幸せに満ちたキヴォトスを作り上げた転生先生と、取り零された1人の罪人   作:ムクロウ

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風邪を、引いた。頭、痛い。

それはそれとしてお久しぶりです。
ようやくリアルが落ち着いて、さらに風邪引いたので投稿再開です。


変わったこと、変われないこと

 

…あれから1ヶ月が経った。

俺の体は頑丈だった為か火傷は治った。

だが、翼がまた生えることは無かった。

堕ちた天使は二度と元には戻れない。

そんな伝説を思い出した。

 

「また金溶かしたのかよ」

 

「アンタがもっと稼いでくればいいでしょ!」

 

その稼いできた金をギャンブルと酒に

注ぎ込んでるやつに言われたくない。

 

「ハァ…行ってきます」

 

ため息を吐いて家を出る。

その時に玄関に吊るしておいた

砂漠色のローブを羽織り、フードを深く被る。

ここにいる意味など何もない。

 

外は既に夜更けだが、

不眠症となった俺には逆に心地よく感じる。

 

星空を眺めながら遠くの銃声を聞きつつ、

小箱を取り出す。これはタバコだ。

ブラックマーケットで暮らしていれば、

この類は案外手に入るものである。

 

一本取り出して火をつける。

炎はトラウマにはならなかった。

代わりにハサミは見るだけで過呼吸になるし、

誰彼構わず殺意を撒き散らしてしまう。

 

酒も嗜むようにこそなったが、

母が毎回全て飲む為タバコばかりだ。

 

空に向けて煙を吐く。

溶けていく様子をぼんやりと眺める。

 

「…そろそろ行くか」

 

立ち上がる。

『ヴィヴァーチェ』に弾丸を装填する。

 

目指すは銀行。

この時間なら3箇所くらい強襲すれば、

多少は金を得られるだろう。

 

俺は単独での行動になる上に

ブラックマーケットで暮らしている為

制圧や深入りが出来ず、

運などに頼って端金を掠め取る事しかできない。

下手に深入りすれば、

痕跡から居場所を突き止められる。

あぁでも…

 

「それで終われるなら、いいかもな」

 

そう言いつつも、見つめるのは左薬指。

ハルナから貰った指輪が輝く。

 

「…それでも」

 

それでも生きよう。

もう一度大切な人に会う為に。

 

…まだこの頃は指輪をしていたな。

 そんな希望、もうとっくに潰えていたのに。

 それに気付かない愚かさだけは

 この頃から何も変わっていない。

 

 

………………

 

 

「なっ!?コイツどこかr」

 

トリガー

銃声が鳴り響き警備の1人が倒れる。

 

「て、敵sゴブェッ!?」

 

隣にいたもう1人の顎をカチ上げる。

 

「っまたお前か!」

 

「悪いとは思ってる」

 

謝りながらも動きは止めず、

何台もの車両を遮蔽物に、

その間を高速で行き来して撹乱する。

 

「クソッ!?狙いが定まらねぇ!?」

 

トリガーに掛けた指が緩んだ瞬間

車両の影から飛び出て懐に飛び込み

 

「しまっ…ガハッ!?」

 

鳩尾を思いっきり蹴り飛ばす。

 

とりあえずこれで一団は制圧した。

だがすぐに応援がやってくるだろう。

その前に車両の扉を破壊して金を一袋だけ盗む。

 

これ以上取れば本格的に目を付けられる。

被害額が少ないから見逃されているのだ。

 

あぁ不便だ。

翼がないから銃弾から身を隠せない。

今までは広げるだけで

個人の火器程度なら防げたのに。

でもその分小回りが効くようになったし、

逃げ足だけなら上がっただろう。

 

「…考え事は後にしよう」

 

とりあえず撤収だ。

応援の来るであろう方向を避けつつ、

路地裏を経由しながらその場を離れる。

 

「…?」

 

通りの方が少し騒がしい。

念の為姿を隠しながら様子を伺う。

 

「大人しくしろ!痛い目にあいてぇか!?」

 

「ヒッ…!?」

 

「ッ…!」

 

「…いつものか」

 

どうやらあの連中、

トリニティから人を攫ってきたらしい。

まだ小学生くらいだろうか?

