恐竜惑星とジーンダイバーのMOゲームを実況します   作:あーぷ

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カタストロフを振り返ろう

 

 

 ユキちゃんこと、ギラグールの女司令官。フルネーム『雪深き冬に生まれ白き破滅を超越する強き娘』の正式加入は、ワールド5の半ばからだ。

 

 なんでまぁ、当面のあいだはお預けってことになる。今回のワールド3終了後から、ワールド4のシナリオ進行中に掛けては、彼女は中生代のギラグール基地の取り纏めに携わるとのこと。

 

 そのためしばしの別れを惜しむとしましょう。さようならユキちゃん……。

 

 

 

 あ、ちなみに。正式加入時の性能も。行動ルーチンも。ワールド3最終ステージでゲスト参戦したときのあのザマから、まんま据え置きだからね?

 

 

 

 敵の当たり判定が消えてるタイミングで、浮かせ技ぶっぱして盛大に隙を晒すのは毎度のことだし。複数の雑魚に囲まれてるのに一体だけロックしつつ、延々空中コンボを続けるお立ち台っぷりも変わらない。

 

 必殺のエア空投げ(ようはスカり)で空中で静止して、上方面に判定の厚い対空攻撃のマトになってるのもお約束である。震えるがよい。

 

 

 

 

 

 

 ゲスト参戦時のステージであるギラグールの本拠地戦。あの場面における敵キャラは、ラスボスたる第一疾走者含めて、人サイズの相手がほとんどだった。

 

 そのおかげもあって、完走出来るかは置いといてもコンボ自体はきちんと入ることが多かった。だからこそ彼女も一端のダメージ・ディーラーとして、そこそこ役割を果たすことができていたんだな。

 

 

 

 んがしかし。後ほど、古生代の不思議生物たちを相手にするにあたって、状況は変わる。事もあろうに悪い方角へと。

 

 浮かせて殴ってる途中でロックが外れて、今回に輪をかけてぽとぽとと地面に落としたり。あまつさえ、コンボ始動の浮かせ技自体が機能せずに――敵によって判定にバラつきはあるが、基本的に一定サイズ以上には浮かせて繋げるコンボはほぼ通らないと見ておいたほうが良いように思う――単発ダメージを与えるだけで終わったりする場面が、随所で見られるようになる。

 

 ……なってしまうんだよなあ、これが。

 

 

 

 つまるところ要介護認定度悪化! なんでありまして。そんな君が好きなんだという奇特な人以外。ほとんど使わないまま拠点に放置、ってケースが大多数なんじゃあなかろうか。

 

 自分は初回プレイの頃からあんがいパーティ・インさせていたけども……ぶっちゃけ、特に拘りなくNPC込みでプレイする場合。彼女と似たようなタイミングで選択可能になるフィラか、ナオーのどっちかを混ぜとくほうが二百万倍マシかと思われる。

 

 

 

 遠距離攻撃主体のヤツらは、いつでもどこでも無難オブ無難だ。

 

 押せ押せで行くならナオー、どっしり構えるならフィラと、使い分けも分かりやすく強力でもある。もちろん二人で揃い踏みもアリと至れり尽くせり。

 

 

 

 ユキちゃんにも、フォロルどもへの優遇っぷりを少しくらい分けてあげてほしいもんだよなあ。

 

 そもそも原作設定に忠実にいくのなら。両種族間には、単騎だと段違いの身体能力差があるはずだってのにさ。

 

 

 

 肉食恐竜(トロオドン)草食恐竜(レエリナサウラ)という、それぞれの出自の差がそのまま基礎能力(ステータス)に反映されている。

 

 実際、本ゲームの本拠地戦でこっちを一緒くたになって襲ってくるギラグール猟兵とフォロル一般兵を比較する限り。体力ゲージの長さ、攻撃力、行動速度。諸々、前者のほうが厄介な相手として調整されているのは明白なのだった。

 

 

 

 

 

 

 とはいえ、ユキちゃんに関してはギラグールというプレイアブル・キャラクターの構造的な問題だから、そのへんなかなか難しいのかもしれないけれど。

 

 空中での機動力とトップクラスのコンボ火力を引っ提げて、対人戦だと無類の強さを発揮するギラグールである。しかしながら、もともと通常ステージでの狩り効率については下から数えた方が早いくらいで、大凡、プグラシュティクとブービー争いしているレベルにあったりもする。

 

 

 

