竜胆さんの日々 作:どういうこったあ!
「さっきから全然当たってねえぞ!」
なんで散弾銃が当たんねえんだよ。頭キヴォトス人かよ。
「的がちっちゃいと狙いにくいんですよう!」
「あ゙あ゙!?」
「いッ〜〜〜〜!」
鳩尾を狙った蹴りを腕で防ぐ。おっも。
けど、これで近づけた。
「まだまだあ!」
いつの間にか距離を詰めていたネルの左腕が俺の頭を掠めていく。
このままだと右側の銃で蜂の巣(ゴム弾を使用しているとはいえ当たれば痛いし、なにより本番想定でやらなくては)なので、こっちも前進して右腕を外に弾いて、そのままネルの懐に入って鉄山靠っ!
横薙ぎで飛んでくる鎖は腕で受けるっ!
「いっっだい!」
「やるじゃねぇか!」
「下がらせませんよう!」
ショットガン連――
「どぅえっ?!」
あれー? なんでか知らないけど、体に鎖が絡まってるー?
「グエッ」
体勢崩して倒れて〜?
銃蹴り飛ばされて〜?
頭踏まれて〜?
ゲームセットッッッ!!!
「で? 誰が小さいって?」
「昨日、お子ちゃまパンツって言われたこと気にして、ちょっと大人っぽいパンツ履いてるネルさんん゙ん゙ん゙ん゙ん゙ん゙!!! 頭割れる! 割れますってえ!!」
―――
――
はい。そんなわけでネルと戦闘訓練中でーす。今のところは〇勝十敗。学園最強は伊達じゃない。
「当たり前ですけど、その鎖って飾りじゃないんですね……」
「私のレンジは近接だからな。相手を自分の間合いに引き寄せるならこれが一番手っ取り早え」
「銃と銃を繋げてる鎖を相手の後ろに回す難易度やばくないですか?」
マジで気付いたら後ろに来てる鎖はなんなんだ。
「人間、自分の後ろは見えねえからな。慣れれば意外とイケるぞ?」
「そもそも私、二丁持ちじゃないですしそこからやるのもなあ……」
「つーか、お前はそもそも銃の扱いが下手だからそっからだろ。あたしと並ぶなら、ショットガンのリロードを拳銃で潰すぐらいじゃないとな」
「そんなバケモンどこにいるんですか……」
片手リロードとかどうやってやんだよ。
「けど近接に関して言うなら結構いいんじゃねーの? あたしに銃をほとんど撃たせなかったのは誇っていいぜ。ま、あたしに挑むには千年早いけどな」
「まじすか」
「師匠とかいるのか?」
「あー、玄武商会の警備担当のレイジョさんって人です」
「へえ、玄武商会の……」
舌舐めずりしないで。
「喧嘩売らないで下さいよ?」
「それはあんた次第だろ」
「私が強くても満足しませんよね? 私が強かったらレイジョさんはもっと強いはずって戦いに行くタイプですよね?」
レイジョに迷惑かけるわけにはいかないので、このあとの訓練も死ぬ気でやった。
全敗した。
ちくせう。
―――
――
「ただいま戻りました〜」
訓練が終わってもシャーレでお仕事。社畜の鏡ですわ。
「あ、おかえり。どうだった?」
「ぼっこぼこです。先生は放課後スイーツ部の子たちと?」
「うん、みんなすごく頑張ってるよ」
スイ部はフレデリカ・セムラっていうスイーツが食べたいらしく、バンド活動に励んでる。なんでもフレデリカ・セムラがバンド大会の優勝賞品なんだとか。
「バンド良いですよねえ……。後で私も覗いてきて良いです?」
「大丈夫だと思うよ? 私は追い出されちゃったけど」
「ええ……」
きっとヨシミにちょっかいかけたんだろうなあ……。
そういえば、誰がどの楽器とかまでは聞いてないんだよな。
……うわー、気になる。頑張って早めに仕事終わらせよ。
―――
――
「こんにちは〜」
「あ、テレスさん。久しぶりです」
スイーツ部の練習場所のスタジオへ行くと、アイリが出迎えてくれた。
「お久しぶりです。これ差し入れです。みなさんで食べて下さい」
「あれ? これ新作のシュークリームじゃん!」
開けるのが早い。
もうちょっと自重しようよ、ヨシミ……。
って、指に絆創膏ぐるぐるじゃん。ベースはカズサが弄ってるし、ヨシミがギターなのか。
「喜んでもらえたみたいでなによりです。あのピンク色のギターってヨシミさんのです?」
「ほふよ」
口にいれるのも早い。
練習頑張ってそうだから良いけどさ。いや、別に頑張ってなくても許すけども。
「可愛いストラトですねえ」
ああいう淡い色合いのギターってやっぱ映えるよなあ。
カズサのペースみたいな、青! ってやつもまた良い……。
「ちょっと顔キモいわね。まあ可愛いのはわかるけど」
キモいとはなんだキモいとは。
「というか、皆さんの服装すっごく可愛いですね!? デザイン凄く良いですし、プロの方に依頼したやつです?」
「……」
なんかヨシミが顔を赤くして黙っちゃった。……ははーん? さてはヨシミがデザインしたな?
