恐竜惑星とジーンダイバーのMOゲームを実況します   作:あーぷ

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数千年の近さと遠さ

 

 

「どうやらこのドームの内側では、地球圏の現代有機生命体にとっての適正な環境が、大筋で維持されているようですね」

 

 リックくんが片手持ちで差し出しているスカウターの検出データを読み取った上で、ドライさんが言った。

 

「時代ごと、中長期的変動を繰り返している各種パラメータが、偶然によって今の値に定まることは考えづらく。明らかにこれらは人為的、ないし作為的なものです」

 

 ヘキサ型スカウター。灰色二色のツートンカラー、プグラシュティクのパワード・スーツの肩裏部分に仕込まれている、『ジーンダイバー』でティルやバンがDNAの採取に用いていたオプション装備のひとつである。

 

 対生物用途だけじゃなく、VWO内では先端のなめらかなセンサー部分を物質に直接押し当てることで、土壌や空気中の成分についても詳しい検査ができるってことのようだ。

 

 

 

 ちなみに先ほどの検査シーンだけど。PCがギガントの場合だと、なんか手首の覆い部分を短く詰めたガントレットみたいなのを地面に拳ごと突き込んでたように思うし、ヒトPCならたぶん、バンパイアーのDNA採取用射出ワイヤーあたりを下に向かって撃つ形になるんじゃないか。

 

 この手の汎用性があって然るべきガジェットの使用場面においては、今回のケースみたく、VWOなりの独自、拡大解釈が混じり込んでいることが多いように思う。概ね上手いこと原作を膨らませているって感じだな。

 

 

 

 

 

 

 実はっていうか……むしろ見た目通りのそれらしさだったと言うべきかもしれないが。

 

 虹の橋の手前で座り込んでいた門番さん。彼、「拠点」内でのヒエラルキー的に言うと、確固たる立場のある大人物であったらしい。

 

 

 

 円形都市内部への出入り、つまり出入国管理につき。彼がその場で独自にジャッジしてしまっても、権限的に見てまったく問題ないとのこと。

 

 

 

 裏付けは萌さんからの取りなしと、また門番さん本人が彼自身の権能を用いて『観て』いた、一行がこの時代を訪れてからの諸々の行いだけで十分とされた。

 

 偵察チームの入場、並びにティモシーⅡの入港許可があっけなく降りた。

 

 

 

 続いてドライさんの指示の下、手早く「拠点」内部の安全確認が行われる。

 

 都市の外周部は農地として区画化されており、その中でもやや街寄りの一角。中規模な休耕地のひとつに調査先としての白羽の矢が立った。

 

 一通り土壌調査を行った結論が、冒頭のアレだ。

 

 

 

『…ええっと。こっちからの観測データも、だいたいそっちで出た数字と同じになってるみたい』

 

 と、アッケラ缶。スカウターから得られたデータは、わずかに遅れて彼にも送信、共有がされる。

 

『それに、萌ちゃんがひと月もの間、無事に活動を続けてこられたわけだからね。この隔離された空間には、ある程度の継続性、信頼性が保たれているって見てもいいんじゃないかなァ』

 

 はい、とドライさんが頷く。

 

「この時代での活動を続けるにあたり、この場を間借りさせて貰えるのであれば、それに越したことはないでしょう。スネーカーによるエネルギー奪取の処置頻度が不明瞭である以上、今後も母艦の動力には不定期にダメージが入ることを想定せざるを得ず、したがって、現時点で皆さんの生存環境の維持には若干の懸念があります」

 

『リスクを考慮した上でも、利便性が上回るってことだよね。うん、その点はボクも同感』

 

 

 

 物見役をこなし、その場に簡易の楔も打った。先遣隊の仕事としては十分すぎる。

 

 ここまで来ればもう、あとは責任者同士で直接話を詰めたほうが良いだろうって流れになるわけだった。

 

 

 

 ビーコン込みでも途切れがちな通信に四苦八苦しつつ、なんとかブリッジとの対話を消化。

 

 偵察チームと母艦のティモシーⅡ。双方の状況確認と、今後の予定の摺り合わせが成される。

 

 

 

 

 

 

 樹林内からの攻撃を警戒し、ティモシーⅡは中高度を維持しつつも半速前進。

 

 不時着地点から始まって、樹林帯を抜ける。光の膜をくぐり、さっきの休耕地の一角を間借りすることで着艦を果たした。

 

 

 

「……不可解な場所だ。気に食わんな」

 

