幸せに満ちたキヴォトスを作り上げた転生先生と、取り零された1人の罪人   作:ムクロウ

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現代編も佳境に入ってきました。

それはそれとして現実が忙しくなってきた。


切り札と邂逅

 

義腕から火花が散る。

 

「キィヒヒヒヒャァァァアッ!」

 

「panzer!」

 

突っ込んできたツルギのショットガンを

すんでの所で蹴り飛ばす。

 

爆発

 

爆発反応装甲を起動して

ツルギを吹き飛ばして距離を作る。

 

「…逃がさない」

 

「ッ!」

 

ヒナの声、咄嗟に義腕の盾を翳す。

 

暴虐が盾を貫こうと襲いかかる。

 

「グッ‥!?」

 

あまりの衝撃に後退し始めるが、

盾だけは翳したままにして、

左手でワイヤーを伸ばす。

 

「キャッ!?」

 

ヒナの足にワイヤーを引っ掛け、

転ばせることで照準を逸らす。

 

それを見届けつつ走る。

これでもうこの手は使えなくなった。

次からは足元にも注意されるだろう。

 

「key!アイツらも

 無名の守護者で抑えられないのか!?」

 

『不可能です。

 彼女らに向かわせた個体は

 1秒とかからず破壊されます』

 

「バグみたいなことしやがって…!」

 

『昔のキトリの方がおかしいのでは?』

 

それはそう。

だが今は俺が苦しんでるので

存分に愚痴らせて貰おう。

 

ミカとヒナ、ツルギ以外のメンバーは

無名の守護者達への対処で手一杯だ。

それだけでありがたいと思っておこう。

 

「これならどうかな〜⭐︎」

 

「チッ!」

 

ミカからの射撃から逃れつつ

近くのビルに滑り込む。

 

「逃がさないよ〜⭐︎」

 

「待って!それは…」

 

爆発

 

ミカが入り込んだ瞬間

入り口の天井から外に滑り出し

内部に大量に置いておいた爆弾を起爆する。

 

「ゲホッゲホッ…酷いなぁもう!」

 

それなりのダメージってとこか

ノーダメじゃ無いだけ有情

でもこの手ももう使えない

 

「key!チャージはどれだけ進んだ!」

 

『System : Sodom's Flameのチャージは

 76%完了しています』

 

後少しか。

コレは時間経過でも貯まるが、

盾で受けた神秘を吸収して

変換することでも貯まっていく。

 

「なら仕上げだ…!」

 

3人の攻撃を捌きつつ、

ワイヤーを伸ばして空中に躍り出る。

 

「っ総員!一斉射撃!」

 

俺を確認したアコが指示を出す。

 

「っマズイ!アコ!射撃を辞めさせt」

 

もう遅い

 

「いい腕してるな風紀委員会!」

 

大量の弾丸がこちらに向かう。

それら全てを盾で受け止める。

 

ヒナやミカ、ツルギの攻撃だと

盾の方が耐えきれないが、

このくらいならいくらでも受けられる。

 

『チャージ完了 いつでも発動出来ます』

 

「よし!」

 

空中で義腕を元に戻し、

『ヴィヴァーチェ』をホルスターから抜く。

 

「起動しろ!key!」

 

『System : Sodom's Flame起動』

 

 

………………

 

 

地面に降り立ったキトリを警戒しながら、

トリニティの2人と包囲する。

 

容姿や義肢に大きな変化はないが、

明らかに先程までとは雰囲気が違う。

これはまるで…

 

(あの頃のキトリに戻ったような)

 

「…行くぜ?」

 

唐突にキトリの姿が掻き消え

背後から轟音が聞こえたと思ったら

 

「ァグッ!?」

 

後頭部に激痛、私がダメージを受けた!?

 

振り返るとキトリが壁面に着地しており

こちらには彼のリボルバーが向けられている。

 

まさかあの銃で?

