幸せに満ちたキヴォトスを作り上げた転生先生と、取り零された1人の罪人   作:ムクロウ

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え〜
別の作品のモチベーションが著しく下がったので
書き始めました。
書きたい主人公が出来たはいいけど
新しく世界観を構築するのは面倒くさいので、
二次創作となっております。


vol.bug 廻り続ける糸車のダ・カーポ     第一章 "ブリキ人形" の噂
あまねく奇跡の終着点


 

「今日の犯罪係数は120%!

 お出かけの際は

 拳銃とグレネードの携帯はお忘れなく!」

 

「今日も平和だなぁ…」

 

私はそう呟いて、遠くから聞こえる銃声を他所に

マグカップを手に取る。

 

コーヒーを飲みながら、朝のニュースを見る。

ここシャーレに勤務してから、

今日まで欠かさず行っているルーティンだ。

 

「ふぅ…」

 

テレビを見ながらため息を吐く。

 

私は転生者だ。

ここキヴォトスは私が前世でやっていた

ブルーアーカイブの世界であり、

先生という主人公に転生した。

 

最初はとても怖かった。

銃弾一発で死ぬ体でキヴォトスだ。

どれだけ先の展開を知ってても、怖いものは怖い。

そして勇気を振り絞ってアビドスに行った時、

私は奇跡を目にした。

 

それを目にしてから、私は変わった。

自分の安全なんかより、

その奇跡によって

生まれた幸せを守りたいと思った。

 

必死に頑張って、頑張って、頑張って。

生徒のみんなを助けることが出来た。

…もう1人の私は、無理だったけれど

それでも、大団円と言えると思う。

 

エデン条約の時もなんとか

ミサイルの被害を最小限に出来て、

アリウススクワッドのみんなも

私のお腹に穴が空いていないので、

ギリギリ奉仕活動の名目で

ヴァルキューレで働けている。

 

クロコの行方はよく分からないけど、

各校の仲もそこそこ良くなってきているし、

どこかで暮らしてると思いたい。

たまに連絡は来るけど、

いまいち何してるかは知らないんだよね。

 

「…せ、先生?」

 

…都合が良過ぎると

思い始めたのはいつからだろう。

やることなすことが失敗せず、

誰も不幸せにならずに終わる。

そんなこと、ありえるのだろうか?

 

「聞いてますか?先生?」

 

もしかしたら私は重大な見落としを…

 

「先生!」

 

「のわぁっ!?」

 

大きな声を聞いてひっくり返る。

 

「もう、しっかりしてください!」

 

呆れたように今日の当番である

ユウカがこちらを見ている、

 

「まだ今日の分の仕事すら終わってないんですよ?

 このままじゃまた徹夜です!」

 

そんな言葉に苦笑する。

大きな問題を解決しても、

やっぱりキヴォトスは問題だらけだ。

でも、それは全然微笑ましい範囲だ。

だから私は働いている。

みんなが幸せに笑っているから、

身を粉にして良いと思える。

 

…この時私は慢心していたんだろう。

キヴォトスがどれだけ危ないバランスの上に

成り立っているのかをよく知っていたのに。

きっとなんとかなるという言葉は、

なんとかした人がいるから成り立つことを

この時の私はまだ知らなかった。

 

 

………………

 

 

ブラックマーケットの一角にて

 

「へへへ…ついに手に入れたぜ!」

 

「おい、あんま大きい声出すな」

 

「っとすまんすまん。つい、な?」

 

とある不良2人が、一つの本を囲んでいた。

 

「キヴォトスの闇に迫る!伝説の生徒集!」

 

「コイツを手に入れるのにどれだけの苦労が…!」

 

彼女らが囲んでいるのは、

キヴォトスでは現在禁書とされている本だ。

 

「早速読んでみようぜ!」

 

「おうよ!」

 

ページをめくる。

 

「これが名を残した奴ら…?」

 

「"暁のホルス" "超人" " 風紀委員長"

 "アリウススクワット" "魔女"…

 なんだよ知ってる奴らばっかじゃん」

 

「…だな、なんでこんなのが禁書…って

 誰だコイツ?」

 

