Vtuberの俺たちは他人同士になったけど、兄妹設定はやめられない。元義妹が今もお兄ちゃんと呼んでくれる件。 作:羽黒楓
武士郎の部屋。
そこにはローテーブルが置いてあり、配信用のパソコンモニターがある。
今日も舞亜瑠はふわふわ天然パーマをツインテールにまとめている。
オーバーサイズのパーカーを着て、リラックスした雰囲気。ニコニコとパソコンを操作している。
クロップド丈と言われるらしい、裾の短いタイプのトップスに、カーゴパンツをあわせている。
舞亜瑠もなんだけど、
ボリュームのある髪型の舞亜瑠とは違って、ショートカットの
まさに美少女コンビだな、と思った。
ちなみに星子はデニム生地のミニスカートにスタジャンをあわせたファッション。中に着ているシャツにはネクタイをして、スクールガール風だ。ま、実際女子高生だけど。
さらに言うと武士郎は着古した普通のジャージだった。
……ここは俺の家で、俺の部屋なんだから普段の部屋着で文句をいわれる筋合いはないぞ、と武士郎は思うのであった。
さて画面の中には二人の美少女アバターが並んでいる。
一人はもちろん、
そしてもうひとりは、紫髪の女の子だ。
この子が、
ちなみに値段は一万円ちょうど。
安いのにはワケがあって、量産品なのだ。同じアバターを使っている人は他に少なくとも十人はいる。
「まあ、そうは言っても中身で勝負すから!」
「でも
「え、なにが?」
「だって、センスがなんか……ちょっと」
「3日もかけてポチと相談して、かっこいい名前考えたんだよ! 絶対人気出るって!」
星子もうんうん、と頷いている。
そうかなあ、と武士郎も疑問に思うが、まあ女子高生のセンスに文句をつけると死刑というのが日本の法律なので黙っておく。
「……まあいいか、駄目だったら転生すればいいし……」
武士郎はそう呟いて、
「じゃ、スタートするぞ」
と言ってマウスのボタンをクリックした。
いつも通り、
「ちゃぷちゃぷー! みんな、元気にしてたー?」
〈ちゃぷちゃぷ〉
〈ちゃぷちゃぷー!〉
〈きょうもみずほちゃんはかわいいなあ〉
〈今日はコラボだって?〉
「そーでーす! 私のお友達がVtuberデビューすることになりましたー!」
〈おおおおお〉
〈楽しみ!〉
「さあ登場してもらいましょう! どうぞー!」
そして颯爽と画面に映し出される紫髪少女。
「……………………」
あげなかった。
「あれ、どうしたの、ほら、挨拶挨拶」
「あのー、もしもし? ……もしかして、緊張しちゃってる?」
コクンコクンと頷く
こいつ、カメラの前ではあんなに生き生きと踊っていたくせに、リアルタイム配信になるとめちゃくちゃ緊張するタイプじゃねえか。
武士郎はむしろおもしろくなってきたと思って、ニヤニヤと黙って見ている。
「もー! ほらほら、しゃべってしゃべって!」
「……りゅ……ん……え……です」
「え、なに、聞こえない」
「……りゅー、ん……えなです」
「きっこえなーい! ほら、もっと大きな声で!」
フェラーリなみの赤さだ。
身体も顔もガチコチに強張らせたまま、やっと
「臥竜院!! エナエナ!! です!!」
知っていた武士郎もぶほっと吹き出してしまった。
なにをどうするとそういう名前になるんだよ。
「はい、エナエナちゃんでーす! ええと、年はいくつ?」
「十……六……」
「ちがうでしょー! リアルの年齢言ってどうすんの! 7歳って設定で行くってあんなにはりきってたのに!」
星子まで吹き出してしまっている。
「え、ど、どうしよ、マル……」
肩でぐいっと
「あっぶなー!!!! この人、今私のリアルネーム言いそうになってたよ! やばい」
「あ、ごめ、あ、う、あ」
いやこれ配信として成り立ってるのか?
でもおもしろいからこのまま続けさせよう。
〈けっこうかわいい〉
〈緊張してる女の子かわいい〉
〈初回ならではのこの不慣れ感。いい〉
〈がんばれー〉
コメント欄はわりと好評だしな。
★
「もーいやっす。あんなに緊張するとは思ってなかったす。やっぱり私には向いてなかったす」
「いやいや案外よかったぞ? 今度俺の配信にも出てみるか?」
「やめておくっす。私はTAKTOK一本で行きます!」
そんなわけで、
一万円ですんでよかったなあ、と武士郎はしみじみ思うのであった。
「一万円あったらホテルに行けたのに……」
星子がぽつりと漏らした。
「高校生でホテルはやめておきなさい。で、お兄ちゃん」
「なんだよ」
「私たちもそろそろ、ホテル、行く? くふふ。ね、山本セーンパイ」
馬鹿なことを言っている元義妹にため息をつく武士郎。
こいつ、いつまで義妹と彼女の一人二役やるつもりなんだろうな。
外を眺めると、街路樹の葉っぱが黄色くなっているのが見えた。
ああ、もうじき秋だなあ。
いつまでもこんな時間が続けばいいのに、と武士郎は思うのであった。
お読みいただきありがとうございます!
「女体化するお前の能力は一族の恥だから出て行け!」と筋肉を愛する実家から追放された俺の童貞と処女をヤンデレ聖女が狙っている件
https://syosetu.org/novel/419005/
こちらもぜひよろしくお願いします!