竜胆さんの日々   作:どういうこったあ!

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アー◯ヤ「まだ休んじゃダメですよ」

テレス「誰ぇ……?」


お姉ちゃん、ドクターを気取る。

 今回の作戦はこうだ。

一、黒服の知り合いを名乗って、どうにかウトナピシュティムに乗り込む。

二、プロトコルATRAHASISを俺が背負う。……以上!!

 

晄輪大祭でもつけてたいつもの仮面だとアカリにバレるから、仮面は女面に変えた。

ここに着くまでにカイザーと交戦したおかげで、ゲマトリアと一緒に襲撃された感が出ててかなりGood。怪我の功名ですわ。

 

雰囲気は十分すぎるくらいに出てる。あとは俺のロールプレイ次第。

こっちに来てから一人称「私」で乗り切ったTS転生者のロールプレイを見せてやらあ!

 

―――

――

 

 「えっと、ユウキ……さん?」

 

一通り船内の案内が終わりミレニアムからの応援が到着したあと、先生に呼び出されて船の外に出た。

 

にしても、真っ先に俺とゲマトリアとの関係を疑うはずなのに、警戒心はあれど敵意を一切向けて来ないのには驚いた。先生の聖人がすぎるな?

 

「ふふっ、呼び捨てで構いませんよ」

 

「ユウキはどうして、私たちを助けてくれるの?」

 

「黒服に言われたのもありますが、ここで恩を売っておけば、船に乗りやすいでしょうし」

 

「君はゲマトリア?」

 

「NOです。もっとも、ゲマトリアは既に解散してしまっていますが。もちろん、あなたの生徒に危害を加えるつもりはありませんのでご心配なく。なんなら、契約書でも交わしましょうか?」

 

「いや、大丈夫。それが聞けたら十分かな。それと――」

 

「この船について。ですね? 私の口から語っても良いのですが、生徒の楽しみを潰すのはあなたの本意ではないでしょう?」

 

だって何にも知らねえもん。このままどうにか乗り切ることに必死ですよ、私は。

 

「助かるよ」

 

「心配せずとも、私が掴んでいる程度の情報ならすぐに解明されると思いますよ? なにせ、ミレニアムの全知にヴェリタス、マイスターまで揃っているのですから。それに各学園の頭脳たちも」

 

「詳しいね?」

 

「妹がいるのですが、なにぶん私が過保護なものでして」

 

「ああ、それと。先程も言ったのですが、ソラへの旅には私も同行させてもらってもよろしいでしょうか? 見ての通り戦う力はほとんどありませんが、救護の方には自信がありますので」

 

……大嘘はついてない。大嘘は。

 

―――

――

 

 「服、似合ってるよ」

 

「あら、ありがとうございます。先生もお似合いですよ」

 

この先生は生徒以外にもこういうこと言うのか……。と、呆れつつ。

なにかと言うと、なんとヒビキがボロボロだからと俺の分までオペレーター服を用意してくれたのだ。

 

着替えるときに、やたらゲーム開発部が覗いてきたのはどういうことなんだろうか。

それになんだか避けられてる気もする。ケイに正体バレて、それがアリス経由に伝わった感じか?

 

なーんて考えているうちに、どんどんと船員の紹介が進んでいく。アコ大丈夫? 息してる?

 

ていうか、このあと美食研が来るんだよなあ。ま、ヘイローないしテレスだって確信は持てないでしょ。多分。

 

「皆さんの食事を担当する、ゲヘナ給食部の愛清フウカと……美食研究会」

 

噂をすれば、だな。

うわー、アカリめっちゃこっち見てるじゃん。なんか獲物を捕らえるときの目してるし……。

先生からは「なにしたの……?」みたいな目で見られてるし。

焼き鳥を作っただけなんです……。いや、嘘じゃなくて。

 

「そして最後に――」

 

おっと、もう俺の番ですか。

 

「救護担当の竜胆ユウキです。怪しさ満点だと思いますがよろしくお願いします」

 

「アリス知ってます! 仮面キャラは主人公がピンチのときにかばって、その正体が実の姉だと判明するんですよね! よろしくお願いします、ユウキ!」

 

「 」

 

◇◇◇

 

 ウトナピシュティムの本船を起動するときに先生が受けたダメージは二つ。

アリスへのダメージの肩代わりと、起動に際して起こったダメージ。

アロナがいたとはいえ、先生はそれを耐えきっている。

 

だから、最悪の場合でもそのうちの一つしか受けない俺は大丈夫だろうと楽観視していた。

それが、ここまで……ッ!!

