恐竜惑星とジーンダイバーのMOゲームを実況します   作:あーぷ

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シナリオとシステムの狭間で

 

 

 さぁて、今週のVWO実況は?

 

「フラウ姉さん嬲りものになる」「ラプターは前座で噛ませ」「ユキちゃん要介護認定」の三本です。

 

 じゃん、けん、ぽん、ウフフのフ、と。……そんじゃ、早速行ってみるとしましょうか。別に今週でも何でもないけど。

 

 ま、御長寿ネタってやつですな。マイナーチェンジを重ねつつ、まる一世紀近くも現役って凄いよねえホント。肖りたいもんだ。

 

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 

 

『やぁ、ティル。待っていたよ』

 

『……バン!』

 

 インカム越しの通信からも、ティルの刺し抜くような眼差しがこちらにまでアリアリと伝わってくる。

 

『おお、怖い怖い。王家の騎士として、なかなか見事な生体磁気を放つようになったじゃないか』

 

 それに相対するは、妙に間延びした、嘲りの口調。

 

『よちよちとフラウの後に付いていくばかりだったお前が、よくもまぁここまで至れたものだ。兄として誇らしく思うよ、もっとも、そうなるにあたって手掛けたのが他ならぬ兄殺しだったというのは。まったく嘆かわしいことではあるがね』

 

 

 

 

 

 

 ワールド3も、いよいよ中盤の山場にまでやって来られた。

 

 中生代は白亜紀末期、過去時間軸。すなわち『ジーンダイバー』の原作渦中において、インド亜大陸の土中を潜航していたプグラシュティクの巨大戦闘艦が丸ごとエラー(いつもの)を発症。

 

 その解決のためにリックくんとティルが艦内にジーン・ダイブで突入させられた。ってのが、ステージの冒頭だ。

 

 連携してプグラシュティクの雑兵を蹴散らしながら艦内を進んでいくも、途中で[デカン・トラップ]の噴火の影響により艦が座礁。その際の衝撃によって、二人は分断を余儀なくされた。

 

 

 

 

 

 

 ……なお、『ジーンダイバー』が製作された当時の学説だと。このデカン高原における大規模火山活動と、ユカタン半島付近への隕石衝突には、50万年ほどの隔たりがあったのだと考えられていた。

 

 火山が先、隕石が後だ。白亜紀末期の地球は、インド亜大陸での長期に及ぶ大噴火とそれに伴う気候変動によって、主にアジア周辺の生態系に著しいダメージを負っていた。

 

 既に退っ引きならない状態だったところに、比較的被害が軽微だった球面の裏側へと隕石が落着。

 

 

 

 結果として、地球史において[ビッグ・ファイブ絶滅イベント]と呼ばれる大絶滅の、最後のひとつが引き起こされることとなった。そんな考え方が二十世紀末には主流だったわけだ。

 

 

 

 表と裏でのダブルパンチ。往時の地球は非常に運が悪かった。まるで示し合わせたかのようだった。

 

 統計上の異常値とも取れる過去の出来事。その背後に、実は進化への介入者(スネーカー)というラスボスの意志が絡んでいたのだー……みたいな、原作脚本上のストーリーラインが引かれていたんだな。

 

 

 

 当時の主流学説と、シナリオの都合とを綺麗に縒り合わせてミックスさせた。実にやり手の話運びだったと言えるだろう。

 

 

 

 

 

 

 しかしながら、2010年代半ばに発表され、現在でも有力視されている見解によると。話は少々違ってくる。

 

 隕石衝突前後の地層帯をより精密に分析した結果。20世紀に信じられていた6550万年前の天体衝突――『恐竜惑星』『ジーンダイバー』共に、劇中ではこの年代が採用されている――という事件は、どうも50万年ほど遡るらしいことが分かってきた。

 

 6604万年±3万年前。今やそこまで絞り込まれており、ほぼほぼ火山活動の開始と同時期だったと見て差し支えない。

 

 

 

 つまり……火山活動で生態系が弱っていたところに隕石が降ってきたという、ある意味都合の良い前後関係は、必ずしも前提として見る必要がなくなった。

 

