恐竜惑星とジーンダイバーのMOゲームを実況します   作:あーぷ

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ハムスター、白亜紀に降り立つ

 

 

 バーチャル世界。

 

 

 

 それは、本来、一介のシミュレーションに過ぎないものであった。

 

 現存する有機生命体の遺伝情報を解析し、過去へと向かって遡ることで、死に絶えた古生物や、失われた古環境を、現実さながらに目の当たりにすることができる。

 

 21世紀の人類が、量子コンピュータの演算能力をふんだんに用いて造りあげた、仮想世界のひとつ。いわば、科学実験の一環である。

 

 

 

 その程度のものにすぎかった。そのはずだった。

 

 

 

 しかし、バーチャル世界を構築するマザー・コンピュータによって、日増し積み上げられ続けた莫大な情報量は、あるとき、一定の閾値を超えるに至った。

 

 シミュレーションを成り立たせるためのデータの総体が、突如として相転移を引き起こしたのだ。無限にも等しい多元宇宙、そのあちこちで構築された類似のシステムと「重なり合う」ことで、仮想世界はその仮想性を、ひといきに脱ぎ捨てたのだった。

 

 

 

 そうして。バーチャル世界は一個の現実として羽化を遂げ、確たる実体を得た。

 

 また、無数のバーチャル世界が合流して成立したというその来歴から、数多の現実宇宙に影響を与えうる特異的なスポット、『多元宇宙の交差点』ともなったのだ。

 

 

 

 あなたは、重なり合った多元宇宙のどこかから、バーチャル世界にアクセスした一人の戦士兼観測員である。

 

 だった、のだが……。

 

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 

 

 ちゃららららーん♪ ちゃーらちゃーらーらーらーらー♪ らららーん♪

 

 

 

 ……うむ。と、いうわけで、今回はプグラシュティクのキャラ選択でゲームを始めていくとするか。

 

 んー、ちょっと各種族の紹介が長くなりすぎちゃったかなあ。

 

 サブコンテンツの一つである対人戦でのキャラ相性だとか、益体もない数十年前のトリビア話。それから古生物学系の豆知識だとか? シナリオ進めるにあたってあんまり関係ないことも、ずいぶんペラペラと喋り倒してしまった。

 

 その手の余計な部分については、後ほど自動編集機能のフィルタリングでちょん切って、別枠を立てるって形にしとこうか。

 

 

 

 今後もしばしばその手の映像処理を差し挟むことになるかと思います。そのため視聴方法によっては、処々違和感が残ってしまうかもしれません。すいませんが、その点についてはご了承のほどを願いまーす。

 

 

 

 さて。先ほど、各種族のバックグラウンドを紹介する中で、ざっと説明させてもらったとおり。プグラシュティクっていうのは、直立二足歩行のネズミ人間だ。

 

 バーチャル世界を経由して接続された、とある平行世界の地球におきまして。[エピガウルス]――実はこの名前ってシノニム、つまり学名としては無効名であって、正式名称としては『ケラトガウルス』が正しいらしいんだけど――という、新生代の漸新世後期から更新世前期。だいたい今から3000万年前~200万年前にかけて繁栄していたげっ歯類の一種が進化を重ね、誕生した種族。

 

 いわば、別世界の人類種。知的観測者にあたる存在のひとつとなる。

 

 

 

 ……お気づきの方も幾らかいらっしゃることだろう。実はこの来歴、原作にあたる『ジーンダイバー』劇中における彼らプグラシュティクとは、微妙に異なる箇所があったりする。

 

 何処がどうとは言わないが。まぁその、全体的に。

 

 ただ、このゲームの取説レベルではそんなふうになっているんだと。勘所をお分かりの場合であっても、今のところはまるっと呑み込んでおいてくださいな。

 

 

 

 

 

 

 ケラト。即ち、ラテン語で言うところの『角』が学名に入っているエピガウルスは、本来、げっ歯類には珍しい大きなツノを持っていた。

 