しかし彼の神秘じゃもうそんな威力は出ないはず

 

トリニティの2人も硬直している。

予想外の出来事に思考が纏まらない。

 

「混乱してる暇があるのかよ?」

 

「ッ!!」

 

すぐ背後から聞こえた声に

引き金を引きながら振り返るも誰もいない。

 

「時間がなくてな。速攻で終わらせる!」

 

次の瞬間、

四方八方が緑と紫の光で埋め尽くされ…

 

 

………………

 

 

System : Sodom's Flame 通称SSFとは

周囲から神秘を吸収、蓄積して

自身の神秘を増幅するシステムだ。

 

これにより俺は、

発動後30秒間だけ万全の状態と同等レベルの

神秘による補正を受けることが出来る。

 

もしこれが3人だけとの戦いなら

貯まり切る前に盾を粉砕されていただろう。

 

もし平地での戦いであれば、

ワイヤーによる撹乱が出来ずに

ミカとの一騎打ちで負けていただろう。

 

だが、女神はこちらに微笑んだらしい。

 

久しぶりの感覚だ。

ありとあらゆる部分が研ぎ澄まされ

敵を倒す為に最適化されていく。

 

「…行くぜ?」

 

掛け声と同時に左手からワイヤーを飛ばす

超高速の糸は即座にビル側面に到達する。

 

そのまま自身を引き寄せて音速を超えて移動し

即座にヒナに狙いを定めて発砲する。

 

「ァグッ!?」

 

ヒナが悲鳴を上げる。

うん、しっかり攻撃補正も上がっている。

 

ヒナは困惑した様子だ。

ミカとツルギもまだ状況を理解できてない。

 

少し踏み込み、跳躍。

ヒナのすぐ後ろに着地して囁く。

 

「混乱してる暇があるのかよ?」

 

ヒナが振り返るよりも速く空中に飛び

左手を振り翳して

ワイヤーをそこら中に張り巡らせる。

 

後残り時間は15秒弱

 

その間に決着をつけさせて貰う!

『ヴィヴァーチェ』のシリンダーを回転させ

弾丸を神秘で装填する。

 

「悪いが時間がなくてな。速攻で終わらせる!」

 

瞬間、空中に躍り出る

 

ワイヤーを 足場に 起点に

壁代わりにしながら飛び回り、

『ヴィヴァーチェ』を全方位からぶっ放す!

 

弓のように引き絞って自身を射出

鉄棒のように握った場所を起点に回転

スプリングのように踏みつけて加速

まるでピンボールのように跳ね回る

 

『ヴィヴァーチェ』は神秘の弾丸を装填すると

一定時間が経過するまで自動的に装填され続ける。

 

俺の神秘は緑と紫の弾丸となり

それぞれが神秘と爆発の属性を持っている。

 

右左上下右右下下上左上右下左左右上上…

 

あらゆる方向から弾丸を浴びせ続ける!

ここで!仕留める!

 

残り3秒

 

2

 

1

 

『System : Sodom's Flame 機能停止』

 

「ぐっ…」

 

急激に力が抜けて行く感触がして、

俺の動きが格段に鈍く…元の状態に戻る。

 

やはり右腕が無いのが響くな。

物体を切断できないと万全の戦法は使えない。

アレが一時的でも出来たなら

三大学園とも正面からやり合えるんだが…

 

「っと、さっさと離脱しないと」

 

3人がいるであろう場所は粉塵でよく見えない。

馬鹿みたいに撃ち込みまくったから

まず意識を保つのは無理だと思うけど。

サーモバリック爆薬も真っ青なレベルだし

 

「…やり過ぎたか?

 いやまぁアイツらなら大丈夫か」

 

大体15秒の間に1万発ほど撃ち込んだ。

あの3人じゃなきゃ確実にヘイローが砕ける。

()()()()誰がどの程度頑丈かは把握している。

 

「痛っ…」

 

ワイヤーの位置を全て把握し続けながら

高速3次元機動をした為少し頭が痛む。

 

「キト…リ…!」

 

「…マジかヒナ」

 

まさかのヒナが立ち上がってきた。

一番頑丈だから一番撃ち込んだはずなんだが

ギリギリ意識を保っているらしい。

 

よく見ればミカは気絶してるが銃は離していない。

ツルギに至ってはヘイローが点滅してる辺り

もうそろそろ復帰してきそうだ。

化け物すぎるぜお前達…!