ピンク色の髪の子と薄茶色の髪の子の2人組。

おそらくは両者とも良家の生まれだろうな。

 

「コイツらいくらになると思う?」

 

「かなりの上玉だ。良い値で売れるかもな。

 だが売っ払うのは身代金を得たからだ」

 

…ゲス野郎共が

 

どうやら身代金を要求した後、

そのまま闇市に売るつもりらしい。

吐き気がする。

…大体5人くらいか

 

「…」

 

目線を逸らし、踵を返す。

面倒事に首を突っ込む必要はない。

さっさと次のターゲットに移動を…

 

思考の隅で銀髪が揺れる

 

「…ハァ」

 

金の入った袋を路地裏に隠す。

元の位置へと戻り、『ヴィヴァーチェ』を抜く。

 

結局こうなるのか

前回はゲヘナの白髪の子を助けることになったし、

俺呪われてるのかなぁ…?

…ある意味呪われてるな。美食屋な女悪魔に

 

路地裏から狙いを定め…

 

「くたばれ」

 

トリガー

 

「ガッ!?」

 

「なっ!?」

 

ヘッドショットで1人気絶させてから

路地裏の壁を蹴り上空へ躍り出る。

 

「どこからだ!?」

 

「あの路地裏…」

 

混乱してる馬鹿に落下し踵落としを決める。

 

「ゲブッ!?」

 

「てめっ」

 

気絶した馬鹿を持ち上げて射線を切りつつ

『ヴィヴァーチェ』を3連射して意識を刈り取る。

 

…制圧完了か

馬鹿を投げ捨てて弾丸を装填しつつ、

二人組の方を見る。

 

「「…」」

 

どうやら警戒しているらしい。

俺は助けた側なんだが…仕方ないか。

 

連中の持っていた銃を二つ投げ渡す。

 

「わわっ!?」

 

「あっ!?」

 

どうにか受け止めたのを確認して

 

「ソイツで自衛は出来るな?

 トリニティはアッチだから自分達で帰りな」

 

方向を指差しつつ戦利品を得ようと…

 

「待って!」

 

…いやまぁ無理だよな

薄茶色の髪の子が俺を呼び止めた。

 

「…なんだ?俺はコイツらが起きる前に

 装備剥ぎ取って売り捌きたいんだが?」

 

こことさっきの場所はそう離れてない。

複数箇所を襲う時は一つ一つの騒ぎが

合流して大きくならないように

しっかりと離れてからやる必要がある。

 

だがこの戦闘は確実に騒ぎになって

向こうの騒ぎと合流するだろう。

残念ながら今日は撤退せざるを得ない為

せめて稼ぎを増やしておきたい。

 

ちなみに装備は中々いい値段で売れるが、

無所属の連中じゃないと足がつく為

剥ぎ取れる機会は稀だ。

まぁ、ここの5人で大体襲撃一回分程度だろうが。

 

「ただでさえお前ら助けて赤字なんだ。

 ちったぁ補填させて欲しいんだが?」

 

「あぅ…」

 

「そ、その…」

 

…流石にイジメ過ぎたかね?

 

「ハァ…要件は?」

 

「え?」

 

「だから要件は?なんかあるから止めたんだろ?」

 

何となく分かってるけどな

 

「…わ、私達を外に送ってくれませんか?」

 

「…」

 

だろうなぁ…

 

「私達だけじゃ、また捕まっちゃうから…

 だからお願いします!」

 

「お願いします!」

 

「って言われてもなぁ…」

 

俺も鬼じゃない。

ここまでしたなら助けるくらいはしてやりたい。

だが、その依頼はリスクが高過ぎる。

流石にお荷物2人を連れて楽に歩けるほど

ブラックマーケットは甘くない。

こっちもかなりの覚悟が必要になるだろう。

 

…じゃあ今更見捨てられるのかと言われると、

 無理なんだけどな

 

「ハァ…分かった。着いて来い」

 

フードを取りつつ先導する。

フードを被った姿は襲撃犯として記憶されてるが、

逆に言えば素顔の状態なら結びつくことはない。

この場合は脱いでおくのが得策だろう。

 

「「えっ…」」

 

「あん?」

 

俺の素顔を見て2人が硬直する。

 

「どうかしたか?」

 

「『ほ、」

 

「ほ?」

 

「「『微笑みの天使様』!?」」

 

「?????」

 

何その呼び名?

 

「えっ、キトリ先輩で合ってますよね?」

 

「え、うん」

 

「わ〜お⭐︎本物だ〜⭐︎」

 

急に目を輝かせる2人に思わずたじろぐ

 

「…その、『微笑みの天使様』とやらは

 俺の呼び名か何かなのか?」

 

…話をきいてみたところ、

コイツらは俺が通っていた小学校の後輩らしい。

そして俺はあの小学校において神聖視され、

ご大層な異名まで付いていたというわけだ。

聞くところによると祭壇まで作られたらしい。

いや、本当に小学校の話だよねそれ?

