恐竜惑星とジーンダイバーのMOゲームを実況します   作:あーぷ

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横からちょっかいをかける

 

 

 「拠点」の遠景は、恐竜人類文明世界における南極の一角に位置する、フォロル族の本国に雰囲気が近い。

 

 

 

 すり鉢状の地形のおかげで、来訪者は、高所から見下ろす形で「拠点」の全体像を捉えることができる。

 

 密度の粗い樹林を抜けて。雪積もる氷原地帯を挟んだ先の坂下に、突如として目に入ってくる大掛かりな円形。

 

 

 

 分厚い膜状の薄光に覆われ隔離されたドームの内側には、粉雪降りしきる外界とは打って変わって、草木の緑あふれる、肥沃な大地が一様に広がっているのだった。

 

 

 

 

 

 

 ドーム内部の周縁部は、農地と思しき整った緑地が面積の多くを占める。その程近くには、農夫とその家族のものだろう、レンガ造りの建物がまばらに立ち並んでいる。

 

 一方、都市圏を中央に行けば行くほど建造物の密度が高まり、工業や商業などの二次産業エリア、そして行政エリアを複層的に内包する中心街を形成していく。

 

 

 

 疎から密へと移り変わりゆくグラデーション。ロジスティックスとしては、極めてスタンダードな部類だと言っていいんじゃないか。

 

 市民生活を限られた内部スペースでまかなう。そのための最適解のひとつが、眼下に理路整然と広がっているというわけだ。

 

 

 

 

 

 

 ただ、その手のありがちさの中で、目立って風変わりなものがある。

 

 円形都市のちょうど中央を裏側から貫くかのように。一本の巨木が、天高く聳え立っているのが分かるかと思う。

 

 

 

 ……アレ、元ネタの設定的には[セイヨウトネリコ]なんだそうだけど。ご覧の通り、現在地からの視界に入っているのは極太の幹の部分だけだから、外観から種類を見抜くのは、なかなか難しい気がするなあ。

 

 せいぜいその節くれだった樹皮の様子から、さっきまで散々見てきた針葉樹林とは異なり、落葉樹であることが分かるかもってくらいか。

 

 

 

 幹の下部ではいっさい枝分かれがない。そのうえ、空一面を覆っている雪雲を途中で突き抜けているせいで、肝心の樹冠部分が、視界からすっぽりと隠されてしまっている。

 

 高く聳えるにしたって限度ってものがあるだろう。いくらセルロース仕立ての頑丈な細胞壁を持ってしてもだ。

 

 生物学的にというか、そもそも物理的に。とうてい形態を維持不可能なサイズであることは、見るからにって感じがする。

 

 

 

 空へと向かって一筋に伸び上がるその異様、もとい、威容はさながら。フォロル本国の首都、『リューネの都』の中心部に位置する巨大建造物。

 

 その全長は実に15000km、地球の外気圏を抜けて宇宙空間までを貫く[軌道タワー]を彷彿とさせる。

 

 

 

 

 

 

 もっとも、この「拠点」。実はスケール感に関して言えば、比較対象のリューネの都にはとうてい及ぶべくもないんだけどな。

 

 広さ的にも。また技術的、文化的な発展段階にしても。

 

 

 

 一応、ワールド2で訪れた紀元前のトール・エル・ハマムと比較する場合なら、こっちだってまだしも先進的ではあるんだろう。

 

 農地は管理された畝を作って一面にズラリと並んでいる。また、個々の建築物にしても、土レンガよりも頑丈な焼きレンガ造りで見目もよろしい。

 

 

 

 他にも、通用路や水路、堀などの引かれ方にマクロな計画性がある。つまり行政サイドで立案実行された、都市開発プランの片鱗が垣間見えるだとか?

 

 概ねあらゆる箇所が相対的に洗練された。紀元前数千年レベルの中東世界の中心地から、千年単位で積み重ねられたノウハウの蓄積を伺い知ることができる。

 

 

 

 全体的な水準をざっくりと見ると、たぶん、古代ローマ帝国時代の田舎都市ってあたりが近いレベルじゃないかねえ。

 

 おお偉大なるローマ、その辺縁部。凄いと言えばもちろん凄いのだ。

 

 

 

 しかしながら、紀元前数千年と、現代二千年プラスα。つまりトール・エル・ハマムに加えて、事実上の未来都市であるリューネの都とも相互に距離感を見比べてみるのなら。

 

 どちら側により近いのか。その問いの答えとしては、この「拠点」もまだまだ、大昔の側に寄っているって断言するしかないだろう。

 

 

 

 