 ついでに操作難易度もかなり高い。そのあたりのハンデキャップが、しっかりばっちり味方NPCにも乗ってきてしまっているってのが、ユキちゃんの抱えし悲しき実情かと思われる。

 

 

 

 ……ゲスト参戦時の演出自体はカッコ良かったんだけどねえ、彼女。

 

 特に、当該ステージの最後(ラスト)のあたりな。決闘の果てに膝をつき、己の敗北を認めた第一疾走者。

 

 彼女が「我を継ぐが良い、強き娘よ」とか言って。相対するユキちゃんがその言葉を堂々受け入れ、無言で身を翻すシーンなんかは実にイカしていたと思う。

 

 

 

 女系社会たるギラグールの、苛烈な世代交代って感じが鮮やかに表現されていた。もしあの場にGOOD評価ボタンなんかがあったなら。自分的には全力で連打してたのが間違いない。

 

 

 

 まぁ、その前段階のボス戦闘が、ほんとグダグダだったんで感動七割減でもあったわけだが。

 

 とりわけ「後ワンコンボで終わり! 決めてくれユキちゃん!」というシーンで。エリアルに蹴り上げた瀕死の第一疾走者を、見事に空コン途中でポトリと落としてくれて、そのくせコンボレシピ自体は最後まで完走。自分だけ滞空しながら後半全スカりの醜態は、マジでやめてほしかったであります。

 

 やめてくんないけど。ていうか正式参戦後も、エアコンボ(アレ)って彼女の立派なお家芸なんだけど。

 

 

 

 ワールド6あたりまで進めると、またぞろ人型の敵が増えてくる。そこまで行ければ、ユキちゃんも、まだ使えなくもないかとは思うんだけどねえ。

 

 実際、敵単独相手にちゃんと動いてくれたときの総火力自体はかなり高めではあるんだ。コンボ中の拘束力を活かして、一時的な足止め役として彼女をカウントするのも良いだろう。

 

 少なくとも、道中出てくるスネーカー戦闘実行体あたりの強雑魚を、浮かせて一匹ずつ受け持ってもらうくらいのことならできるのだ。

 

 

 

 ただ、敵を延々お空でお手玉して、キャラクター・オブジェクトの接地判定を剥がしてくれるのはいつ何時でも同じこと。

 

 したがって、残念ながら。プレイヤーの普段の立ち回りや使用種族との噛み合わせが悪いと、全力でイラつかされるハメになる。そういう悪目立ちする欠点自体は、どこに行こうと一向に変わりようがなかったりもする。

 

 

 

 なかでも、ホモ・ギガンテウスとの相性の悪さは芸術点が高い。

 

 ギガントって種族の宿痾として、敵の接地判定が消えてると主力の投げ技が入らない。また、ユキちゃんがプレイヤーの目の前でポンポン飛び回るせいで、ヘイト管理スキルの『ドラミング』による敵のターゲット操作も機能しづらい。

 

 その他諸々。何をする場合にも、互いに互いの邪魔をしてしまいがち。悪い意味で噛み合ってしまってる。

 

 

 

 そのため、戦闘中のユキちゃんハッスル時におきまして。往々にしてギガント(こっち)側はスゴスゴ後ろに下がった上で、スリングぶん回して石でも投げつけておく以外、ほとんどやることがなくなってしまうのだー。ふはははは。

 

 

 

 ……つらーい。

 

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 

 

 [P-T境界]の大絶滅、と言えば。ビッグ・ファイブと呼ばれる地球史における五大大量絶滅のなかでも、その規模、深刻さ共に最大のものとされている。

 

 このペルム紀後期に起こったカタストロフは、およそ2億6000万年前と、2億5000万年前の二度の絶滅事変が組み合わさって発生したと考えられており……種レベルでの絶滅率は90%オーバーの大台を突破。事変の勃発以後においても、長きに渡ってその爪痕が残り続けることになった。

 

 

 

 被害のスケールは白亜期末の大絶滅(こっちは70%程度の絶滅率かつ、科レベル多様性の回復のために要した時間がせいぜい数百万年のオーダーだ)を大幅に上回る。

 

 事実、次の三畳紀、ないしトリアス紀を通して、ここに来るまでずっと右肩上がりが続いていた生物多様性は、一転して伸び悩みの時期に突入してしまった。

 

 科単位で見た場合のバリエーションがペルム紀並に回復、そしてその更に上へと行けるまでには、実にジュラ紀の中期頃。つまり五千万年以上先の未来を待たなければならなかった。

 

 

 