 そして、対蹠点仮説。メキシコ湾に降り落ちた直径10kmクラスの隕石による巨大な衝撃が、地球の内部活動を挟んで、球体のおおよそ反対側であるインド近辺に影響を生じさせたという考え方を採れば。わざわざ二大災害が偶然隣接したという、確率で見て相当レアな状況を想定すべき必然性もない。

 

 

 

 結局、K-Pg境界の大量絶滅の原因は隕石だったに尽きる。

 

 それ自体からくる直接的な影響と、誘発された地球の裏側における火山活動の活発化によって[核の冬]が到来。

 

 また巻き上げられた硫黄などの土中成分によって、全世界規模で降り注いだ酸性雨が、海中の生態系にも致命的な打撃を与えた。

 

 そういうシンプルな見方を、今では採ることができるようになっている。

 

 

 

 因果関係なんてのは、往々にして単純な方がより良いものである。オッカムの剃刀ってやつだな。

 

 隕石のみが根本にあって、他はその波及的効果であるとする。説としてスマートで、分かりやすい。もちろん未だに異論もないではないけれど、仮説として好ましく思うヒトも多いんじゃないか。

 

 

 

 

 

 

 閑話休題。敵地で分断されたリックくんとティルの二人は、巨大戦闘艦内部を別方向へと進んでいった。

 

 やがて、リックくんは艦の練兵場(原作中でティルが銃殺されかかってた場所だ)。ティルは格納庫にて、それぞれステージ・ボス相当のエラー発生人物と相対することになった。

 

 

 

 ティルの方にはバン・ニー。そしてリックくんの目の前に立つのは、王家の騎士仕様の赤いパワード・スーツに身を包んだ女性、フラウ・ニー。

 

 冒頭のバンとティルとのやり取りのように。プレイヤーキャラとティルとが別個の場所で戦っていながら、通信だけがリアルタイムで入ってくる。

 

 そんな平行的な演出の戦闘場面が、このステージの最終局面には設けられているのだった。

 

 

 

『思えば私は、我らが父。リャナン・シー・ノゥオより、後継の名指しを直々に受けたものだった』

 

 フト、何気なく思い出したかのような口調で、バンが呟く。

 

 リックくんとしては、インカム以外から情報を得られていないため、ティル側の状況は今ひとつ不鮮明ではある。とはいえこちらで対峙しているフラウ同様。バンもまた、濃い深緑色のスーツを身にまとった戦闘態勢であるはず。

 

 そのわりに彼の言動は、どうにもさっきから緊張感に欠けた感じが拭えない。

 

『つまるところ、フラウ・ニーは廃嫡されたのだ。であれば、ティル。お前の兄殺しとは、卑しき簒奪の試みにこそ他ならない。そうじゃあないかい?』

 

『戯言を』

 

 ティルも、そんなバンの気配に戸惑いを感じている様子。しかし、それでも吐き捨てるように言い返す。

 

『父上はおまえなど、元より歯牙にも掛けていなかった。分不相応を求め狂った、権力欲の亡者め! おまえは貴族院の、ダーナ・シーの使い走りとして、姉さんと父上とを賤しくも謀ったにすぎないんだ』

 

『根も葉もない言いがかりだよ! 血を分けた肉親に対して、何という非道い中傷だろう? それに……仮に、もしお前の言うとおりであったのだとしても。何者も、何物も、「謀り」なるものを、明白な形で世に識らしめることはない。面の皮の厚さには定評のあるあのダーナ・シーが、議会や、司法機関の、いつもの手ぬるい追求に屈するだなんてことが、あると思うかね?』

 

 プグラシュティクという種族の内情については、イマイチ不鮮明なところが多い。

 

 が、まぁ、ティルたちの父親であるリャナン・シー・ノゥオの劇中での振る舞いを思い返すに。良く言えば海千山千の老練な政治家が、日頃からアレコレと鎬を削っているんだろう。というのをなんとなく察することができそうだ。

 

