黙らんし喋る 作:ヒヨコスキー
「――ん、む……」
トントンと繰り返す小刻みな音に、意識がまどろみの中から引き上げられていく。
重い瞼をゆっくりと持ち上げると、良い匂いが鼻先をくすぐった。
「……何時だろ」
がさごそとブランケットにくるまったまま頭の上あたりを手で探るが、目覚まし時計がどこにもない。
少しぼーっと考えて、そういえばソファで寝てしまったんだっけと昨日のことを思い出した。
「、……どこ……」
一緒に寝ていた人物の姿を探してゆっくりと体を起こした。……なぜそう思ったのかは分からなかったが。
頭の上からブランケットがずり落ち、陽の光で視界が一瞬白く染まる。
反射的にぎゅっと目を閉じ――それから何度かまばたきをして、目を明るさに慣らしていく。黒緑色のまつ毛の向こうで、ピンボケした世界がゆっくりと鮮明になっていく。
「いい天気ー……」
少しだけ開いた窓の隙間から、部屋の中にそよそよと優しい風が吹き込んでいた。
揺れる乳白色のカーテンの波を寝ぼけ眼で追いながら、こんなの少し前までのアビドスは考えられなかったことだと、ベランダに積もった砂を毎日掃いては捨てていた頃を思い出して少女は笑う。
そんな風に寝起きの心地よいまどろみに浸っていると、台所の方からひょっこりと探していた人物が姿を現した。彼女は自分に気付くなり、エプロンを揺らして薄く微笑む。
「起きました? ユメ先輩」
「うん……なんかめっちゃいい匂いするー……」
「今日は昨日商店街で貰った野菜を使った味噌汁を作りました。あとはいつも通り炊き立てのご飯と、それからお豆腐ですね」
「お豆腐……あれ、日曜日D.U.に行った時お豆腐なんて買ってたっけ……」
「朝の散歩の帰りにたまたまあそこのお豆腐屋さんと会って貰ったんです。
この前荷物運びした時のお礼だって――せっかくなので新鮮なうちに食べちゃおうと思って」
「えー、ありがたいねー……」
「もう出来ちゃうので座っててください。あ、飲み物いりますか?」
「麦茶ー……」
「わかりました、ちょっと待っててくださいね――」
コンロの火を止めて冷蔵庫の方へぺたぺた歩いていくホシノ。その背を見送ってまどろんでいると、すぐに麦茶入りのコップがユメの目の前に置かれた。
コップの表面に水滴のつくぐらい冷やされたそれをちびちび飲みながら、麦茶を取るついでに冷蔵庫から取り出して来たらしい豆腐の入った容器を見てユメはぽつりと呟く。
「……、木綿?」
「はい。でもユメ先輩のは絹ごしだから安心して下さい。ユメ先輩から見て奥の方ですね……ほら、こっちの方。たしか絹ごしのほうが好きでしたよね?」
「うんー……まぁ、そんなに気にはしないけど、絹ごしの方が大好きだから嬉しい……」
「良かったです。あとちょっとなので待っててくださいね」
「はーい……」
そう言って台所に戻ったホシノは、宣言通り素早く豆腐の調理を済ませた。
湯通しを済ませ、それをまな板の上で大きめに切り分け、皿に乗せ、それから好きな薬味を好きなだけ載せ――。
「ユメ先輩はいつも通りネギと鰹節でよかったですか?」
「うんー……」
「分かりました、他にのせたいものがあったらあとからでも言ってくださいね」
「うんー……」
「……一足す一は」
「うんー……」
「……あの、私のこと好きですか」
「うんー……」
「…………………………、もっかいお願いします」
「うんー……」
「録音しとくか……」
「うんー……」
そんなやりとりを挟みつつ完成したそれを二皿テーブルに置き、エプロンの紐をほどいて畳みながらホシノもユメの隣に座った。
「じゃあちゃきちゃき食べちゃいましょう。
……あ、朝ドラは電車の中で見ましょう。一応番組表で予約もしておきましたから」
「――ニャン美!?」
「うわ何ですか急に」
「いやなんか急に眼がさめて……え、あ、録画してもらえてるならいいや……」
「録ッ……あの、もしかして覚えてます?」
「え、何を?」
「いやーうへへへ覚えてないならいいんですけどね!?」
「……?」
「「――いただきます」」
炊き立ての白飯に温かい味噌汁、そして薬味たっぷりの豆腐の三点セット。
一口頬張れば、それだけで幸せになる品揃え。
それらを前にして、ふと思ったことをユメは呟くのだった。
「……いやなんか、逆。逆じゃないかなぁ」
「? 何がですか?」
「いや、なんでもないよぉ……実際私が料理するの危ないし……というかいろいろな問題を差し引いても私ぶきっちょで料理下手だしぃ……うえーん……」
