幸せに満ちたキヴォトスを作り上げた転生先生と、取り零された1人の罪人 作:ムクロウ
「key!ルートを検索!」
『300m先を右に曲がり、
その後突き当たりの廃ビルへ向かってください』
俺は今捜索隊の捜査網を掻い潜りながら
最速でとある場所へ向かっている。
「どこもかしこも封鎖されてやがる!
そんなに俺を見つけたいか!」
『見つけたいでしょうね。
キトリに堕とされたのは
軒並み主要人物ばかりですし』
「テメェその語彙どっから学んできた!?」
keyと不毛な言い合いをしながら走り、
廃ビルに到着する。
『そのまま屋上へ』
「了解」
俺は廃ビルの屋上を見上げ、
左手からワイヤーを伸ばして引っ掛ける。
そして…
「シッ!」
そこを起点に自分を引っ張り上げて
一気に屋上へと登る。
『600m先に狙撃手が2人います。
気付かれないようにしてください。
このまま屋上を乗り継いで行きます』
「はいはい」
ワイヤーを何度も伸び縮みして
高速で建物の上を飛び回る。
こんな状況でも無ければ
ビルの間をぶら下がるようにして
さらに速く移動もできるのだが
それは流石に目立ち過ぎるので今は出来ない。
にしても…
「本当に誰も居ないのか?
なんかの間違いで誰かいたら
確実に面倒なことになるんだが…」
『大丈夫です。
現在ミレニアムのゲーム開発部の部室は
生物のいない無人の状態です』
そう、今現在俺はミレニアムの領土を
対空レーダーに検知されないようにしつつ
飛び回っているのだ。
下手な場所に身を隠しても
何かしらに巻き込まれれば即露見する。
ならばいっそ想定外の場所ということで
ミレニアムに侵入してしまうことにしたのだ。
「…この辺りか?」
『はい。その次のビルで降りて、
その後真っ直ぐ直進です』
「なるほど…なっ!」
言われたビルに乗り継ぎ、
そのままビル側面を滑走する。
「ヒャッハァァァァ!!」
窓ガラスの破砕音を鳴らしながら落ちる。
周辺に人影がないから出来る芸当である。
そうして着地する寸前に
引っ掛けておいたワイヤーを引っ張り
「よっ!」
慣性を殺して着地する。
『あまり騒ぎを起こさないでください。
もっと静かに降りられたはずです』
「このくらいは許してくれ。
最近ストレスがエグいんだ」
実際吐きそうなレベルのストレスだ。
何故こんな目に合わなければならないのか?
『自業自得では?』
「厳しいねぇ…その通りだけど」
そう言いながらも足は止めない。
直線を高速で突っ走る。
が、妨害が無いわけじゃない。
「っロボット兵か!」
進路上にいくつもの警備ロボットが現れる。
「key!無力化は!」
『このデバイスでは時間が足りません』
なら破壊する!
速度を維持したままロボット兵に突っ込む。
先頭のロボット3体に銃口が向けられた瞬間
スライディングして狙いを逸らし
3連射
「甘ぇんだよ!」
『ヴィヴァーチェ』で3体の頭を吹き飛ばす。
遅れて動き出した残りのロボットには
「お土産!」
グレネードを投げつけ、
自身はワイヤーを前に伸ばして離脱する。
爆発
その爆風を加速に利用して再び走り出す。
「key!今ので何人気づいた!」
『現在不審感を感じた人物は3名。
内2名がこちらに向かっています』
「クソッ!」
残骸は爆破して四散させたが、
だとしても時間稼ぎにしかならないか!
「このまま部室に行って大丈夫か!?
普通に見つかる予感があるんだが!?」
『それでも他の場所よりはマシかと』
それはそうなので、無我夢中で走り抜ける。
「着いた!key!」
『…防犯システムを一部無効化します』
目の前の窓をハッキングして侵入する。
警報などはkeyのお陰で鳴らない。
「ヨォシ、どうにかなった!
マジで疲れた〜…」
『お疲れ様です』
「keyもお疲れ様」
『…私は機械ですので疲れませんが』
「だとしてもだ。
労いってのは誰にでもすべきだと俺は思う」
『…では報酬を下さい』
「おっ?珍しいな?
まぁとりあえず言ってみろ。
叶えられるかは別問題だがな」
そんな話をしながら部室のドアに手を掛ける。
『私の願いは…』
ドアを開ける。
『王女と貴方の対話です』
「…は?」
そこには…
「パンパカパーン!
アリスは魔法使いと合流しました!」
満面の笑みを浮かべたアリスがいた。
「…裏切ったなkeyぃぃぃぃい!?」
『いえ、私は嘘はついていません』
「無人じゃねぇじゃん!生物いるじゃん!」
『いえ、王女は機械です。
故に人でも生物でもありません』
「コイツッ…!」
屁理屈並べてくせに間違ってねぇの腹立つわぁ…
「名前を教えてください!
アリスは天童アリスです!
ジョブは勇者です!
アリスと呼んでください!」
「…瑠璃唐キトリだ。
魔法使いってのはやめてくれ。
キトリでいい」
フードを脱ぎ、マスクを外す。
「…?キトリは魔法使いでしょう?」
「…まぁそうだが、皆には内緒なんだよ」
「…!なるほど!