 額のやや下に伸び上がった二本のツノ。現生のサイを思わせるケラチン質、しかし芯の部分にはしっかり骨が通っている。

 

 連中はそれらを、外敵に対抗するための突進用、刺突用の武器として用いていたんだそうである。

 

 

 

 がしかし。その遠い子孫であるはずのプグラシュティクには、基本的にツノらしきものは見当たらない。

 

 

 

 狭いひたいには短い体毛が密集。体色は焦げ茶からペールブラウンまでの茶系統で、両手を前向きにだらりと垂らし、やや前かがみな立ち方をとる。

 

 ヒトとそう変わらないか、平均すると少し低いくらいの身長を除けば……総合的に見て彼らのビジュアルは、現代のプレーリードッグあたりに近いんじゃないかと思われる。

 

 

 

 エピガウルスも、プレーリードッグ同様。北アメリカ大陸中西部のグレート・プレーンズにて、土中に巣穴を作って暮らしていたとされている。

 

 もしかすると、プグラシュティクたちの設定上の容姿は、エピガウルスじゃなくって、現生のプレーリードッグなどから引いてこられたのかもしれないねえ。

 

 

 

 

 

 

 直立二足歩行。でっかいネズミ。そして、主な生息地は他ならぬ過去の北アメリカ一帯とくる。

 

 ま、言うなればプグラシュティクっていうのは、どこぞのアメリカ直立オオクロネズミみたいなもんなわけだ。

 

 

 

 なんだか妙に収まりのいい話だし……ここぞとばかりに。このたび本実況で用いるキャラクター名は、ミの字ってことにしとこうか?

 

 よぉーし、今からヤツを細切れにしてやるぜ! ハハッ。

 

 

 

 某国肝いりのクロネズミ保護法(70年延長法)も、とっくの昔に笑い話と化している。日を追うごとに著作権が切れ散らかし、続々とパブリック・ドメイン化が進行しつつある今日このごろ。

 

 ちょっとぐらいやらかしたからって……え、ダメ? 止めといたほうがいい?

 

 

 

 ……そうかなあ。そうかも。まぁ、ごもっとも。

 

 商標権との絡みもあって、今もなお、よもやってことはあり得るんでしょうし?

 

 ここの配信プラットフォームに、ご迷惑をおかけするのも本意ではないです。アブナイ球を投げるのはハイ、これまで。

 

 

 

 

 

 

 しかし、となれば。キャラクターの名前なんだけど、どうしたもんかねえ?

 

 いっそ白状しておくと。当初のプランとしては、ネズミーマウスって付けようってつもりで……ああ、はいはい。ごめんなさい。止めときますってばさ。

 

 だったら何か。良い名前、ないでしょうかね?

 

 

 

 このタイミングで、オーディエンスから案を募ってみようかな。このたび使用予定のプグラシュティク。かの直立ネズミの見た目にふさわしい名付けが、必要だって思われませんか?

 

 

 

 “_ _ _ _ _ ”

 

 

 

 どうでしょう。見ての通り、文字数とか、使用言語とかにそこまで細かな縛りはない。公序良俗に反するでなければ、どんなものでも構わない。

 

 そのへんのフィルターはこっちで掛けるから、一丁、皆さま。思うがままにブン投げてみてちょうだいな。

 

 

 

 

 

 

 ……。

 

 ええっとぉ。たくさんのご提案、誠にありがとうございます? その、流石に情報過多で処理能力がおっついてないので。ちょっと待ってください。

 

 うーむ。セキリュティのランクを落とした状態での、直接接続式のツーカーっぷりを大甘に見積もってしまっていたか。一対多数の非対称性も相まって、負荷がエラいことになっている。

 

 あんまり不用意に使わないほうがよさそうだなあ、この機能。

 

 

 

 んー、あー、ご提案いただいた中からチョイスするとなると……「リック」? そうだな、コイツにしとこうか。

 