 ちなみにこの絶滅率90%オーバーってのは、あくまでネコとかイヌとかいった生物の「種」を基準とした話である。

 

 個体数で考える場合だと、99%以上が根こそぎ消し飛んだと見て差し支えないだろう。

 

 地球上における、目に見えるほとんど尽くが死に絶えた。瑞々しく、生命に溢れた惑星だったものが。突如として死の星へと変貌を遂げたというわけだった。

 

 

 

 そして、限られた種の、さらにごく一部の個体のみが。この長きに渡る試練のときを、幸運にも細々生き延びることができたのだ、ということ。

 

 

 

 その幸運な個体の一勢力が、[気嚢]と呼ばれる優れた呼吸システムを発達させた[主竜形類]であり。また頑丈な[横隔膜]を持つ、後の哺乳類に繋がる[獣弓類]の一派でもあった。

 

 

 

 

 

 

 生存者は、勝利者への道筋が示されたチケットを手にする。

 

 使い所を見極めるのは難しいけれど、有効期限は長い。実際に、代表的主竜形類たる恐竜の全盛期は中生代の半ばだし、哺乳類の時代の始まりともなると、2億年近く間の空く新生代暁新世まで年代を下る必要がある。

 

 

 

 ……まぁ、哺乳類の中にも、白亜紀前期の[レペノマムス]みたいに、恐竜時代の昼っぴらで小型の恐竜を食べてた肝の太いのもいたわけだけど。

 

 

 

 ともあれ、生き残りたちに回される役柄は概ね良質だった。後の地球史におけるメイン・キャストとして。それぞれが然るべきタイミングで、颯爽と舞台上へと躍り出てゆくことになるだろう。

 

 

 

 

 

 

 もちろん、彼らだって偶々運が良かったという側面はあったんだ思う。

 

 彼らと同等。或いは彼らよりも優れた形質の持ち主たちが、不運にも歴史の闇に葬り去られてきた蓋然性は高い。

 

 

 

 でも、それ以上に。彼らが生き残るに足るだけの資格を持ち合わせていた、というのも、明々白々たる事実なんじゃあないだろうか?

 

 気嚢にせよ。横隔膜にせよだ。優勝劣敗。彼らは生き残るべくして生き残ったのだと。

 

 偶然の後押しを受けてとはいえ……彼らには元より、それだけに足るれっきとした資格があった。

 

 

 

 進化に絶対的な方向性がある、と言うのは往々にして錯覚ではある。その手の錯覚が宗教じみた言説と結びついてしまうと、技術や学問の発展において、むしろ害あるものともなりかねない。

 

 

 

 ただ、それはそれとして……地球史が過去から現代へと近づくほどに、複雑さをいや増した有機生命体が数多く現れてきているのも、また確か。

 

 

 

 そうした秩序性の、現時点での先端近くにいる我々は、今後、どういった方向感を持つのか?

 

 ヒトは何処から来て、どこへ往くのか? こうした問いかけは、そのヒトという枠組みを越えようとしてすら、未だに普遍的な問題意識として存続している。

 

 

 

 

 

 

 今に至るまで続けられてきた闇の中の手探りは、今後も続いていく。たぶん、当面の間は続けられるだろうという見込みがある。

 

 遺伝的な形質から文化的な記号へと置き換わり、アナログからデジタルへのシフト・チェンジを経て、次なる段階の兆しすら見え始めた昨今。

 

 加速度的な発展は、21世紀の半ばを迎えようとしてなお、一向に衰える様子は見られない。

 

 

 

 しかしながら、「どこまでゆけるのか」と言えば。それが分からない。

 

 エントロピーの法則の反作用として存在する我々は、その成り立ちゆえに、どこかで限界点を迎え、歩みを止めざるを得なくなるんだろう。おそらく。

 

 

 

 でも、その一方で、技術的側面を研ぎ澄まさせ、演算能力につきより長じるほど。ずっと先を見通せる、鋭い目を身につけることができる。また更なる先へと進むための、しなやかな足腰をも手に入る。

 

 多くの建設的な積み重ねによって、突き当たったと思った目の前の壁は、これまでも次々すり抜けて、霞がごとく背後でかき消され続けてきたのだった。

 

 

 

 突き当りが、何処かにあるらしいことは分かっている。だのに終わりは見えてこず、それどころか一層遠のいてすらいるかのように思える。そんな現状。

 

 この、ひどく曖昧な距離感がために。終焉とは、輪郭のぼやけた観念となって、ある種の陶酔感とともに、我々の目の前に、あやふやな靄となっていつまでもいつまでも漂い続ける――

