――Side ???
とある廃れたバーにて
「ふ ざ け ん な」
手まみれの男――しれっと脱走している死柄木弔――がテーブルのカウンターを叩く。
「現代剣術でも一番ヤバい戦闘集団八葉一刀流のトップに一桁歳でなった上、雄英入学まで欧米でヒーロー実績持ちのガチガチのガチとか……やっぱバグじゃん」
『うーん……欧米に伸ばしていた私のシンパを的確に刈取っていたあのバケモノたちと相対して生きていただけ上出来ではあるんだよね。欧米のヒーローライセンス、やらかしの殆どが無罪になる実質マーダーライセンスでもあるし……』
『にしても一番性能が低いとはいえ、対オールマイト用にチューンした脳無が手も足も出ないとは……』
4分割され、いずれもSoundOnlyと書かれたモニターから流れる声に顔をしかめる死柄木弔。
「『先生』も『ドクター』も一杯喰わされたクチかよ。……『先生』の協力者っつー『黒』と『博士』のお陰で脱獄できて身体も繋ぎなおしてもらってるオレや黒霧が言えた義理じゃねぇけど」
死柄木弔が酒を飲みながら愚痴る。
『……世界の混乱は私の……オレの望むモノだから力を貸してるにすぎん。夢見という我と同等のバケモノはいずれ狩らねばならぬが、今は力を蓄えねばならん。その間、奴の邪魔しておきたい。諸々を加味し敵連合の存在はうってつけと判断しただけだ』
【黒】の通信がそれで途切れ、該当画面部分が暗転した。
『私は【黒】が作り出した傀儡であり、オリジナルを模した知的好奇心と【黒】の命令で君たちに助力してるに過ぎん。個性という元の世界にない力とこの世界にない力を合わせ、どのようなことができるか私は知りたいのだよ……。倫理観云々煩わしくないこちらのほうが好都合。無論【黒】の目的のため人形兵器を定期的に用立てよう。代わりに【素材集め】を頼んだよ』
「ああ、わかったよ。ギブアンドテイク。クエストこなすと味方強化イベのフラグが立つってのは定番だしな。……ふと思ったが、ドクターの脳無の個性移植技術と博士の人形兵器をこう……ガチャッとできたら、ソレで世界征服できそうなんだよな。個性をモノに付与できるかはしらんけど」
弔の言葉にモニターから【黒】以外の笑い声が響く。
『面白い発想だよ弔。やはり人間は考える生き物だ。そして色々な可能性を考えることを忘れてはいけない。ふとしたことが世紀の発見に繋がることもあるのだから。いやはや、歳は取りたくないものだねぇ』
『個性因子の定着が今のところ生物にしかできない原因を深掘りすればいけるかもしれんな』
『手っ取り早いのは生体コンピュータとして人形兵器に個性持ちの脳を搭載することだが、如何せん弱点が露骨になるのがな……』
姿を見せぬ連中がディスカッションをし始め、それを聞くのに飽きた弔は意識を酒に向ける。
「……ドクターと博士、一歩間違えば同族嫌悪で潰し合いそうな性格してる気がしますが、今のところ上手くやってるようですね」
バーのマスターさながらに食器の手入れをしてる黒霧はモニターの方を向いてそうこぼした。
「……黒霧。【黒】の持ってる力を調べておけ。……どうも朧とかいうヤツと似た雰囲気を感じる。オレたちだけ手の内知られてるのは不平等だしな」
「……わかりました。隙間時間で調べるので、私不在のときは変なことしないでくださいね」
――Side 雄英高校
体育祭から休みを挟んだ木曜日。
A組では登校時に声をかけられたりしたことに浮かれ気味になる生徒たちの姿が……。
「コレよりヒーロー情報学を始める」
相澤先生の言葉で即座に静まり返るその有り様はさながら軍隊だった。
「体育祭が終わって浮かれているところ悪いが――今日のヒーロー情報学は特別だ」
相澤先生の言葉に息を呑む生徒たち。
ヒーロー情報学はヒーロー活動における活動例から法律に至るまで幅広い範囲を学ぶ科目のため、抜き打ちテストなどあった日には燃え尽きる人間が出てもおかしくない。
ざわざわする生徒に対して、相澤先生は冷静に告げる。
「――お前たちにはコードネームを考えてもらう」
(めちゃくちゃ心躍るイベントキタァー!!!)