 

 

 ……ま、結局。この場でAIライターがやってるのは、原作(の片一方)に出てきた異種族未来都市への、外形的なオマージュってことなんだろうさ。

 

 

 

 草食系恐竜人類(レエリナサウロイド)たるフォロル族。出典が半世紀前の架空種族らしく、あちこち妙にレトロっぽくてチグハグな部分も見受けられる。

 

 とはいえ、彼らがエネルギー源としての反物質の実用化や、「物質放出式」の軌道エレベータ――SF的なアイデアとしてはリアルの[カーボン・ナノチューブ]の強度や靭性に頼った「ケーブル式」よりも古いものの、成立させるために必要な技術水準はそっちの方がだいぶん上だ――の実現などなど。

 

 文明の発展度合いで、21世紀中葉のヒト文明を大きく凌駕していることは明らかだ。

 

 

 

 「拠点」とリューネの都との表面上のオーバーラップには多少の小気味よさがあるけれど、内部方面での格差は明白。そして別にそのことに何かしら、シナリオ上の意義や言及があるってわけもなし。

 

 とどのつまり、両都市のビジュアル面の符合については単なるファンサービスなんだな。

 

 ただそれだけに過ぎない。そしてまた、それだけであるってことにつき、別に悪い気はしないって人の方が多いんじゃないか。

 

 

 

 なんか似てるね、コレ。懐かしいなあ、みたいな?

 

 オマージュばんざい。サービス精神ごちそうさま、良いお点前でした。ってなもんである。

 

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 

 

 とまぁ、しばらくして「拠点」遠景から視点が切り替わった。

 

 偵察チーム&萌さんが今いるポイントは、深いアーチ状の虹色の橋。そのすぐ近くだ。たぶんすり鉢地形のふち部分から、内側のドーム近くまで徒歩で下ってきたってことかと思う。

 

 

 

 橋は街を覆う薄光の膜を横断し、文字通り、都市の内と外との間の橋渡し役となっている。

 

 外部側の橋の袂から、40~50メートルほど離れたあたり。氷原がほんのり盛り上がっている低い丘の上に、一行はいる。

 

 

 

「ちょっとココで待っていてくれる? もう向こうにはあら方伝わってると思うけど、一応、事情を話してくるから。念のためね」

 

 怪我人のフィラだけは、少し離れたところで天馬の背に乗ったままぐったり中。五体満足な残り三人に向かってそう告げると、萌さんはひとり小走りで、橋の入り口へと駆けていった。

 

 

 

 細長い円錐のクリスタルを思わせるロング・ポールが、橋口の装飾として左右に一本ずつ。そのうち右側のポールの、少し手前に横たわる緑味を帯びた結晶片岩(ガーベンシーファー)を椅子代わりにして、一人の男が座り込んでいるのが分かる。

 

 近づく萌さんのことを見留め、すっくと立ち上がった彼のタッパは遠目にもかなりのものだった。

 

 恐らく2メートルに届かんばかりだが、ただ、前ステージでワラワラ出ていた巨人どもと比べると流石に小ぶりか。

 

 

 

 カメラが拡大して男のビジュアルが顕になる。実用的な筋肉に覆われた精悍な体つきをしているものの、スッキリ整ったマスクは美男子と言って差し支えない。

 

 前面に凝ったつくりの刺繍が入った、関節などの急所部分に鎖かたびらを貼り重ねた麻の服をまとい。腰にはシンプルな鞘に収まった長剣を佩く。

 

 そしてその胸元には、金色の文字が柄のようにびっしりと彫り込まれた角笛を首から紐で下げてある。いかにも何か謂れのありそうな一品だな。

 

 

 

 実際アレには御大層な役どころがあるんだが、しかしそれってあくまで「設定上」の話。本作VWO内では、一切用いられることがないからまぁ、ハリボテみたいなものではある。

 

 

 

 

 

 

 伝令だか、門番だか。総じてそっち系の出で立ちの男が、駆け寄ってきた萌さんの前に立ちはだかった。

 

 言ったとおり、彼の背丈は2メートル級だ。160cm代後半の萌さんと向かい合うと、身長差のせいでかなりの威圧感に違いない。

 

 しかし存外彼の表情は柔らかく。萌さん側の自然体な態度も相まって、単なるイチ警備員と通行人との世間話であるかのようにも見受けられる。

 

 

 

 やあ、戦乙女よ。壮健のようだね、後ろの方々は? 云々。

 

 

 

 ……ただ、そうした二人のやり取りを遠巻きに眺めているだけでも、何となく察することができるだろう。

 