 と、ティモシーⅡの後部昇降式タラップをくだり、下草の生えた休耕地へと踏み出したユキちゃんが呟く。

 

「建造物の様式は、霊長人類文明における古代後期の水準のようだ」

 

 続いて降りてきたハルが、細めた両目で周囲をざっと眺めながら言う。

 

 他種族と比べて感情の抑揚が少ないはずのギラグールだが、それでも心なしか彼の口調は弾んで聞こえる。

 

 局所性エラーによる偏向が相変わらず在る。行動や言動の中の情緒性、衝動性がやや増しているってことだろう。まぁ多少は。

 

 

 

 もっとも、それはハル自身が元々変わり者であるってことを覆すものではないけどな。

 

 ギラグール文化における哺乳類オタとなると、どうもヒト文化における爬虫類オタ以上にキワモノなポジションらしいので。

 

 

 

「むろんこれらは、彼らのハイパー・バーチャル・システムを経由し、バーチャル世界側に仮想的に写し取られたものにすぎない可能性は高い」

 

 しゃべくりながらも、引き続きハルの目線は周囲をしきりにキョロキョロしている。

 

「…しかしあちらに見られる類の、古式コンクリートと木造瓦葺きの組み合わせについては、以前入手した資料の中に見覚えがある。基礎構造の頑健性は高く、その一方で、装飾性にやや欠ける。霊長人類の『現代』から換算した場合、恐らくあれは2000年ほど遡る――」

 

「貴様の爪研ぎに付き合っている暇はない。……その視点を買って今回連れてゆくが、途切れた獲物の足跡を講釈させるために、同道させるのではないのだからな」

 

 ピントを外した行為、のギラグール流の言い回しかねえ。必要なのはあくまでアドバイザーであって、コメンテーターではない、と。

 

 

 

 ちなみに爪研ぎってのはギラグールにおける研究者、ないし学問的な研究行為そのもののことを指す。

 

 そしてハルが自軍の組織活動よりも、自分自身の興味充足を優先しがちなのは、『恐竜惑星』本編でもばっちり発揮されていた「彼らしさ」だと言えるだろう。

 

 

 

 なんか、のっけから人選ミスっぽい雰囲気も漂わせつつ。ユキちゃんが重ねて言う。

 

「先だってドライ・シックスが、現地の首領に渡りを付けている。相手はそこまでの柔軟性を持たない、模擬人格に近いものだそうだが、かといってこちらの方針を押し出すだけで済むとは限らん。同席するユイシロ・モエとともに、交渉時における認識の齟齬を補い、潤滑油の役割を果たすのが、貴様の役目だ」

 

「……了解した」

 

 

 

 

 

 

 とまぁ、当初はあれこれと懸念もあったようだが、幸いそこらへんは大筋杞憂に終わったようだ。

 

 

 

 ようだっていうのは、「拠点」サイドとの実際の交渉場面がゲーム内でちゃんとした尺を取られていないため。

 

 現場におけるディティールにつき、ワールド6でのロビー扱いされる「拠点」内の散策で拾えるNPCの発言や、ライブラリに格納されてるジャーナル。あるいはアイテムの解説テキスト等から読み取るしかないって形になっちゃってるからなんだが。

 

 

 

 ともあれ、ヒトとプグラシュティクのファースト・コンタクト時のような、異文化交流上の不幸なすれ違いは起きずに済んだ。

 

 萌さんやドライさんのフォローもあって、「拠点」の首領とユキちゃんとの会談は平穏無事に進行。その場で約定っていうか、口頭での合意が交わされた。

 

 本件における合意内容は、シンプルに纏めると以下のようなものである。

 

 

 

 遊撃隊はこの「拠点」の外敵退治に手を貸す。

 

 その代わりに「拠点」の側からは、彼らの帰還の目処が立つまで、軍需物資や生活物資、更にはフィラが齧った黄金のリンゴのような特殊な品目などを提供する。

 

 

 

 ま、萌さんが言うところの「素っ気ないギブ・アンド・テイク」の拡大版ってなところかね。

 

 

 

 今回の交渉で、遊撃隊の側が採った指針は明らかだな。

 

 現在地たるエラー空間内部から、無理やりタイム・ホールで脱出するリスクを取るんじゃなく。「拠点」の現地組織から適宜援助を引き出しつつ、エラー現象そのものの段階的な解消を試みる。

 

 つまり、ワールド6残り部分のストーリーにつき。凶暴化した現地のエラー生物群を狩りつくすことで、普段どおりにミッションから解放されることを目指すってわけだ。

 