 某ピンクの悪魔も、そろそろ生誕50周年が迫っていたはずだ。アレの第一のお友達たる変形合体可能な直立ハムスターくんは、シリーズ上の出番の多さはそこまででもないけれど。人気も、知名度にも、底堅さってやつがある。

 

 それに、どこぞのクロネズミと比較するなら、名前自体はあくまで一般的な人名の範疇だろうしな。

 

 

 

 んじゃ、それっぽいキャラパーツをテンプレートから選んでと。ちょちょいっとな。

 

 

 

 ……オッケー。全体的にずんぐりしていて、VWO側の原作キャラ準拠で考えると、バン・ニーに近い感じに仕上がった。

 

 ただ、モノホンのリックっぽいつぶらな瞳と、白地に茶色混じりの体毛を選択したせいで、なんつーか、綺麗なバン・ニーって感じだな。

 

 背丈だって変に高いし。正直、絶妙にかわいくない気がする。どっちかと言えばカッコいい系ではあるんだろうが、それにしたって微妙に中途半端っていうか?

 

 

 

 つってもまぁ、ゲームプレイ中は見下ろし式のTPS目線であって、ほぼほぼコイツの背中だけを見ていくことになるわけだしなあ。

 

 加えて、プグラシュティクの着込んでいるモグラみたいなパワード・スーツ――初期スーツのカラーリングは見ての通り、一般兵用のくすんだ黄緑色で固定だ。上位装備に取り替えてもそこまで見た目は変わらない上、色や外見(そとみ)を細かく変更するためには、ワールド2のクリアと指定サブクエストの達成が必要になってくる――のせいで、だいたいの場面で全身がスッポリ隠されてしまう。

 

 そのため彼の中身をしっかり拝見する機会なんざ、プレイヤー目線だと滅多にありゃしないのが実情である。今回はコレで行っとくか。

 

 

 

 あ、ただし。念の為言っておくと、視界に早々映らないからって、調子に乗って無茶苦茶なキャラクリをするのはお勧めしません。

 

 パーツごとの数字を微調整することで、相当奇を衒った見た目にすることだって一応可能だ。バリエーションはかなり幅広く確保されている。それこそ妖怪とか、バケモンみたいな姿形にすることも出来なくはない。

 

 しかし、ビジュアル方面でネタに走ると、メインシナリオ終盤におけるとある強制イベントで、特大地雷を踏む可能性が飛躍的に高まってしまうからな。

 

 

 

 具体的に何がどうっていうのは、現時点だとネタバレすぎて言えないけども。

 

 被害者もとい経験者として、この点については前もってしっかり釘を刺させていただく。自キャラ作成はなるだけマジメにやりましょうってことで。

 

 

 

 

 

 

 ちなみに、バン・ニーというのはだな。『ジーンダイバー』の主役級女戦士であるティル・ニー・ノグの異母兄で、ストーリー前半部における登場人物のひとりだ。

 

 原作の前半部、ヒト種との小競り合いを続ける裏で、フラウ・ニー(あね)殺しやら、父親からの権力簒奪やら。あれこれ暗躍するものの、中盤の山場で身内のティルに、文字通り必殺のドリルアタックを打ち込まれて脳天がりがり。

 

 そのまま画面外グロ画像と化してお亡くなりという、言ってしまうとモロ悪役である。

 

 

 

 他よりも黒みの強い体毛の持ち主で、低めの背丈。種族男性のBMI的に見ても、恐らくかなり太り気味であるプグラシュティクの男。

 

 王家の騎士のひとりであり、所謂やんごとなき血筋に御名前を連ねているのだが、実父のリャナン家現当主からは、作中でもあんまり良く思われていなかったフシがあった。

 

 ただ、彼って見た目はばっちり父親似だから、双方ともに同族嫌悪めいたものもあったのかもしれない。

 

 

 

