ハンドラーウォルター。私は幸せでした。
どうか覚えていてください。私の…私達の記録を。

※AC6のストーリートレーラーに至るまでのハウンズ達の最後の戦いの日々を描いてみよう…という作品の予定です。
なおハウンズは全員銀髪ロリ美少女です。

タイトルに(仮)とあるようにお試し投稿です。
本格的に書き始めたらタイトルや投稿した話の内容を変更する場合があります。

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幸せな記憶

これは私が幸せに死ぬまでの物語。

 

 

眼前には擱座したカタフラクト。

619と620も逝ってしまった。

身体中が痛い。

私の肉体の痛みに加えて…壊れかけたCPUがACの損傷を痛みとして知覚させている。

「腕部破損」「スタビライザー損傷」「腕部武器:使用不能」…ACから無数のアラート。

視野の隅のクロックが刻々と残り時間を伝えてくる。

間もなく、ハンドラーウォルターの船がこの星の軌道を通過する。

その前にあの砲台を潰さないと。

焼け焦げた機体を起こす。

 

『ターゲット情報更新。パターンE』

 

機械音が告げる。

砲台へと接近し、アサルトアーマーを放って離脱せよ。

ハンドラーウォルターが事前に入力してくれた指示。

でもあの砲台はそれでは潰せない。

 

大丈夫。私が。私達が貴方をルビコンに連れていく。

でも…その代わり私達を覚えていて。

 

────────────

 

 

 

──────────

 

 

 

────────

 

MEMORY01【幸せな記憶】

 

 

「617…お前に意味を与えてやる」

 

ハンドラーウォルター。

目覚める度に貴方の声を思い出す。

私が無意味な肉塊ではないと教えてくれた声を。

 

『メインシステム戦闘モード起動』

 

事前に設定された戦闘開始時刻に合わせてシステムが私の身体を機体とリンクさせる。

決して汚されぬ私の本当の身体。

私の脆い、薄汚れた肉体から離れて、すべすべとした完璧な身体に。

堅固な装甲が私の皮膚に。

働き者の動力系が私の筋肉に。

そしてセンサー類が私の眼、耳、鼻となる。

 

ヘリに懸架された機体を流れる空気が快い。

視界が眼下の凍り付いた地表を捉える。

人間の眼では何も見えない漆黒の闇もセンサーと一体になった私の眼には”見える”。

視野の一部に矢印が表示され、ズームされる。

 

目標。

惑星封鎖機構の観測基地。

 

本来なら探知されていてもおかしくない距離だが、基地は眠り込んだかのように動きがない。

念のためにセンサーを切りかえてチェックするが敵のレーダー波の走査パターンにも変化はない。

ジャミングが正常に機能しているのだろう。

 

当然。

ウォルターのやる事に間違いはないのだから。

誇りを胸に襲撃手順を復習しようとして…

 

「リーダー…遅いよ。いつまで寝てんの」

 

618からの通信が飛び込む。

ちょっと不機嫌そうな少女の声。

 

「貴方も同じ時間に起きたはずでしょう?」

「こっちはちょっと前から起きてた。兵装のチェックも完了済み。619のミサイルの照準調整までやったんだから。…だよね619?」

「は…はい!事前データとの誤差は僅かでした…!私が皆さんの道を開きます!」

 

少し気弱そうな儚げな少女の声が618に答える。

619は経験が浅いので、ミサイルによる支援を担当してもらう事になっている。

彼女の攻撃で、敵の通信設備と対空砲を破壊して私達が突入する…そういう筋書きだ。

その重責を感じているのか、619の声は上ずっていた。

しかし、618が手伝ったのなら大丈夫だろう。

微笑んで、彼女を安心させるために声をかける。

 

「そう。ご苦労様でした618。619もそんなに気負わないで大丈夫ですよ」

「ふん…619がとちったら死ぬのは私なんだけど?」

「あう…」

 

さらに不機嫌になる618に、萎縮したような声を出す619。

618をたしなめようと思った時、活発な少女の声が割り込んできた。

 

「まあまあ618~。617に構ってもらいたいからって新人イジメは良くないよ~?」

「はあ!?…私は617みたいな死にたがりじゃないだけ。私はみんなで生きて戻…」

「さっすが~仲間思いですなあ!618は。愛を感じる~!」

「620!わ、私…頑張りますから!」

「620うっさい!619も間に受けんな!」

 