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 

 

 ところで、ユキちゃんと会談の場を持った「拠点」の首領のビジュアルなんだけど。

 

 つば広の帽子を斜めに被り、それによって短く切り揃えた白髪を半ば覆った御老体。って感じだったりする。

 

 

 

 彼は拠点マップの隅っこに位置する宮殿の入り口あたり――建造物の内部にもマップチップは作られているが、NPCが配置されていないのでガランドウだ――で突っ立っている。今後会いたくなったら好きなときに会いに行くことができる。

 

 

 

 つってもまー、別に会ったからって他のNPCと同じように一定のパターンじみたことしか言ってくれないし……それに肩口や手首の甲の上に侍っている二羽のカラスどもが、ぎゃーぎゃーうるさいだけなんで。好んで会いに行く人なんて、彼のファンでもなければそうそう居ないとは思うけれど。

 

 

 

 首領どのも他の連中同様に背丈が高く、また背筋も曲がっていない。両腕のカフス部分が肘上まで詰められた、灰色毛皮のガウンから伸びている節くれだった四肢についても、老いてなお矍鑠と鍛え上げられている。

 

 あごには長々とした白ひげを蓄え、鋭く研がれた鉄製の槍を手持ちとする。

 

 その得物の柄部分へ、ぐるりと巻き付くように彫り込まれた金色の文字には見覚えがあるはずだ。門番さんが持っていた豪勢な角笛に刻まれていたのと同じスタイルで、恐らく表語的というよりも呪術的な文言。このヤリも、角笛と同じくいかにも謂れのありそうな逸品と言える。

 

 

 

 総じて、威厳ある一廉の老戦士の姿だな。

 

 あえてウィークポイントを挙げるとすれば、帽子によって見えづらくされている左目が、どうも潰れて喪われている。つまり隻眼で距離感が掴みづらいってことくらいだろうか。

 

 

 

 

 

 

 ……さて。ここまで来れば皆さん、いい加減お気づきのことかと思うが。

 

 ていうか人によっては、それこそティモシーⅡがタイム・ホールから飛び出た直後。眼下に広がる樹林のグラフィックを見た瞬間、即座に「あーコイツは」って感じになってたものかと思われるが。

 

 

 

 [北欧神話]、だよねえ。どれもこれも。何もかもが。

 

 このワールド6。頭のてっぺんから足のつま先まで、北欧神話系フリー・アセットが大盤振る舞いなんであるよ。

 

 

 

 

 

 

 一面の雪景色。針葉樹林。

 

 巨大樹。虹の橋。古代の街並み。巨人やドラウグといった各種モンスターのグラフィック。

 

 更にはNPCが発するボイス、効果音、行動ルーチンのAIにいたるまで。

 

 

 

 そのいずれも、某神話に出てくる登場人物やロケーションを再現……もとい。既存データを丸ごと移植した上で多少手を加えただけで、極めてイージーに3Dフィールドの全体像を構築している。そうした手合いなのである。どう見ても。

 

 

 

 

 

 

 北欧神話。言わずと知れたメジャー選手だ。

 

 ファンタジーでも、SFでも、しょっちゅうモチーフとして扱われている。節操なしって言ってしまっても全然いいくらいに。

 

 

 

 本作VWOでは、固有名詞だけはあえてボカされているけれど。この場であえて明言してしまうと、ユキちゃんと会談を持った隻眼の首領は、北欧神話の神々の主神、オーディン。

 

 萌さんが最初に遭遇したという、後のステージ6-4あたりで一時的に共闘することにもなる偉丈夫たちは、同神話のお歴々の中でも最も一般人気が高いとされる、雷神トールとその従者が二名である。

 

 

 

 虹の橋ビフロストを守っていた門番さんは千里眼を持つ光の神ヘイムダル。そして、彼から受け取った黄金の果実はイドゥン、ないしフレイアのリンゴだ。

 

 

 

 つまるところ、ほんの僅かな例外――萌さんが乗っていた天馬の『グラネ』なんかは、アセット・データじゃなく独自のグラフィックになっている。たぶん、アレは『ジーンダイバー』の後期OPに出てくる白馬のユニコーンからデザインを持ってきてるんじゃないかと思う――を除くと。

 

 ワールド6を構成しているほとんどすべてが、素材の味わいそのまんま。既存データをひたすら切り貼りしただけってことなんだよなあ。

 

 

 

 アセットゲーの面目躍如とでも言うべきか? まー、悪い意味でだが。

 

