竜胆さんの日々 作:どういうこったあ!
【目次】
#暁のホルスとテレスママ。そんな日々。
#砂狼シロコと通話。そんな日々。
#コールサイン04とジャケット。そんな日々。
#砂狼シロコと朝ご飯。そんな日々。
#伊藤カナエとお盆。そんな日々。
あんな日々だったり、こんな日々だったり。
#暁のホルスとテレスママ。そんな日々。
「ホシノさーん、こんな所で寝たら風邪引いちゃいますよー」
シャーレの執務室へ入ると、クーラーの下で横になっているホシノがいた。
頭に敷いているのは、自宅から持ってきたマイまくらだろうか。思いっきり吸いてえ……。
「うへ、テレスママに見つかっちゃった」
「テレスママ……?」
「そうそう。テレスちゃん、面倒見がいいからさ」
「童顔ですけど、これでもお姉ちゃんなんですよ?」
「へえー、テレスちゃんって妹いたんだ。道理で面倒見がいいわけだ」
アリスの顔でお姉ちゃんですって言っても説得力なんて皆無だと個人的には思っているのだけれど、納得してくれたらしい。
あまり自分では面倒見が良いとは思わないけれど、ホシノがスッと納得してくれるくらいには面倒見が良いのだろうか?
「妹ちゃんはどこの学校に通ってるの?」
「今は離れ離れになっちゃって、どこで何してるか分からないんですよねえ……」
「……あー、ごめん」
「気にしないでください。いつか会えると信じてるので」
「そんなセリフ、おじさんには眩しいよ……」と、ホシノはわざとらしく自嘲してみせた。
それが俺には、ユメ先輩に会えない哀しみを自分への嘲りで隠しているように見えた。
俺やシロコは前に進めているけれど、ホシノは前に進めているのだろうか。……まあきっと、なんとかなるのだろう。
そうでなければ、それは『青春の物語』などとは呼べないだろうし。先生もいるし。
だからといって、先生にぶん投げて俺は何もしないというわけではないけれど。
「妹に会ったときには、ホシノさんの話もしますから」
「うへ、なんて伝えるの?」
「ピンク髪の私より背が低いのにおじさんを自称する、深夜に自治区の見回りをして寝不足になってるヒーローがいるって話しますかね」
それまで困ったなあという風な笑みを浮かべながら横になっていたホシノだったが、自治区の見回りの話が出るとガバっと起き上がる。
「テレスちゃん、それどこで……」
これでも先生が来てマシになったほうなのだろうけれど。
「ほらほら、仮眠室へゴーゴー。
「先生はお昼にならないとシャーレに来ないですし、それまでゆっくり寝ててくださいっ、っと」
ようやく体を起こしたホシノの手を取って、仮眠室へと向かう。
「え、いや、そうじゃなくて……」
「はいはい、行きますよ〜」
―――
――
おまけ。
テレス「(まーた、散らかして……)」モモイなどが散らかしたものを無言でスッと片付ける。
一同「「(ママだ……)」」
#砂狼シロコと通話。そんな日々。
テレス「ごめん。帰り、明日になりそう。ご飯、出前頼むかしてほしい!」
シロコ「危ないこと?」
テレス「全然! 山海経で宴の準備がありそうなんだよね」
シロコ「ん、わかった」
テレス「ホントにごめん!」
シロコ「帰って来るとき、連絡して」
テレス「了解!」
「はあ……」と、モモトークの履歴を眺めながら、同居人のいない家を想像してため息を吐く。
まだ朝早いというのに、早速仕事のモチベーションが下がってしまった。
夜にテレスの手料理が食べられない分、今日のお弁当は味わって食べよう。
―――
――
シロコ「ちょっと話せる?」
送ってしまった。
テレスにも迷惑だろうと思って我慢するつもりだったのだが、思ったよりも自分は寂しがりらしい。
テレスが帰らないというだけで仕事に身が入らず、怒られてしまった。
そんな具合だったので、割と早い段階で声だけでも……。と思い、何回もメッセージを打っては消してを繰り返していたのだが、辛抱堪らなくなって遂に送ってしまった。