『事実とは浮き上がった氷山の一角。おおやけとなったほんの僅かな突端部だけが、民草の知る歴史的な物語のいしずえとして、存続を許される』

 

 と、バンが芝居がかった口ぶりで言葉を連ねる。

 

『お前の言う「謀り」など。在ろうが、在るまいが、何ら変わることなどないのだよ。脚本から削り落とされたワンシーンを、いったいどこの誰が気に留められるというんだい? そんなものは何ひとつ残らない、残りようがない。残されるのは、ただお前が私情に駆られ、リャナン家の跡継ぎを弑逆したという、事実のみだ』

 

 

 

『何が、言いたい。そんなお題目を言って、いったいわたしに何を伝えようというのだ、バン!』

 

『……なぁに。英雄として持て囃されるお前の功績とて、単なる目くらましにすぎないということを言いたいのさ』

 

 少し、バンからの声のトーンが変わったように思える。より皮肉げに。より非難がましく、といったふうに。

 

『なんだと?』

 

『目端の利く後世の史家は、きっとこんなふうに著すのだろう。往時のリャナン家における権力闘争は、末子ティル・ニー・ノグの、血塗られた鉄爪によってその幕を閉じた。華々しき女傑として語られる彼女の前半生において、しばしば暈されがちではあるが、しかし確たる裏付けと共に記されるべき負の側面であった、とね』

 

『そんなことは――』

 

『どうだっていいことだ、かね? そのわりに、さっきからずいぶんと、言葉尻が萎んでいるようだが!』

 

 

 

 鼻面を上げた見下ろし目線が目に浮かぶようだ。

 

 プグラシュティク三騎士のなかで最も背の低いバン・ニーだけど。そのわりに誰かを見下す振る舞いがやけに似合うように感じられるのは、やっぱり原作における悪役ポジションの堅固さからくるものだろうかねえ。

 

『半端にお優しく、半端に激情家でもある我が妹は、結局、世間体についても半端に気に掛けずには居られんらしい。思えば我々のなかで、王家の騎士という名目に一等拘っていたのはお前だったな、ティル』

 

 そう言いつつ、鼻で笑う。

 

『まったくのお笑い草だ。私はそんなもの、しょせん道具のひとつと思っていたし、フラウは大方、血筋ゆえに課される義務の一環。せいぜい見目の良いしがらみだと捉えていた。リャナン家の血を継ぐものとして、お前の心得だけが、上滑りして浮ついていたのさ』

 

『……』

 

『半端者のお前だけが、そうあることを「見逃されていた」のだよ。妾腹の妹よ』

 

 

 

 

 

 

 んー……基本的に詭弁だよなあ、これって。

 

 極論じみたお話を唐突に持ち出してみせることで、全体像を見えづらくさせる。そのスキに自分の主張を無理くり押し込もうとしてくる。いわゆる詐術屋の手口と言える。

 

 また実態として。言っている彼自身が、そのことを隠そうともしていない。

 

 そこまで本気で言っている感じが見られない。ただ嘲りを楽しんでいる。望外の機会を持てたこの瞬間に、この際だから言いたいことを言っておこうと。そんな、半分ヤケクソじみた雰囲気がないではない。

 

 

 

 だのに、ティルは一時口を噤んでしまうのだった。

 

 インカムの通信は繋がっているのに、やり取りが途切れて無音になる。彼女だって頭の回転は相当早いほうだし、それにそこそこ血気盛んな性格でもあるにも関わらず。

 

 それは、つまり。今のバン・ニーの指摘は、ティルにとって、それなり以上に図星を指された内容であったということ。

 

 

 

 『ジーンダイバー』を通してのストーリー展開によって、プグラシュティクの王家が一。リャナン家の次期当主の座に収まった。……収まらざるを得なかったティルには、誉ありつつも影多き家業を継ぐ、自覚と心構えとが欠けている。

 

 聡明な彼女は、そのことを薄々察してはいたはず。しかしプグラシュティクの英雄サマに対して、あちこちからがなり立てられる称賛の声が、抜本的な意識改革を先送りにすることを許してしまっていた。

 

