幸せに満ちたキヴォトスを作り上げた転生先生と、取り零された1人の罪人 作:ムクロウ
あれによりこの物語の展開もいくつか追加することになったし
後この世界の地下生活者は後々エグめに処します。
主人公の神秘があのゴミの性質と上手いこと噛み合ったので
「んん…」
目が覚める。
ぼんやりとした頭で目を擦ろうとすると
左手が何かに掴まれている。
「…?」
左手に繋がれた手を視線で辿っていくと
「スゥ…」
「…???」
何故かミサキがいた。いや、なんで?
「ん…」
「ふへへ…」
「…」
気づけば俺はアリウススクワッドの4人に
囲まれて寝ていた。
ここ俺の拠点だよな?
なんで当たり前のように侵入してるんだコイツら…
「ハァ…とりあえず起き…っぶね!?」
昔の癖で右手を突こうとして、
危うくバランスを崩しかける。
4人がいたことで今の体の状態を忘れていた。
それだけ安心していたということだろう。
「んぅ…何…?」
マズイ!?ミサキが起きっ
「…キー兄ぃ」
「…おはよう。ミサキ」
もう潔く諦めて、起きたミサキに挨拶する。
「…」
ミサキは無言のままこちらに擦り寄り、
俺の胸元に顔を埋める。
「…ミサキ?」
「…黙って」
「…はいはい」
疑問に涙声で返され、
苦笑しつつゆっくりと頭を撫でる。
こうなったミサキはしばらく動かない。
なら、安心するまで付き合ってやるのが
兄貴分の俺がやるべきことだろう。
「んぁ…」
「んぅ…」
…そろそろサオリとアツコも起きるな。
ヒヨリはまだ呑気に夢の中だが
「キー兄ぃ…?」
「兄さん…」
まだ寝ぼけているのか、
ぼんやりとこちらを見つめる2人。
「…おはよう。サオリ、アツコ」
「…あぁ、おはよう」
「…うん、おはよう」
2人は目に涙を浮かべつつ笑顔でそう返す。
こんなに泣き虫だったかね?
「…おいで」
左手で手招きする。
「久しぶりの兄さんだ〜…」
そう言いながら右側に引っ付くアツコ。
「わ、私は…」
「サオリ」
「…」
サオリもおずおずと背中に寄り掛かる。
「…」
「分かった分かった」
ミサキが頭をグリグリと押し付けるので、
撫でるのを再開する。
「どうやってここに?」
「ケイと名乗る声に入れて貰った」
「なるほどな」
どつやって入ってきたかと思っていたが
keyが手引きしてたのか、なら納得だ。
「…怒ってるか?」
「家族が家にいるくらいで怒るわけないだろ」
驚きこそしたが、怒ることはない。
何かされた訳でも無いしな。
「…無警戒過ぎ」
おっ、ミサキが復活したか
「そもkeyがいるから
本来侵入は困難だからな。
もしそれで行けても
俺のワイヤー網の解除方法知ってるのは
俺が気を許した奴らだけだし」
「それもそうだな…」
「兄さんの家族じゃなかったら
私達も入れなかった」
「そもそもここに辿り着けないだろうし」
ここの存在を教えているのは
ミサキとkey、あと2人のみだ。
その2人はまだバレていないと思われるので
ここに来ることはしばらくないだろう。
…ミレニアムに行けない理由が増えたな。
「んへぇ…?皆さん起きてるんですかぁ…?」
目を擦りながらヒヨリは起き上がり
「おはよう、ヒヨリ」
「…はぇ!?にーさん!?」
俺の声を聞いて飛び上がる。
「…ヒヨリ、驚き過ぎ」
「だ、だってにーさんですよぉ!?
はっ!?まさか成仏できずに悪霊に…」
「誰が悪霊だ。勝手に殺すな」
俺がツッコミを入れていると
アツコがクスクスと笑う。
「…懐かしいね。あの頃みたい」
「…そうだな」
「…生きてて良かった」
ミサキの絞り出すような一言に3人が頷く。
「…簡単にゃ死なねぇよ、俺は」
「いや、アレは普通死んでる」
「まぁ、それはそうだな」
チョイチョイとアツコに服を引っ張られる。
「おかえり、兄さん」
「…あぁ、ただいま」
「…」
ミサキが不機嫌そうに頭突きをしてくる。
「ふふっ、ごめんねミッちゃん。
抜け駆けしちゃって」
「…別に」
「そうだぞアツコ。
私もキー兄ぃにおかえりと言いたかった」
「えへへ…
私は後で抱きしめて貰えればそれで…」
「妥協したみたいに言ってるけど
圧倒的にそっちが上だからな?」
こうして俺は、
2年ぶりに家族と再会したのだった。
………………
改めて起き上がり、
メンテナンスの終わった義肢を付け直す。
「…腕と脚、何で失ったの?」
「ん?」
右腕をドローン付けて貰っていると
ミサキが少し辛そうに聞いてくる。
「キー兄ぃは強い。
私達4人相手くらいなら
真正面から捩じ伏せられたでしょ?」
「この有様じゃそれも厳しいがな」
後先考えずにやれば話は別だが、
今の俺は義肢のギミック有りでも
昔の俺程強くない。
「そんなキー兄ぃが手足を
失うような事態なんてそう無い。
そう、例えば…ミサイルみたいな」
…半分確信してるって顔だな。
よく見りゃ4人ともそんな顔付きだ。
keyがなんか喋ったか?