これでハウンズ。私の家族全員がそろった。

彼女達の姦しいやり取りを愛おしく思いながら、それぞれの機体データをチェックする。

…それにしても。618にも困ったものだ。

私は死にたがりじゃない。意味がある死に方をしたいだけ。

あの空の無いスラムで腐り果てていくのも、ACから引きずり降ろされて冷凍睡眠の暗闇と冷気の中で朽ちていくのも嫌。

私の死に場所はこの機体の中。

戦いの果てに燃え尽きたい。

それに…貴方達とウォルターが居てくれるから、私は生きていたい。

 

そんな事を考えているとチェックが全て終了した事を伝える酸っぱい味が舌に走る。

全機異常なし。

それを確認してからコーラル通信からヘリとの有線通信に切り替える。

 

「ハンドラーウォルター、ハウンズ作戦準備完了。いつでも大丈夫です」

「了解した。作戦に変更はない。…お前達にはルビコンでも仕事がある。無事に戻ってこい」

 

ウォルターの深く落ち着いた声が戦闘前の昂りを静めてくれる。

貴方のために勝利を。

 

それから最後にウォルターに呼びかける。

 

「ハンドラーウォルター。貴方も作戦通りに動いてください。前みたいに限界まで支援しようとしないで。私達の帰る場所が無くなったら困ります」

「……わかった」

 

そして通信が切れる。

その余韻を少しだけ楽しんで…

じゃれあいを続けている618達に先ほどのやり取りを共有する。

騒がしかった彼女達が静かになり…作戦開始時刻が迫る。

 

「降下地点まで後1分。カウントダウン開始」

 

618が静かに告げる。

 

「依然として敵基地に動き…ありません!」

 

619の声。先ほどよりは緊張がとれているようだ。

 

「降下地点まで30秒。リーダー?」

「作戦決行です」

「ラジャー!待ちきれないね!」

「…了解。降下まで5…4…3…2…1…ゼロ」

 

機体とヘリとの接続が解除され、重力に従って落ちていく。

 

高度がぐんぐんと下がり、加速度が上がっていく。

眼下の地表が迫ってくるが…まだブースターを起動するわけにはいかない。

ACのアサルトブーストの光は遠くからでも目立つ。

ヘリが…ウォルターが離脱してからでなくては。

 

予定通り、ヘリが反転して去っていくのを”感じる”

ステルス塗装を施されたヘリはジャミングと相まって、瞬く間に感知できなくなった。

 

「ハウンズ。ミッション開始」

 

私が全員に告げる。

その瞬間、全機がアサルトブーストを起動する。

619はミサイルを射出するために急速上昇。

それ以外は低高度で敵地へと接近する。

 

「ジャミング圏外になる!早く撃って619!」

「まだ予定高度に到達していません。もう少し待ちなさい」

 

618が押し殺した声で囁くのをたしなめる。

 

「う…撃ちます!」

 

予定高度に達した619がミサイルを射出。

基地へ向けて、無数の白煙が伸びていき…そして爆炎の花を咲かせた。

あちこちでライトが点灯し、動きがあわただしくなる。

センサで見ると無数の反応。

基地の守備隊が防衛体制を整えようとしているらしい。

だが、遅すぎる。

 

『コード15!敵はAC1機だ!対空戦…』

「邪魔!!」

 

619を迎撃しようとしたMTを618が蹴り飛ばす。

哀れにもMTは滑走路を転がり…もの言わぬ鉄塊となった。

618はそのままの勢いで、滑走路に着地。

火花をあげながら滑走し巧みにライフルで619が撃ち漏らした対空砲をつぶしていく。

迎撃する対空砲と残骸から上がる炎で空が染め上げられていく。

私も619と618のこじ開けた死角を縫って接近する。

 

『コード5!ACが2機…いや3機!!何なんだこいつらは!』

『囲め!所詮AC!先に降りてきたやつから潰すんだ!』

 

「…リーダー?私潰されちゃうみたいだけど?」

「可愛い私の家族をつぶさせはしません」

 

