竜胆さんの日々   作:どういうこったあ!

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砂狼シロコとハンバーガー。そんな日々。

 鏡を見ると、白のワンピースを着たアリスと似た顔立ちの少女が映っている。

顔は一目見て分かるほどに赤く染まっているけれど、意外と満更でもなさそうだ。

ただ問題があるとするのなら……。

 

「足がめっちゃスースーする……っ」

 

世の中の女子ってこんな感じなの……? すっごい変な感じするう……。

 

「着替え終わった?」

 

慣れない足元の寂しさに悶々としていると、物音がしなくなったことに気付いたらしいシロコによって試着室のカーテンが勢い良く開かれる。

 

「へっ!?」

 

思わず体を隠すようなポーズを取ってしまう。女の子かな?

 

「ん、可愛い。買おう」

 

「買わないよっ!?」

 

可愛いのはわかるよ。だってほぼほぼアリスの顔だもん。アリスが白ワンピ着たら、そりゃあ可愛いよ?

でも、俺の恥ずかしさは別なわけで。

というか、着替え終わってないかもしれないのにカーテン開けないで?

 

「じゃあ、プレゼントする」

 

「しないで?」

 

プレゼントされたら流石に申し訳ないので二、三回は着る羽目になるのが目に見えている。

恥ずかしさで死ねる……! それにスカートだと本気で女の子に染まりそうで怖いよ。

というか、今のシロコにあんまり自腹でなにかを買わせたくないし。もっと自分の為に使ってほしい。

 

「むう……。可愛いのに」

 

そんな不服そうな顔しても、ダメなものはダメです。

 

「今日はシロコの服がメインでしょ」

 

―――

――

 

 D.U.の大型デパート。

そろそろ夏本番ということで、心もとなかったシロコの夏服を買いに来ていた……はずなのに、いつの間にか俺が着せ替え人形にされていた。なぜ。

それと自転車も見なくちゃね。

 

あー、やっぱりズボンは落ち着く……。実家のような安心感がある。

 

「荷物、持つよ?」

 

「……ふふっ」

 

夏用のシャツがいくつか入った紙袋を持とうとすると、シロコに笑われた。なぜ。

 

「ごめん。テレスの方が背が低いし、顔も子供っぽいのに『荷物、持つよ?』なんて言うから」

 

「煽ってる?」

 

いや、事実ではあるのだけれども。155cmの童顔でシロコの方が圧倒的に強いわけだけども。

 

「煽ってないよ。ただ、可愛いなって思っただけ」

 

「その可愛さってあれじゃん、ちっちゃい子が頑張るの見て微笑ましくなるやつじゃん」

 

「あ、あの服、可愛い」

 

「露骨に話、逸らすじゃん。誤魔化されないよ?」

 

―――

――

 

 「テレスはどっちが良いと思う?」

 

薄手のカーディガンで、黒かクリーム色かで迷っているらしい。

個人的にシロコにはやっぱり黒が似合うと思う。もちろん、清楚系の服も似合うけれど。

 

「んー、黒」

 

「ん、わかった」

 

そう言って店の奥へと消えていったシロコを見届けた後、シロコに似合いそうな服を物色していると、海岸と車のプリントされたTシャツが目に止まった。

シロコと一緒に海(――プールでもいいな)に行けたらいいなあ……。

 

黒ビキニに少しくすんだ水色のパレオを腰に巻いていてほしい。絶対、似合う。

あとで水着も見ようかな。

 

「テレス、これはどう?」

 

「おっ、いいね」

 

黒の肩を出したトップスとデニムのコーデ。可愛い。こーれ、買いです。

 

「テレス、さっきからそればっかり」

 

ジトっとした目を向けられるが、その表情は柔らかい。

怒ってるわけではなさそうで安心した。女心とかわかんないもん。

 

「だってホントに似合ってるから」

 

「ふふっ、ならいいけど。

「――よし、これで終わり。会計したら、お昼食べに行こう」

 

「荷物、持とうか? シロコより背が低くて、童顔だけど」

 

「ふっ、私より背が低くて、童顔なテレスには持たせられない」

 

「なにおう!?」

 

―――

――

 

 「ハンバーガー食べたい。CMでやってるの美味しそうだった」とシロコが言ったから今日のお昼ご飯は和風ハンバーガー記念日。

こういうのもキヴォトスじゃ通じないんだろうなあ……。こっちの本はあんまり読んだことないし、今度、読んでみようかな。

それにウイにも会いたいし。知識開放戦線? 知らない子ですね……。

 

「美味しい?」

 

「うん、おいしい」

 

CMで美味しそうだったのに、頼んだらがっかり……って感じじゃなくて安心した。

鶏肉と柑橘系のソースでさっぱりな味に仕上がっていて美味しい。夏にぴったりって感じ。

 

「二人で出かけたのも久々だね」

 

「この世界に来たばかりのころは一緒に色んなところに買い物に行ったけど、すぐに忙しくなっちゃったから。この世界に馴染むのに精一杯だった」

 

「新しいことづくめだったもんね。今はちょっとは馴染めて、余裕ができたけど」

 

「テレスが中華鍋を買うかどうか真剣に悩んでたの、面白かった」

 

あったなあ、そんなこと。

引っ越すときに必要な家具とか色々と揃える必要があったのだけれど、山海経にいた頃からお世話になっていた調理器具店がありまして。そこの中華鍋が素敵でさあ……。

節約したかったから、買いはしなかったけど。

 

「今でもたまに買おうか迷うもん。この前、山海経に行ったときに触らせてもらったから、欲は満たされてるけど」

 

「テレスの三大欲求は、食欲、睡眠、料理だと思う」

 

「それだと料理に欲情してるみたいじゃん」

 

「してないの?」

 

「してないよっ!?」

 

いったい人をなんだと思ってるんだ……。

 

「ふふっ、冗談」

 

―――

――

 

 「おお……」

 

目の前にぎっしりと並ぶ自転車に圧倒される。なんか、鉄の塊って感じだ(語彙力)。

 

「テレス、こっち」

 

シロコはここに来るのは初めてではないらしく、すっすっと自転車の間を通って目的の自転車に向かって歩いていく。

 

「ロードバイクでいいんだよね?」

 

「うん。一緒に走るし」

 

「じゃあ、この青色のやつと同じシリーズがいいと思う。路面から振動が伝わりにくくなってる」

 

「へー、やっぱり詳しいんだね」

 

「ん、任せてほしい」

 

「シロコはどれにするの?」

 

「私は廃品を集めて、自作しようと思う」

 

「……え?」

 

「ブラックマーケットにも廃品は出回ってるし、それにアビドスに行けば楽に集められるから」

 

「自転車って自作できるものなんだ……」

 

予想の斜め上をいく答え過ぎてフリーズしてしまった。てっきり新しく買うと思っていたら、まさかの自作でお兄さんビックリですよ。

 

「一回、やってみたかった」

 

「応援してます……」

 

というか、応援しかできない。

自転車の自作なんて、なにも手伝えることがないだろ。どうやってやるのか見当もつかないし。

 

「うん、ありがとう。出来上がったら、一緒に走ろう」

 

「じゃあシロコの自転車が完成する前に、走れるようになっておかなきゃだ」

 

「最初は一〇〇kmくらいでいいと思う」

 

「三十kmくらいで勘弁してください……」

 

死んでしまいますわよ。




 引っ越しの際、二人分のベッドを買うお金がなかったので、テレスとシロコはダブルベッドで一緒に寝ています。
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