Vtuberの俺たちは他人同士になったけど、兄妹設定はやめられない。元義妹が今もお兄ちゃんと呼んでくれる件。   作:羽黒楓

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第32話 エロ動画じゃん!!

「さてこれから配信するけど、山本先輩?ちょっと聞きますけど」

 

 小南江(さなえ)と一緒に買い物に行った次の日。

 舞亜瑠は武士郎の家に来ていた。

 父親は不動産業なので、休日は家にいないことも多い。

 つまり、二人きりだった。

 まあ妹と二人だからといって武士郎は特に何も思っていない。

そもそもこの家はついこの間までこの妹――元義妹と普通に暮らしていた家なのだ。

 だけど、舞亜瑠は休みの日に馴染んだ家にいるというのにきちんとメイクまでしている。

 家にいるときはいつもはすっぴん丸眼鏡だったのな。

 武士郎にしてみればおかしな感覚だけど、祖母の家からここまでは電車に乗ってきているわけで、女子高生としてはちょっとした外出でも身なりには気を使うのが当然ではあった。

 ダボっとしたオーバーサイズのシャツにワークパンツ。髪の毛はなんだか一昨日より色が明るいような……? 昨日、母親と出かけたってのは美容室だったのかな?

 その舞亜瑠は形の良い眉をキリッと引き締め、顔をずずいっと武士郎に寄せて言った。

「ね、山本先輩。私の質問に答えてくださいね」

「なんだよ、俺んちに二人でいるのに敬語はこわいぞ……他に誰もいないんだから普通に話せ普通に……」

 

 武士郎を睨む舞亜瑠の目は怒っていた。

 なんなら、怒りに燃えていたと言ってもいい。

 

「山本先輩、昨日、小南江(さなえ)ちゃんと一緒に買い物行ったよね? ……行きましたよね?」

「あ、ああ……」

 

「何買ったの?」

「雑貨屋でなんかのキャラの限定品のグッズみたいなの買ってたぞ……」

 

「そ。で、ボディガードでついて行ったんだよね?」

「そうだな」

 

「じゃ、お店にまっすぐ行って買い物済ませたらまっすぐ帰ってきたんだよね? まさか一緒にご飯食べたりしてないよね?」

 

 そういわれてドキッとする武士郎。

 

「え? あ……だっておごるっていうから……」

 

「言われて素直に(おご)られてきたの!? なにそれ!? さなえちゃん、私に嘘ついてんじゃん! ちょっと山本先輩、スマホ見せてよ」

「なんだよ嫌だよ」

 

「昨日小南江(さなえ)ちゃんとツーショットでセルフィー取ったりしてないよね!? ってかさなえちゃんと変な感じになってないよね!? 確認するだけだから!」

「だめだって!」

 

「みーせーろー!!」

 

 舞亜瑠は武士郎に襲い掛かる。

 持っていたスマホをもぎ取ろうとするので、

 

「やめろ馬鹿!」

 

 抵抗するのだが、

 

「見せないってことはやっぱり見せらんないことしてるんでしょ!? 手を離せ〜〜

!!」

「待て待て待て!」

 

 スマホの取り合いで二人は取っ組み合う。

 とはいえ、武士郎は空手経験者で筋肉もそこそこある。こんな華奢な女子高生と力で負けるわけもないのだが、なんというかこう、舞亜瑠の身体の微妙なところに触りそうになるのでいまいち本気を出せない。

 

「お、に、い、ちゃ、ん~~! それよこせ〜!」

 

 くそ、女の子って腕細いなあ、折れちゃいそうだ、などと思っていると舞亜瑠は武士郎に身体ごとのしかかってきて、そのでっかい胸の膨らみがむにゅうっ! と武士郎の顔に押し付けられた。

 いい匂い、あったかい柔らかい、頭の中がほわ~んとした。

 

 いやいやいや妹だぞ妹、でも血の繋がりとかないわけで生物学的にはどうかなってもおかしくないわけで――。

 駄目だ駄目だ駄目だ!

 妹を守るべきお兄ちゃんの俺が変な気分になってたらそれはおかしいだろ!?

 

「わかったわかった、一回離れろ、な?」

 

 まあしかしよく考えたらスマホの中身くらい見られたってどうということもないということに武士郎は気づいたのだった。

 舞亜瑠に見られてやましいデータは何も入ってない、はずだ。

 

「わかったよ、中身くらい見せるよ」

「じゃあお兄ちゃんが操作して見せて。……よく考えたら人のスマホをいじるのは抵抗がある」

 

「だったら最初からスマホを奪おうとすんなよ……。ホント馬鹿だな。わかったわかった、LINEか? ほら、これがさなえとのやり取り。普通だろ?」

「写真とか動画のデータも見せて」

 

「これか?」

 

 一瞬、さなえが踊っている動画は見せちゃいけないかな、と思ったけど、それだって別にやましいことはない。

 

「なにこれ、さなえちゃんのTACTOK用の動画じゃん。これ全部そうなの? なんでお兄ちゃんが撮っているの?」

「いや頼まれたから……」

 動画ファイルの中身を見せながら言う。

 やましいことはないから問題ない。

 やましいことは……。

 

 水色の、トータルコーディネート。

 それを思い出した瞬間、武士郎は反射的にスマホを引っ込めようとしたが、間に合わなかった。

 回転する小南江(さなえ)、回転してぶわっと舞うスカート、丸見えの水色。

 

「エロ動画じゃん!!」

 

 舞亜瑠が悲鳴のような声で叫んだ。

 

「いやこれは違う、わざとじゃなくて」

「だったらこんなのすぐ消せばよかったじゃん!」

 

「いや忘れていて……」

「とか言って消すの忘れたことにして自分にそう言い聞かせて実は永久保存しようとしたんじゃないの?」

 

「そんなわけないって!」

「じゃあすぐ消して!」

 

「わかったよ、そんなに怒るなよ、何なんだよ……」

 

 舞亜瑠(まある)はほっぺたをぷっくり膨らませて、なんなら目に涙まで浮かべて、

 

「とにかくこういうの、嫌なの! 自分でもわかんないけど嫌なの!」

「わかった、これは消すよ、全方位に失礼だもんなこんな動画……。ほら消した」

「……じゃーもう、配信始めるからね! ……もーなんだよもーなんだよーお兄ちゃん馬鹿お兄ちゃん」

 

 

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