やっぱり迷惑かもしれないと、送信取り消しボタンを押そうとするも、メッセージには既に既読がついてしまっている。
テレス「何かあった?」
シロコ「声聞きたくて」
メッセージを送ってから、ものの数秒で電話が鳴る。
……こういう所がズルいのだ。
「あ、もしもし?」
「聞こえてるよ」
「良かった。シロコはもうご飯食べた?」
「ううん、まだ」
「そっか。俺もまだ」
「今、一人?」
「うん。ちょっとだけ抜けてきちゃった」
「ごめん、迷惑だった?」
「全然? 俺も話したかったから」
「……そっか。そっちは何してるの?」
「萬年参っていう人参があるんだけど――」
少し会話を交わしただけなのに、塞ぎ込んでいた気分が晴れていくのがわかる。
沈んでいた表情は、微笑みを浮かべていることだろう。
なんともまあ単純だ。
だけど、そうなのだから仕方がない。
「ごめん、喋りすぎちゃったね」
「大丈夫」
「ありがと。シロコは何してるの?」
「テレスに電話してる」
「あははっ、確かにそうだね。じゃあ、今日の仕事はどうだった?」
「ん、いつも通り」
声を聞いているだけで、心地の良い安心感に包まれる。
画面越しなのは少し寂しいけど。
「ありがとう、テレス。もう大丈夫」
「……そっか。俺もそろそろ戻らなくちゃだから、あとでまた連絡するね」
「……うん」
こういうところが本当にズルいのだ。
#コールサイン04とジャケット。そんな日々。
無事に自転車も購入できたので、早速シャーレまで乗っていこうと思ったのですが。
「いや、きっつい……!」
最終章が終わってシャーレに所属するようになってから、書類仕事が増えて体力落ちてるとは思っていたし、山海経で玄龍門とかと戦ったときに薄々気付いてはいたけれどさあ……。
これは本格的に体力を戻さないとマズいな……。
そう思うと自転車買って正解だった。
汗が目に入って痛いし、前髪とシャツは汗で張り付いて鬱陶しいけど。
シャーレに着いたらシャワー借りよう……。
―――
――
「テレス、そのジャケットをこちらに渡してください。先輩からの命令です」
「別にトキさん、先輩じゃ……あ、留年してるんでしたっけ」
「そんな事はどうでもいいのです。さあ。その先生のジャケットを。早く」
シャーレに着いたは良いものの、汗でシャツが着れる状態じゃなくなってしまったので、シャーレにあった体操服を拝借していたのだけれど、「それじゃ寒いでしょ。私ので良ければ、ジャケット貸すよ?」と、先生がジャケットを貸してくれた。
それも今、トキに奪われたわけですけれども。
先生LOVE勢からしたら、彼シャツ(先シャツ?)なんて羨ましい以外の何者でもないんだろう。
ぎゅっとジャケットを抱きしめて、満足そうな顔をしている。良かったね。俺は寒いよ。
大体、この体操服も悪いと思うのだ。
なんだこの体操服は。股下短すぎるだろ。体操服はあるのにジャージはないし……。
こういう服はキヴォトス人だから着れるのであって、一般人には刺激が強すぎるんですよう。
あと一時間くらい経ったら服の乾燥が終わるので、それまでの辛抱と言えばそれで終わってしまうのだけれど。
「こらトキ、テレスが寒いでしょ。返してきなさい」
「元々は先生のですからね……?」
先生のジャケットを羽織って何食わぬ顔で作業してたけど、なぜバレないと思ったんだ。
しかもゴネてるし。
「あはは……別に私は大丈夫ですよ?」
「テレスに風邪引かれたら面目が立たないよ……。
「というわけでトキ、返してきなさい。その代わり、仕事が終わったら一緒にお菓子でも食べよう」
それを聞いて、露骨にトキの顔が喜色を帯びる。
どうやら、ここまで計算づくだったらしい。他人の前だと素直に構ってと言うのが恥ずかしいのだろうか。
可愛いね。俺は寒いよ。
「仕方ないですね……」と、全然仕方なくなさそうな様子のトキにジャケットを返される。
なんか都合よく利用されたみたいで腹立ってきたな?
「トキさんトキさん」
秘技! 彼シャツ萌え袖、匂いかぎ!!
トキに効果は抜群だ!
