幸せに満ちたキヴォトスを作り上げた転生先生と、取り零された1人の罪人   作:ムクロウ

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*今回はかなり残酷な描写があります!気をつけて読んで下さい!


第二章 天使がブリキに墜ちるまでの物語
楽園から転がり落ちた者


 

俺は生みの親を知らない。

物心つく頃には育ての親に引き取られていたから

詳細は知らないが、捨て子か何かで

孤児院に預けられていたのを引き取ったらしい。

 

俺が引き取られたのはトリニティ自治区の一角。

その中でもゲヘナ自治区との境目に住んでいた

夫婦2人暮らしの裕福な家庭だった。

 

育ての母は子供が作れない体だった為、

代わりに俺を引き取る流れになったそうだ。

 

俺は白髪翠眼で綺麗寄りの容姿をしているし

()()()()()も生えていたから、

ヘイローのある男という部分からも

かなり価値のある子供だった。

 

境遇の良い場所に引き取られたことは

幸運だったと言える。

 

そして、そんな俺とよく遊んでいたのが…

 

「キトリ!今日も遊びましょう?」

 

「あぁ、いいよ。何して遊ぶ?」

 

ハルナだった。

ゲヘナ自治区の近くということもあり、

そこまでゲヘナ嫌いが強くない。

その為俺とハルナは

よく互いの家の近くに遊びに行っていた。

 

両家共にそこまで仲が悪くなかったのも

俺達が一緒にいられた理由の一つだろう。

 

俺とハルナは友人となり、

5歳から11歳になるまでを共に過ごしていた。

所謂幼馴染、というやつだ。

俺にとって初めて、身内以外の大切な人。

少し振り回されてはいたものの、

やはりアイツと俺は常に一緒にいた。

 

…まぁ今はもう、

俺はアイツと関わる資格はないし

関わる気もないんだけどな。

 

 

………………

 

 

「キトリ!また空を飛ばせてくださいな♪」

 

「またやるの?疲れるんだけどなぁ…」

 

そう言いつつ、

ハルナをお姫様抱っこして

僕は畳んでいた自分より大きい翼を広げる。

 

「捕まっててよ?」

 

「えぇ、もちろん♪」

 

そうして翼を羽ばたかせて飛翔する。

 

「…フフッ♪風が気持ちいいですわ♪」

 

「…そうだね」

 

空から見ると、ゲヘナとトリニティは大分違う。

ゲヘナでは硝煙に塗れた紛争が、

トリニティでは腹を探り合う政争が、

どちらも争っていることだけが共通点だ。

 

「あっ!キトリ!あっちに降りてくださいな!」

 

「いいけど…」

 

ハルナが指差す方角に進路を変え、

段々と降下していく。

 

「…ここは?」

 

「前々から目をつけてましたの。

 ここは有名なレストランですわ!」

 

「もしかして昼に呼び出したのは…」

 

「もちろん、ここで食べるためです」

 

そうして中に入り、出てきた料理を食べる。

 

ハルナはよく僕を連れ回して、

美味しいもの巡りをする。

もちろん当たりの場合も多いのだが…

 

「…」

 

「…美味しくない」

 

子供だからなのか舐められやすく、

今回みたいにわざと

味の悪いものを出されることもある。

 

「…ごめんなさい」

 

ハルナは少し泣きそうな顔をしている。

 

「…」

 

厨房の方を見れば、

こちらをニヤニヤと笑う連中がいる。

 

それがハルナに見えないように、

そしてハルナの泣き顔をアイツらが見ないように

翼でハルナを隠す。

 

ハルナを泣かせたんだ。

覚悟は出来てるんだよね?