「…"夜鷹"?夜鷹ってなんだ?」

 

「…知らね」

 

「他は知ってる奴らばっかだし…

 禁書の理由はコイツか…?」

 

「だけどこんな奴見たこt」

 

「…ん?おいどうしt」

 

…後には、彼女らの銃だけが残されていた。

 

 

………………

 

 

集中し、息を吐く。

まだ肌寒い季節故に白い吐息が後ろに流れる。

砂漠色のローブが旗めく。

 

「…」

 

スコープ越しにターゲットを確認する。

今回は戦車砲でパンを作らせなかったとかいう

ふざけた理由で立て籠ってる

テロリスト共のリーダーの狙撃依頼だ。

 

スコープの先では、

何か話しながらゲラゲラと笑い合う連中が見える。

どうせ立て籠もりが成功した時の話だろう。

警戒もせずにお気楽なことだ。

 

射角調整 自由落下によるズレ修正

風向き 右にやや強め

 

引き金に指を掛ける。狙いは定まった。

 

「…主の導きが在らんことを」

 

トリガー

AWM…サイレンサー付きスナイパーライフルは

超音速の弾丸を撃ち出し、

 

「グェッ!?」

 

「「「リーダー!?」」」

 

リーダー格の意識を刈り取る。

ライフルでヘッドショットを決められて

完全に無傷な奴はそういない。

完全に気絶したことを確認してから

耳に付けたインカムを起動する。

 

「こちら "ブリキ人形"、

 ターゲットの沈黙を確認。

 任務完了の為、これより撤収する」

 

「了解した。これより突入する。

 協力感謝する」

 

「報酬を支払ってくれればそれでいい。

 では、また」

 

そう言ってインカムを切り、

側に待機させておいたドローンを飛ばして

ヴァルキューレにインカムを届ける。

 

比較的平和になったとは言っても、

この都市はやはり人手不足だ。

 

傭兵の手を借りられるだけの予算があるだけ、

ヴァルキューレも安定してきてると言えるが

外部の人間を頼る時点で

あまりいい状況とも言えないだろう。

 

さて、次の依頼だ。

確か…

 

「ゲヘナ風紀委員会への攻撃だったかな」

 

 

………………

 

 

「"ブリキ人形"?玩具の名前でしょう?」

 

便利屋68の事務所にて、

ムツキが拾ってきた噂話を聞く面々。

 

「違うよアルちゃん、これはコードネーム。

 ようは仕事用の名前で、

 そう名乗ってるだけの人間の傭兵だよ」

 

「社長、案外そういう人は多いよ。

 本名でやってるウチの方がおかしい」

 

「わ、私は堂々と本名で戦うアル様は

 カッコイイと思います!」

 

「うーん、ハルカちゃん。

 そういうことじゃないと思うけど…

 まいっか!」

 

…ギャグ時空なのは変わらないらしい。

 

「そ、そうなのね!

 それでその人がどうかしたのかしら?」

 

「クフフ〜、それがね?

 その人が今有能な傭兵として

 名を挙げてるんだって!」

 

「うん、金さえ払えば

 どんな依頼も卒無くこなす傭兵って評判みたい」

 

「そ、それがどうかしたんですか?」

 

「ウチの強力なライバル登場ってこと」

 

「ななな、なぁんですってぇ〜!?」

 

そう、便利屋68とやってることは大差ない。

しかも段々業績を伸ばしている。

このままでは自分達の仕事が

奪われてしまう恐れがあるのだ。

 

「一大事じゃないっ!」

 

「そうだね〜、どうするアルちゃん?」

 

「どうするって…」

 

…どうすればいいの?

 

「…仕事を妨害するとか?」

 

「それはダメよ!