ちょうど義肢を付け終わったので立ち上がる。
「…まぁそういうことだ。否定はしねぇよ」
「っ…!」
慰めてはやれない。
それは罪として背負い続けるべきものだ。
「ごめん、なさいっ…!
私達のせいで…
あんなに強かったキー兄ぃがこんなっ…!」
ミサキはそう言って泣きじゃくる。
今日は泣き虫だな。
いつもはあんなにムスッとしているのに。
「…今更意味など無いと分かっている。
それでも…すまない…キー兄ぃ。
私達が貴方の未来を奪ってしまった…
本当にっ…すまない…!」
サオリがそう言って土下座しようとする。
サオリと俺の謝り方はよく似ている。
俺の真似をしたから当然と言えば当然だが。
「…兄さん。これからは私達が助ける。
大丈夫。どんなお願いも聞くよ。
私達がしてしまったことは
取り返しがつかないけど、
それでも兄さんが嫌でなければ、
側で助けさせて?償えるとは思わないけど
それでも少しでも兄さんが楽出来るように
私達頑張るから…
…きらいにならないで…」
アツコが光を失った目でこちらに縋る。
ここまで余裕のない姿はあまり見ない。
慕われる程立派な兄ではないんだが…
「なんでもしますから…
にーさんが虚しくなってしまわないように
奪っちゃった手足の代わりを私達がしますから…
見捨てないでください〜…」
ヒヨリも珍しくしおらしくなっている。
なんだか他3人より厚かましいのは
やはり性格の問題だろうか?
…とりあえず
「サオリ、土下座はやめろ。
家族の土下座なんざ見ても
気分が晴れるどころか曇る一方だわ」
土下座をしようとするサオリを
義腕で首根っこを掴んで立たせる。
「…だが」
「やかましい。いいから話を聞け」
「…」
そういうとサオリは黙り込む。
その目は後悔に彩られているが、
ほんの僅かに恐怖が混じっている。
…恐らく俺に見限られるとか、
縁を切られることを恐れている。
この場にいる5人は家族だ。
俺が失ったものは絶大で
縁を切られても仕方ないと理解しつつも、
やはり4人とも
俺との繋がりが無くなることを恐れている。
…かくいう俺も嫌だが。
「…お前らに言いたいことはそう無い。
今更言葉にしてところで何も変わらないし、
失われたものは戻ってこない」
だからこそ俺は厳しくあろう。
俺達が家族で居られなくなったとしても、
幸せになってもらう為にお前達を叱ろう。
「なので、一つだけ。
一つだけこの件に関して言葉を送ろう。
それ以外の言及は禁止だ」
「っ…それは!」
「ミサキ」
「…っ」
…これはきっと呪いだ。
本来なら言うべきでは無いんだろう。
それでも、俺はそれを口にする。
「俺はお前達を1ミリたりとも恨みはしない。
だが、二度と許すこともしない。
罪の十字架は、
背負い続けるから意味があるんだ」
謝罪する?償う?善行で相殺?
もちろんそれらはすべきだが、
何もかももう既に手遅れだ。
これがもし家族や友人でなければ、
俺はとっくの昔に八つ裂きにしてる。
だからと言って俺は家族を恨みたくない。
それが出来るほど
俺の心に余裕はないし、強くもない。
だから、こう言ったのだ。
恨まないし許さない
だから、謝罪も恨み言も必要ない
この事についてはもう話さないように、と。
ようは事実上の事象の削除だ。
罪の意識は各々に残るが、
具体的に何が起こったかは俺しか知らない。
そして、そのことについて聞くことは禁止した。
話せばきっと後悔は深くなるし、
俺自身も辛くなるから。
きっとこの選択は逃げだ。
だが、俺は罪の消し方なんて知らない。
「…」
「あぁ、それとは別にもう一つ」
「何を…?」
「俺はお前らが罪人だと言ったが、安心しろ。
さらには
むしろ俺が関わったらいけないレベルであって、
お前らが負い目を感じる必要はねぇよ」
そう言って、俺は膝をつき頭を地面に付ける。
「偉そうなことを言っておきながら
何のつもりだと思うかもしれないが、
どうか俺にも謝らせて欲しい。
家族を優先せずに個人の感情を優先した結果、
お前達が長い間苦しめられ
罪を犯すことになってしまったこと、
ここに深く謝罪する。
今更俺の言葉など意味が無いと思うが
それでも言わせて欲しい。
本当にすまなかった。
そして出来ることなら、
俺に縛られずに生きてくれ。
俺は俺で罪を背負い、
陰ながらお前達に償い続けよう。
お前達が償いをしたいというのなら、
お前達の笑顔を見ることが俺の幸せだ。
どうか、幸せになってくれ」
「っ…やめてくれキー兄ぃ!頭を上げてくれ!