もちゃもちゃと美味しいご飯を頬張りながらユメはほろりと涙を流す。
当たり前だが突発的に腕が動かなくなるような人間を台所に立たせるわけにはいかないので、この家の料理担当はホシノだった。
それはそれとして年上、あるいは先輩としての威厳とかゼロだった。
※
時間は少し経過し、アビドス高校別館――現在の本校舎にて。
体育館の扉を開ける少女たちの姿があった。
「シロコちゃーん、シーローコーちゃーん! いますか~~?」
「シロコせんぱーい! いるなら返事してー!」
――アビドス別館:体育館は完全に砂狼シロコのテリトリーである。
外から見れば一見普通の体育館に見えるその施設は、しかしその内部に体育館の面影はとうにない。
ワックスで磨き上げられたつやつやの床にはランニングマシーンをはじめとするミレニアムサイエンススクール:トレーニング部より提供された型落ちのトレーニング用器具が整然と並べられており、その品ぞろえによって、もはや体育館と言うよりスポーツジムのような見た目と化していた。
しかしセリカがそれより驚いたのはこの体育館に地下空間が存在するということだ。
半年以上前にシロコと意気投合したエンジニア部が総出でやって来て、気付けば地下三階まで拡張されていた――とはホシノの談である。
そこに本格的な開発施設が広がっている。セリカも何度か入ったことがあるが、エンジニア部との提携によって最新鋭の機器が定期的に搬入されており、そこでシロコは放課後にドローン開発を行っている。
“暁のホルス”――小鳥遊ホシノの入学以降アビドスの治安は徐々に向上していったが、一年ほど前から劇的にアビドスにおける傷害事件の件数が減っていった背景には、シロコが作った警備用ドローンの導入があった。
“だから間違いなく凄い人、なんだけど……”
その実績に対して人格がなぁ――とセリカは肩を落とす。
その最たる例が、入学してすぐに起こったこの出来事である。
『――しっ、シロコ、先輩……! こ、これ、机の上に、置きっぱなしでしたよ……はぁ……はぁ……』
『え? ――あぁ、ありがとう。助かる』
『……というかこれ、何ですか……? 電卓……?』
教室を出ていったシロコの机の上に電卓のような機械が置いてあったので、忘れ物かと思いセリカがそれを手にシロコを追いかけた。
しかし三階の窓から飛び降りて体育館に向かったシロコにセリカが追いつけるはずもなく。更にヘッドフォンを嵌めていて窓から身を乗り出して叫ぶセリカにも気付かなかったシロコが自分を追いかけて息も絶え絶えになっているセリカに気が付いたのは、結局体育館の地下二階に下りるためのリフト前であった。
電卓にハサミが付いたような造形のそれをシロコは受け取りながらこう言った。
『ピッキングツールだよ』
『……ピッ、え、なんて?』
『ピッキングツール。銀行の電子錠を解除するときとかに使う。ここからコード伸ばして……あ、ハサミは線を切る用のやつ。電子制御でタイミング良く切らないといけなくて』
『いや単語の意味とか使い方が分からないんじゃなくて、なんでそんなものを……目的は……?』
『ん。銀行を襲う』
『(絶句)』
その後ユメ・ホシノ・ノノミから「そういう妄想をするのが好き」という説明を受けたセリカだったが、未だに「まさか……?」と脳裏を過る瞬間は多い。銀行の前を通る時かならず立ち止まるし、そもそもピッキングツールを持ち歩いていて妄想で済ませるのは無理がある。
というかシロコがあの時セリカに気付いて頭から外したヘッドフォンからは、明らかに何らかの無線の音声が聞こえていた。
まさかヴァルキューレの無線を傍受してたとかじゃないわよね――と、その日寝る前に思い出して不穏な気持ちになったセリカであった。
「というかいつ来てもとんでもないところね……主に外観と中身のギャップが」
「そうですね~☆ でも、シロコちゃんらしくていいと思います!」
「え?」
「外観と中身のギャップがあるよね、という意味です☆
――シロコちゃーん、一体どこにいるんですかー?」
「いるよ」
「「ウワーッ!?!?」」
バカン! と唐突に床下からハッチを開いて現れたシロコ。
驚いてズザァ! とその場に尻餅をつく二人。
この間一秒足らずであった。
「からくり屋敷じゃないのよ体育館はーッ!!」
「え、なんかゴメン……」
「び、びっくりしました……というか腰が抜けました」
「――あ、ちょっとまって」