 バンはそうした実情を目ざとく見抜き。この場において、ティルに向かって大げさに指弾してみせたのだった。なぜだか。

 

 

 

 ……ま、例によって裏事情をバラしてしまうと。このバンって、人格的にはバンではあるものの、バンそのものではないんだよなあ。

 

 原作におけるスネーカーの精神攻撃みたいなもので。ティルにとっての「痛いところ」を的確に突いてくる構造になってる。これもまた局所性フラクタライズ・エラーなるものの発現形式のひとつってことだ。

 

 なんでそうなるの? というのが明かされるのは当分先になるけれど。とりあえず今のところは、その手のご都合的なシロモノなんだと流しておいてくださいな。

 

 

 

 

 

 

『だからって……お前が、フラウ姉さんを陥れ、殺したことには変わらない!』

 

 多分に苦し紛れといったふうに、ティルが叫ぶ。

 

 とはいえ次善の策としては悪くなかった。実際、この手の言い掛かりに対して黙り込んでしまったらドツボだから、とりあえず声だけでも荒げておくことで、己の意識を強く持つことができる。

 

『わたしのことも、殺そうとしていたくせに。兄としてだの、血を分けた肉親だのと、虫唾が走る。姉さんは良く出来た人だった、バン、お前なんかよりも、ずっと優れた当主になれていたはず。そのフラウを殺したお前に、元より貴種としての心得を語る資格などないんだ!!』

 

『フラウが恨み言を言ったかね? ……言わなかっただろう? 良く言うじゃないか、巣主(すぬし)は、最後にはいつも、独りなのだと。次期当主の座を手にしたこの私が、第一に成すべきは地固めであり、敗北者たる自らが除かれるであろうことは、あの女だって分かっていたに違いない。もちろん座して死を待つような腑抜けたことはあるまいが、少なくとも、論理に理解は示したはずだ』

 

 どうなんだろうかねえ、ここのところ。権力闘争を勝ち抜いた勝者がトップに立った途端、周囲に粛清の嵐が吹き荒れ、かつてのライバルが一斉処分?

 

 いかにも北朝鮮の前王朝ばりの統制国家って感じで、なんつうか、プグラシュティク社会に対する風評被害が心配ではある。

 

『それにお前の論評にしても、正鵠を射るかは怪しいものだ。実態を見るならば、フラウは私との政争に敗れたのであって。それでなくとも日ごろから、些か頭の堅いところがしばしば見られた。あの女が、父上のように、しぶとく生き汚くやってゆけたのかと言えば、大いに疑問符が付くものと私は見るがね』

 

 再び黙るティル。いや、そこは黙っちゃっていいのか? まぁフラウ姉さんが政治屋向きだったのかっていうと、確かにちょっぴり怪しい感じはするけども。

 

 

 

『さて……そろそろ爪を打ち合わすとしようか、ティル』

 

 ちゃきり、と両手のドリルを構える音がインカム伝いに聞こえてくる。

 

 原作ではわりと無防備な状態でざっくりゴリゴリやられた彼。しかし、今は両者ともに武装済みであり、王家の騎士としての条件は五分。

 

『先ほどはお前の放つ磁気の威を褒めてはみたが。やはり、どこまで行ってもしょせんお前は半端な不心得者だ。激情に任せ、ただただ暴力(チカラ)を振り回すその姿、無様とすら言えよう。斯様な簒奪者は誅さねばなるまいよ。そうするだけの権利が、私にはある』

 

 もっとも、劇中でティラノサウルスをアーマー無しで捌いてみせたティルに対し。バンは二体の[トリケラトプス]相手に、フル装備にも関わらず対処し損ねて一発もらってたあたり、ぶっちゃけ彼って戦闘能力では両姉妹と比べて一枚落ちるイメージはある。子どもの頃の鬼ごっこでもビリだったそうだし。

 

 

 

『……いいだろう。受けて立ってやる』

 

 ティルが語気鋭く言い放つ。心情的には引き続き無理をしているようだけれど。でも、それはそれとして威勢よく。

 