 んでもって高校野球のファンでー。延長戦で放送が伸びて、後ろの番組枠が飛ぶことを至上の喜びとしている卑劣漢でもあるのだった。こいつぁ、ワルですよ。

 

 

 

 ……うん、最後のはウソ。そういう公式ネタ動画があるってだけ。

 

 「バン兄からの忠告」で条件検索すれば、一発で出てくると思うから、気になるってならまぁ観てみよう。わりと笑えます。

 

 

 

 しっかし、動画コンテンツの配信に時間枠の縛りがあるだなんて、いったいどこの石棺の中だって感じだよなあ。

 

 今どきよっぽどの辺境の地で暮らしていようが、そんなことには滅多になりゃしない。世界中が宇宙経由で繋がっているから。でも、半世紀前というと、まだまだそういう時代ではあったんだ。

 

 アナログ放送こそが世の大勢。いわば往時の電波事情自体が、未だに深い深いまどろみの底にいたんだな。

 

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 

 

 冒頭のプロローグ読み上げを挟みまして。我らがリックくんだが、突如、建造物がまばらに立ち並んだ野っぱらの端へと放り出される。

 

 

 

 リックくんが画面上に現れる際に表示された、黄色く光るクロワッサンのような、ねじれたエフェクトのことを憶えておいてほしい。

 

 本作において、今のはジーン・ダイブと呼ばれるものなんだ。

 

 ジーン(gene)ダイブ(dive)する。『ジーンダイバー』、即ちVWOにおける原作の片割れと良く似た名前のこのシステム。地球上の生命体の遺伝情報(DNA)を、現在から過去へと辿る蜘蛛の糸として扱うことで、バーチャル世界内の時間線、ないし空間座標を移動するための特別なギミックにあたる。

 

 

 

 莫大過ぎるデータによって成り立つバーチャル世界を、ひとつの巨大な辞書と喩えてみることができるだろう。ジーン・ダイブ(並びにその類似技術)とは、辞書中の必要項目に辿り着くための索引とその引き方、とでも言うべきか。

 

 バーチャル世界内部におけるタイムトラベル兼ポイントワープにあたって、即応性とコストパフォーマンスに優れることから、エウロパ人を除く――[ケイ素生物]たる彼らエウロパ人の遺伝子構造はシリコンベースなため、地球型生命の持つDNAが存在しない――登場人物たちは、概ねこのシステムを普段遣いしている。

 

 

 

 一方で、タイム・ホールと呼ばれる、淡黄色、ないし薄紫色にきらめく円形のエフェクトも別途存在する。

 

 ジーン・ダイブと同じく時空間移動のためのギミックなんだが、こちらの理屈としては、バーチャル世界を構築しているプログラムそのものにアクセスすることで、時空間の座標を強制的に直つなぎしてしまうもの、とされている。

 

 

 

 原作のもう片方。『恐竜惑星』の時代には、タイム・ホールは結構なメジャー技術だった。恐竜人類たるギラグールとフォロル族も、また彼らに哺乳人類と呼ばれる主人公の萌も、これを用いることで、仮想世界の時空間を股にかけていたんだな。

 

 

 

 しかしながら、説明した通り。やっていることがジーン・ダイブ等に比べると力技なため、どうしても処理が重くなってしまいがち。

 

 時系列では『恐竜惑星』よりも10年ほど未来にあたり、VWOの作中年代とそう変わらない『ジーンダイバー』の時期には、既に比較的扱いづらいメカニクスだと見做されている。

 

 

 

 ただし、一度経路を開けてしまった後に通行を維持する場合においては未だにタイム・ホールに分があるらしい。

 

 そのため、大質量(とエウロパ人)の転送のときには、VWO内でもこちらが選択されていることが多い。

 

 各々のシステムにつき、ケースごとの使い分けがきちんと確立されているってわけだ。

 

 

 

 

 

 

 さておき、周囲を見渡すリックくん。

 

