幸せに満ちたキヴォトスを作り上げた転生先生と、取り零された1人の罪人   作:ムクロウ

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義肢と傭兵、リボルバーには
ロマンをいくら注ぎ込んでも構わない。
異論は認める所存である。


ゲリラ戦法は傭兵の基本

 

午前11時24分

ゲヘナ自治区のとある一角で、

悪事を企む勢力がいた。

 

「よし、行くぞ」

 

「計画開始だ!」

 

「へへへ…今回こそ風紀委員会に

 一泡吹かせてやる…!」

 

「頼みますよ旦那!」

 

その生徒達が期待の眼差しを向けるのは

義肢の傭兵"ブリキ人形"

 

「…報酬分は働く。過剰な期待はするな。

 相手はあの風紀委員長だ」

 

「もちろん油断はしないっすよ!」

 

「この時の為に必死に準備したんだからな!」

 

確かに凄い戦力だと、周囲を見渡す。

今ここには数百人以上の生徒が集結している。

まさかここまで大規模な作戦だと思わなかった。

その全てが一つの目的を達成しようとしている。

 

それは風紀委員会への襲撃。

そして打倒空崎ヒナである。

 

無論数で勝てる相手ではないことは

不良達もよく分かっている。

 

だが執念の成した芸当なのか、

ここには装甲車や戦車、迫撃砲まである。

さらには自分のような傭兵も複数。

今回の襲撃は

かなり念入りに計画されていることが分かる。

 

「今日こそアイツの戦績に泥をつけてやる…!」

 

「私達の底力を見せてやる…!」

 

「勝つぞ!」

 

「「「おぉー!!」」」

 

「…随分と恨まれてるな、アイツ」

 

装備の点検をしながら、

少し呆れの感情を込めた目線でそれを見る。

 

よく見れば温泉開発部などの

有名どころまで参加している。

 

…美食はいない。

いたら全力逃走一択だったから助かる。

 

「さて、もうすぐ時間だ。

 総員武装しろ!戦争だ!」

 

その合図と共に俺も動き出す。

なんであれ依頼は依頼だ。

俺は俺のすべきことをするまでだ。

 

「…主よ、罪深き私をお許しください」

 

『ヴィヴァーチェ』を額に当て、

天に祈りを捧げてから、

俺もまた戦場へ向かった。

 

 

………………

 

 

「…!視認できました!

 襲撃グループと思われる一団です!

 数は…およそ700人!?

 さらに後方に戦車や装甲車の存在を確認!

 かなり大規模な戦力です!」

 

「…そう、ありがとうアコ」

 

通信越しの報告を聞きながら、

今回の襲撃について考える。

今回は珍しいことに犯行予告までしてきている。

つまり計画的な犯行だ。さらにはこの戦力だ。

おそらく私への恨みがある不良達が結託し、

複数の勢力が働きかけているのだろう。

だけど

 

「…負けるわけにはいかない」

 

ここで負ければ風紀委員会の権威は地に墜ちる。

そうすればゲヘナはさらに混沌とすることになる。

多くの生徒が危険に晒されるだろう。

 

「…」

 

だから勝つ。

どんな相手だろうと必ず倒してみせる。

 

「来たぞー!」

 

「総員!戦闘開始!」

 

「「ォォォオオッ‼︎」」

 

激突

大量の銃弾が飛び交い、砲撃と爆音が鳴り響く。

 

私もトリガーを押しっぱなしにし、

目の前の敵を薙ぎ払う。

 

砲弾や爆弾によって

こちらにも損害は出ているが、比較的優勢だ。

これなら…

 

「っ敵の増援!?

 500人程度が側面から仕掛けてきます!」

 

「「!?」」

 

まさかの増援に動揺が奔る。

 

「イオリは部隊を率いて増援への対処!

 チナツはその補助をお願い!

 アコは私と正面を片付けるわよ!」

 

即座に指示を出す。

この混乱を早急に沈めなければ

指揮系統が崩壊する!

そして…

 

「っ敵襲!?」

 

最悪のタイミングでソイツは現れた。

 

 

………………

 

 

地上の騒動を、俺はインカム越しに聞いていた。

ひたすらタイミングを待つ。

 

『別働隊!突入!』

 

どうやら側面からの攻撃を開始したらしい。

 

『敵!指揮系統に乱れ有り!』

 

今!