 至ってフレンドリーに話しているわりに。今ひとつ噛み合いが悪い感じがする。コミュニケーションがどうにも儀礼的、四角四面である。

 

 

 

 ていうか、ハッキリ言ってしまうと。まるっきりゲームのNPCじみた、階層構造の浅いフローチャート式AIモドキ。明らかにシナリオ上の意図的な演出として、そんなふうにそれっぽく造られているのだった。

 

 

 

 

 

 

 前ステージでの萌さんいわく、彼らの振る舞いは「異様に杓子定規」だってことだった。確かにあれじゃあ、なかなか面白い対話にはなり辛いだろうなあ。

 

繰り返せば繰り返すほどウンザリさせられるたぐい。それに、現状優先すべき怪我人の件もあるだろう。

 

「それで、ごめんなさい。ちょっと急ぎのお願いがあるんだけど……」

 

 前置きもそこそこに、萌さんはとっとと話を本題へと持っていく。それを受けて、友好的かつ機械的な門番さん約一名は、タスキ状に身につけていた背中の麻袋のなかから、何やら野球ボールサイズの丸いモノをひとつ掴み出した。

 

 差し出されたそれを萌さんが受け取り、お礼を言う。それからすぐに身を翻し、行きよりも少し早いくらいの速度で、元いた場所へと駆け戻ってくる。

 

 

 

「これよ、フィラ」

 

 天馬に背負われたままのフィラの傍に近づき、彼女はさっき受け取ったブツを右手で掲げるように差し出す。……リンゴだなあ。少なくとも、形状は。

 

「どこでも良いから齧ってみてちょうだい。それですぐに、『いつもどおり』ってふうになるはずだから」

 

「……ふむ。ありがとう、使わせてもらうよ」

 

 フィラが手渡しで受け取ったリンゴのことをつかの間見つめた。

 

 不揃いさも傷もない、売り物めいたみてくれ。見るからに瑞々しい光沢を放っている。

 

 果実として、程良く熟れているのは確からしい。といっても、皮の色は黄色、ないし金色で金属感が拭えず。残念ながらあんまり食欲をそそられる一品とは言いづらそうな感じだった。

 

 

 

 それでも、逡巡に費やしたのはほんの数秒。フィラが謎のリンゴを口元に持っていき、言われたとおりに側面から一口、齧りついた。

 

 

 

 かしゅっと小気味良い音が鳴る。ぼりぼりぼり、ごくん。呑み下す。

 

「味、は悪くないようだね。でも今のところ、普通のリンゴだという感じしか……んんっ?」

 

 白馬の背に凭れ、半ば体重を預けていた上半身をいきなり起こし、自分の身体をあちこち検める。そうしてしばらく。

 

 

 

 やがて騎上からさっと飛び降りると。フィラも他のメンバー同様に、氷原の上へと降り立った。

 

 普段どおりの、野をゆく草食動物めいた軽やかな身のこなしだ。地上でも引き続き彼の動きはスムーズなままで、明らかに不調が消えている。

 

「治っている、いや、戻っている?」

 

 まるで、仮想空間上に存在するフィラという構成データが、システム的な作用によって、ひといきにリフレッシュされたかのように。

 

「これは……確かに『いつもどおり』だ。驚いたな。いったいどういう仕組みなんだろう?」

 

 

 

「良かった。ちゃんとフィラにも効果あったみたいね」

 

 萌さんがほっと息を吐き、微笑んだ。

 

 言いぶりからして、彼女もさっきのリンゴの効能については自分自身で体験済みなんだろう。それでも目の前で実証されたかどうかで、安心感の度合いは全然違ってくる。

 

『……うーん。こっちからじゃ、どういう作用があったのかは良く分からないケド』

 

 唖然とした顔から気を取り直して、アッケラ缶が呟いた。

 

『あちこち下がってたフィラのバイタルが、すっかり元通りになってる。途中経過が丸ごと脱落してて、別人のデータにいきなりすげ替わっちゃったみたいだ。でも、かといってフィラって個人の主観的な連続性は途切れていないようだし……なんていうか。ずいぶん「恣意的な効能」って感じだナァ』

 

 

 

 

 

 

「……どう思われますか、リックさん」

 

 ここで、フィラ復活の様子や、アッケラ缶のセリフを近くで観察していたドライさんが、隣のリックくん。つまり我々プレイヤーの方を向いてそう尋ねた。

 

 久々にYESかNOかの選択肢がポップアップしてきたな。正直、聞かれている側の認識としては、イエスもノーも知ったことかって感じのひどい二者択一の気がするが。

 