 

 

 

 ……と、いうのは、個人的にはかなり興味のあるおしゃべりだけど。話の流れからすると、盛大に脱線してしまっているよなあ。

 

 ゲーム内のペルム紀にとっとと軸を戻すとしよう。色々と、方向性(・・・)を見失ってしまわないうちに。

 

 

 

 

 

 

 にしても……地球史上最大のカタストロフと呼ばれるほど、大掛かりな事件だったにも関わらず。未だに原因が明確化されていない、というのは何とも不思議な感じがするな。

 

 ああ、実は21世紀も中葉の今でも、はっきりとは分かっていないんだよねえ。ペルム紀後期の絶滅が、どういった事象に基づいて起こった出来事だったのか、というのが。

 

 

 

 月日は永遠の旅人である。有名な言ではあるけれど、その旅人の足跡までが、必ずしも永遠に残り続けるわけじゃないのがまぁ厄介なところだ。

 

 というのも、地球の海洋プレートというものは、プレート・テクトニクスの作用により、だいたい2億年くらいで一通り更新されてしまう。

 

 そのため地史的事変の直接的な物証って、そのうち海溝やトラフからマントル内部へと滑り落ち、大方が消え失せてしまう構図になってるんだよなあ。

 

 

 

 したがって、ただでさえ月日が経つごとに証拠は喪われてゆくものなのに。2億年以上昔となると、地学的活動に伴うタイムリミットという制約まで加わるせいで、事実関係がひときわ見透しづらくなってしまうのだった。

 

 

 

 

 

 

 一応、有力な仮説としては、「大規模火山噴火による破局的な気候変動」が挙げられている。

 

 

 

 世界一の広さを持つロシア国土の、三分の一くらいを占めている、[シベリア・トラップ]と呼ばれる洪水玄武岩地帯がある。

 

 そこでは火山性の岩石類が、西ヨーロッパが丸ごとすっぽり収まるほどの範囲に渡って分布している。これらはつまり大昔に莫大な量のマグマが吹き出した名残りであって、類似の地質帯としては世界最大規模を誇る。

 

 そいつの形成年代がおおよそP-T境界と同時期とされていることから、両者の関連性が強く疑われている。そういった筋書きだ。

 

 

 

 2億5100万年前のペルム紀末期。当時世界唯一の大陸だった[パンゲア]の北部。現ロシアのウラル山脈東部周辺を、惑星内部から押し上がってきたマグマの奔流、マントル・プルームが貫いた。

 

 そうして、古地球に空いた針穴からナカミが噴き出る。時には天変地異的な大噴火とともに。またあるときは、歴年を掛けて着々と流れる燃える河となって。

 

 

 

 燃え滾るマグマは地上の何もかもを呑み込んでいき、いにしえの東ヨーロッパを、一面の焦土地帯へと変えてしまった。

 

 

 

 その影響は、一過性の大火災や、吹き上がった火山灰による一時的な寒冷化だけでは収まらない。

 

 内部溶融物の噴出に伴って大量の火山性ガスが発生。往時の空に向かって、相当期間に渡って解き放たれ続けた。

 

 

 

 この火山性ガスには、二酸化炭素のような温暖化誘発要因に、硫化水素などの純粋に有機生命体に毒性を示す成分。それから一酸化炭素など、化学反応によって大気中の酸素濃度を減少させる気体が、それぞれ含まれていたんだな。

 

 

 

 温室効果による平均気温の大幅な上昇。世界規模で降り注いだ酸性雨による大海の有毒化。そして大気中の酸素濃度の著しい減少。

 

 他にもたくさん。バッドイベントが同時並行的、或いは玉突き的に勃発し、当時の生態系をズタズタにしてしまった。

 

 そうしてすべてが死の世界となる。古生代末の生命を育んだ三日月型のパンゲア大陸は、一転して悪魔の赤い月(ヘル・ムーン)と化したってわけだ。

 

 

 

 

 

 

 遡ること1000万年前から生じていた、海水準の低下と[海洋無酸素事変]――どちらもおそらく氷河期に起因するもので、『ジーンダイバー』内だと、こちらが主たるペルム紀大絶滅の原因とされていた。つまるところ、原作中における本絶滅事変は、二段構えではなく一発ドカンで生じたイベントとして扱われていたってことだな――も相まって、海洋生物が被ったダメージは、ことさら深刻なものだった。

 

 