 そんなのは私が目指すアウトローじゃないわ!」

 

「じゃ、じゃあ依頼を

 もっと受けるとかどうでしょう?」

 

「それよ!」

 

「…依頼してくれる人は?」

 

「うぐっ…」

 

最近の業績は芳しくなく、

精々先生による助っ人の依頼くらいのものだ。

 

「ハァ…じゃあスカウトでもする?」

 

「スカウト?」

 

「ウチに入りませんかって」

 

「それよ!カヨコナイスアイデアだわ!」

 

「…えっ、本当にやるの?」

 

呆れ半分で言った言葉が採用され、

流石に動揺するカヨコ。

 

「もちろんよ!そんな優秀な人材が入れば、

 ウチも益々安泰だわ!」

 

「いいんじゃない?面白そうだし♪」

 

「流石です!アル様!」

 

「…そんな上手く行くかな」

 

「さぁ!そうと決まれば出発よ!」

 

そう言って外出しようとするアルにカヨコが一言。

 

「…その人どこにいるの?」

 

アルが固まる。

 

「…ムツキ?」

 

「私知らな〜い」

 

 

「…結局ダメじゃないの〜!」

 

 

………………

 

 

弾薬をコンビニで買い足した帰りに、

次の依頼について考える。

 

ゲヘナの風紀委員会は強大な組織だ。

恐らくこちらの存在はバレてると思った方がいい。

その上で作戦を立てるのは至難の技だ。

 

まず戦力の分析をしよう。

行政官と書記官は基本無視でいい。

裏方は雑兵を動かすことしか出来ない。

銀鏡イオリは戦闘力は中々だが、

戦略眼がない為 罠を張れば終わりだろう。

風紀委員長は………勝てる気がしないので、

適当に戦って撤退だ。

これだけでも相当被害を与えられるので、

クライアントも満足してくれるだろう。

 

問題はどう戦闘を仕掛けるかだ。

奇襲はまず無理となると狙撃は出来ない。

特定されて砲撃されるのがオチだろう。

後は接近戦だが…

 

「…この体でしたくないな」

 

俺は右腕と両脚の()()を見つめる。

マニュピレータ式*1の義肢が機械音を鳴らす。

便利ではあるのだが、

修理費がバカにならない上に

破壊されたら動けなくなるオマケ付きだ。

いくつかギミックも仕込んであるが、

使い捨て故にこれもコストが掛かる。

ぶっちゃけ割に合わない。

 

「…となるとゲリラ戦か」

 

腰にある愛銃を取り出す。

Rsh-12『ヴィヴァーチェ』

ライフル弾を装填する大型のリボルバーだ。

 

「…弾薬とワイヤー、グレネード。

 それさえあればゲリラには充分だ」

 

一発の弾丸を取り出し、それを眺める。

ふと、昔のことを思い出す。

 

『私と一緒に風紀委員会、やらない?』

 

「…悪いな、俺はそっちには行けない」

 

懐かしい思い出を振り切るように、

弾丸を装填する。

妙にその音が響いた気がするのは、

きっと俺が空っぽだからだろう。

 

 

………………

 

 

「すみません委員長。

 明日の予定で相談が…」

 

「あぁ、あの脅迫状の件ね」

 

風紀委員会本部にて、

アコとヒナが話している。

 

「はい、どうやらあちらは傭兵を雇うそうです」

 

「ふぅん…誰を雇ったの?」

 

「それが…最近名を挙げた傭兵でして…」

 

アコが渡した資料を読むヒナ。

 

「"ブリキ人形"…?

 しかもこれ…義肢?」

 

「はい、明らかなオーバーテクノロジーです。

 おそらくオーパーツの類かと」

 

「本名は…不明?」

 

「申し訳ありません…

 どう探っても個人情報が出てこず…」

 

「ううん、気にしないで。

 今から先生に連絡してみるわ」

 

早速電話を掛けるヒナ。

 

「あっ、先生。忙しい中ごめんなさい。

 実は"ブリキ人形"と呼ばれる生徒について

 何か知っているか聞きたいのだけれど…

 うん…そう…いえ、ありがとう。

 うん…またね…」

 

電話が終わったヒナはアコの方に向き直る。

 

「先生も知らないそうだから、

 未知数と考えたほうが良さそうね」

 

「そうですか…どうされますか?」

 

ヒナは少し考えて

 

「その人が出たら連絡して、私が出るわ」

 

「い、委員長自らお相手を!?」

 

「未知数なら一番強い私が出た方がいい、

 弱いならすぐ終わるし、

 強いなら結局私が戦うから」

 