 

僕の眼光に気づいた連中が怯む。

 

「ハルナ、行こう」

 

料理を放置して代金だけ支払い、

ハルナの手を取って店を出る。

 

「ガキの来るとこじゃねぇよ」

 

後ろからの嘲笑を聞き流し、

出口をくぐる前にある物を置いておく。

 

「…」

 

「ねぇ、ハルナ」

 

俯いたハルナに笑いかける。

 

「今から花火が始まるからさ。見ててよ」

 

「え?」

 

スイッチを押す。

 

爆発

 

さっきまでいた店が

閃光と共に爆散する。

 

「ギャァァァッ!?」

 

さっきまで嘲笑していた連中が悲鳴を上げる。

 

僕の幼馴染を泣かせた以上、

アイツらは敵以外の何者でもない。

ザマァ見ろ

 

ポカンとした表情のハルナに声を掛ける。

 

「スッキリしたでしょ?」

 

前にゲヘナをこっそり見学してた時に

こんな感じで復讐してる人達がいた。

あれを見た時、これだ!って思った。

今まで子供だからと酷い目に合わせてきたんだ。

まさか自分達がやられたからって文句はあるまい?

 

「お、怒られますわよ!?」

 

「別にいいよ。元々悪いのはアッチだもん」

 

「で、ですが…」

 

「いいの。ハルナを悲しませるやつは

 絶対に許さないから」

 

「キトリ…」

 

店から出てきた店員の怒号を聴きながら

翼を羽ばたかせてある場所に向かう。

 

「マズイ料理をわざと出したんだし、

 爆破される覚悟くらい向こうにもあるよ」

 

「…そうですわね。その通りですわ」

 

…今思うと、

アイツがイカれた感性でテロリストしてるの

この事件のせいじゃねぇかな?

うーん…ごめんゲヘナ。ごめん風紀委員会。

 

空を飛んで自宅まで行き、ハルナを家に上げる。

 

「何故キトリの家に?」

 

「気分転換?」

 

ハルナをダイニングの椅子に座らせる。

 

「ちょっと待っててよ」

 

「え、えぇ」

 

そう言ってハルナを置いてキッチンに引っ込む。

 

「さて、やるか」

 

 

………………

 

 

「はい、どうぞ」

 

「これは…!?」

 

ハルナの前に唐揚げを出す。

少し焦げてしまっているし、

形もあんまり綺麗じゃない。

 

「もしかしてキトリがこれを…?」

 

「こういうの好きでしょ?」

 

驚いた表情が見れてとても満足

 

「…私の、為に?」

 

「うん。ハルナに喜んで欲しくてさ。

 お手伝いの人に教えて貰ったんだ。

 レストランで嫌な思いしたわけだし

 口直しになればと思ったけど、

 あんま上手く出来なかったや。あはは…

 まぁ別に食べなくてm」

 

「いただきますわ」

 

僕が言い切る前に、

ハルナが唐揚げを食べる。

 

「…どう?」

 

「…これまで食べた中で、

 最も美味しいですわ。そしてこれからも

 これを超える一品には出会えないと思います」

 

「お、大袈裟だなぁ…」

 

熱弁するハルナに苦笑いを返す。

 

「大袈裟などではありません。

 料理というのは何も味だけではありません。

 誰がどんな思いでどのようにして作ったか。

 これもまた重要なのですわ」

 

「なるほど…」

 

「そういう点で言えば、

 今回の料理は間違いなく最高の一品です。

 私が保証いたします」

 

「…ありがとう。ハルナ」

 

その後、食べ終わった皿を2人で片付け、

ハルナを家まで送った。

 

 

………………

 

 

それからしばらく時間が経ち、

僕が12歳になった日。

ハルナに呼ばれてゲヘナとの境界線に行くと

 

「キトリ!」

 

少し着飾ったハルナが待っていた。

 

「どうしたの?そんな可愛い格好して」

 

「可愛っ…そういうところですわ」

 

顔を真っ赤にしてジト目をするハルナ。

何かしただろうか?まぁいいや。

 

「今日はあなたの誕生日ですわね?」

 

「うん」

 

「今年もプレゼントを用意しましたの!」

 

「今年は随分と気合いが入ってるね」

 