カルト宗教の説明聞いてる気分なんだけど?

 

「天使様はまだ理解できるが何故微笑み?」

 

「どんな状況でもニコニコとしていたから…

 だそうですよ?」

 

「今は笑ってないけどね〜⭐︎」

 

「笑える状況じゃないからな」

 

そう言いつつ、

『ヴィヴァーチェ』を2人組の背後に突き付ける

 

「っ…!?」

 

「失せろ、ガラクタにでもなりてぇのか?」

 

眼前に銃口を突き付けられたチンピラが

慌ててどこかへと逃げていく。

 

「…そろそろ目をつけられてきたな。

 さっさと移動するぞ」

 

「「は、はい!」」

 

2人に移動を促し、

警戒しながら最短ルートで進む。

 

「何故スラムにいるのか聞いても?」

 

「ここに住んでる」

 

ナギサの質問に適当に答える。

 

「翼はどうしたの?」

 

「焼け落ちた」

 

「「…」」

 

一瞬2人の足が止まるも、慌てて追いついてくる。

 

「なんで助けてくれたの?」

 

「…なんとなくだ」

 

適当に談笑しながら進んでいるが、何かおかしい。

ヒリついた雰囲気を感じる。

 

「…止まれ」

 

「「…」」

 

「顔を出すなよ」

 

2人に指示を出しつつ路地裏から様子を伺う。

 

「…こちらアルファ、異常なし」

 

ガスマスクを被った武装集団が

無線でどこかと通信している。

動きが素人じゃない。多分アイツら、本職だ。

 

「…チッ、きな臭くなって来たな」

 

俺が通っていた小学校は

名家の中でも格の高い奴らが通うエリート校だ。

そんな所に通うお嬢様達を

ブラックマーケットのチンピラ風情が誘拐?

出来るわけないだろ。

つまりは裏で動いてる奴らがいる。

俺の存在にも気づかれているだろう。

 

「ったく、面倒事にも限度があるぞ」

 

関わっちまった以上今更降りられない。

2人を連れて正面突破は無謀だし、

隠れ切るのもまず無理だ。

ならどうする?

 

「…仕方ないか」

 

幸いここまでくればトリニティはもうすぐだ。

ならどうにかなるだろう。

 

「いいか、よく聞け。

 俺が今からアイツらを引き付ける。

 その隙にお前達は

 トリニティまで走り抜けろ。いいな?」

 

「ですがそれでは…!?」

 

「いいからサッサと準備しろ。

 カウントダウン、3」

 

慌てて走る準備をする2人

 

「2」

 

「…ありがとうございました」

 

「ありがとう!」

 

「1」

 

こんな風に感謝されるなら、まぁ充分な報酬だ。

 

「0!GOGOGO!」

 

2人が走り出すと同時に俺は部隊へと突っ込み

 

「っ敵襲!戦闘準b「遅ぇ!」ブベッ!?」

 

初っ端飛び膝蹴りで顎を蹴り抜き1人落とす。

 

「さぁ!即席ライブの開幕だ!

 精々楽しんで死ね!」

 

囮としての役目をこなす為に

大型のゴミ箱に乗って大声で挑発し、

全員の意識を俺に向ける。

 

「何者だ!?」

 

「何者だっていいだろ!」

 

トリガー

危機感の足りないバカのこめかみを撃ち抜く

 

「ここはブラックマーケット!

 無法者達の楽園だぜ?

 ここのルールはただ一つ!」

 

「ブッ!?」

 

投げ込まれたグレネードを蹴り返し

投げた奴の顔面に送り返す。

 

「生き残ることが全てだ!」

 

爆発

ようやく体勢を整えた奴らに中指を立てる

 

「おとといきやがれ。ガスマスク共。

 テメェらの神はここにはいねぇよ」

 

「っ何故我々の所属を!?」

 

「おっと正解か。自白どうも」

 

「っ撃てぇ!」

 

「ハハハハハッ!」

 

こちらに銃口が向いた瞬間に体を倒し、

ゴミ箱を遮蔽物にして隠れる。

にしても神への信仰を揺さぶっただけでこれとは

雑兵なんてこんなもんかね?

 

「さぁて相手はトリニティ関係の奴ら。

 ミカとナギサのこと考えてると

 過激派の中でも少数派とかその辺か?」

 

さて、ここまで挑発すれば後は逃げるだけで…

 

「…待てよ?」

 

アイツらの装備、売れるんじゃね?