「先生、今すぐシャツを脱いでください」
「なんでっ!?」
トキちゃん彼シャツすることしか頭になくなっちゃってやんの。
先生が肩を掴まれてグワングワンされてるけど気にしない。
「なにを笑っているんですか、テレス。
「先生は早く脱いでください、負けてはいられません」
「何と戦ってるの……?」
#砂狼シロコと朝ご飯。そんな日々。
ベッドに入ると後ろからシロコに抱きしめられる。
今までは遠慮していたみたいなのだけれど、一度抱き枕にしたら「もういいや」になったらしい。
「暑くない?」
「大丈夫。テレスは迷惑だったり、暑かったりしない?」
「大丈夫ー。けど、そろそろ暑くなってくるし、どうしよっか」
「冷感パジャマとか?」
「流石に冷感パジャマだけじゃ無理ない?
「あと全然関係ないけど、クーラー効かせた部屋で布団にくるまって寝るの好き」
「自然の敵だ」
「八月十五日の〜♪ ごめん、発作」
「そ、そう……」
「クーラー欲しいけど、お金がなあ……」
「腕枕」
「天才」
―――
――
「腕辛くない?」と、俺に腕枕をしているシロコに声をかける。
「大丈夫」
腕から伝わる温もりが心地良くて、ベッドに入ってからそれほど時間が経っていないというのに眠気に襲われてしまう。
横を覗くとシロコも眠そうにしている。
「おやすみ、シロコ」
「ん、おやすみ」
―――
――
お弁当と朝ご飯の準備をしていると、シロコが目を覚ましてリビングまでやってきた。
俺がシロコの抱き枕になってから、俺がいなくなるとシロコが目を覚ますようになってしまった。
起きてきても大抵は眠いままなので、リビングのソファでブランケットにくるまっているのだけれど。
寝ぼけ眼でボーっとご飯作りを見ながら、気付けば寝ている。
ソファで寝ていて体は痛くないのだろうか。
俺のせいでシロコの体に不調が起きてないと良いのだけれど。
なんて考えている内に、朝ご飯の準備が終わったので、シロコを起こす。
「おはよ」
「ん、おはよう……」
「ご飯できたよ」
「食べる……」
#伊藤カナエとお盆。そんな日々。
「あ、どうも。お兄ちゃんの知り合いでは……ないですよね。あちらの銀髪の方の……お兄さん?」
窓からお兄ちゃんの様子を覗いていると、空からきゅうりでできた馬が走ってきた。
乗っていたのは優しそうな……女の人か男の人かわかんないや。
ともかく優しそうで中性的な人がこの家に呼ばれたってことは確か。
「あはは、そう見える? 私は彼女――シロコっていうんだけどね。の先生なんだ」
「へえ〜。てっきりお盆に帰ってくるのってご先祖様だけかと思ってました」
「実は私もちょっとびっくりしてる」
「でもまあ、ここまでされたらご先祖様以外も来ちゃいますか」
「ここまで?」
「えっと、お盆のお供え物とかって今の時代、結構疎かにしちゃいがちじゃないですか。
「それなのにあの二人はすっごく正式にやってるんですよ。現に私の家では送り火なんてやっていませんでしたし」
精霊馬、鬼灯、仏花、そうめん、昆布、盆菓子、etc……。
どれだけ私たちに会いたかったんだってツッコみたくなるくらいにはしっかりしている。
それだけ愛されてるってことで悪い気はしないんだけどさ。
「確かに。精霊馬だけじゃくて、お供え物もしっかりしてるね。えっとあれは……昆布?」
「よろ昆布で喜ぶ……みたいな意味だった気がしますけど違ったらごめんなさい」
「ううん、大丈夫。詳しいんだね」
「生前は本の虫でしたので。もっぱら今は賽の河原で石を積んでますけど」
「奇遇だね。実は私もなんだ」
「河原に帰ったら一緒に頑張りましょう……!」
お地蔵様が助けに来てくれるのはいつになることやら。
「ふふっ、そうだね」
「……こうしてお兄ちゃんの幸せそうな顔が見れて本当に良かったです」
なんか女の子になってるけれど。お陰で来る家を間違えたかと思ったけれど。
幸せならOKということで一旦、流してあげよう。一旦ね。
「私もシロコの幸せそうなっ……顔がっ、見れてっ! うわあああん!!」
先生さん、感極まって泣き出しちゃったよ。