アサルトブーストを切って、そのままの勢いで私も着地。両腕に装備されたガトリング砲を起動する。

618を取り囲む無数のMTをロックオン。

斉射。

MTが次々と致命部を撃ちぬかれて爆散する。

視野の片隅で残弾数が猛烈なスピードで減っていく。

そのまま機体を回転させて基地施設、敵MTを薙ぎ払う。

弾丸が着弾し、敵の機体が爆ぜるたびに安堵の気持ちが沸き上がる。

それは救済の火だから。

 

私のように半端に生き残って辛い思いをする人がいないように。

あの暗闇と冷たさを感じなくて済むように。

戦いの中できちんと殺してあげなくては。

そんな祈りを込めて引き金を引き続ける。

 

数秒後には私の周囲には無数のMTの残骸と完全に破壊された施設の残骸しかなくなった。

 

「いやー私の出番はなかったみたいですな~皆の者大儀であった!」

「す…すごいです!」

 

そんなふざけた声を上げながら619を護衛した620が降りてくる。

619は基地の惨状に驚きの声を上げておっかなびっくり着地した。

619には少しでも早く慣れてもらわないといけませんね。

そんな事を思いながらセンサをチェックする。

…微かな振動が伝わってくる。

地下?

 

「リーダー!…まだ終わってない。来るよ」

「ええ…地下施設があったみたいですね」

 

前方で土煙があがり、轟音とともに人型の敵機が現れる。

私達のACよりやや大きい。

惑星封鎖機構のHEAVY CAVALRYか。

汎用性を捨てた分精悍な印象を受ける。

出力も武装も私達のACよりも強力だ。

 

『コード31C。増援要請!ハウンズか…惑星封鎖に仇なす犬どもが…!死んでいった部下に地獄で詫びるといい!』

「喜んでください。あなたの部下は皆…戦いの中で死んでいきました」

『この狂人が!』

 

その言葉とともに右腕のレーザーブレードともに突っ込んでくるのを618がブレードで受け止める。

速い…!

そのスピードに舌を巻く。

そして、ブレードの出力も大きいようで618がじわじわと押されている。

でも、単騎では。

私が回り込んでバルカン砲を構える。

斉射。

咄嗟にHCは左腕の盾で受けるが、私の弾丸に削られていく。

 

「私を忘れてもらったら困るなあ…こういう時のための私なんだよ!」

 

619が2丁拳銃でHCを狙い撃つ。

腕の関節部、メインカメラ、パルスキャノン。

脆弱な部分に火花が散る。

 

『クソ!増援はまだか!』

 

ブレードで、618を押しやって距離を取ろうとするHC機体。

だが…

 

「私だって…!」

 

跳躍した619がミサイルを射出。

何とかHCがパルスキャノンで迎撃。ミサイルが空中で爆発する。

でもそれは、大きすぎる隙だった。

618と私がアサルトブーストで突進。

618のブレードが敵HCの盾を構えた左手を斬り飛ばす。

私は苦し紛れに振るわれたブレードを回避。

敵HCのコクピットにガトリング砲を押し当てる。

 

『あの…呪われた星で何をしようというのだ…』

「さようなら。…貴方の勇敢さに最大限の敬意を」

 

そのままガトリング砲を連射する。

コクピットに無数の弾丸が爆ぜ…HCが沈黙する。

ミッション完了。

 

秘匿通信でウォルターに連絡を取る。

やがてヘリのローター音が近づいてきた。

 

「よくやった…任務終了だ。これで…ルビコンへの道が出来た」

「やったね!619も頑張ったじゃん!」

「はい…ありがとうございます!」

 

喜び合う620と619。

私もヘリに乗り込もうとして…618がHCの残骸を眺めている事に気づきました。

彼女は色々な事に気がつく一方で気にしすぎるところがありますから。

 

「どうかしましたか?618」

「呪われた星…か。ルビコンには何があるんだろうね」

 

彼女のどこか不安そうな声に少し呆れを覚えると同時に優しい気持ちになります。

だって…当たり前の事ですから。

 

「決まっているでしょう?私達の幸せです」

 

そう。ハンドラーウォルターが私達を導いてくれる。

彼が私達を幸せにしてくれます。

だから私達はただ従えばいいのです。

 

 

 

 




冒頭部分だけ書けたので需要があれば続きも書いてみようかと思っています。
本格的に書き始めたらこの1話は大幅に書き直す事もあるかもしれません。

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