 

 

 まぁ、あくまで雰囲気付けのために設けられた選択肢ってことか。主体的な意志決定を挟むことで、プレイヤー自身がシナリオに関与しているという空気感を出そうとしている。

 

 ある意味、これもまた国産RPGの伝統芸とも言えそうだな。あなた、知ってますか? はい/いいえ。みたいな。

 

 

 

 ともあれ、この場はYESを選んどくとしましょ。そっちの方が、ドライさんとの対話がスムーズに行ったはずなので。

 

「そうですね、私も同感です」

 

 なにがだよー。……いやその、フィラの不自然な身体治療、ひいては原生代のど真ん中に横たわっているこの謎のエラー空間についての考察ってことは、何となく流れで分かるけどさ。

 

 だが、今の選択肢に答えた挙げ句にその返しをされると、流石にこっちとしてもツッコミの一つは入れたくもなるぞ。

 

 

 

 ドライさんに続いて、当事者のフィラもリックくんに向かってなるほどと頷いてみせる。なにがだよその2。

 

「言われてみると、確かに今しがた私が得られたリカバリー現象は、『帰還時』に受ける身体感覚にかなり近かった気がするな」

 

 このフィラの発言はまぁ、理解できるかな。

 

 局所性エラーを解消し、拠点に帰還させられる瞬間。つまり、ゲームシステム的に言うとステージひとつをクリアしたタイミングで、キャラクターたちがステージ攻略中に食らったダメージや状態異常などは丸ごとリセットされる。

 

 マイナス、プラスを問わず。一時的なステータス変動はそのステージ限りであって、次のステージ攻略にあたっては、毎回コンディションが初期状態で臨むことになる。

 

 そうしたゲーム上の挙動をキャラクターの認識に落とし込むために。帰還転送中に治療っていうか、一種の回帰処理が行われているタテマエなわけだ。

 

「私自身、現状のルーチンワークが始まってからこの方、重傷判定になるほどの大怪我を負う局面がなかったから、今のような劇的な作用を身をもって体験するのは初めてのことだが。ミッション後の我々に働く治癒効果。あるいは、修復効果と言うべきかもしれないが、それと今回の現象には、類似性があると言えそうだ」

 

 

 

 リックくんのYES返答と、今のフィラの推測を聞いた上で、萌さんがうんうんと頷いている。

 

 彼女としても、はっきりと言語化できるほどではないにせよ。謎のリンゴの作用経路につき、だいたいのアタリを付けてはいたんだろう。

 

 

 

 原作『恐竜惑星』の時期から通算すると、彼女ももう、十年選手である。

 

 設定上、その間にヒト文明が辿ってきた道のりはけっして平坦なものではなかった。

 

 人間変われば変わるもの。お転婆気質は今やすっかり鳴りを潜め、バーチャル・ステーション所属人員のベテラン筆頭として、最前線で活動を続けてきた萌さんのしなやかな判断力、行動力はともに定評があるとのこと。

 

 もっとも、プライベートだとどうなのかは、定かなところじゃないけどな。

 

 変われば変わるものとはいえど。三つ子の魂百、とも言うわけで。

 

 お仕事向けの振る舞いを脱ぎ捨てたなら、途端に、以前の彼女らしいアクティブさが顔を覗かせるって塩梅なのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

「同じく局所性エラーの産物であるこの空間が、普段と大きく見た目を違えていても。全体を構成する個々のパーツは同じものであって……いわば、変奏であるということでしょう」

 

 と、ドライさんが現状の議論をざっくりとまとめる。

 

「あの果実を口にするという行為を起点として、局所性エラーからの帰還時と、同様の物理現象がトリガーされる。萌さんが言っていた『いつもどおり』という表現も。そうした作用経路を推定したものだったのですね」

 

「そ。あの風変わりな見た目通りの、不思議な魔法のリンゴだなんて突拍子のない考えを持つより。バーチャル世界のシステムが映し出されたものだって考えるほうが、ずぅっとそれっぽいでしょう?」

 

 

 

「ええ、おっしゃることは分かります。少なくとも、当たらずとも遠からずといったところかと」

 

 そう言いつつ、尖った顎の部分をやや下げることで留保をつける。少し、間をおいて。

 

「しかし……私の個人的意見としては。それだけではない、とも、感じられつつあるのですが」

 

「えっ?」

 

 

 

『それだけではない? どういう意味なの、ドライさん。何か、そっちで気がついたことがあったってコト?』

 

 ポートレートで目を見開いた表情のアッケラ缶が尋ねる。議論の起点たるリックくんも、同じくドライさんに向かって続きを促すかのように目配せをする。

 