 今や歴戦の戦士である彼女は、虚勢だろうとなんだろうと、果し合いの場に、弱腰だけは持ち込んではならないことを知っている。

 

『たとえお前が、リャナンの後継としての資質を備えていたのだろうと。わたしが、それに、足るだけのものを持たぬ半端者であろうと。わたしのこの生命……死人(しびと)にくれてやるほど、安いものではない!』

 

『フン。吠えたものだ。それではその値付け、この両爪を持って検めてやろう!!』

 

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 

 

 

 インカムの向こうで、アームドリル同士が激しく打ち合う音が聞こえてくるなか。こちら側でも同じく戦闘開始だ。

 

「……往くぞ」

 

 ボソリと。リックくんのインカムにはっきり拾われない程度の声量。

 

 ハスキー・ヴォイスでほんの僅かだけ語りつつ、アーマーに身を包んだフラウ・ニーが、ドリルの突端をこちらに向けた前傾姿勢を作ってみせる。

 

 

 

 どうも彼女は、自前のアーマー内蔵インカムの音声発信機能を切ってしまっているようだ。たぶんだが、ティルにフラウ(じぶん)がこの場に居るということを悟らせないようにという配慮からだろう。

 

 こっちはこっちで、ティルの願望。つまり「今さら姉の手を借りるべきではないことは分かっているけれど、でもフラウ姉さんに影で見守っては居てほしい」という思いが形になったものかと見られる。なんともいじらしい話ではあろうさ。

 

 

 

 とはいえ、それって視点を変えると軟弱さの現れとも捉えられかねないため。先ほどバンが告げたティル評の信憑性が高まってしまうのは皮肉なところだ。

 

 ティル・ニー・ノグの中では、自分への厳しさと、甘さが、背反現象を起こしている。

 

 ……ただまぁ、ヒトの心理状態なんてそんなもんだ、というのも一般論であるからして。いちいち外野がどうこう言うようなことでもないってことも、また確かか。

 

 

 

 バンも、フラウも、しょせんは彼女の内面的な揺れ動きを表象する記号にすぎない。

 

 結局。この手の事柄に関しては、どこまでいっても自分自身のなかで折り合いを付けるしかないってことだ。

 

 

 

 

 

 

 ちなみにフラウ・ニーの行動モーションは、プレイヤーキャラクターのそれと完全に同じものが充てられている。

 

 通常アクションや使用スキルの判定。ヒットストップ、ディレイ、与ダメージについてもそれぞれ同様に。

 

 違いといえば大幅に盛られたHPと、スキルポイントの制限無しで最大まで振られている各種パッシブスキルくらい。そのため奇しくも同種族であるリックくんVSフラウ・ニーの対戦カードは、いわばプグラシュティク同キャラのミラーマッチの装いを帯びていると言える。

 

 

 

 要するに本ステージにおけるフラウ(ボス)戦。これってVWOのエンドコンテンツのひとつである対人戦の延長線上であり、またその入門編でもあるわけだな。

 

 今まで相手をしてきた古生物たちと比べると、キャラクターの動きがコンパクトかつキビキビしている。

 

 正面(顎)や後方(尻尾)といった殴られやすい位置取りを避けるようにするだとか。AoEを避けた後のスキに接近してダメージを取っていくよう心がけるだとか?

 

 これまで通用してきたその手のセオリーも意味がなくなる。頭の中をしっかり切り替えて、相手の動きをしっかりと見ながら戦っていく必要があるかと思う。

 

 

 

 

 

 

 ……但し。今回のフラウ姉さん。強敵かっていうと、全然そんなことはなかったりするんだけどな?

 

 というのも、内蔵AIがねえ。おバカなのよ。

 

 今どきここまでチープなものもそうそうないよなあ、ってぐらいにヒドいのです。目を覆わんばかり。

 

 

 

 『ジーンダイバー』劇中における、王家騎士団長としての秀でた戦いっぷりは、いったい何処へやってしまったのか?

