幸せに満ちたキヴォトスを作り上げた転生先生と、取り零された1人の罪人 作:ムクロウ
それはそうと、一つ謝っておきます。
今回までの前書きで、
実は一つ嘘を吐いています。
気になる人はこの作品を読む前に探してみてください。
※重要!
この世界において、アビドス編3章は終わっていません。
「…数え飽きた?また?一体何を…」
「まぁとりあえず立ち話もなんだし、
座って話そうぜ」
困惑する先生に着席を促し、
俺もその対面に座る。
「ん〜…まぁ結論から言うと
その辺の疑問に答えることは出来ない」
「なっ!?それは…!」
「まぁ落ち着けって」
身を乗り出してきた先生を座らせる。
「俺とアンタは深い関わりがあるわけじゃない。
そんな相手に初手から
全ての事情を話せるわけないだろ?」
「…それは、そうだね」
「そういうことだ。
まぁその辺の話は後にしよう。
俺がここに来た理由はなんとなく分かるだろ?」
仮にも先生を名乗ってるんだ。
これくらいは分かるだろ?
「…どの学園の影響も無い場所への避難かい?」
「そういうこった」
何しろ監禁エンドまっしぐらなもんでなぁ…!
「畜生なんでこうなった…!?
やっぱトリニティで顔バレしたからか!?
いやヒナにはどっちみち…
ということは風紀委員会襲撃の依頼かぁ…?
ガバばっかじゃねぇか…!」
「え、え〜っと?」
「ハッ!?」
いけねぇ、つい考え込んでしまった。
「悪い先生。それでどうだ?
ダメだってんなら他の方法探すけど…」
「ううん。構わないよ」
「…悪いな。
俺は何も言わないのに世話になっちまって」
「…何かわけがあるんでしょ?」
「あぁ…酷くこんがらがった厄介なやつがな」
全く世界ってのはなんでこう理不尽なのかね。
俺1人の肩には重すぎるぜ…
「…うん。なら聞かないよ」
「ありがとな。先生」
「代わりと言ってはなんだけど、
他のことなら聞いてもいい?」
「ん?まぁ答えられることならいいぜ?」
割と多いからな答えられないこと。
「ケイとはどんな関係?」
『主人と奴隷…』
「捏造するな。主従関係にしてるのはお前だけだ」
ったく。油断も隙もない。
アンドロイド型のストラップを小突く。
「普通にコイツを助けた。それだけ」
「一緒にいるのは?」
「俺がもう自由って言っても付いてくるから
今はタッグみたいな感じで過ごしてる」
「…仲が良いんだね」
「まぁな」
仲が良いことは否定しないが、
ストラップにずっと入れとくと拗ねるから
keyのボディーのことも考えなきゃな…
「ヒナ達とはどんな関係?」
「ただの同級生…ってより友達だな。
アイツらが今でもそう思ってくれてるなら」
「そう思ってくれてるよ。きっとね」
「…そうだといいけどな」
思わず苦笑する。
この人はホント…人たらしにも程がある。
「んで?他にもあるんだろ?」
「うん…」
少し気まずそうに目を逸らす先生。
「どうしたよ?遠慮しないでくれ。
俺はここに世話になる身なんだ。
デリカシーなんざ気にしなくていいぜ?」
「でも…」
「それに数少ない男同士の交流なんだ。
もっとはっちゃけてくれて構わんぜ?」
「…キヴォトスって男性の肩身狭いよね」
「クッソわかる」
この世界マジで男に優しくない。
もっと多様性認めていこうぜ?
あ、ゲマトリアは失せろ。特にベアトリーチェ。
…もういないんだったわ。
「…じゃあ聞くね?」
「おう」
「…死んだって言われてるのは何故?」
「あぁ〜…」
…うん、確かにそりゃ聞きづらいよな。
墓参り中に相手の死因聞くようなもんだ。
デリカシーの欠片もねぇ。
「…まぁアイツらが覚えてるのが、
俺が死んだところだからだろ」
「死んだの!?」
「まぁな」
あの時は普通に死ぬつもりだったし、
実際死んだ。
「なんで生きてるのかは内緒な。
それを聞くには俺と
もっと仲良くなってからにしてくれ」
「…お菓子いる?」
「露骨過ぎん?貰うけど」
先生が渡してきたクッキーを齧る。
…美味いなこれ。
「…なんで死んだか聞いても?」
「…」
…まぁそう来るよな。
「…少しだけ言うなら、戦争だよ」
「戦争…!?」
先生は戦慄した表情を浮かべる。
「そう、誰も覚えていない全面戦争。
エデン条約発足のキッカケとなった
キヴォトス最大にして最悪の大事件。
それが終結した時には、
俺の腹に大穴が空いていた。
詳細は…語らせないでくれると助かる」
出来ることなら思い出したくないものだ。
「うん、話してくれてありがとう」
「礼はいらん。
何度も言うがこれは恩返し代わりだ」
お礼にお礼してたらキリがない。
「じゃあ最後に…アレ、何?」
先生が指差す先には、
俺の武器が立て掛けられている。
「それに目を付けるとは、先生もお目が高い」
「そ、そうかな?」
「あぁ、実にいいセンスだ」
少し気分良く立ち上がる。
二つの相棒の元へと歩き、振り返る。
「紹介しよう!我が相棒達
『アレグレット』と『フェローチェ』だ!」
そう言って
『アレグレット』…十字型の箱を叩き、
『フェローチェ』…巨大な金槌を杖のように突く。
「えっと…武器なの?」
「もちろんだ!
