ダンジョン配信者「これは拙者が転生する前の話でござる……」「おーまずいね」 作:もちごはぼたん
セーヴが支度を終え、街に出てギルドの支部まで行くと、そこにヨミチはギルドがある建物の外壁に背中をつけて寄りかかって目を瞑っていた。
黒い着物のような服装で、腰に一本の剣を携えて立つ彼の姿は、何かの影であるかのようで、そこにあるのが当たり前のような姿で、まるで、ギルドの壁が完成した時からずっと存在していたようで。
セーヴがヨミチに話しかける時、まるで真っ暗な洞穴に話しかけるような気分だった。
「ヨミチ」
「……おお、セーヴ、待ってたでござるよ」
目を瞑っていたいたヨミチが闇夜のような瞳を開いた。
にこりとセーヴに向かって笑顔を向けたヨミチを見て、ようやくセーヴは、ヨミチが生きた人間なんだという感覚を覚えた。
「……いや、待たせてしまってすまない」
「気にするな、中に入ろう。あの男役員が待ってる」
「支部長ね」
「……もしかして、彼は偉いお方でござるか?」
「そうだな、それなりに偉いお方って事になるよ」
国を跨いで活動する冒険者のサポートを生業とする組織であるギルド。
1つの国に1つしか無いギルドの支部、その最高責任者のような人物なので、それなりの権力を持っているのも当然と言える。
「……どうしよう、支部長の前で刀を抜いても罪には問われぬよな?」
「お前何したの!!?」
呆れたようにため息を吐いたセーヴと、申し訳なさそうに困った顔をしたヨミチは、そのままギルドの中に入っていった。
「失礼します」
「ござるー」
「さっきまで自分の首が飛ばないか困ってた奴の挨拶じゃない」
支部長室にセーヴのしゃがれたような声が広がるように響いた。
部屋に入ったセーヴを見て、ギルドの支部長はにこやかな笑顔を向けた。
「やあセーヴくん……もしかして後ろに誰か居るのかい?」
「え? いや……え? どういうこと?」
「……セーヴ、心配はいらんでござる」
セーヴは
まるでセーヴ以外に見えていない幽霊のような男は、自分の服の懐を漁りながら話した。
「簡単に言うと、拙者は人に見えなくなる呪いを受けている……が今の拙者にはこれがある」
ヨミチは懐からくしゃくしゃになった白い布の塊を取り出した。
セーヴはその布にどこか既視感を感じ、支部長の男はああ、と声を漏らした。
「君は……確かヨミチくんか。無事にその布の魔術は効いているようだね」
「うむ、しっかり見えるようだな」
「支部長、ヨミチ……あの、それは?」
「お主が嫌がってたシャツだが?」
「あのふざけたやつ!?」
「あれに『見えるようにする魔術』を付与していたんだよセーヴくん、そこら辺にあったシャツに、応急処置としてつけたようなものだから、服のセンスについては彼を責めないでやってくれ」
「そこら辺にあんな変なシャツをぽいっと置かないで頂きたい」
まあまあ、と言いながら支部長は二つの紙を取り出し、セーヴとヨミチにそれぞれ渡した。
紙を見たセーヴは、兜の下で目を細めた。
「……あの支部長、これは?」
「ふむ……『ダンジョンタイムアタック』?」
ヨミチは紙に書かれた一文を、紙を見てもなお納得できていないような声色で、ぼそりとつぶやいた。