 ジーン・ダイブによって現れた彼が身構えてしゃがんでいる場所は、不揃いな円形状にぽかんと開けた、広場のようなスペースとなっている。

 

 見慣れない植生の、鬱蒼とした森のなか。

 

 水回りや地盤の関係か、それとも以前に山火事でもあったのか? 差し渡しで大凡200メートル弱。主にソテツ類で構成されている樹林が、だいたい観客席も含めた東京ドームのグラウンドほどの範囲に渡って、いびつに喪われた一帯が広がる。

 

 そしてその円形スペースの中には、大小様々な建物が、ある程度の距離を置いて建ち並んでいるのだった。

 

 

 

 ……ちなみに、『恐竜惑星』をご視聴済みの方であれば。薄緑や薄青色主体のずんぐりした建てものの様式から、ここが草食系恐竜人類、フォロル族の元前線基地だってことが分かるかと思う。

 

 

 

 

 

 

 ところが今現在、この基地にはひと影が人っ子一人見られない。

 

 不気味なまでに静まり返っている。基地の中も、周囲を囲う森の奥も。

 

 

 

 音もなく、風もなし。このゲームのインターフェースに嗅覚は含まれないから、プレイヤー的には何ともだけど、おそらく匂いも感じない。

 

 

 

 そんな、人工的な場としても、自然の空間としても明らかに異常な、色すらもくすんで見えるこの場所で。

 

 しかし、一廉の戦士たるリックくんは、冷静な判断力を保ったまま。油断なく神経を張り詰めている。

 

 

 

 主観時間で十秒(以下同じ(・・・・))ほどの間を隔てて。背後から突然聞こえた物音に、リックくんが振り向いた。

 

 10メートルほど先に広がっている、野っぱらの外縁部を覆った見通しの悪い樹林。

 

 その中から、鳥だか、爬虫類だか、今ひとつ見分けのつかない、全身が黒い体毛に覆われた前傾姿勢の生き物が、三匹。茂みを割って勢いよく飛び出してくるのだった。

 

 

 

 ……と、いうところで。一旦画面をポーズしておくか。

 

 

 

 

 

 

 このザコ敵、[ディロング]だな。ディロング・パラドクサス。粗くもみっしり詰まった体毛のせいで、それっぽく見えないかも知れないが、これでもれっきとした恐竜にあたる。

 

 1億2500万年前あたりの、白亜紀前期の中国に生息していた一種である。21世紀の初頭に発見され、ひところ大きく話題になったこともあるらしい。

 

 

 

 往時の中国は高度成長期の真っ只中にあった。大規模建築ラッシュで国土のあちこちがひっきりなしに掘り返されたことから、それに伴って、古生物の歴史的発見が相次いだ。

 

 ディロングもそのなかの代表的なひとつで……後の[ティラノサウルス]に通じるティラノサウルス上科の初期の種。すなわちT・レックスのご先祖にあたる、羽毛恐竜の一種に分類される。

 

 

 

 ただし見ての通り、体長は最大で2メートル少々といったところ。12メートルを超える個体もあったというティラノサウルスに比べるとぜんぜん小柄で、全体のフォルムにしても随分と華奢だ。

 

 ティラノっていうよりも、ドロマエオサウルス科の各種ラプトルなんかの方に表向きの見た目が近いかもしれない。

 

 

 

 初見インプレッション通りのすばしっこいハンターであって、本来は小動物なんかをメインに狙う中位捕食者のはずなんだが。なぜだか今はリックくんに向かって露骨な食欲というか、あからさまな敵意を向けてきている。

 

 ついでに全身の3Dグラフィックがところどころジャギっていて、なんともはや。尋常じゃあないな。

 

 

 

 念の為言っておくと、この変なグラフィックって、別にゲーム自体がバグってるわけではないから安心してほしい。

 

 いかにも粗雑なCGテクスチャのせいで起こったバグっぽい見た目の雰囲気から。そういう懸念が出てくるのも致し方ないとは思うんだけどねえ。

 