武器というよりは兵器に近い代物だがな!」
いやぁ気分が良い。
我が相棒達について語れる機会なんて
中々訪れるものではないからな!
「キトリは色んな学校に転入したって聞いたけど
ミレニアムではもしかして…?」
「ん?エンジニア部とC&Cを兼部してたな」
あの頃は楽しかった…
エンジニア部で作った試作品を
C&Cの活動中に試験運用する…
最高の日々だったと言っても過言じゃない!
「えっ!?C&Cにも!?」
「あぁ、とは言っても俺は男なので、
執事服姿だったけどな」
「…キトリってワイヤーを使って戦うんだよね?」
「…?それがどうかしたのか?」
「ロマンの塊じゃん…!」
お?さてはコイツ…
「ロマンを理解するか同志よ!」
「うん!めちゃくちゃカッコイイよ!」
そうそう!
こういう会話がしてみたかったんだよ!
男友達としか出来ねぇようなさぁ!
ウタハとかと話すのも楽しかったが、
いかんせんエンジニア同士だと
技術というか理論の話になっちまうからな!
ロマンだけの話は出来なかったんだよ!
「いやぁあの頃に戻りてぇなぁ…
使い捨てバズーカをぶっ放して
リオとかヒマリに怒られたっけ…」
「そういえば同じ学年だっけ?」
「一個上だったな。
留年してるようなもんだから
学年なんざ無いようなもんだが」
っと話が逸れたな。
「さて、相棒達の解説に移ろうか!」
「うん!お願い!」
…その後俺達は痺れを切らしたリンちゃんが
室内に突入してくるまで語り合っていた。
いやごめんて。そんな怒らないでリンちゃん。
え?リンちゃん呼ぶな?
でもアイツにはそう呼ばれて…ごめんて
俺が悪かったから怖い顔するのヤメテ
………………
「悪いな先生。部屋まで貸してもらって」
俺に仮眠室を譲ってくれた先生に礼を言う。
「それはいいけど…ベットで寝ないの?」
「あぁ、
アリウスでいつでも眠れるようにはしたが、
壁面にもたれての方が幾分か寝やすい」
壁にもたれて片膝を立てる。
警戒体勢ではあるが、
俺にとっては体に染み付いた習慣の一つだ。
「手足はどうしたのかは…聞いてもいい?」
「…"約束"さ。それ以上は言えない」
覚えていない以上、聞かせない方がいい。
どの要素がどんな風に干渉するか分からない。
もう既に過干渉気味なのは…どうにかしなきゃな。
「先生はどうするんだ?」
「私はまだ仕事が残ってるからね」
「手伝おうか?」
「いや、キトリはさっきまで戦ってたでしょ?
疲れてるんだから寝た方がいいよ」
それはそうだな。
「…じゃあおやすみ。キトリ」
「あぁ、お休み。先生」
部屋のドアが閉まったのを確認して、
天井を見ながら思考する。
色々あった。
家族と再会して朝食を食べて
ミレニアムに逃げ込んでアリスと再会
身バレして全力逃走
ティーパーティと風紀委員会、
正義実現委員会とやり合って
最後はこのシャーレで先生と対話
『早めの就寝をオススメします』
「分かってる。お前も休め…key…」
話してる内に瞼が落ちてくる。
流石に疲れた…
もう…意識が……
………………
「…んぁ?」
窓から差し込む光で目が覚める。
ふと時計を見れば、朝の8時だった。
「ふわぁ…よく寝た…」
目に掛かる白髪を払いつつ立ち上がる。
『おはようございます。キトリ』
「割とよく寝たな…」
そう思いつつ伸びをして、少し体を動かす。
『…何故急に運動を?』
「…生存本能ってめんどくさいんだよ」
『…?』
男のサガというかなんというか…
「発散してねぇのが悪いんだろうな…」
その辺の欲求はコントロール出来るけど、
肉体の本能までは制御できないんだよなぁ…
そうして扉を出ると
「…zzz」
「寝落ちしてる…」
先生が机に突っ伏して寝ていた。
すぐ側にシッテムの箱が無造作に置かれている。
「風邪引いたらどうすんだよ…」
側にあった毛布を掛けておき、
デスクを見れば、大半の仕事は片付いていた。
「…この分ならまだ起こさなくてもいいか。
俺はどうするかな…」
多分今日は俺目的の客が大量に来るから、
その対処を考えて…
瞬間、途方もない怖気が俺を襲う
生気を失うほどに悍ましい、
振り返れば、先生に
「っ!起きろ先生!