 この手の量産ゲームに馴染みの方とってみれば、それはもう。既視感に満ち満ちた光景が延々続いていたのが、容易に想像できる気がするぞ。

 

 

 

 

 

 

 もちろん、アセットの優れた利便性自体は今さら疑いようもない。

 

 良いものは挙って持て囃され、逆にイマイチなものは底へ底へと沈んでいく。機械学習に基づく自動生成のごった煮の中から、市場原理の手を借りながら、ひたすら上澄みだけを掬い続けた一揃いだ。

 

 

 

 そのクオリティの平均的水準は、まさしく日進月歩の体現であると言っていい。

 

 

 

 多種多様、玉石混交な出来合いの品を、自分めいた他人(A I)任せにしてこねくり回す。

 

 ただそれだけの手順で、昨今、二昔前の一般販売品レベルになら容易に到達可能なわけである。

 

 

 

 無闇矢鱈に使いすぎると、作品全体の雰囲気が安っぽくなりがちなため。弊害がないってわけでは全然ないんだが。

 

 特に、今回やり玉に挙がっている北欧神話一式については、某営利企業が過去の知的財産権(I P)をフリーユース化したものを、そのまま丸ごとアセットに組み入れたってケースだ。

 

 

 

 元が商用品ってことで質は良いし。統一感もあるものの。一方でそうした長所の裏返しとして、世間様における知名度が段違いに高いせいで、目の当たりにした際のデジャブっぷりは容易に如何ともし難いレベルへと達してしまう。

 

 

 

 また加えて、大本が自然現象の擬人化(アニミズム)だろうと、実在の王や英雄の逸話が死後に脚色された結果(エウヘメリズム)であろうと。

 

 いずれにしても神話とは、ここ最近の数千年という、地質学的スケールにおける瞬きに等しい期間で編まれた輝かしくも泡沫な夢にすぎない。

 

 

 

 『恐竜惑星』と『ジーンダイバー』が扱う古生物学は、概ね地質学(幾らか天文学もか)とスケール感を同じくしている。数千万だの、数億だのがポンポン出てくることからもそれは分かる。

 

 神話と比べて、モノサシの単位系がまるで異なっているのが明らかだ。

 

 

 

 つまり、神話ネタを扱う、というのは。そのネタ自体の良し悪し以前の問題として、両原作のコンセプトにかなり反してしまっていると言わざるを得ない。

 

 二次創作、なのにねえ。なんとも据わりの悪い話だった。

 

 

 

 

 

 

 ……しかしである。これって、丸ごとすべてが単なる手抜き、とも言い切れない部分もあるのだ。

 

 22億年前後前の地球で起こった、生物進化上のひとつの飛躍。それには今回さんざん用いられている北欧神話がたいへん深く……いや、別に深くはないか?

 

 

 

 正直深くはないかな、うん。でもまぁ、深度についてはさておき。案外、目で見て分かりやすい関連性があったりするもので。

 

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 

 

 有機生命体が地球上に成立するにあたり、どんな化学進化のルートを辿ったのか。その点については、今なお薄暗い仮説のトンネルを抜けきっていない状況だ。

 

 

 

 『ジーンダイバー』劇中で語られた「地上の水たまり付近の泡の中で、無機物の周囲を覆う有機物が無機物の複製能力を乗っ取り、それが海へと流れ込んだ先で代謝能力を持つ有機物と融合することで生命が誕生した」というのも一つの説……っていうか。生命起源仮説のひとつである[表面代謝説]を、現行の有機生命体へと実体的に結びつけるための一解釈。ストーリー展開だったと言えるだろう。

 

 

 

 そして昨今、起源説のなかで有力視されているのが[RNAワールド仮説]だな。

 

 掻い摘んで説明すると。現行生命が用いるデオキシリボ核酸(D N A)ベースの自己複製系が成立する以前に、無生物環境下においても比較的合成されやすいリボ核酸(R N A)を遺伝情報の伝達物質とする、基底的、かつ発展的な自己複製系サイクルが存在した。

 

 そのサイクルの行き着いた先こそが現在遍く広がる地球産有機生命体なんであり、DNAとは、生殖の場においてRNAよりも安定性が高い優れた代替物に過ぎなかったのだ、というもの。

 

 

 

 このRNAワールド仮説は、生命の起源を、かなりの精度で筋道立てて説明してくれる。

 

 しかし、その一方で。「そもそもRNAワールドが存在したという物証を(古すぎる上に細かすぎて)見つけようがない」という、わりと物悲しい現実が立ち塞がっていたりもする。