 

あー、マズい。最初に落ちるのが船医とかダサすぎるぞ、俺……!

 

第一、先生は俺以上に脆い体で俺以上のダメージを受けてるんだ。なのに俺が弱音吐ける資格なんてねえよなあ……!?

 

それにどうせもうすぐ死ぬんだ。火事場力くらい見せやがれ。

 

気合! 圧倒的気合!!

 

「ユウキさん、大丈夫?」

 

モモイぃ……! 俺の着替えを真っ先に覗きに来たモモイぃ……!

 

「ただの船酔いですから大丈夫ですよ」

 

「なんで船に乗ったんだろ」みたいな目で見ないで。

VR酔いするけどVRゲーム好きな人たちと似たようなもんだから。

いや、そもそも船酔いじゃないんだけどね?

 

よし、モモイのおかげでちょっと余裕が――って思った瞬間、多次元解釈にエラー起きて、思いっきり爆発で揺れましたね。

あんまり船を揺らさないでもらえます? 吐いちゃうでしょうが。

 

「えっ!? 何!? 爆発!?」

 

ふー、深呼吸。

大丈夫。覚悟は出来てる。

 

―――

――

 

 アリス、格好良かったなあ。

アリスとリオとの対話も終わり、アリスたちゲーム開発部はもうハッチに移動している。

俺はというと、ヨロヨロと壁を沿ってアリスの元へ移動中でございます。

 

「……現時点をもって、プロトコルATRAHASIS起動。

コード名『アトラ・ハシースの箱舟』起動プロセスを開始します」

 

さあ、始まる。

今、ケイとアリスが何をしているのかなんて見なくても分かる。

そのくらい、何度も何度も読み返したんだ。

 

ケイがゆっくりと目を開く。

 

「王女は鍵を手に入れ、箱舟は用意された」

 

アリスが唱える。

 

「名もなき神々の王女、AL-1sが承認します

――ここに、新たな聖域が舞い降りん――――!」

 

アリスを中心に風が舞い上がり、巨大な光の剣が生成されていく。

 

「ターゲット確認。出力臨界点突破……! 魔力充電……100%、行きます!

「悪を打ち砕く正義の一撃……」

 

リオの激励。

 

「……そうね、アリス。ここは――貴方たちの表現を借りるとしましょう」

 

「行け、勇者よ……!

「私たちの世界を救いなさい!!!」

 

あ、ゲーム開発部が俺を近づけまいとしてる。

まあ、ここからでも大丈夫でしょう。

 

「もちろんです!

「アリスは、仲間の期待に応えます!!

「光――――――、―――よ!!!!!!」

 

巨大な光の剣から一条の光線が放たれ、アトラ・ハシースの多次元バリアへと衝突する。

 

衝突した箇所にヒビが入り、その亀裂は段々と大きくなっていく。

 

そして、ついに多次元バリアを破壊した。

 

けれど、その代償にアリスも倒れてしまう。

 

 ――さて、船医としての役目を果たしますか。

 

思うに、先生がウトナピシュティムの本船でのダメージをアリスの代わりに背負えたのは、先生の子どもの責任や辛いことは、大人が背負うっていう心延えがあったからじゃないだろうか。

 

だから、俺なら――彼女から『お姉ちゃん』を託された俺なら、アリスの代償を背負うことができる。

だって、お姉ちゃんは妹のワガママを叶える為に在るんだから。

 

「…我々は望む、七つの悲劇を。…我々は覚えている、七つの祈りを」

 

彼女から託されたパスワードを唱えると、体が鉛になったように重くなる。

遠ざかって行く意識の中、脳裏をよぎるのは前の世界での記憶。

走馬灯を見るのはこれで二度目だ。

 

なあ、元気か? カナエ。

お兄ちゃん、今はお姉ちゃんやってるよ。

なにそれって思うだろ? そっち行ったら説明するからさ。

もうちょっとだけ待っててくれよ。

すぐにそっち行って、叶えてやれなかったワガママ全部、叶えてやるからさ。




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