 

 [三葉虫]に代表されるカンブリア型動物相は、もともと衰退気味だったこともあり、完全に消滅。

 

 貝類に似た見た目の[腕足動物]や、ウミユリやウニなどを含む[棘皮動物]。その手のペルム紀の海中生態系の多くを占めていた古生代型動物相もメタメタにやられ、勢力の大幅な退潮を余儀なくされた。

 

 唯一ダメージが軽かったのが、魚類や甲殻類のような現代型動物相だけど……もう、ここまで来ると、P-T境界を生き延びたから現代でメジャーになれたというだけで。彼らを「現代型」と称すること自体、少々ピント外れな気すらしてくる。

 

 

 

 海洋よりは、地上の方がまだ被害がマシだったそうだ。とはいえ、壊滅的ダメージを負ったこと自体は変わらない。

 

 

 

 この時期に形成された石炭の産出が極めて稀なことから。急激すぎる環境変化により、地上の植物相が長期にわたって軒並み消滅していたと考えられている。

 

 

 

 顕生代以降、植物の生息地は動物の生存環境のベースになった。そのため前者が盛大に吹っ飛ぶと、当然、後者に向かって被害が勢いよく波及してしまう。

 

 事実、昆虫類は動物種のなかでも一際しぶとく、他の大量絶滅時にもそこまで影響を受けていなかったのに。P-T境界においては例外的に、複数の目が消滅する大損害を被っている。

 

 

 

 

 

 

 小回りの利く昆虫でさえそのザマなんだから、大型動物ともなればマァ、言うまでもなく。

 

 ペルム紀において繁栄の頂点にあった両生類は、一挙に経営斜め前。爬虫類や、哺乳類の祖先も、ともにP-T境界で一時的に多様性がガタ落ちしている。主に呼吸器系の性能が明暗を分けたってことのようだ。

 

 

 

 ちなみに往時の酸素濃度はだいたい現代の1/2くらいまで低下していたらしく……これは、現代人が登山などの際に高度順応できるギリギリの水準である。

 

 逆に言えば、現生のホモ・サピエンスですら辛うじて適応可能なレベルで収まっていたということで。ヒトが、P-T境界の生き残りの末裔であるってことが言外に示されているとも言えるだろう。

 

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 

 

 ……とまぁ、どうも以上のようなことがあったらしいんだな。

 

 P-T境界仮説。白亜紀末の隕石衝突に比べるとだいぶん知名度は落ちるものの、それでもマァマァ有名なストーリーではあるんじゃないか。

 

 

 

 酷いものだったんだ、ホントに。ていうか、実際。酷いもんでしょ?

 

 

 

 さっきから、ゲーム内部に描画されたフロント・モニターに映されているのは、どこまでも続く不毛の岩石砂漠の風景だ。

 

 だいたい2億5000万年前のパンゲア南西部らしいが……ここ。一昔前は大葉シダ類の生い茂る湖沼林だったというんだから、驚きであるよ。

 

 

 

 植物の繁茂による保水機能が喪われることで、すっかり河川の流れも変わってしまった。

 

 今となってはまるきり、火星かどこかの地上って感じの荒涼としたスポット。

 

 このあたりが元の潤いを取り戻すまでには、一千万年以上先の未来。すなわち三畳紀の半ばあたりを待たねばならない。まったく世も末、空恐ろしい光景だった。

 

 

 

 

 

 

 ……あっ、そうそう。ここからはちょっと個人的な憶測が入るというか、少々根拠薄弱なネタなんだけれど。一応オマケとして話しておこう。

 

 

 

 前にK-Pg境界、即ち白亜紀末の大絶滅の説明をした際に。以前の説だと隕石衝突と火山活動のダブルパンチだと考えられていたのが、近年では隕石がメインで、火山活動は副次的なものである可能性が高まっている。という話をしたかと思う。

 

 実はP-T境界についても、似たような筋書きが描けなくもないらしいのだ。

 

 

 

 そう。ちょうど2億5000万年前前後に、巨大隕石の衝突が起こっていた可能性があるんだってこと。

 

 

 

 

 

 

 場所は南極大陸の東部、ウィルクスランド。

 

 永久凍土に覆われたその土地に、広範囲に渡る重力異常が存在することが、既に20世紀半ばには知られていた。

 

 

 

 21世紀に入ってから発表された論文によると。この重力異常が、直径480kmの巨大衝突クレーターなのではないかという疑惑がある。

 