先生に向けて手を伸ばす
ダメだ、間に合わな…
閃光
………………
「…ゲホッ!ゲホッ!クソッタレ…!」
瓦礫を退かして立ち上がる。
頭から血が流れているが
そんなことはどうでもいい!
「先生!返事しろ先生!」
呼び掛けるが返事がない。
どこだ…どこにいる…!
ワイヤーを使って周囲を捜索する。
「っ…!居た!」
反応があった場所の瓦礫を退かすと…
「っ!?」
血塗れだった。
側には壊れたシッテムの箱が置かれている。
「クソッ…クソクソクソクソクソクソクソッ!
クソッタレがぁぁぁぁぁぁ!!!」
経験で分かる。これは助からない。
先生は…今…ここで…
「…」
やっとここまで来たってのに…
皆が幸せな未来を掴んだのに…
結末がこれか…?
ふざけるなよ
「…認めねぇ」
あぁ、認めてなるものかよ。
そうやって再び俺達から奪おうとするなら…
「どこまででも抗ってやる…!」
左手を天へと伸ばす。
"赤い糸を紡ぐ"
その左手の薬指に赤い糸が出現する。
反対の端は、天へと伸びていて見えない。
これこそはもう一つの奇跡
俺の至りし『崇高』の証
天より垂れた蜘蛛の糸
「主よ。どうか私をお許しください」
さぁ、また繰り返そう。
ハッピーエンドに辿り着く為に
「…これはっ!?一体何が…」
誰かが来たらしい。
最後のお別れをさせてくれるとは
今回の世界は随分と気前が良い。
「…キトリッ!?先生は…っ!?」
…あぁ、ハルナか。
本当に気前が良いな世界。
「先程の爆発のせいで…!?
キトリ!何があったんでs」
「ハルナ」
「…キトリ?」
俺の尋常ではない様子を察したらしく
動揺していたハルナが止まる。
「お別れだ」
「こんな時に一体何を…」
「まぁ安心しろ。どうせ覚えてないが、
全部どうにかしてみせるから」
そう、今までと同じだ。
俺がどうにかすれば、それで終わりだ。
「…何を…何を言って…!」
「またな。いつか全てが終わったら会おう」
そう言って、赤い糸を握り締める。
「っ…!待ってください!待って!行かないで!」
ハルナがこちらに手を伸ばすが、
届くことは無い。
…あぁ、どうせ記録されないんだ。
こんな時くらい言ってもバチは当たらないだろう。
「ハルナ」
「…っ!」
「愛してる」
笑いかける。
ハルナが赤面する。
…その顔が見れて良かった。
天に向き直り、握る手に力を込めて
「キトr」
思いっきり引く。
「…巻き戻せ!『
運命は反転し
世界を紡ぐ糸車が、逆転する。
………………
集中し、息を吐く。
まだ肌寒い季節故に白い吐息が後ろに流れる。
砂漠色のローブが旗めく。
「…」
スコープ越しにターゲットを確認する。
今回は戦車砲でパンを作らせなかったとかいう
ふざけた理由で立て籠ってる
テロリスト共のリーダーの狙撃依頼だ。
スコープの先では、
何か話しながらゲラゲラと笑い合う連中が見える。
どうせ立て籠もりが成功した時の話だろう。
射角調整 自由落下によるズレ修正
風向き 右にやや強め
引き金に指を掛ける。狙いは定まった。
「…主の導きが在らんことを」
トリガー
AWM…サイレンサー付きスナイパーライフルは
超音速の弾丸を撃ち出し、
「グェッ!?」
「「「リーダー!?」」」
リーダー格の意識を刈り取る。
ライフルでヘッドショットを決められて
完全に無傷な奴はそういない。
完全に気絶したことを確認してから
耳に付けたインカムを起動する。
「こちら "ブリキ人形"、
ターゲットの沈黙を確認。
任務完了の為、これより撤収する」
「了解した。これより突入する。
協力感謝する」
「報酬を支払ってくれればそれでいい。
では、また」
そう言ってインカムを切り、
側に待機させておいたドローンを飛ばして
ヴァルキューレにインカムを届ける。
「…ここからか」
依頼をチェックして、
風紀委員会の襲撃依頼を拒否する。
これで未来は変わった。
やはり保険なしで関わると碌なことにならない。
さて、どこから手を付けようか。
考えを纏めていると、
思い出すのはナギサの言葉
『今日こそは変えてみせます!
例え貴方を傷つけることになったとしても、
貴方を助け出して見せる!』
「…あぁ、俺も変えてみせる。
お前達を助け出して見せるとも」
そうさ
「Vanitas vanitatum, et omnia vanitas」
世界の全てが空しいとしても、
それを知っているのは
「俺だけでいい」
本編スタートと言ったな?(第4話)
あれは嘘だ。
というわけでこれからが真の本編…
というわけでもなく。
次回からは過去編となります。
主人公の出生、武器、神秘の謎
2年前に何があったのか
ストーリー中彼は何をしていたのか
などを書いていきたいと思います。
vol. bug 廻り続ける糸車のダ・カーポ
第一章 『"ブリキ人形"の噂』 完
次回
第二章 『天使がブリキに墜ちるまでの物語』
to be continued