僕とハルナはお互いの誕生日には

プレゼントを送り合っている。

僕の腰にあるRsh-12(『ヴィヴァーチェ』)も、

彼女が珍しい銃が有ったと買ってきたものだ。

 

「今年は…これですわ」

 

「…箱?」

 

受け取ったのは、

手に収まるサイズの箱だった。

 

「…開けてもいい?」

 

「えぇ、もちろんですわ」

 

開けてみる時そこには…

 

「…指輪?」

 

二つの指輪が入っていた。

うーん…流石お嬢様、玩具じゃないねこれ。

 

「えぇ、指輪です」

 

「ええと…」

 

これはつまり…そういうことだよね?

 

「意味は…分かりますでしょう?」

 

頬を染めたハルナ。

一体どこでこんなことを学んできたんだろう?

僕達はまだ12歳なんだけどなぁ…

というか恋人ですらないのにいきなりかぁ…

 

まぁ、僕達らしいか。

 

指輪を取り出して、ハルナの左手を取る。

 

「…?」

 

その薬指に指輪を嵌めて、

もう片方の指輪をハルナと同じ指に嵌める。

 

「返事は…これでいい?」

 

ハルナに問いかける。

 

「…まだ一つ足りませんわ」

 

そう言って目を閉じるハルナ。

 

「…君には振り回されてばかりだよ」

 

翼を広げて、周りから見えないようにする。

顔を寄せて、唇を重なる。

少し甘酸っぱいような、

蕩けるような感触が唇に残る。

 

「…そんな君が僕は好きだよ」

 

「…えぇ、私も好きです」

 

笑い合う。

互いに分かりきっていたけれど

それでも結ばれるというのは嬉しい。

 

「それにしても急だけど、何かあった?」

 

「…だって」

 

「だって?」

 

「…キトリはモテモテなんですもの。

 特にトリニティのお嬢様達から」

 

…あの頃の俺は表向きは穏やかな性格と

その頃から備わっていた異常な戦闘能力の高さ。

綺麗めで大きな翼を持つという容姿が相まって

ゲヘナ、トリニティ両方からかなりモテていた。

ハルナはそれに嫉妬していたのだろう。

 

僕はハルナの手を両手で握り、

ハルナと目を合わせる。

 

「ねぇハルナ、僕は約束するよ。

 君を手放したりなんかしない。

 君がもし危ない目にあったなら、

 絶対に助けてみせるって」

 

「…えぇ、是非お願いします。キトリ」

 

…あぁ、この約束。

何も知らないが故に交わした

あまりにも残酷で、あまりも美しい誓い。

きっと俺という人間の原点はここだ。

俺の時間は、半分はここで止まってる。

 

…この時の俺は、こんな幸せがずっと続くと

そう、信じ切っていたんだ。

 

 

………………

 

 

…その3日後

 

「…どういうことよ!?」

 

幸せは唐突に崩壊した。

 

「この女は誰!アナタとどういう関係よ!」

 

「た、ただの同僚だよ」

 

「ホテルにまで行った癖に今更言い訳するのね!」

 

「…」

 

…なんてことない。どこにでもある話だ。

出張から帰ってきた父が浮気をしていた。

それが母にバレて家庭が崩壊した。

 

そうして育ての親は離婚した。

俺の親権は母が取ったが財産や住居、

そしてそもそもの収入は父のものだ。

 

家でなんとなく過ごしていただけの母は

それらについて全く考えていなかった。

それ故に家から出た後、

別のアパートに住むことになったのだが、

残高は非常に心許ない状態だった。

 

ハルナにはお別れさえ言うことが出来ず、

突然の別れとなってしまった。

 

今思えば俺が8歳の頃から

夫婦仲は冷めていた気がする。

仕事で忙しく家に帰ってこない父。

働きもせず、家事はお手伝いさん任せで

ただ家で過ごしているだけの母。

まぁ、これで家庭が続く方が珍しい。

 