 

「まだ…私は…!」

 

「悪いが俺が無理」

 

もう手札がほとんどない。

SSFも一度使用したら回路が焼き切れ、

どこかでメンテナンスする必要がある。

 

「take off!」

 

ブースターを点火して空中に飛び出す。

 

部隊の方を見れば、

無名の守護者達は全て処理されていたが

俺の攻撃の余波を喰らっていて

とてもじゃないが追い掛けるのは無理そうだ。

 

「待っ…て!キトリ…!」

 

「…じゃあな」

 

そう言って今度こそ高速でその場を離脱する。

 

「うぅ…ああぁぁぁぁ!!」

 

ヒナの悲痛な声から、目を背けながら

 

 

………………

 

 

『…そろそろ義肢の回路が限界です』

 

「ヤベェな」

 

keyが入ったままだと

制御回路に尋常じゃ無い負荷が掛かる。

このままじゃ墜落しかねない。

 

「しゃあない。

 ある程度離れることも出来たし

 この辺で一回降りて媒体を探すか…」

 

そう思い地上に降りる。

 

「…この辺りは…ヴァルキューレ近辺か」

 

俺はヴァルキューレ近くの路地裏に降りている。

 

「…いくつか廃材があるな。

 多分この辺なら何か…これでいいか?」

 

俺が取り出したのはストラップ

アンドロイドモチーフであり、

実は内部構造も一緒とかなり凝ったものだ。

 

『…不満です』

 

「我慢してくれ。

 アリスと同じ存在なんざ居ないし

 あのドローンは特注品なんだよ」

 

もう機体がボロボロだったから使えなかったが、

アレ実はかなり費用が掛かってる。

具体的には0が6個並ぶくらいには

 

『…Divi:Sion起動 制御掌握完了』

 

小さなアンドロイドの頭にヘイローが浮かぶ。

 

「悪いな。フードの中にでも入っててくれ」

 

『それでは顔を隠せないのでは?』

 

「どうせもう無理だよ。

 ミレニアムに知られた時点で…ほら」

 

こっそりと路地裏から覗けば

大きなスクリーンでやっているニュースは

"ブリキ人形"の正体について

 

「クロノスと繋がりが一番強いミレニアムだ。

 秒で情報が出回るのは予想出来てた。

 今更顔を隠そうが隠さまいが関係ねぇよ」

 

さてどうしよっかね?

こうなるともう表舞台を歩くのもしんどくなる。

かと言って隠れ家は抑えられてるだろうし…

 

「…怠ぃ〜、"廃墟"にでも隠れるか?」

 

あそこのアンドロイド共程度なら

余裕でハッキングできるし、

なんなら無名の守護者達も使い放題だ。

 

「…でも無しだな。防衛戦は分が悪すぎる」

 

物量で完全に負けてる以上

100%追い詰められてジエンドだろう。

 

「…いっそのことあそこ行くか」

 

あの場所なら少なくとも戦争と監禁は防げる。

まぁ俺がどこにいるかとか、

他の生徒との会話はすることが確定するが…

 

「しゃあないな。

 その前に少し用事だけ済ませよう」

 

そう思い裏路地を進む。

少しすれば、

連邦生徒会が管理する銀行が見えてくる。

自動ドアを潜って中に入る。

 

「ようこそ。

 今日はどのような件でこちらへ?」

 

職員の人が挨拶に来る。

 

「忘れ物を取りに」

 

「なるほど…

 具体的にどのようなものでしょうか」

 

「『アレグレット』と

 『フェローチェ』を取りに来た」

 

そう言うと、職員は少し驚いたようだった。

 

「…瑠璃唐キトリ様でよろしかったでしょうか?」

 

「…もしかして誰かから聞いてるか?」

 

「…連邦生徒会長から、

 彼が取りに来たら渡して欲しいと」

 

…なんでもありかよアイツ。

なんで生きてるって分かるのやら…

 

「受け取りでよろしかったでしょうか?」

 

「はい、お願いします」

 

しばらくして、持って来られた

二つの武器(相棒)を受け取り、

表通りを堂々と歩いて目的地に向かう。

 

「…ねぇあれって」

 

「多分そうだよな…」

 

「マジで生きてる…」

 