タンクトップに下だけ作業着、という施設に籠っている時の格好のシロコがハッチの奥に引っ込んでいく。
それから一分も経たず、今度はちゃんとリフトを使って一階に上がって来たシロコの手には、何やら妙なものが握られていた。腰に巻き付けるサポーターのようなものに、アメンボのような細い足が四本等間隔でくっついているようなデザインだ。
ちなみに足はうにゃうにゃと不規則に動いていた。
「うわっなにそれキモッ!」
瞬時に拒絶反応を見せたセリカに対し、ノノミはタコのように蠢くそれをしばらく観察した後、得心がいったようにぽんと手を合わせながらこう言った。
「あ、それってもしかしてユメ先輩のリハビリに使ってた歩行補助機ですか?」
「ん。結局一週間ぐらいしか使わなかったけど。使う?」
「いいんですか? じゃあちょっとだけ……ユメ先輩が使っていたので言い出せませんでしたけど、面白そうだったので私も使ってみたかったんです☆」
その場に座り込んだままくるんと半回転し、背を向けたノノミの後ろから手を回すような格好でシロコは歩行補助機を取り付けていった。そしてスイッチを入れるなり四つ足は地面を捉え、ぐんとノノミを立ち上がらせる。
「おお~☆ ほとんど脱力しているのに、すごく安定感がありますね☆」
「すご、こんな細い金属の足で人の体って支えられるんだ……」
「ん、これはミレニアムのコンペに行った時に構造科学部ってところが発表してた技術を使った製品で、細い金属を編む様に組み合わせることで剛性と柔軟性を両立させている。
編むのに予算と時間がかかりすぎるっていう理由で量産には踏み切れなかったらしいけど、必要としている人がいるって話をしたらデータ取りに協力することを条件に譲ってくれた。win-winの関係」
「相変わらず何言ってるかわかんないけど、ほんとミレニアムってすごいわよね……確か体育館の器具って全部そこから流して貰ったんだっけ?」
「ん。スミレは型落ち品を安値で流して部費にしているだけだって言ってるけど、ミレニアムの型落ち品は他学区基準で言えば二世代先だから十分過ぎるスペック。一部置き切れないものは分解してドローンのメンテとかに使えもする」
無表情――のように見えてふんすふんすと鼻息荒く語るシロコにちょっとセリカはほんわかする。
外面は無表情で分かり辛いように感じるが、ノノミが先ほど言っていたとおりで、内面では様々な強い感情が渦巻いているらしい。気持ちを表に出し過ぎるきらいがある自分と少し共通点を感じ、セリカは少しシロコという少女のことを理解出来た様な、あるいは心の距離が縮まったような、そんな感覚に陥った。
「ちなみにそれにはちょっとした改良を加えている」
「そうなんですか?」
「横にボタンを付けた」
「押すとどうなるの?」
「爆発する」
「いやなんでよ!!」
共感していたのに! セリカはすぐにその気持ちを放り投げた。
そしてノノミもすぐさま腰のアイテムを外してその辺に放り投げた。
抜けた腰は一周回って元通りになったらしいが、別の理由でがくがくと腰、というか足を震わせている。
「歩行の妨げでしかないでしょそんなもん!」
「シロコちゃん。な、なんでそんな機能を……?」
「ん、もともとはユメの発案。爆発で加速すれば有事の際に危険区域から離脱できる……という提案を採用した。今までは私の技術力不足とホシノの猛反対で実現できなかったけど、つい最近技術力の方がなんとかなったからホシノに内緒でこっそり作ってみたの」
「技術力は足りてても倫理観が不足してんじゃないのよ!」
「あとそれで大丈夫なのはユメさんだけだと思います……」
「……それもそう。分かった、爆発モジュールは取り除いて適当なものに付けておこう。
例えばあそこにあるバーベル。
持ち上げている時間が三十秒以下だと爆発するというスリリングな体験が可能に――」
「スリルっていうかリスクじゃないのよ!」
「と、トレーニングって健康のためにするものなんじゃ……?」
閑話休題。
「――っていうか本題! ノノミ先輩!」
「え? ――あ、ごめんなさいセリカちゃん、すっかり忘れちゃってましたね。
えーっと、タブレットは……」
――アビドス生徒会:外交担当である十六夜ノノミは自身の鞄から最新機器のタブレット端末を取り出すと、そこに一件のメールを表示させた。
「昨日の定例でも話題に挙げた通りで、私のメールアドレスのうち、他学区とのやりとりに使っているもの――“アビドス生徒会”の窓口に、昨日の朝方にメールが届いていました。