 違うんですよ、ホント。ちゃんとした事情があるんです。説明はマァ追々ね。

 

 

 

 

 

 

 さあ、ポーズを解除だ。

 

 数秒間の睨み合い。やがて、ディロング三匹のうち先頭の一頭が、蒸気の噴出を思わせる、爬虫類らしい声を上げつつこっちへ飛び掛かってくる。

 

 

 

 が、リックくんは機敏な動作で飛び退ることで回避に成功。肉食恐竜にしては小型とはいえ、ヒトサイズの生き物には十分な殺傷力を持った噛みつき攻撃はあえなく空を切っていった。

 

 回避に続いてアクロバットで距離を取る。空中でくるりと一回転して再び着地。近場に位置する半球状の丸っこい建物を背にして、ふたたび三体のディロングを、正面に見据える。

 

 

 

 といったところで。リックくんが身につけている量産型パワード・スーツに内蔵されているインカムに向かって、いきなり通信が飛び込んでくる。

 

『おい、オマエ! そこのプグラシュティク!』

 

 トーン高めの、子どもっぽい男声。それでいて少々べらんめえ調って感じのお相手だな。……ハイハイ、何かなー?

 

『ジーン・ダイブですっ飛んできていきなりで悪いけど、オマエ、手を貸してくれ! 今、そこの基地がぶっ潰されたらえらいことになるんだ!』

 

 

 

 ご覧の通り、プレイヤー目線だと、このタイミングで通信相手のポートレートが画面左上に表示されることになる。

 

 恐らく実態としては、リックくんが被っているパワード・スーツのメット内部に、網膜に直接投影するタイプの小型のモニターが仕込まれていて。その画面上に、通信先の映像が表示されているってとこだろう。

 

 

 

 ポートレートに映っているのは、黄色い毛並みに大きな碧色の瞳。長い両耳に、背中に透き通る一対の羽根を生やした、四足歩行の謎生物の上半身映像である。

 

 表示名、パック・ロブ。彼もまた『ジーンダイバー』の主要登場人物のひとり……ていうか、一匹?

 

 

 

 そのパックが、切羽詰まった調子で発言を続ける。

 

『間が悪いことに、今、そのへんには「局所性フラクタライズ・エラー」とかいうやつが起こっちまってる。そのせいでそこじゃあオマエしか動けない。オレがこうやって通信してることだって、ほとんどギリギリみたいなもんなんだ』

 

 ふむふむ、なるほど?

 

『この通信帯域でつながる戦闘スーツ持ちってことはさ。オマエも、プグラシュティクの戦士だか、兵隊だかなんだろ? そこで今襲ってきているやつらを、全部丸ごと仕留めちまってくれ! なあ!!』

 

 

 

 意訳:これからチュートリアル戦闘である。画面上の指示に従ってフロアの敵を全滅させよ。当面のあいだ支援はない……ってことだな、うむ。

 

 

 

『……えっ? 自然環境の保全は考えなくても良いのかって? 過去の時間線上でヘタに生き物を殺傷すると、歴史に悪影響を及ぼしてしまうかもしれない? ……ンなこと、いちいち言ってる場合かよ!』

 

 このゲーム、主人公キャラクターには一切セリフの割り当てがない。そのため、対話の際には今のように、相手のNPCがこちらの発言を察するような感じで進行していく。

 

 我らがリックくん、もとい主人公は、概ね良い子ちゃんな言動や振る舞いをすることが多く、基本的にはいかにもな優等生タイプと見られる。しかしながら、メインストーリーから脇道に逸れたサブシナリオ等では、ときどき自分を安全圏に置いた上で変に悪ノリすることもあったりするので。実はあんがい、腹黒ネズミって設定なのかもしれない。

 

 

 

『保護だとか、保全だとか。そんなの考えてたら、そこの基地にいる全員、動けないまま好き勝手されて、あンの恐竜どもの昼ごはんにでもなっちまうんだぞ!』

 