 

俺は()()()()()()()を蹴り飛ばして外に飛び出る。

 

「なっ!?コイツどこかr」

 

全弾発射(フルショット)

自陣の中心でマンホールの蓋が空を飛び、

それを呆然と眺めている間に

五発の弾丸が周囲の敵の顎を撃ち抜く。

 

「っ敵襲!敵襲!」

 

バレたな。なら一時撤退だ。

周囲の倒れてるメンバーの手榴弾のピンを抜き、

即座に下水道に戻る。

 

地上で起きた爆発と悲鳴を聞きながら、

リロードしつつ次のポイントへ移動する。

 

俺が選んだのはやはりゲリラ戦法。

そして奇襲性が高いとなると地下だ。

故に俺は下水道に潜み、

マンホールから奇襲を仕掛けることで

指揮系統を混乱させ、

グレネードで損害を与える作戦に出ている。

 

「フッ!」

 

マンホールの蓋を蹴り上げ、飛び出る。

 

「っ今度はこk」

 

全弾発射(フルショット)

相手の反応は良くなって来ているが、

まだまだ遅い為額を撃ち抜く。

そして倒れた奴らのグレネードのピンを抜き

再び下水道に戻る。

 

この戦法は通じて後2回だろう。

今のうちに次の戦法を考えとく必要がある。

 

再度マンホールの蓋を蹴り上げ外に出る。

 

「っ!?お前が奇襲の犯人か!」

 

ゲッ、イオリの前かよ!

 

全弾発射(フルショット)

…4人は仕留めたがイオリには防御されたか

 

「喰らえ!」

 

そういって向けてきた銃を

 

「シッ!」

 

「なっ!?」

 

蹴りを入れて狙いを逸らし、代わりに

 

「しまっ」

 

グレネードを投げつけて下水道に戻る。

爆発音と共に呻き声が聞こえる。

思ったより反応が早い。

これはもう戦法を変えた方がいいな。

 

移動方向を変え、本隊側に進路を取る。

仕事はまだ終わってない。

 

 

………………

 

 

「こちらG班!被害甚大です!」

 

「こちら救護班!負傷者多数!」

 

「こちらK班!

 マンホールからの奇襲でメンバーが…

 グワァッ!?」

 

被害がどんどん広がっている。

発端は予想外の奇襲による混乱だ。

それによって混乱したところに

敵部隊の攻撃を受けて、

私達はかなりのダメージを受けた。

 

「B班はG班の援護に向かって!

 救護班は悪いけど耐えて!

 K班の応答が途絶えた!

 M班はK班の配置に移動!急いで!」

 

指示を飛ばしながら銃を撃つ。

損害を受けてはいるが、未だこちらが優勢だ。

ゲリラ戦法はそう何度も使えるものじゃない。

これ以上混乱させるのは

相手としても難しいだろう。

 

「委員長!奴が!」

 

「!」

 

どうやら"ブリキ人形"が出てきたらしい。

おそらく先程までの

マンホールからの奇襲もヤツの仕業だ。

その姿が今視認できる。

 

「…あれが」

 

"ブリキ人形"

身長はかなり高く、体格もそれなりに大きい。

何より特徴的なのはその腕だ。

明らかに生物のものじゃない機械の腕。

砂漠色のローブと黒い金属製のマスクで

顔は窺い知ることが出来ない。

ヘイローは紫色で

十字架を模した剣が8本、

刃を下にして円を描くように配置され、

鍔の部分を鎖で繋いだデザインのものが

まるで少し右に傾いた王冠のように鎮座している。

今度は何をするつもりーー

 

「…は?」

 

自分の目を疑う。

夢を見ているのかもと目を擦ってみる。

あんなことが現実に起こっていいのだろうか?

 

「な、なんですかあれ!?

 あんなの人間のやれることじゃありません!」

 

「…アコ」

 

「委員長?」

 

「行ってくる」

 

返事を待たずに走り出す。

アレはあまりにも危険だ。

下手をすれば1人で風紀委員会を殲滅しかねない。

だから

 

「私が対処する」

 

 

………………

 

 

味方の陣営に戻ってきたことを確認して、

マンホールの蓋をずらし外に出る。

 

「うぉっ!?って"ブリキ人形"か!