生前、よっぽどだったのかな? 他人の過去をむやみに聞くつもりはないけれど。
「すみません、生憎とティッシュとハンカチは持ってないんですよね……」
「ゔゔん、大丈夫っ!」
「そんなグチャグチャの顔で言われても……」
せっかくの綺麗なお顔が台無しじゃないですか。
―――
――
「それじゃあ、私はそろそろ行こうかな」
「おや、どちらへ?」
「もう一人、会わなくちゃいけない子がいるんだ」
「さっき話してた、A.R.O.N.A.さんです?」
「うん、そう。いっぱい話を聞いてくれて、してくれてありがとうね」
「いえいえ、こちらこそ」
「それじゃ」
……行ってしまった。精霊馬ってその辺のスポーツカーよりもスピード出てる気がするけれど、衝突事故を起こしたりしないのだろうか。それとも死者の世界にも道路交通法みたいなものがあるのだろうか。
「……なーんて。
「私も、お父さんとお母さんに会いに行かなきゃなあ……。
「――あれ? もしかして私の家庭、子供二人を失ってたりする? やばくない? 家庭崩壊とかしてないよねっ!? こうしちゃい、ら……れぇ〜〜〜??」
「ななななななんあななんあなッ!?!?!? お、お兄ちゃんがキスしてるっ!?!?!
「しかもなんかめっちゃメスの顔してるし!!! 見たくなかったよ、こんな兄の姿!!!
「TS転生メス堕ち兄貴とか嫌だよ私ッ!?!?!? というかお盆くらい我慢しようよ!!
「先生さーん!!!! おたくの生徒、不純異性交流……いや、同性なのか?
「――じゃなくて!」
え、ホントに見たくなかったんだけど兄のこんな姿。
うわー、あんなに蕩けた顔しちゃって……。めちゃくちゃ感じてるじゃん……。
なんというか、こういうのを嫌がりつつも目が離せないのはどこの世界も共通だと思う。
私が汚れてるだけ? いや、そんなことは……あるかもしれない。
こうして顔を手で覆いつつも指の隙間からお兄ちゃんとシロコさんの交合をガッツリと見ているわけだし。
というか、ホントになんでお兄ちゃんは女の子になってるし顔も背丈も違うの? うお、喘ぎ声エッグ。お労しや兄上……。
いや、ホントにお労しいやつがあるか。
「……よしっ! 見なかったことにしよう!
「私は先生さんと別れたあと、すぐに両親の元へと向かった。そうに決まってる。異論は認めません!
「わざわざ違う世界にまで呼んでおいて盛ってるお兄ちゃんが悪い! それともあれなのか?!
「『転生したら幼女だった件〜なんかTS転生したけどメス堕ちして幸せなのでOKです〜』みたいな感じなのか!?
「ちくしょう、終わってんな私の兄貴!!! 私のネーミングセンスも終わってる!!」
はあ……はあ……もう、お母さんとお父さんのところに行こう。
いや、断じてお兄ちゃんがちょうど果てたからとかではなく。ホントダヨ?
「……カモン精霊馬!!」
この世にはとても良い言葉がある。『死人は梔子』……じゃなくて『死人に口なし』。
まあつまり何を言いたいかというとですね。
「……ここまでの話、聞かなったことになりません?」
ならない? ……そっかあ。
おまけだし自我を出してみるのも良いかもしれないと思い、このあとがきを書いている次第なのですが、何を書こうかと悩んだ二日間でした。
それじゃ、始めよっか。(CV東◯奈央)
読者の皆様はご存知ないと思うんですけれど、実は当方シロコ*テラーが大好きなんですよね。皆様につきましては大変に驚いたことかと思います。
え、そんなことない? 知ってた? またまたぁ、嘘は良くないですよ皆さん。
なんて茶番はさておいて、本題。
本作を執筆中にシロコ*テラーが実装されました。発狂しました。
アビドス三章には登場してくれるだろうと信じていた(本編を八月からの更新にしたのもこれが理由だったり)のですが、まさか実装されるとは。
本作でお気に入り登録や感想や評価、ここすきなどをもらったときくらい嬉しかったです。
と、半ば強引に話を持っていったところで。
改めまして、たくさんの感想をありがとうございました。感想を送って下さった皆様に心よりの感謝を申し上げます。