そして母は結局金銭感覚を変えられず、

ドンドンと金は減っていく。

 

「…アンタがいるから余計に食費がかかる!」

 

親権を取ったのは自分で、

引き取ったのは自分達の癖に勝手なことだ。

まぁこんな具合で精神的にも錯乱してるやつを

雇ってくれる場所などあるはずもなく。

とうとう金が尽きてアパートを追い出され、

ブラックマーケットのスラムに住み着く始末。

 

「あのクソ男…許さない許さない許さない…!」

 

それを言うなら自分はクソ女だろうに

…といまぁこんな感じの生活を経験して

俺の人格はめちゃくちゃ荒れたというわけだ。

一人称は僕から俺へ、口調も少し乱暴になった。

敵対する相手以外には見せなかった

元来の凶暴性も段々と露出していった。

 

まぁこれからの事を思えば、

この変化は必要なことだった。

昔の俺のままで生き残れるほど

この世界は優しくないのだから。

 

 

………………

 

 

「待て!この泥棒!」

 

後ろから聞こえる声に身を竦ませながらも

路地裏の狭い隙間をすり抜ける。

 

銀行に運び込まれる金を掻っ攫い、

その結果追手に追われている。

 

「痛っ…」

 

折り畳んでいても大きい羽が邪魔で仕方ない。

今回ばかりは自分のスペックを恨む。

こんなところで飛んでも的にしかならない。

 

そんなことをしていて速度が出るはずもなく、

追いつかれてしまう。

 

「テメェよくもまぁやりやがったな!」

 

追いついた集団に銃床で殴られる。

 

「ガッ!?ブッ!?」

 

体が頑丈だから傷つきこそしないが、

それでも未成熟な肉体には重い攻撃であり、

当たるたびに衝撃で脳が揺れる。

 

「ケッ…二度とすんなよ!」

 

俺を殴っても無駄だと思ったか、

金を取り上げると集団は去った。

 

「…帰ろ」

 

ムクリと起き上がり、母親の元へ戻る。

 

「…金は」

 

「…失敗した」

 

「またか!この役立たず!」

 

殴られる。痛みはない。

 

「っ…!相変わらず無駄に頑丈だね!」

 

逆に母が拳を痛める始末だ。

そんな風になるなら殴らなきゃいいだろ。

 

「…なんで失敗した」

 

「…翼が引っかかって逃げ切れなかった」

 

そう言うと母はさらに喚く。

裕福な生活をしていた反動か、

ここでの暮らしを続けていることに

常にストレスを感じているらしく、

段々と狂ってきているようだ。

 

「そのご立派な翼がなけりゃ!

 もっとアンタは楽に生きられただろうね!」

 

それで楽になるのはアンタだろ。

馬鹿馬鹿しい。

 

「…俺だって欲しくて持ってるわけじゃない」

 

「っ!…あぁ!そうかい!」

 

「っ!?」

 

何かを背中側に浴びせられる。

ヌルッとした感触…油?

 

「じゃあ私が無くしてやるよ!」

 

母がライターに火を灯す。

 

「やめっ…」

 

着火

 

「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ッ!?」

 

「ヒャハハハハハハッ!綺麗なもんだねぇ!」

 

熱い!熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い!

 

「いっそこのまま焼けてしまえ!」

 

このままじゃ焼け死ぬ!何か…何か!

 

…この時俺の手元には消化器も水もなかった。

 だから俺は…

 

「…?アンタ何を…」

 

…激痛と恐怖で震える手で

 

「ハァ…!ハァ…!」

 

 

()()()を取ったんだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…ジョキッ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ッ!?」





自分の考えとして

・主人公のラストはハッピーエンドにする

・ラストにちゃんと向かっていくなら曇らせても良い

・主人公は半分抜け殻というか、
 何もかも終わった後の状態の方が面白い
 →過去は死ぬほど曇らせるべき

・恋愛観だけは真っ直ぐ

って感じなので、過去は大分エグいです。
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