 形成年代も誂えたようにペルム紀末期。今ではその地質構造は[ウィルクスランド・クレーター]という仮称を持ち、カナダの惑星宇宙科学センターが管理する地球影響データベースにおいて、「衝突クレーターの可能性がかなり高い(probable impact crater)」の分類に位置づけられている。

 

 

 

 ユカタン半島のチクシュルーブ・クレーターがだいたい直径180km。ゆうに2.5倍以上のビッグ・サイズである。

 

 これが本当に衝突クレーターなのであれば。落着した天体の大きさは、おそらく直径40kmを下らないはず。

 

 

 

 白亜紀末期の衝突天体が、およそ10km強と見積もられているそうだから……隕石だか、彗星だか知らないが、実に直径比で4倍以上。質量比較だと50倍を超える、ハルマゲドン級の地球外天体となるだろう。

 

 

 

 そんなバケモノが遥かな空から降ってきたのだとしたら。当時の生態系に与えた悪影響も、言語に絶するものだったことは間違いない。

 

 世界規模の大火災。大洋に降り注ぐ酸性雨。そして、巻き上げられた粉塵と、誘発された火山活動による長きに及ぶ核の冬――

 

 

 

 

 

 

 はてさて。どうにもデジャブ感のある話かと思う。

 

 察しの良い方は既にお気づきかもしれないが、疑惑の巨大クレーターがある南極、ウィルクスランドって。ペルム紀末期当時、ポイント的にはシベリア・トラップ噴火口の対蹠点に位置していた。

 

 

 

 シベリア・トラップの大噴火が起こった理由としては、パンゲアの成立と、その分裂に伴う地球内部の[プルーム・テクトニクス]によるもの、というのがメジャーな仮説ではある。

 

 しかし素人考えだと、自然に思い描いてしまうはず。

 

 

 

 チクシュルーブ・クレーターと、デカン・トラップとの関係性。そのオーバーラップ。

 

 つまるところ、シベリア・トラップの形成とは、ウィルクスランドへの天体衝突の、波及効果のひとつに過ぎないんじゃないの? という。

 

 

 

 白亜紀末よりもずっと大きな隕石が落ちた。地球の裏側で白亜紀末よりもひどい噴火が起こった。

 

 白亜紀末よりもえげつない気候変動が発生し、回復に至るまでには、白亜紀末よりよっぽど時間を食うハメになった。

 

 うーむ、シンプル。オッカムのかみそり!

 

 

 

 

 

 

 ……もちろん。長年に渡って積み重ねられた多様な事象のなかから、似たようなパターンばかりを繰り返し幻視してしまう。そういうのは、有機生命由来の知能にとって、極めて有りがちなバイアスだ。

 

 その手のバイアスが役立つ場面もけして少なくはない――パターンを見出す能力こそ、知能の基礎の基礎だと言っても過言じゃない。突然近くの草むらが揺れたなら、そこには肉食獣が潜んでいるものと見なして、警戒感を高めるのが理に適っている――けれど。だからって、正しさの裏付けとしてはいくら何でも頼りない。キチンと眉に唾をつけてから当たるべきだろうさ。

 

 

 

 なにせ、最大の証拠は南極永久凍土の下だからなあ。経済的な採算性が見込めない以上、未だにこの手の物理的な障壁は限りなく分厚い。

 

 他の物証についても。前述のとおり、その多くがマントルに滑り落ちててとっくの昔に燃え尽きてしまっている。

 

 

 

 今後の研究の進展が待たれるところではあるものの……あんまり劇的な展開は望めないんじゃないか、という予感もまぁ、ひしひしと。

 

 

 

 

 

 

 あとねえ。この説っていうか、憶測を主題にして、ネット上のデータを元にAIに記事を自動生成させると、だいたいオカルトまみれのトンデモを吐き出すのがわりと有名なんだよ。

 

 

 

 南極大陸の氷の下に隠された、謎の巨大重力異常の真実に迫る!

 

 ……うむ。ご想像のとおり。各種とんがったフィクションの題材として、散々っぱら使い倒されてきたネタの類にしか見えないとくる。

 

 

 

 ナチスの秘密基地! 邪神召喚の儀式! 地球内部空洞説! 未知の地下超技術文明!

 

 もう選り取り見取りで、めまいがしてくる。

 

 いやまぁある意味面白いし、そういうものだって予め分かってるなら楽しめなくもないんだが……しっかし、今こっちが求めてるのは全然そんなんじゃあないっていうかね。残念がすぎる。

 

 

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