 

 特定のアクションをひたすらワンパで振ってくる、ド素人戦法っぷりにはちょちょ切れる涙を禁じえない。AIはAIでも。Artificial IntelligenceじゃなくてArtificial Idiotじゃないのかコレって感じなのだ。

 

 

 

 仮にプレイヤー側が対人戦慣れしてたりするともう、絶望的である。それでなくとも。事前に以下の三点を頭に入れておくだけで、対人戦未経験のプレイヤーだろうが余裕綽々、欠伸でもしながら戦っていけることかと思われる。

 

 

 

 1.だいたいキャラクター目線で20メートルほどのあたりでウロウロして、こっちから能動的には仕掛けないようにすること。

 

 2.フラウ姉さんが土中に潜っているときはプレイヤー側からアクションを一切振らないこと。

 

 3.彼女が使ってくる短距離ドリアタを、なるべく硬直の少ない無敵付きスキルでスカせるよう常に身構えておくこと。

 

 

 

 これらさえ抑えておけば、後はもう、まな板の上の鯉。煮るなり焼くなりご自由にってとこか。

 

 

 

 ――実演してみせましょう。

 

 戦闘開始からしばらくすると、フラウ姉さんが通常移動で次第に間合いを詰めてくる。それに対し、こっちからは接近せずに一定の距離を保ちながら、通常攻撃を振るなどの牽制行動を続けておく。

 

 すると、そのうち彼女は大いに見慣れた土中モコモコ。『ハイディング・アサルト』を使ってくる。

 

 

 

 飛び道具無効状態を維持したまま、右へ左へ蛇行しながら突っ込んでくるわけだけども。狼狽えることなくその場で待ち受けておきましょう。

 

 ここでプレイヤー側でなんかスキルを使ったり、ある程度以上の距離を移動したりすると、別の行動ルーチンに入ってパターンがズレてしまうから要注意。……まぁ多少ズレても難易度的にはそう変わんないんだが。

 

 

 

 本来、『ハイディング・アサルト』はあくまで移動用スキルである。モーションをキャンセルして『短距離ドリルアタック』に直接繋げられる独自の連携。それって対人戦において、あくまで相手に択を迫るための選択肢のひとつに過ぎない。

 

 しかしながらフラウ姉さんは、馬鹿の一つ覚えのごとくアサルトで近づいての即ドリアタを狙ってくる。固定パターンなので100%確約だ。従いまして、無敵付きスキルをタイミングに合わせて振れば、簡単に『ドリアタ』をやり過ごすことができてしまう。

 

 

 

 おまけに、こっちから攻めずに待ちの姿勢でいるかぎり、彼女の行動ルーチンには今後一切変化がない。

 

 どーなるかってぇと。

 

 

 

 ……ハァイ。見ての通り。

 

 ドリアタで突っ込んでくるフラウ姉さんを、スウェー攻撃の無敵でさくっとスカす。

 

 もともとどの種族においても、スウェー攻撃に付いている無敵はかなり短い。そのためプレイヤー操作のプグラシュティクが相手だったらこんなことハイリスク過ぎてやってられないんだが、距離もタイミングも完ぺきにバレている今回のケースだと話は別。

 

 ちょうどドリアタの先端部を当てられる位置で、彼女が寸分違わず飛び出してくるのは確定済み。

 

 となれば、こっちに向かって直線で突っ込んでくる土中モコモコさえちゃんと視界に収めておけば。画面表示に多少のラグが有ろうと、反射神経にそこまで自信がなかろうと。苦もなくダメージ判定に無敵を合わせることができるのだった。

 

 

 

 ドリアタがスカったのを確認したら、リックくんを即座に背後に振り向かせる。

 

 スキル不発後の硬直を晒しているフラウ姉さんの背中に向かって、ダメージの小さい通常攻撃や、スウェー攻撃なんかを、延々つなげてちまちまちまちま削りまくる。そりゃそりゃそりゃ。

 

 

 

 繋げられるだけ繋ぎ終わったら、コンボの〆にドリアタでも何でも良いのでノックバック大きめのスキルをブチ当てて。短時間ながら行動不能に陥ったフラウを前に、こっちはひたすら↓キー二回押しのバックステップを連打。

 

 無事距離を稼げたら振り出しに戻り、ウロウロ牽制以下ループっと。

 

 

 

 

 

 

 ……舐めプレイにも程がある? 今の硬直のスキにちゃんとスキルを組み込んだ基本コンボを入れれば、よっぽどダメージ取れただろ?