 スゲェよお前!作戦大成功じゃねぇか!」

 

外にいた生徒の賞賛に会釈を返しつつ、

前線に出る。

 

「…まだ劣勢か」

 

あそこまでやってもやはり練度の差は大きい。

こちらの攻めを受け止めきり、

今度はこちらが押され始めている。

 

「…ならインパクトの強い攻撃をしなきゃな」

 

威力や損害よりも、

精神的にくるタイプの方が効くだろう。

そう思い、近くの装甲車に接近する。

 

「…これを借りたい。頼めるか?」

 

「"ブリキ人形"!何か策があるのか?」

 

「常識を疑う力技なら」

 

「それでいい!やってくれ!おい降りるぞ!」

 

どうやら先程の作戦は余程お気に召したらしい。

素直に降りてくれるのはありがたい。

 

「それでどうする…」

 

装甲車を右腕で掴む。

 

「?何を」

 

全力を込める。義腕の駆動部分が唸りを上げる。

給料分は仕事しないと、な?

 

「ォォオオオッ!」

 

「…嘘、だろ?」

 

装甲車を、()()()()()

そして

 

「ッ!!」

 

振りかぶってぇ!

 

「オラァッ!!」

 

投げる!

 

「うぉぉぉぉっ!?」

 

ぶん投げた装甲車は相手の装甲車を

複数巻き込みながらかっ飛んでいく。

 

戦場が停止し、

信じられないものを見る目が俺に向けられる。

 

「動けぇ!」

 

「ハッ!?そ、総員突撃ぃ!」

 

「「オ、オォォォォ!」」

 

俺が声を張り上げれば、

再び戦場に硝煙の匂いが溢れる。

明らかに尻込みしている風紀委員会を

不良グループが押していく。

 

「このままなら雑兵には勝てるだろうが…」

 

飛び退く

先ほどまで俺がいた空間を暴威が通過する。

 

「…風紀委員長のお出ましか」

 

こちらを睨みつけるヒナを視認する。

ヒナがある限りは勝ち目はないだろう。

 

「貴方が"ブリキ人形"?」

 

「そうだな、初めまして。風紀委員長 空崎ヒナ」

 

「えぇ、初めまして。早速なんだけど」

 

互いに銃を向け合う。

 

「職務妨害よ。大人しくして頂戴」

 

「…悪いがこっちも仕事なんでな。

 報酬分は仕事させて貰う」

 

「…そう、なら仕方ないわね」

 

トリガーに指をかける。

 

「貴方は敵よ」

 

ヒナのマシンガンから暴威が飛び出す。

 

それを視認するや否や下水道に降りる。

 

「え…」

 

誰が正面から勝ち目のない戦いをするかよ。

俺は…

 

「くっ、待ちな…ッ!?」

 

卑怯だろうと勝つ道を選ぶ。

追ってきたヒナが覗き込んだ瞬間に

その顔面に弾丸をぶち込む。

大したダメージになってないが、

怯ませられればそれでいい。

 

「シッ!」

 

「これは…ッ!!」

 

スタングレネードを

降りようとするヒナの目の前に投げる。

体勢を崩したヒナはモロに喰らい、

平衡感覚と視覚を一時的に封じられる。

 

俺の銃弾が自分に効かないことを知ったら

十中八九強気に出てくるので

そこに防御の関係ない爆音と閃光を与え、

防御力に頼ってどうにかしようとしたら

モロに喰らうというわけだ。

 

「フッ!」

 

目元を抑えるヒナにグレネードを投げる。

同時にトリガー引く。

 

「よくもやって…」

 

起爆

ヒナの目の前でグレネードを撃ち抜き、

射撃と爆撃の同時攻撃を喰らわせる。

無論こんなもんヒナには効かないが、

完全に地上に押し戻すことに成功した。

 

「っいい加減に、して!」

 

キレたヒナがマンホールの中に

マシンガンを乱射するが、既に俺はそこにいない。

 

「こっちだ、ぞ!」

 

「なっ、グッ!?」

 

別のマンホールに移動しておいた俺は、

ヒナに声を掛けると同時にマンホールの蓋を蹴る。

義脚が唸りを上げ、

マンホールをサッカーボールのように撃ち出し、

ヒナの脇腹に直撃する。

 

「委員長!!」

 

「傭兵なんかに負けないで!」

 

「いけぇ!"ブリキ人形"!」

 

「お前なら行けるぞ!」

 

いつの間にか戦場は一変して

俺とヒナのタイマンとなっており、

どいつもこいつも応援しかしていない。

 

「…もう小細工は終わり?」

 

流石風紀委員長。

大したダメージ喰らっちゃいない。

これまで迫撃砲やら戦車の主砲やら

色々喰らったのに傷一つ見えない。

精々脇腹にダメージがあるくらいか?