 

「トリニティの奴らからしたら

 ここにいたとバレるのは悪手。

 つまり売り払ってもしがらみがないのでは…?」

 

体を隠しつつ相手を窺う。

いい装備してんなぁ…?

 

…この時の俺完全にゲヘナの思考回路してるよな

 

「よし、やるか」

 

『ヴィヴァーチェ』に神秘を装填する。

 

「クソッ!いつまで隠れてるつもり…」

 

トリガー

鳩尾に爆破属性の弾丸を打ち込み気絶させる。

 

「よっ」

 

瞬間飛び出しつつ、

地面に伸びてるガスマクスの1人を持ち上げて

 

「オ…ラァッ!」

 

「ウワァァ!?」

 

投げ飛ばして相手にぶつける。

そのまま接近して

 

「っ舐めるな!」

 

「チィッ!?」

 

何人かが撃ち込んで来るのを

ギリギリのところで躱わす。

 

「正面からは無理か…なら」

 

上空に向けて発砲しつつ再び身を隠す。

 

「またそれか!いつまで逃げるつもりだ!」

 

無視して上空へ発砲する。

 

「…何かおかしい。増援を呼んでいるのでは?」

 

「ならば初めから複数人で来るだろう。

 一体何を」

 

そろそろだ。

 

「落ちろ!」

 

爆破属性の弾丸は建物の壁を穿ち、

くり抜かれたそれが真っ逆さまに落ちてくる。

 

「「ウワァァァァッ!?」」

 

瓦礫の中に消えていく奴らを見届けてから、

瓦礫をどかして装備を剥ぎ取る。

 

「…マジか」

 

ガスマスクを剥ぎ取った奴らの素顔は、

まだまだ幼い顔つきをしていた。

 

「…精々同い年ってとこか?

 そりゃ練度不足なのも納得だが…」

 

マズイな。

ようはコイツらは予備部隊とかだ。

つまり本隊が…

 

「撃て」

 

「ッ!?」

 

突然の銃弾の嵐を飛び退いて躱わす。

何発か喰らってしまい、体中痣塗れになる。

体を低くしながらゴミ箱の裏に隠れ、

背を預けて息を潜める。

 

「グッ…痛っ…」

 

左腕が変な方向に曲がっている。

折れたなこれは

 

「…仕留め損なったか」

 

ゾロゾロとガスマスクを付けた集団が現れる。

が、練度は先程と比べ物にならないし、

背丈もかなり高い。高校生くらいだろうか?

 

「手酷くやられたな。

 まさかブラックマーケットに

 あんなレベルの伏兵がいるとは」

 

「装備類を剥ごうとしていたらしいが…

 持ち出されてはいないな」

 

無理だな。

この状況で勝てる未来が見えない。

さっさと逃走しよう。

 

「…逃げられたな」

 

折れた左腕を抑えて路地裏を走る。

ガンガンと響く痛みをとりあえず無視する。

帰り際に隠した金を回収して、

家に着いた頃には明け方になっていた。

 

「…ただいま」

 

「遅い!一体何して…」

 

振り返って怒鳴ろうとした母親(ゴミ)

俺の惨状を見て黙りこくる。

 

「今日の成果はこんだけだ。俺は休む」

 

金袋を投げ渡しつつ、さっさと奥へ引っ込む。

 

「痛ぇ…酷い目にあった…」

 

腕に応急処置をしてから、注意しつつ寝転がる。

このくらいの怪我はまぁ何度か負っているが、

痛いものは痛いのだ。

 

ふと物音がした方向を見れば、

ブランケットが放り投げてあった。

 

「…中途半端に愛情を見せるなよ。クソ女」

 

ブランケットを被り、痛みを無視して寝た。

今は、何も考えたくない。




キトリの神秘は攻撃能力特化です。
肉体強度普通の生徒より硬くはありますが、最上位陣には及びません。
回復能力はある程度高めですが、規格外という範囲ではありません。
ただし、攻撃面のみはマジもんの化け物で、
『ヴィヴァーチェ』の弾丸の威力はヒナの攻撃を凌駕しています。
また、彼の神秘が攻撃特化なのは翼の影響もあり、
彼に本来あった翼にとって個人規模の攻撃程度は砂粒と同じです。
何故彼の体の一部が全く違う性質を宿しているのかはとある秘密がありますが、それはまた別の機会に
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