差出人は連邦捜査部シャーレの“先生”――」
「……?」
「うわ、話聞いてなさそうな反応……」
「いや、ドローン弄ってたから……」
「理由になってないわよ!?」
「ごめん。……というか誰? それ」
「シロコちゃんあんまりニュースを見ないですもんね……それにサンクトゥムタワーの一件は、ある程度固有でインフラをまかなえているアビドスにはさほどダメージが無かったですから。
ある意味で一度半崩壊状態になっていたことがあの時は功を奏しました」
「で、その人はメールでなんて言ってたの?」
「簡単に言うと、今日ここにお見えになります♠」
「用件は?」
「色々と書いてはありますが、要約すれば視察です。百鬼夜行など大きな学園を一つ一つ巡っていることがSNSの目撃情報から確認できるのでその一環かな、と思います。
こちらとしてもここ数日特段ほかのアポイントメントはなかったので、断る理由もありませんでした。
……それで、ここからが本題です」
「ん、何?」
「この人、
「……、マジ?」
「ちょっと前にアビドス駅にいたことはユメ先輩とホシノ先輩経由でヒカリとノゾミに確認できてる。でも
実際、新アビドス駅の防犯カメラには映ってなかった」
「新アビドス駅に来ておらずアビドス駅での目撃情報があるということは、大まかに可能性は2パターンです。一つは何らかの事情で視察を止めて帰られた。でもそれなら、事前のアポイントメントと同様に先生から連絡が来るはずです。であれば可能性としては――」
「……ん、何かに巻き込まれたと考えるのが自然」
「ちなみにアビドス駅で電車からお降りになられたのは一時間ほど前で、その後は消息不明だそうです♣」
「だからシロコ先輩のドローン網で捜索して欲しいの! 連邦捜査部シャーレのフィクサーその人がアビドス区域内で害されたなんて、こっちの責任問題に生じかねない! あと普通に心配だし!」
「セリカは優しいね。………………ん、それならもっと早い手段がある」
ややあって、シロコはそう言いながら懐から一つの端末を取り出した。
3Dプリンターで造形したらしいざらざらした質感のそれは、銃身のない銃のような見た目をしている。
――その引金を引くと、体育館の中に警告音が響き渡った。
壁についている真っ赤な警告灯がぐるぐると回転しながら光り輝く。
それに対して驚きもせず、セリカは真横のノノミに耳打ちした。
「……あの、ノノミ先輩。これめっちゃお金かかるんじゃなかったっけ」
「一回の出撃にかかる費用が大体ひと月分の返済額に相当します☆
会計のシロコちゃんが一番悲しいと思いますけど――」
「ん。人命には代えられない……というかあとでシャーレに請求する!」
若干涙目になっているシロコの前方、不自然にトレーニング用器具が置かれていない体育館中央の床が左右にスライドするように開いていき、そこからリフトに乗ったソレが上昇して来る。
それは継ぎ目のない立方体だった。
しかしリフトの停止と共に煙を上げながら立方体は展開し、一瞬でシロコの決戦兵器と化す。
ガコン、という音が三人の頭上で響いた。見上げれば、体育館の天井の一部が左右に開いていくのが見える。
空中に投影された緑色のガイドビーコンは、天へ向かって伸びる滑走路のようだった。
「――」
作業着の下を脱いでスパッツにタンクトップと言う姿になったシロコは決戦兵器に乗り込むと、数秒の動作確認を経た後に機体に備え付けてあるゴーグルを下ろして空を見上げた。
目の前に投影されたホログラムのスクリーン上に表示される機体のパラメータに問題がないことを確認し、足元のペダルを踏み込んでブースターを吹かしながら宣言する。
「ん。アビ・エシュフ・
体育館の上空へ一気に飛翔した青色の躯体は、そのまま砂漠方面へと飛び立っていった。
その場に残る赤と青の燐光。
耳の奥に残る轟音に圧倒されながら、セリカはぽつりと呟いた。
「……出る作品間違えてない?」
「ですね☆」
※
結論から言うと、当の本人である先生は、彼女達の想定する最悪の事態に巻き込まれたわけではなかった。
ただ、彼女たちの予想をはるかに下回る形で危機に瀕していたのだ。
時間はシロコ達がバタバタし始めるより小一時間前まで遡る。
※
『先生、先生。起きて下さい。電車の速度が0に固着。終点のようです』
――自分にしか聞こえない声がした。
“……ん、ぁ。あれ?”