 などと、まくしたてるパック。設定上、基地内部にはちゃんと他の従業員がいるらしい。

 

 おそらくその全員が、かっちりフリーズしてしまっている状態だ。

 

 となると、フリーズした誰かしらが周囲に人っ子一人見当たらないってのは、ちょっとばかし違和感がないでもない。ただまぁ、棒立ちな非戦闘員に流れ弾当てるとペナルティがつく、なんてやられても、ひたすら鬱陶しいだけだろうからなあ。

 

 

 

 本ゲーム初プレイ、シナリオ開始直後の初心者さんには荷が重いってのも想像に難くない。

 

 これについては、プレイアビリティを優先したバランス上の配慮ってことで。プレイヤー的には素直に歓迎しておくべき部分かと思う。

 

『いまんとこ、オレたちの活動で、何かとんでもない変化が起きたってケースはない。……そりゃ、絶対大丈夫だなんて言えないけどさ。これまで大丈夫だったんだから、多分大丈夫だって思っとけよ! いいからささっとやってくれ、頼んだからな!!』

 

 

 

 ……ハぁイ、頼まれた。元よりこっちに拒否権なんてありゃしない。彼からのご託宣どおり、ちゃちゃっとお仕事を済ませると致しましょう。

 

 

 

 

 

 

 そんなこんなで、恐らく胸中に戸惑いを抱えつつも。

 

 戦士兼観測員としてバッチリ鍛えられているリックくんは、己が身と、見も知らぬ他人の命を守るために野生動物(っぽいもの)に危害を加えることを決意する。

 

 腰の両側に下げていた、プグラシュティクの伝統武装たる回転ドリルを装着。前傾姿勢で両手を構え、本格的に戦闘態勢へと移行するのであった。

 

 

 

 ……あ、ちなみに。リックくんがさっきディロングの噛みつきを避けたときのカッコイイ動作だけど、アレってあくまで演出です。プレイヤー操作だとあんなふうにキビキビ動けることはないから、要注意。

 

 

 

 別にVWO(これ)、高難度ゲームってほどでもないんだが、アクションとしてはイマイチもっさりした造りになってるんだよねえ。

 

 レベル1で押し並べて基礎ステータスが低く、未開放のアクション・スキルも多い序盤戦ともなれば尚のことだ。

 

 

 

 レベルを上げてパッシブ・スキルを伸ばすことで各種動作のスピードは次第に増す。また、動作完了後の硬直や、次入力受け付けまでのディレイタイムもだんだん短くなっていく。

 

 単純に発生が早かったり、攻撃時に付随するヨコ(タックル系)やタテ(飛び上がるタイプの対空技)への移動能力が高かったり。あと、種族によってはパリィやカウンターのような、純粋に行動の幅を広げてくれる各種スキルについても。特定レベルに到達することで順次習得できるようになっている。

 

 

 

 序盤さえ乗り切っちまえば、それなり以上に軽快な動作が可能となる。その手のゲームであることは保証できる。

 

 今後プレイを考えている方が居たら、最初のうちは、じっくり腰を据える気構えを持って進めてみてください。何事にも下積み、ともいうし。

 

 

 

 もっとも……ゲームで苦行ってのも、今どき流行らない話ではあるからなあ。

 

 たとえ片手間(・・・)であったとしても。許容範囲オーバーで即ブン投げってオチが、割合的に見て少なからずかと予想される。されてしまう。ま、それはそれで、仕方のないことではあるんだろうけど。

 

 

 

 水辺に連れてゆくことは出来ても、水を飲ませることはできない。我々にできるのはコマーシャル。つまり多数に向かって広く宣伝することで、「刺さる」人を発掘していく地道な作業しかないわけだからねえ。

 

 下手な鉄砲数撃ちゃ当たる。いつの時代も変わりませんな、こういったところは。今なお続く世の習い、良いんだか、悪いんだかって感じだな。

 

 

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