「現在の状況から受ける、大まかな印象といった程度です。気づけたというほど確度のあるものではありません。ただ、この場においては、これまでとは異なった視点からの干渉が、例外的に行われているように思われるのです」

 

 ドライさんが虹の橋の入り口方面へとカニ型の頭を向けた。その目線の先には、さっきの門番ふうの大男が、元通り岩の上に座って、こちらの様子を窺っているのを見ることができる。

 

 座った場所も、姿勢も。また仕草や雰囲気も。一番最初に見かけたときと、こっちが受ける印象がほぼ一緒だ。

 

 

 

 男の身体アクションには明らかにバリエーションが少ない。シーンごとの動き自体は自然体ではあるものの、個々のアクション・パターンの規格じみた雰囲気のせいで、相変わらず、妙に機械的。作り物めいていると言っていい。

 

 

 

「ここ、22億2500万年前の地球に対しては、元より氷河期の到来を企図したスネーカーの介入があったものと見られます」

 

 拠点とは逆向きの方角にプレイヤーとしての視点を移すと、すり鉢地形の登り坂の向こうに、一行が先ほど抜けてきた氷原地帯が広がっている。そちらの景色だけを見て考えるのなら、氷河期という時代性との乖離は、実はそこまででもないのかもしれない。

 

「それと同時期に発生した局所性フラクタライズ・エラー。確かに、規模や時間的な継続性は飛び抜けているものの、そこまでであれば、これまでのケースと質的に異なっているとは言い切れません」

 

 元々バーチャル世界には、スネーカーが生命進化に介入した形跡なんか、そこら中に転がってるわけだからな。

 

 地質学的スケールがために、個々のギミックの存続期間も長きに渡っており、おかげでたまたま遭遇するくらいならそこまでレアケースとも言えないのだった。

 

 それに、これまでゲーム内で体験してきたとおり。時代ごとの局所性エラーの見てくれだって、場面場面、その時々で千差万別だ。

 

 

 

 ですが、とドライさんが続ける。

 

「それらに比べ、あの大柄なヒト族の男性や、先ほどフィラさんに用いられた黄金の果実などは、些か毛色が異なっているように思われます。単にこちらに友好的(ポジティブ)である他にも。既存のものを組み替え、即席で仕立て上げたかのようなその有り様につき、何かしら、外部からの横槍が加わっている。そういった可能性を感じるのです」

 

「つまり……既知の異常である局所性フラクタライズ・エラーという現象に対し、それとは別の。バーチャル世界に対する、ベクトルの異なった干渉が混ざり込んでいる。この場の成り立ちとは、そうした二重性の帰結であるのかもしれない、と?」

 

 フィラの言葉に、ドライさんが頷いた。もちろんこれについても現時点では断定できませんが、という、お約束の注釈を添えながらも。

 

 

 

 

 

 

 詳細については今なお不明瞭ではあるものの……現状、局所性フラクタライズ・エラーとは、バーチャル世界における何らかのシステム異常の表出だろうと想定されている。

 

 タイム・ホールやジーン・ダイブを用いた各文明からの干渉や、スネーカーの手による直接的な進化への介入。その時々、恣意的な改変行為がバーチャル世界では数多く行われてきた。

 

 

 

 現時点でバーチャル世界の各時代に生じている様々な謎現象は、あちこちから加えられた歴史の捏ねくり回しによって出現した、説明可能性の低いシステム・エラーのアマルガムであろう。

 

 ここに来るまでは、そうした仮説の範疇にだいたい収まっていたわけである。

 

 

 

 しかし、今いるこの場所に限っては、どうも「それだけではない」のかもしれない。

 

 何か、別の。さっきアッケラ缶が言ったような、「恣意的な効能」をわざわざ発生させている、第三者からの何らかの介入があるんじゃないか?

 

 

 

 ドライさんが仮説として出してきたのはそういったことだな。

 

 そして、ネタバレしてしまうと。シナリオ上、この場で横車を押しまくっている第三者というのは確かに実在する。

 

 原生代リィアキアンに様々な異物を持ち込んだ謎の下手人。現時点だと輪郭すら見えていないが。しかし次のワールド7のストーリー展開のなかで、その何者かについては次第に明らかになってゆくだろう。

 

 

 

 ……もっとも、当然その前にワールド6をまるっとクリアせにゃならんがね。

 

 結構長丁場になるんだよなあ、ココって。題材になってる『元ネタ』だけなら売る程あるってこともあって。ま、ぼちぼち頑張っていこう。

 

 

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