「えっ!? もしかしてこの衣装ってヨシミさんがデザインしたんですか!? すごい! 天才! 可愛い! ツンデレ!」
「最後なんか違くない?!」
「最近、純粋な好意を向けられることが少なかった幼気な少女にその言葉は劇薬……そう、まるで練習の合間のスイーツのように……!」
「うっさいわねっ! 先生にはおちょくられてばっかりよ! 悪い!?」
「あはは……ヨシミちゃん落ち着いて……」
「って言ってるアイリさんが一番先生との距離詰めてそうですけどね」
「は?」
きゃー、アイリの厄介ヲタのカズサさんこわーい(棒)
「テレスもそういうこと言うのね、ちょっと意外」
「言いますよ? 最近シャーレに来ては先生に卑しいムーブしてるカズサさんと鉢合わせないようにしてる話とかします?」
「ちょっ、はあ!?」
「この前、休憩と言って帰りが遅かったのはつまり……!」
「ち、違うし! あれは……テレェスッッ! 逃げるなぁッ!」
「それじゃ、頑張ってくださいね〜」
後ろで叫んでるカズサを尻目にダッシュで逃げ出す。捕まったら何されるかわかったもんじゃないのでね。
◇◇◇
「ただいま、テレス」
「あれっ? ごめん、気付かなかった」
ギターに夢中になってシロコが帰ってきたのに気付かなかったらしい。
急いでご飯の準備しなきゃ。といっても、温めるだけなんだけど。
「気にしないで。私もテレスの演奏、黙って聴いてて声かけなかったから」
「そうなん……え? 聞いてたの?」
はっずはっずはっずはっず。
格好良く演奏してやろうって息巻いてたのに!
「うん、上手だった。前の世界でやってた?」
「一年半くらいだけどね。
「最近、トリニティの子たちがバンド始めたんだけど、それに触発されて〜って感じ」
高校で軽音部に入って、バンド組んで。文化祭で演奏して。……なんてことはなかったけれど。
カナエとの話のネタにでもなればと思って少し練習していただけだったから、逆に高校に入ってからはめっきり弾かなくなってしまった。
始めはギターを弾く暇がなくて。
そのうち存在を忘れていって。
俺がブルアカにハマったことで、完全に俺の俺の中からギターというものが消えてしまった。
それがブルアカに掘り起こされたのだから、なんだか皮肉めいている。
「弾いてたのって前の世界の曲?」
「あー、うん。そう。よくわかったね」
「もっと聞きたい」
「弾けるの五つくらいしかないけど、大丈夫? こっちに来るってわかってたらもうちょっと真面目にやったんだけどね……」
……今のは良くなかった、反省。
今の聞いてシロコが気にしないわけないのに。
もう一回あの音楽たちを聞きたくないって言ったら嘘になるけど、聞けないし。
その辺の折り合いはシロコの腕で大泣きしたときにつけたつもりだ。
「そんな顔しないでよ。
「弾けない曲はどうにもならないけど、弾ける曲はシロコにも覚えててもらえるからさ」
「……うん。ちゃんと未来に連れていくよ。これもきっと、テレスの生きた証になるから」
「そこまでいくと照れちゃうかなーって……まあ……いっか。
「――じゃあ、いくね。
「ワン、ツー。ワンツー、さんしっ」
この世界における強さランキング
シロコ*テラー
>ヒナ=ホシノ
>ツルギ=ネル=ミカ
>サオリ=スオウ=トキ=レイジョ=ユキノ
>アズサ=イオリ=シロコ=テレス
トキは生身での順位です。エリドゥとのリンクがあれば、ホシノやヒナにも並ぶと思います。
あくまで「この世界で」ですけれど。