周囲が俺の顔を見てざわめく

だが俺の持つ二つの武器を見て

近づこうとするバカは居なかった。

 

1、2年生の大半は不気味がり

 

一部の生徒と3年生は畏怖の表情を浮かべる。

 

人混みが俺を避けて道を開ける中歩く。

目指すはシャーレ。

先生に、会いに行こう。

 

 

………………

 

 

「これは…」

 

私が到着した時には、既に戦闘は終わり

地獄のような有様となっていた。

 

大量の破壊痕、傷ついた生徒達、

張り巡らされたワイヤーと、

壊れた乗り物が激闘の名残を感じさせる。

 

ふと中心部を見ると、

呆然と空を見上げて座り込んでいる人影

あれは…

 

「…ヒナッ!?」

 

ボロボロになったヒナに駆け寄る。

 

「っ…先生…」

 

ヒナはこちらに気づくと、くしゃりと顔を歪めた。

 

「私…私…!キトリを助けれなかった…!」

 

「キトリを…」

 

瑠璃唐キトリ、

やはりここで戦ったのは彼らしい。

 

「どうにかして保護しようとしたけどダメで…

 ただキトリを傷つけただけ…!

 そんなの…そんな私なんて…!」

 

「ヒナ…」

 

とうとう泣き出してしまうヒナ。

それをどうにか宥めようとしていると

 

「…行かなきゃ」

 

「ミカさん!?動いちゃダメです!」

 

ボロボロのミカが動こうとする。

 

「離してナギちゃん!

 私キトリのところに行かなきゃダメなの!

 最後のキトリの顔見たでしょ!?

 あんな泣きそうな顔してるのを

 放っておくなんてダメに決まってるじゃん!」

 

「…っ!それはそうですが…

 それでも貴方は動いてはダメです!」

 

無茶をしようとするミカをナギサが止める。

ミカはそうそう必死に動こうとはしない。

つまりそれだけキトリという生徒が大切なのだ。

ヒナもそう。そう簡単に泣いたりはしない。

 

「…行くぞお前達。まだ終わってない」

 

「ダメです委員長!

 負傷者が多すぎてすぐには…!」

 

「なら私1人で…!」

 

ツルギも独断専行をしようとしている。

エデン条約の時でさえ、

待機命令に従ったツルギがだ。

 

瑠璃唐キトリという人間は、

どうやら皆に大きな爪痕を残しているらしい。

 

「…私が探すよ」

 

周囲の皆に聞こえるようにそう告げる。

 

「…お願い先生…キトリを…」

 

「…うん、先生なら任せてもいいよね」

 

「…すみません。お願いします先生」

 

ヒナはこちらに縋るような目をして、

ミカは自分に言い聞かせるようにして、

ツルギは信頼しているという声色で、

それぞれの方法で私に託してくれた。

なら…

 

「急ごう」

 

一緒に来ていたSRTのメンバーに

ヘリを動かして貰う。

 

多分彼の向かう先はあそこだろう。

 

連邦捜査部S.C.H.A.L.E

そろそろ私も、自分の罪と向き合うべきだろう。

 

 

………………

 

 

夕暮れに染まるシャーレの一室

 

そこで2人の男が向き合っていた。

 

片や先生。緊張した顔つきで相手を見る。

 

片やキトリ、両隣に巨大な武器を立て掛け、

ただ静かに相手を見つめる。

 

「初めまして。瑠璃唐キトリさん。

 シャーレ所属の先生だ」

 

先生がそう話しかける。

それに対してキトリは寂しげに笑う。

 

「あぁ、数え飽きた初めましてだ。先生」

 

驚いた顔をする先生にさらに告げる。

 

「また、俺を助けてくれ」





瑠璃唐キトリ
正真正銘の化け物

戦闘能力がバカみたいなレベルであり、
一年生時点で彼に市街戦を挑むのは自殺行為に等しいと言われ、ヒナやツルギ、ネルを完封していた。

今の彼が手足を取り戻していた場合、
あのシロコ*テラーをもってして市街戦では確実に敗北すると言わしめるレベルの化け物である。

彼と戦うなら、まずは平地、せめて狭い室内に誘導することから始めるべきである。
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