 

 現時点でもあくまで仮説は仮説なわけだ。最有力ではあるけど。[プロテイン・ワールド仮説]など、対抗馬足りうる解釈は他にもいくつか提唱されていると言っておこう。

 

 

 

 ともあれ、無秩序な有機物の混ぜ物がいつしか自己複製能力や代謝能力を手に入れ、炭素生命体としての自律活動を始めてから、すでに40億年以上が隔たっているわけである。

 

 

 

 

 

 

 40億年という膨大な数字を、大雑把に、だいたい前後半々の二分割にしてみることができる。

 

 地球史の初めに来るのが、進化の黎明期たる冥王代。その後には太古代、原生代、顕生代が連なる。

 

 これら三つの総計が、だいたい40億年少々。凡そ、地球生命の歴史そのものと重なるだけの長さを持つ。

 

 

 

 そのうち二番目の原生代を、さらに3つに細分化した1つ目にあたる古原生代。23億~20億5000万年前――原生代に関しては概ね化石記録などに基づく[層序学]ではなく、シンプルな時間測定による均等割がされている――の古原生代第二紀、リィアキアンこそが、二つ折りにした場合にくっきりとする、歴史の折り目だ。

 

 

 

 このタイミングで何が起こったのかっていうと。[真核生物]の誕生である。

 

 

 

 真核生物。皆様もよくよくご存知、ヒトが生来持つ目の分解能で観測可能なサイズの生命体のうち、ほとんどを占めている生物の一派(ドメイン)だな。

 

 [細菌]、[古細菌]とともに、生物界を大きく三分する一角にあたる。身体を構成する細胞の内側に、細胞核やミトコンドリアなどの各種小器官を有しており、それまでに存在していた[原核生物]よりも、大幅に大型化、多機能化を果たした。

 

 

 

 そのほか詳しい特徴については他所に任すが、何れにしても、原核生物から真核生物へというステップアップは、生命進化史において間違いなく飛躍的なものだった。

 

 にも関わらず。有機生命体の誕生と同じように、真核生物が成立したルートについても、前世紀においてはまだまだ謎に包まれていた。

 

 

 

 例によって物証がなかったんだな。レトリックだけじゃあ理論(セオリー)にはならない。

 

 世の中、確たる裏付けなしで議論を進めざるを得ないジャンルもけして少なくないけれど、幸いこの分野はそうではなく。翻って、推論や憶測の説得力が相対的に弱まるのは痛し痒しではあるだろう。

 

 

 

 

 

 

 だが、そのぶんある日突然目の前が開けるってことも起こりうる。

 

 ファクトでぶん殴られた天の岩戸が、見事にぱっかりブチ割れる。みたいなケースだ。

 

 本件についても。21世紀に入ってからの分子生物学、並びに海洋生物学の発展に伴い、待ちに待った物証の発見によって陽の光が差した。

 

 

 

 今世紀初頭、北極海の海底熱水噴出孔から採取されたDNAサンプル。その解析によって提唱されたとある古細菌の上門グループこそが、真核生物の系譜におけるミッシング・リンクであり、20数億年前の出来事を今に伝えるミクロの生き証人とされる。

 

 その名も[アスガルド古細菌]という。

 

 

 

 ……いやぁ、名前。それでいいのかって感じがないではないな。

 

 北欧神話における神々の住まう場所、中つ国、アスガルド。見たまんま、そこからガッツリ引いて来られているんだが。なんていうか、(かぶ)いてらっしゃる。

 

 

 

 

 

 

 学名の傾きっぷりは他の部分にも通底していて、このアスガルド上門グループに含まれる門レベルの分類においても、同じく北欧神話由来のお名前がぞろぞろと雁首揃えている。

 

 オーディン古細菌、ロキ古細菌、トール古細菌、ヘル古細菌、ゲルド古細菌。あれやこれや。

 

 

 

 そして、その中でも、真核生物のベースになった可能性が高いと見られているのが[ヘイムダル古細菌](の祖先)である。

 

 

 

 この古細菌の一門が、他の真正細菌を細胞膜内に取り込んで共生するようになったのが、真核生物が持つミトコンドリアなどの細胞内小器官の起源とされる。

 

 つまり、ヘイムダル古細菌とは真核生物のフレーム部分。内部小器官各種を除いた残りのほとんどすべてに、もっとも近しい生き物だということなのだった。

 

 

 

 

 

 