 

 いやあ、実際そのとおり。仮に正規アカウント・プレイヤー相手の対人戦で、こんなことばっかやらかしてたら。不快なプレイでBAD評価押されまくって、そのうち何らかのペナルティを食らうことはまず間違いないかと思う。

 

 

 

 今回みたく、NPC相手だろうと見てくれは悪い。実況者の人格(パーソナリティ)がいっそう疑われてしまう恐れがある。けど、この場はどうしても、コレをやっておかなきゃならないんだよねえ。

 

 

 

 なんでかというと……インカムの向こうで引き続き行われている、ティルとバンとのストーリー対話。

 

 アレ、完全に時限式で進展するようにプログラムが組まれちゃってるから。

 

 

 

 戦闘中の一定時間が経つごとに、二人のやり取りが挟まり。ちょっとずつちょっとずつ話が進んでいく。

 

 そんな方式が採られているせいで、こっちである程度フラウ姉さんとの戦いを長引かせておかなきゃならない。さもないと向こうの対話イベントがきちんと最後までいかずに、中途半端なところでぶつ切りになってしまいかねないという。

 

 

 

 たぶん、ボス=フラウ姉さんのHP残量とかをトリガーにすると、例えばギラグールの空中コンボで一気に減らしすぎたりした場合に、コンフリクトを起こして処理がおかしくなっちゃうからこの形式になってるんだろう。

 

 自動生成品を齟齬なく動かすには冗長性が必須とされる。したがってこうした部分は意図的に緩く作られている。それはまぁ、仕方ない。

 

 

 

 ただ、こっちのプレイヤーの恐るべき手持ち無沙汰っぷりも、もうちょっと考慮して欲しかったとは言いたくなる。NPC相手に舐めプレイを半強制とか、ひどい話だ。

 

 

 

 

 

 

 前述の通り、今回のフラウ戦は対人戦の入門としての役割を担っている。そのせいでヘタに難易度を引き上げるわけにもいかないって事情もあるんだろう。

 

 強すぎるよりは弱すぎるほうがまだマシってこと。実際、これまで通常ステージのエラー古生物だけしか相手にした経験がなく、またこの手の3Dアクション自体にも不慣れな人にとっては、今回のポンコツフラウ姉さんだって、そこそこ強敵扱いされるケースもあんがい珍しくないらしい。

 

 

 

 しかし、その一方で。今回の自分みたいに周回プレイであるとか、事前情報をしっかり仕入れた上で挑戦するタイプだったとか。あるいは、VWOと似た感じの作りの量産ゲーにおいて既に対人戦を経験しており、現シチュエーションにすぐさま対応してしまえるだとか?

 

 そういったいくぶんイレギュラーなプレイヤーがこのステージにチャレンジすると、前もって準備されたゲーム設計上の骨子がさっぱり機能せず。今回のような崩壊した絵面が漏れなく発生してしまう。そういう弊害もあるわけだった。

 

 

 

 

 

 

 なかなかここらへん、匙加減の難しい話ではあるだろう。いわばシナリオとシステムの、すり合わせにあたる部分だから。

 

 ただまぁ、ひとつだけ言っておくと。今どき疑似対人戦用のNPCなら、ニューラルネットを用いたよりフレキシブルなタイプのAIを積むことで、適宜プレイヤーに合わせた難易度調整をすればいいところ。

 

 作成時の手間だか、ゲーム起動中のクライアント負荷軽減のためだか知らないが。何処かしらリソースをケチって、完全にルーチン化された三流プログラムのみでの間に合わせをやっている。

 

 こういった部分に関しては、弁護のしようがないというのもまた、明々白々たる事実ではなかろうかと思う。

 

 

 

 ……やっぱArtificial Idiotかね。ていうか、作ってる側がIdiot? 可哀想なフラウ姉さん。

 

 

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