正体を隠してるのですね!」
「…そういうこと」
あー眩しい!
純粋な瞳が眩しくて仕方ねぇよ俺はぁ!
「んで?なんで俺を呼んだ?」
おそらくkeyがアリスに俺のことを話して、
アリスが俺に会いたいと言ったのだろう。
「アリスはお礼がしたかったのです!」
「…あぁ、そういうこと」
「はい!keyを助けてくれて、
ありがとうございます!」
「気にすんな。俺は約束を守っただけだ」
「約束…?」
「クエストみたいなものだよ。
俺はそれをいくつも受けて、
いくつも達成してる。
その中の一つをkeyを救うことで達成したんだ」
「わぁっ…!キトリは魔法使いらしく
冒険者として働いているんですね!
人助けのクエストの複数受注なんて
キトリも勇者ですね!」
「…俺は勇者にはなれないよ。
それに勇者はアリスだろう?」
「はい!アリスは勇者です!」
「なら俺は魔法使いさ。
勇者の旅路を支える仲間でいい」
そう言いながらアリスの頭を撫でる。
「〜♪」
クッソ可愛いなコイツ。
小さい頃のアツコとかヒヨリを思い出す。
「…?キトリ、腕はどうしたんですか?
それに脚も…アリスと同じになってます。
それに
「あぁ、アリスが見たのは
もしも完全な状態だった場合の俺の姿だよ。
本来の俺の姿はそれなんだけど、
色々あってね」
「なるほど!
つまりは弱体化してるんですね!」
「そういうこと」
そうかぁ…そうだよなぁ…
精神世界でしか会ってないから
そりゃ俺の精神の姿しか知らんよな〜
「では魔法使いよ!
勇者と共に旅に出ましょう!」
そう言ってアリスは
ゲームのコントローラーを渡してくる。
…普段の俺なら断っていただろう。
だが今の俺はストレス多量摂取で
娯楽に飢えていた。
「…key、敵が接近してきたら知らせろ」
『了解しました』
小声で指示を出しつつ、
アリスからコントローラーを受け取る。
「勇者よ、どんな世界へ旅に出る?」
「このゲームをしましょう!」
そう言って取り出して来たのは…
「…fps…だと…?」
これは…長い旅になりそうだ。
………………
「ええい畜生
このゲームクソゲー過ぎるだろ!」
「キトリ!右に敵が!」
「嘘だろさっきまで居なかった…
ミギャーッ!?」
「キトリがやられてしまいまし…
アリスもやられましたー!?」
…あれからどれだけの時間が経っただろう。
fpsを一緒にやり始めたのは良かったが、
流石ゲーム開発部、見事なクソゲーだ。
バグ、グリッチ、なんでもありな癖に
システムに干渉するチート行為には
絶対防御を誇っている。
その技術をもっと完成度を高める方に使ってくれ…
ちなみにだが
このゲームを作った会社は倒産してるらしい。
当然の末路である。
「もう一戦です!」
「おうよ!」
そうしてまたステージを開始して…
『…敵の接近を確認』
「…マジか、誰だ?」
『監視カメラをハッキング…
早瀬ユウカです。
他のゲーム開発部のメンバーが
後ろに着いてきています』
うーん…ステージは始まってしまったが、
流石にここにいるわけにも…
「ってもう死んでる…
まぁいいや、心置きなく去れる」
フードを被り、マスクを付け直す。
「もう行っちゃうんですか?」
「あぁ、魔法使いは忙しくてね。
今日は楽しかったよ。またね、アリス」
「はい!また一緒にゲームをしましょう!」
そう言って、部室の窓から脱出する。
「さてkey、脱出ルートの検索だ」
『はい、前方400メートル先を右に、その後…
っ!?生体反応高速接近!上です!』
「っマジか!?」
慌てて見上げると
「ハハハッ!本当にいるじゃねぇか侵入者!」
「ネルッ…!」
ミレニアムの最高戦力、
美柑ネルがこちらに向かって飛び降りて来ていた。
「オラオラオラァ!」
二丁のサブマシンガン
『ツイン・ドラゴン』が火を吹く
「チィッ!?」
右手の義手で銃弾を防ぎつつ、
神秘を使用して左手を振るう
「おっとぉ!」
5指から伸びたワイヤーを器用にすり抜けるネル。
当たってくれれば楽だったんだがなぁ
ネルが着地すると同時に、
俺も『ヴィヴァーチェ』を構える。
「よぉキトリィ!
久しぶりの再会なんだからフード取れよぉ!」
「再会の挨拶代わりに
銃ぶっ放しといてほざいてんじゃねぇよ!」
1人だけゲヘナみてぇなことしやがって!
「ちょ、ちょっと何事!?」
げっ…!
「ネルと…ふ、不審者!?」
「否定できねぇ…!」
ユウカが出てきやがった!
そりゃそうか!銃声してるもんな!
2年前と比べて
成長した姿を見られて嬉しいよクソが!