 スノーボール・アースという極限的な環境において、他の数多くの大量絶滅同様、往時の原核生物オンリーの生態系に対して巨大な淘汰圧が掛かった。

 

 その渦中では、細胞内共生に基づく大型化、多機能化がおそらく生き残りにあたって有利に働いた。

 

 結果として、真核生物という形態が成立、発展し、時代を下るごとに多様な進化を遂げていった。

 

 

 

 北欧神話における光の神であり、ヒトに名前や知恵、身分などを授けたとされるヘイムダル。

 

 神々の黄昏(ラグナロク)の場にて御本人は討ち死に、後に続くヒトの歴史には姿を見せない。そんな彼の名前が、この生物門に充てられているのは、その点に限ればなかなか示唆に富んだ命名だと言えるんじゃあないだろうか。

 

 

 

 

 

 

 ……なんで、まぁ。22億2500万年前の極小サイズのエラー空間において、冬の北欧っぽい自然環境が広がっていて。

 

 巨人やドラウグといった神話や民間伝承由来のモンスターがうろついていて。トールとか、ヘイムダルとか、オーディンなんかの神々集団が味方側にいて。

 

 

 

 おまけにワールド6の最終ステージが、[ロキの城]と呼ばれる熱水噴出孔を模したおどろおどろしい建造物を、同道するヘイムダル神とともに正面から攻略。その最奥で待ち受けるステージボス、北欧神話のトリックスター、炎の巨人と化したロキ本人を討ち倒す、というのも?

 

 それなりに裏付けが、裏付けがー……うーん。一応。なくもない話だったりするんだと思う。

 

 

 

 もっとも、あくまで「それなりに納得感のあるコジツケ」であるという以上のものではないため。コジツケにかこつけて、手抜きとネタ切れを誤魔化してるんだとバッサリ行かれてしまえば、弁解の余地はほとんどないかとも思われるが。

 

 

 

 ストーリー上の必然性も後ほど語られる予定があるものの……それ以上に、ゲーム作成上の利便性、実用性が勝っているのがほぼ確実。

 

 実際、敵をヒト型メインにすると色々と処理がラクなんだよねえ。

 

 敵対NPCのバリエーション確保とか、バランス調整とか? あと、マップ構造とそこに配置されるNPCとの整合性なんかもか。

 

 

 

 とにかく使える素材の絶対量が全然違うんで、自動生成であっても、それなりのクオリティのものが一瞬で仕上がってくれる。

 

 

 

 ま、身も蓋もない現実ってやつだ。悲壮感すら漂ってるかと。生暖かい目でスルーしておくのが、この手の場面における由緒正しきマナーっていうもんだろう。

 

 

 

 

 

 

 あ、そうそう。上のような経緯から、ワールド6に出現する敵キャラには見た目通りの種族設定の他にも、どいつもが古細菌としての属性分類を持つ。

 

 例えば巨人もヒト型ってことで、霊長類特化武器が同じく有効であるわけだが。それとは別カウントで、古細菌特化武器で殴った場合でも与ダメージが跳ね上がる仕様になっているのだ。

 

 

 

 以前に、サブクエの使い切りアイテムを使って特化武器一本を強化しておくと、しばらく快適さがガラリと変わるって話をしたと思う。それ、ココのことだな。

 

 

 

 道中のザコ敵だけじゃなく、各ステージのボスについても扱いは同じ。

 

 バシロサウルスコンパチのミドガルズオルム。ワニっぽい見た目の現代式で復元された、[スピノサウルス]流用のファヴニール。ほぼほぼ白亜紀後期の巨大ワニ[ディノスクス]そのまんまであるグレンデルに、果てはホモ・ギガンテウスのPC用モーションを丸パクリした巨人の老王[ウートガルザ]などなど。

 

 どいつも古細菌との複合属性。一応、見た目の種族に合わせた特化武器の方がダメージがでかくはなるんだが、せいぜい基礎攻撃力への加算倍率で5~10%くらいしか違わないのでまぁ誤差である。

 

 戦闘中における持ち替えの手間まで考慮に入れると、ひたすら古細菌特化武器だけ担いで目の前の敵をブン殴り続けるのが最適解に近いのだった。

 

 

 

 そんなわけで、たとえ予備のリボンのサブクエが未消化であっても、ここまで来たら事前に古細菌特化武器はしっかり作っておきましょう。

 

 それやっとくだけで、ワールド6全ステージの合計クリア時間単位。だいたい二割から、三割くらいは短くなるんじゃないのかな。

 

 

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