キー兄ぃがいたことで罪が増えたとか、
そういう話ならそれはキー兄ぃのせいでは」
「違う」
土下座から起こされながらも
サオリの言葉をキッパリと否定する。
「違う、違うんだよサオリ。
あの日俺が家族を優先していたら、
お前達だけじゃなくアリウスのみんなも
今より余程マシな状態だったんだ。
俺が…俺があの時自分を優先しなかったら
こんなことにはならなかったんだよ!!」
絶叫する。
胸に激痛が奔り、思わず抑える。
抑えつけていた罪悪感が爆発する。
「あの時も!あの時も!
俺のミスでどれだけの人が傷ついた!?
俺が正しい選択をしただけで、
どれだけの人が幸せでいられた!?
俺はその場にいるだけで
周囲が不幸になる厄病神なんだよ!!」
「兄さん!」
アツコの声に正気に戻る、
「…すまない。お前達に当たってしまった。
お前達に償うと言った矢先にこれだ。
本当に、情けない…」
自己嫌悪で潰れそうだ。
なんでいつも俺はこうなんだ。
「…どうする?リーダー」
「…キー兄ぃが沈んだ時に、
やることは一つしかないだろう?」
「…やっぱり私達は、あんまり変わってないね」
「そうですね…」
…?何を…
「んっ」
「失礼する」
「ぎゅっ」
「え、えいっ」
「なっ…」
4人に抱きつかれ、思わず体が硬直する。
「…落ち着いて」
「深呼吸だ」
「大丈夫だから」
「にーさんからも抱きしめてください」
…敵わないというか何というか。
「ごめん…ごめんなぁ…」
「兄さん」
アツコが真剣な顔で話す。
「例え許されないことをしていても、
私達にとって兄さんは大切な家族だよ。
兄さんもそうでしょ?」
「…そうだな」
「なら、自分から遠ざけようなんてしないで?
一緒にいないと寂しいのは、
兄さんだけじゃないんだよ?」
「…そこは兄離れして欲しいがな」
「本当にそう思ってる?」
「もちろん」
紛れもない本心だ。本心が複数個あるだけで
「…頑固者」
「昔からそうだろ?」
「そ、そうですよ〜!
にーさんは元から頭カチカチですから、
何言ったって意味ないんです〜」
…ヒヨリの顔を左手で掴み、
アイアンクローをかける。
「いい加減にしとけよ?」
「うわぁ〜ん!謝りますから離してくださ〜い!
顔が潰れちゃいそうです〜!」
ったく、真剣な話をする時にヒヨリがいると
途端にコミカルになるのは本当に由々しき問題だ。
「…兄さん、私達は恨んでないよ。
だって、私達は今幸せなんだもん」
「だが…」
「…自分を責めるのはいいけど、
ちょっとやり過ぎ。
なんでも1人で解決できると思ってるの?」
「うぐ…」
ミサキに痛い所を突かれる。
「…今は私達との時間。
あの日に死んだみたいな消え方して
2年も連絡しなかったんだから、
私達に悪いと思うなら一緒にいて」
「…」
ぐうの音も出ねぇや…
「キー兄ぃは、私達と一緒にいるのは嫌か?
嫌なら…」
「嫌じゃねぇよ」
家族と一緒にいるのが嫌なわけがない。
「なら一緒にいましょうよぉ!
私達はにーさんが生きてて嬉しいんですぅ!
すぐにお別れなんて悲し過ぎますよぉ!
後そろそろ手を離してくださぁい!」
…最後のが無ければいい感じだったのに
この子なんでこんなに残念なんだろう?
「…飯食うか?」
「…うん」
「手伝おう」
「私も」
「わ、私は待ってますぅ…」
「お前は連れてく」
「あ、あんまりですぅ〜!」
…俺達は罪人だ。
それでもこうやって平和でいられるなら、
まぁ悪くないと、そう思った。
・瑠璃唐キトリ
精神崩壊寸前の限界状態
罪悪感に常に心を削られ続けている。
罪に対する考え方と、大切な人への愛情の板挟みで
矛盾し続ける自分に苦しみ続ける可哀想な人
彼の思考は万華鏡のようになっており、
複数の本心が入り乱れるカオスとなっている。
また義肢になる前の強さの話をするなら、
一年生のヒナとミカとホシノの乱戦にカチコミ仕掛けて全員制圧できる程度の実力。