「キトリ…!」
あ、アリス今はマズッ…
「…キトリ?」
あ〜あ…もう知らね。
「貴方キトリなの!?え、その腕と脚は!?
というかフード取って!取りなさい!」
「人違いでーす
俺はただの侵入者でーす」
「…ネル、捕まえて」
「了解!」
ネルが突っ込んでくる。
「key、EMP準備」
『了解』
そう言いつつワイヤーを引っ掛けて
校舎の上空へと避難する。
「逃がさない…!ウタハ!」
「了解した。対空システム起動」
校舎の屋根が展開して対空砲が出てくる。
「fir『EMP起動』」
「なっ!?」
それらが起動する前にkeyが停止させる。
「何そのドローン!?」
「あれはkeyです!」
アリスぅ…説明しないでぇ…
「key…!?
あぁもう意味が分からない!
とりあえず絶対全部説明して貰います!」
「悪いが」
左手を水平に
少し遠くに見えるビルにワイヤーを引っ掛け
「さよならだ」
ドローンを引っ掴んで高速で離脱する。
「ちょっと、待ちなs」
キレたユウカを置いてけぼりにして
ビルの側面に着地。ドローンを離す。
そのままワイヤーを使って降下する。
『…反応アリ、迫撃砲に狙われています』
「なりふり構えよミレニアム…!」
急いで別のビルに飛び移ると同時に
さっきまで居たビルの壁が爆散する。
「クソが…!ユウカのやつ
リオかヒマリに連絡しやがったな…!」
ここまで正確な砲撃には
それなりの演算装置が必要になる。
それらをこんなにも早く準備出来るのは
権力も頭脳もあるあの2人だけだ!
「アイツらにバレたとなると
ミレニアムも本格参戦決定かよ!
ノアには伝わってないだろうな!?」
アイツだけは覚えてしまってる可能性がある!
その場合…
「監禁される…!間違いなく…!」
まだ忘れてるから他はマシなんだよ!
もし思い出しなんてしてみろ!
第何回目かのキヴォトス崩壊RTA開幕だ!
俺はクソボケでもチェリーでもねぇんだよ!
好意なんざ向けられ飽きてる!
「っとぉ!?」
二発目の砲撃を回避しつつ
脚のギミックを作動させ、
ブースターを展開する。
「take off!」
ブースターの点火と同時に、
keyのドローンも変形して、
高速移動モードに切り替わる。
駆動音が大きく隠密行動には向かないが、
今は離脱優先である。
「あばよミレニアム。探しに来るなよ!」
絶対に無理と分かっているが、
それでも捨て台詞を吐きつつ空を飛ぶ。
『…敵が増えましたね』
「逃げ切るのは無理かもなぁ…
せめて一つは学校落ち着かせてから
ミレニアム片付けるつもりだったのに…」
…そして不幸は続くもので
『キトリ、前方に…』
「…あぁ、分かってるよ」
前からヘリが複数機飛んでくる。
地上にもかなりの数の戦車がいる。
「キトリさん!」
…ナギサか。
ということはこの部隊はティーパーティだな。
「一緒に付いてきてくれませんか?
ただ貴方を保護したいだけなのです!
決して不快な思いはさせませんので!」
「悪いなナギサ。
どう足掻いても戦争してる未来しか見えん」
俺がここで付いていけば、
待っているのはキヴォトス大戦争だ。
「そう言うと思いました…
貴方は度を超えて優しいから!」
「俺は優しくなんて無いよ。弱いだけさ」
そうだ。俺が強ければあの時もみんなを…
「ッ…」
喉の奥から何かが迫り上がって来るのを
精神を落ち着けて堪える。
それに気づかないナギサではなく、
こちらをキッと睨みつける。
「…貴方はいつもそうです。
本当は辛くて苦しくて堪らないくせに、
私達を頼ろうともしない…ですが!」
部隊全ての照準がこちらを向く。
「今日こそは変えてみせます!
例え貴方を傷つけることになったとしても、
貴方を助け出して見せる!」
「…そうかい」
…ナギサの言葉は嬉しい。
覚悟を持って助けようとしてくれているのだ。
嬉しく無いはずがない。
だけど…
「…手遅れだ。何もかも」
マスクを外し、フードを取る。
それと同時にヘイローが回る。
8本の剣の切先が外に向けられると同時に
鎖を張り詰めた状態で高速回転する。
これを行うということは
「っ…!やはりそう来ますか!」
本気を出すということだ。
『ヴィヴァーチェ』をホルスターに仕舞う。
「…?なぜ武器を」
その代わりとして
「reactor on」
義碗がリアクターを展開する。
俺の義腕は複数の兵装を仕込んだ戦略兵器だ。
左の5指からもワイヤーを出し、
いつでも移動出来るように待機させる。
「key、殲滅モードに切り替えろ」
『了解』
keyのドローンも全武装を展開する。
「…それが今のあなたの本気なんですね」
「あぁ、あの頃よりもかなり落ちたがな」
「…分かりました。
では私達もまた、全力を尽くすとしましょう」
「…主の導きがあらんことを」
「各員!戦闘準備!」
次回ガチ戦闘!
ロマンを沢山詰め込んでやろう!