓に悪い。

 

「なにってマッサージですけど……」

 

先生が外から帰ってきたあと、なんだか肩が重そうだったので揉んでいただけだ。

ちなみに、先生の肩はなにしたらこんなになるんだってレベルで凝っている。どうしてこんなになるまで放っておいたんだ。

 

「あ、アコ。ただいま」

 

「マッサージ? なにかの隠語ですか?」

 

おかえりって言ってやれよぉ。先生、悲しそうな顔になっちゃったじゃん。

しかもちらっと一瞥してるのがたち悪い。

 

「いや、そのままの意味ですけど……」

 

この横乳行政官はなにと勘違いしてるんだ……?

 

「あ、そうだ。アコさんも触ってみてくださいよ。先生の肩、ガッチガチですよ」

 

「はあ、そんなこと言っても――硬っ!?」

 

「肩だけに?」

 

「はっ倒しますよ」

 

ひどい。

 

「え? ビクともしないんですけど。人間を触ってる気がしないですよ、これ。っていうか、壁かって思うくらい指が沈まないんですけど」

 

「いやー、そこまで言われる――痛い痛い痛いっ! 痛いよアコっ!」

 

「あら、すみません。つい! 力んで! しまいましたっ!」

 

「あだだだだっ! 痛い痛いっ! 私、アコになにかしたっけ!?」

 

「なにをしたもなにも、こうして仕事が終わらないのも! お気に入りのコーヒー店が定休日なのも! 家のシャワーが壊れたのも全て先生のせいではないですか!!」

 

「そんなことはないと思うなっ!? 仕事以外は!!!」

 

仕事はそんなことあるんかい。

というか、ようやく標的が先生に移ったな……。さっきまではこのダル絡みの対象が俺だった。厳しいって。

先生がヴァルキューレから早めに帰ってきてくれてよかった。人柱は任せましたよ。

 

◇◇◇

 

 先生に構ってもらったことで満足したアコが頑張ってくれたので、今日の業務が思いのほか早く終わった。

できた時間でなにをしようかなと思っていたのだが、特にすることもなかったのでスーパーで今日の夕飯と明日の朝ご飯のお買い物。いつもなら買えないタイムセール商品が買えてホクホクでございますよ。

 

キャベツと豚肉が安かったので今日の夕飯はお好み焼き。うちのお好み焼きはよく山芋が入ってたんだけど、今ってお好み焼き粉に山芋が入ってるのもあるんだね。知らなかったというか、お好み焼き自体、食べるのが久々な気がする。こっち来てから食べたっけ?

 

「あれ、テレスじゃない」

 

そんなことを考えながら、スーパーから家へと向かっているとセリカに会った。バイトに行く途中らしい。

 

「お久しぶりです、セリカさん。チョコ食べます? さっきそこのスーパーで……猫にチョコって駄目でしたっけ?」

 

「食べれるわよ! 猫扱いしないでっ!」

 

ふんっ、と手に持っていたチョコバーを奪い取られる。

 

「ありがとっ!」

 

それでもお礼は言う辺り、人間が出来ている。ええ子や……。

 

「また騙されて変なものを買わされたりしてません?」

 

「してないわよ! 最近、買ったものなんてこの持っているだけでお金が集まってくるリボンくらいよ」

 

「騙されてるじゃないですか」

 

「え゙、嘘……。私、また騙されたの……?」

 

信じられない……みたいな深刻な顔してるけど、バッチリ騙されてるからね、君。

そのうち悪い大人に酷い目に合わされそうで怖いよ。そうなったら、先生もホシノも黙ってないだろうけどさ。

 

「ん、セリカは学習しない。でもそこが可愛い」

 

「その二十点くらいのシロコ先輩のモノマネを今すぐやめなさい。次やったら撃つから」

 

辛辣すぎない? おじさん泣いちゃいそう。

 

「うへ〜。セリカちゃん、そりゃないよ〜」

 

「ホシノ先輩は無駄に上手いわね……」

 

やったぜ。

ホシノのモノマネはシロコにも好評だったりする。たまにやるとウケてくれる。可愛い。

 

「ていうか、バイトの時間は大丈夫です?」

 

「あ」

 

どうやら、長々と立ち話をしている場合ではなかったらしい。ダッシュでバイト先に向かって行った。

 

―――

――

 

 お好み焼き、美味っ。山芋が余ってるし、明日はマグロとろろ丼にしよう。

思っていたよりもシャーレのお給料が良いので、こうして好きなものを食べられている。最高。

 

「ん、おいしい」

 

「ね。いい具合にフワフワで美味い」

 

「お好み焼きのソースは期限内に使い切るのが大変」

 

「わかる。調べてみたけど、ハンバーグのソースとか手羽先に使うと美味しいらしいね」

 

「おいしそう」

 

「今度、作ってみるから待っててね」

 

「うん。楽しみにしておく」

 

シロコも俺もあまり喋らないタイプなので、食事中に限らずよく無言の時間が訪れる。

けど俺はその沈黙が苦じゃないし(むしろ心地よさを感じるくらいだ)、シロコも同じらしいので、こうして黙ってご飯を食べることも多い。

 

その時間で俺は何を考えるでもなく、今日もご飯が美味いなあ……と呑気に過ごしているのだが、シロコは俺の顔を見ながらご飯を食べていることが多い。

本人が言うには楽しいらしい。まあ、前の世界での体ならともかく、今はネイの体だしな。わからんでもない。

それはそれとして、見られてると食べづらさがあるよ。

 

たまに目が合ったときなんかはかなり恥ずい。向こうは全然、そんなことないみたいだけど、こっちは人の目を見るのに慣れてないんだ。

初めてシロコに会ったときに、目について言われたけど、今はどうなのだろうか。あんまりシロコを心配させるような目をしてないといいな。

 

「ごちそうさま。おいしかった」

 

基本的に俺よりシロコの方が食べるスピードが早い。口が小せえんだ。

お皿を一緒に洗うので、俺が食べ終わるまでの間、シロコは食事中と同じように俺を眺めている。……食べづらいんですケド。

 

「口にソースついてるよ」

 

「え、どこ」

 

「とってあげる」

 

そう言って、右の口元についていたらしいソースを指で拭われる。

ティッシュを……と思ったら、シロコの白くて細い指に絡まったソースが口へと運ばれ、舌で舐め取られる。

 

「……!?」

 

「どうかした?」

 

どうもこうもありませんが??????

ナチュラルボーンたらし怖えよお! あんまそういうことを平然とやらないでもらえます!? 心臓に悪い!!

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