 

「さっさとやられて頂戴…!」

 

さて、どうしたものか

バカみたいな威力の銃弾を連射する銃口から

逃げ回りつつ考える。

 

義腕のギミックを使うか?

否、コスト面で釣り合いが取れない。

逃げるか?

否、依頼の達成報告をしていない。

奥の手を使うか?

否、周辺被害がデカ過ぎる。

なら…

 

俺は生身の左手をヒナに向ける。

 

「今度は何を…」

 

俺の神秘を使う。

ヒナが唐突に動きを止め、締め上げられる。

 

「これは…!?」

 

よく見れば空中に光る糸がいくつもある。

至る所に仕掛けられたワイヤーが

ヒナを縛り付けているのだ。

 

「こんなもの…!」

 

ヒナがその余力により

引き千切ろうとワイヤーを引っ張る。

 

爆発

ワイヤーの先に括り付けられていた爆弾が爆発し

 

「マズっ‥!」

 

「っヒナ委員長!?」

 

ワイヤーの繋がった建物が倒壊する。

それはヒナごと多くの風紀委員を飲み込む。

 

「fooooo!」

 

「やりやがったあの野郎!やりやがった!」

 

「俺一生アンタに付いていくぜ!」

 

まぁここまでやっても

 

「…」

 

ヒナには勝てやしない。

瓦礫をどかしながら現れるは、

多少擦り傷などはあれど軽傷のヒナと

何人か重傷ながらまだまだ動ける風紀委員達。

 

「嘘だろ…」

 

「ここまでやってこんだけかよ…」

 

…ここまでだな。

 

「おい」

 

「は、はい!」

 

観戦していた不良に声を掛ける。

 

「ここまでだ」

 

「へ?」

 

「俺の仕事はここまでだ。

 風紀委員会にゲリラ戦を仕掛けて

 ヒナと戦い消耗もさせた。

 充分依頼は達成したと俺は判断した。

 俺は撤収する」

 

「ハイィ!?」

 

銃をホルスターに納め、戦場に背を向ける。

 

「ちょっ待てよ!」

 

引き留める声がするが無視する。

俺の仕事が終わった以上、

アイツと俺は他人同士である。

所詮俺は傭兵である。

 

「ねぇ」

 

「?」

 

ヒナの呼び掛けに振り返る。

 

「ウチに雇われない?」

 

…マスクの下でニヤリと笑う。

 

「…いくらだ?」

 

ヒナは無言で3本指を立てる。

 

「3万か…乗った。依頼内容は?」

 

「ここにいる不良達の捕縛」

 

「了解」

 

Rsh-12をリロードし、ワイヤーを取り出す。

 

「…マジで?」

 

「傭兵だからな」

 

「っ上等だこの野郎!こっちには戦車だって…」

 

三連射

まずうるさいやつの額を撃ち抜き、

次に装甲車のタイヤをパンクさせ、

最後に戦車に乗ろうとしたバカを撃ち落とす。

 

「次」

 

…1時間と経たずに不良が全員

地面に転がったのは言うまでもないだろう。

 

 

………………

 

 

「協力感謝します…でいいのかしら?」

 

「雇われただけだ。何も言わなくていい」

 

ヒナの困惑に答えを言っておく。

報酬が出るから風紀委員会と戦ったし、

雇われたから不良どもをボコした。

ただそれだけだ。

 

それにしても面倒くさかった。

主に行政官がキャンキャンうるさくて

 

「また雇ってもいい?」

 

「俺が要るとも思えんがな」

 

わざわざ傭兵まで雇うほどのことなど、

早々起きはしないだろう。

 

「いえ、例えば美食研究会の監視とか…」

 

「悪いが、失礼する」

 

「えっ」

 

誰がアレと自分から関わるかよ。

 

…この後追いかけてきて気を悪くしたかと

不安そうに聞くヒナに弁明することになった。




主人公は右利きの為、リボルバーは右手に持ってます。
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