その声で先生は我に返った。
頬にべたつく感触がする。どうも電車の中で寝ていたらしい――そう理解してから、先生は口元の涎をスーツの裾で拭きつつ慌てて立ち上がり、電車の躯体から外に出た。
――周囲には人の気配をあまり感じない、半ばまで砂に埋もれたゴーストタウンが広がっている。
かつての栄華の成れの果て――その向こう側で存在感を放つそれに、先生は思わず目を奪われた。
今立っている、駅のホームにまで影が伸びそうなその岩壁に。
“……あれが、防砂提”
『はい。防砂提――現アビドス高校生徒会長:梔子ユメがなんらかの手段を用いて地中の岩盤を地上へ引きずり上げたことによって作られたとされているものです。
しかし、これは公的な記録ではありません』
“え、そうなの?”
『はい、それはあくまでネットロア――都市伝説的なものです。
とはいえ公然の事実ではあり、状況証拠的にもそれが正しいというのが各学園の見解です。しかし当の梔子ユメ本人、並びに彼女を擁するアビドス生徒会がそれを否定しているため、連邦生徒会のデータベースにはただの自然現象として記録されています』
“……いろいろと事情があるみたいだね”
『一説によれば、アビドス砂漠の大部分の土地の権利者であるカイザーとのいざこざを避けるために――すみません、ネットワークから切断され、スタンドアローン状態に移行しました。データの取得が出来ません』
“? 電波が悪いのかな……いいよ、大丈夫。
で、ここからはどれくらい歩けばいいんだっけ?”
『朝の検索ログを参照……はい、
ただし――すみません、本機は現在ネットワークから切断され、スタンドアローン状態です。ルート案内が出来ません』
先生は
“そっか、十分ぐらいなら頑張って歩こうかな……いや、靴ぐらいはもっと動きやすいものに変えて来るべきだったかも。なんかもう砂がじゃりじゃりと……”
改札を抜け、ザクザクと砂地に踏み入りながら先生は胸元の大きなポケットにしまった端末を軽く叩く。
少し離れたところにある“砂漠横断鉄道”の乗り換え口には気付かずに。
“――それじゃあ行こうか、
『はい、先生』
“シッテムの箱”の中で、
※この後遭難します
お分かりかとおもいますがパラレル的要素を大量に含みます
正史においてアビドスは平たく言うとマイナスをゼロへ持っていくことを目標にしていますが、この話はゼロからプラスへの躍進がテーマです
・十六夜ノノミ
かつてユメとホシノに心を救われた少女。
アビドス高校二年、生徒会の外交担当。
ハイランダー学園からの留学生(という言葉がキヴォトスの学園間で使われるかは定かではないが)。ただしハイランダーの在学期間は諸事情により一月ほどで、当人に戻る気はない。
そのためシロコ・ノノミの年代の入学式は五月に執り行われた。
正史と異なりネフティスグループの代表候補としてアビドスに在籍している。
砂漠横断鉄道の縮小運行、並びに防砂提付近のアビドス郊外に“戦術対抗戦”アクティビティや個人・学園が借り受けられる訓練施設を設立するなど、砂漠化によって放棄された広大な土地を上手く転がして利益を得ている。
アビドスの借金はこの利益を元に月々の返済とは別ルートで相当額返済されており、セリカ・アヤネの在学中には完済予定(そのため借金により先生の助けを求める、というストーリーラインが潰れた)。
とはいえ借金を返すことはスタートラインでしかないと捉えており、その先のことも色々と考えている模様。