「…分かりました。通達しておきます」

 

そして、ちょっとした雑談に移る。

 

「それにしても、キヴォトスで義肢なんて…

 何があったら手足を失うんでしょうか?」

 

「そうね…例えば…」

 

自分の経験を元にヒナが推測する。

 

「巡航ミサイルを真正面から生身で受け止める。

 とかしたら吹き飛ぶでしょうね」

 

 

………………

 

 

「グァッ!?」

 

「クソッ!?誰がやられ…」

 

「コイツら強…」

 

不良達が倒れていく。

 

「…状況終了、各員無事か」

 

「うん、大丈夫」

 

「死ぬかと思いました〜…」

 

「大袈裟すぎ」

 

アリウススクワッドの面々が集まる。

今はヴァルキューレ監視下で

治安維持活動中である。

 

「ここ最近は仕事も減ってきている。

 このまま先生の負担も減るといいが…」

 

「逆に増えそうだけど」

 

「焼肉が食べたいです〜」

 

「ヒヨリ、メッ」

 

色々と話しながらも、

後処理を終わらせるメンバー達。

 

「よし、撤収するぞ」

 

「…?ねぇリーダー」

 

「なんだ?どうかしたか?」

 

「誰かに見られてない?」

 

「ヴァルキューレの監視ならいつも通りだろう?」

 

「いや、そうじゃなくて…」

 

ミサキは少しイラつきながら

 

「こっちを見てる奴が2人いる。

 片方はヴァルキューレだけど、

 もう片方はそうじゃない」

 

「何…?」

 

周囲を警戒する4人だが、

一向に姿を見つけられない。

 

「…視線が消えた。逃げたね」

 

ミサキの一言で警戒態勢を解く。

 

「…なんだったんだ?一体」

 

「分からない…けど

 敵意は感じられなかった」

 

 

………………

 

 

「帰りに久しぶりに顔を見たから、

 少し観察してただけなんだがな…」

 

砂漠色のローブのフードを下げながら、

ビルの屋上でため息を吐く。

 

「随分と強くなってるな。アイツら」

 

思い返すは幼かったあの日。

俺達はまだまだガキで、いつもボロボロだった。

 

「幸せそうで良かった」

 

そう言って、歩き出す。

もう彼女らが空しいと思うことはないだろう。

 

世界は救われた。

皆が幸せそうに笑っている。

穴なんてたったの一つしかない。

なら、充分だろう?

 

「Vanitas vanitatum, et omnia vanitas」

 

世界の全てが空しいとしても、

それを知っているのは

 

「俺だけでいい」

 

少年は歩き続ける。

もう自分は物語の主人公になっていることに

彼自身は気づいていない。

 

空しいままでいられるほど

彼のしてきた行いは甘くも優しくもなく。

残酷なまでに彼を救おうと動く。

 

そのことに彼が気づくのはいつになるのか、

果たして気づくことはあるのだろうか…

*1
複雑な回路や機構をそのままの形で金属で覆った、少し太めのメカメカしい感じ




先生
転生者
この物語が始まる前の主人公。

最初はこの世界にビビっていたが、
アビドスの奇跡を見て立ち上がった救世主。

最近の悩みは全てが上手く行き過ぎていること。


本を見ていた不良達
いつの間にか気絶させられていた2人。
今は何故かヴァルキューレにぶち込まれている。


便利屋68
最近仕事がなくなってきて困っている。
主人公をスカウトしようとしている。


風紀委員会
最近仕事を割り振ることを委員長が覚えた。
それはそれとして強い奴は本人がやる。


アリウススクワッド
現在奉仕活動中。
なんだかんだ幸せそうに暮らしている。


???
今作の主人公

右腕と両脚が義肢になっており、
ギミックも仕込んである。

主武装はスナイパーライフル(今のところ)
愛銃は副武装の大型のリボルバー。
他にもグレネードやワイヤーを扱う。

最近名を挙げている傭兵"ブリキ人形"
過去にいくつかの生徒と関わりがあり、
それなのに姿を隠してるよく分からない人。

実はかなり業が深い。
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