無言のわりにうるさく聞こえるリアクションをする生徒たち。
相澤先生の目が抹消の力を発動して光るとほぼ同時に席に座る一同。
「何故このタイミングか……それは体育祭を踏まえたヒーローたちによる指名……そこから始まる職場体験にある」
「職場体験?」
梅雨ちゃんの言葉に頷く。
「雄英ヒーロー科は1年目の体育祭でヒーローからスカウトを受ける。そして体育祭1週間前後で受けたスカウトから希望先へ連絡する。体育祭から半月ほど後、選んだ事務所に赴き、およそ1週間のプロヒーローの職場を体験することになっている」
ちなみに結果相澤先生がリモコンを操作し、プロジェクターから黒板へ、プロヒーローから生徒への指名件数をランキング順に表示する。いくつかの例外除き、概ね最終種目のランキングの高いほど高くなっていた。
「轟と爆豪逆だ……」
「あれ、意外とあるな……」
「せんせー、指名ない人はどうなるんです?」
珍しくマトモな質問する峰田の言葉に一瞬「誰だコイツ」という顔をした相澤先生。
ハッとしてすぐに回答する。
「指名がなかった生徒は、あらかじめ受け入れ実績のある40の事務所から選んでもらう。どちらの場合も締切は金曜日」
「2日未満なんですがその、爆豪とか轟とかは一覧目を通しきれないんじゃ……」
「んだとコラオレなら余裕だわボケが」
冷静に指摘する瀬呂に半ギレする爆豪。
「話を戻す。体験先とはいえヒーローとして活動にあたり、ヒーローとしての名前を名乗ってもらうのが通例だ。ちなみにここでのコードネームが浸透すると、正式にヒーローになった後ヒーロー名を改めようとしても、コードネームの方が認知されてるので公安側が却下……なんてこともある。」
「――つまり、いい加減に考えると地獄を見るってことよ!」
出待ちしてたのかドアを開けて入りながらそう宣言したのはミッドナイト。
「……オレにはネーミングセンスがないからな。ミッドナイト先生にチェックしてもらえ。つーことでヒーロー情報学、『コードネーム決め』やってくぞー」
そういうと壁際で寝袋に身を包む相澤先生。
「ハイ、それじゃ思いついた人から教壇前で発表して貰うわね。なるべく本人の意志を尊重するつもりだから、よろしくね」
――Side 夢見朧
青山君の短文で英仏混合ワードのヒーロー名が軽い添削でオッケーとなり、芦戸の「エイリアンクイーン」が連想元イメージ悪いとミッドナイトに却下された辺りから大喜利の雰囲気になっていた。
3番目に発表したのは蛙吹……梅雨ちゃん。
小学生のころから決めていた「フロッピー」に親しみやすいとミッドナイトが大絶賛。
同時に大喜利的雰囲気を吹き飛ばしたことでフロッピーコールが鳴り響いた。
あとはなんとなく覚えていた通りの流れで名前が決まっていった。
「さて、コードネームが決まったところで、話を職場体験に戻す。 と言ってもそこまで時間かかることじゃない」
そう前置きした相澤先生。
そしてプリントを配っていく。
「今回の職場体験に関しての資料だ。ヒーローの事務所、所属する主だったヒーローの一覧、基本的な活動範囲、敵討伐や救助などの活動のスタンスと実績、備考とアピールが事務所毎に書かれている。資料の情報やネットでの情報を加味し、自分の判断で選ぶように。――自分の長所を伸ばすもよし、苦手を補うためにその分野に強いヒーローのところに行くのも自由だ」
そう締めくくる相澤先生。
ちょうど授業終わりのチャイムがなったのでミッドナイトとともに教室を離れる相澤先生。
ソレとともにみんな行き先について話し始める。
「オイラ、マウントレディのところにしたわ……」
「ケロ……峰田ちゃん、下心見え見えよ」
「そそそそんなことねぇよ」
言い当てられてキョドる峰田。
「……そういえば夢見たちはどうするんだ?」
障子の言葉にハッとするの数名。
「オレたちはプッシーキャッツのところに行く予定だ」
「山岳救助を主な活動にしてる4人チームのヒーローだね」
ぬっと緑谷君が出てきて解説する。
「……なんか理由あるのか?」
緑谷に続いて割り込むのは轟。
するとジト目になる妹たち。
「……マンダレイの大叔父が先代剣仙だからね。恩師の血縁に思うところあるんじゃない???」
「兄様の身内判定、変なところでガバガバですからね」
「……妹たちが辛辣……」
膝から崩れ落ちそうになったがこらえる。
「……私の指名にプッシーキャッツさんありませんわね……」
しれっとオレの職業体験先と同じところにしようとしてるヤオモモ。
「おい緑谷」
教室のドアが開いてそこから相澤先生が顔を出す。
慌てて向かう緑谷。
「お前宛の指名だ」
そういってプリントを渡すと用は済んだとばかりに相澤先生は去っていく。
「今になって指名届いたん?」
麗日の言葉にクラスの過半が緑谷に群がる。
「……グラントリノ……聞いたことある?」
「いや、知らねぇ」
「実績は……『雄英高校教員歴あり。詳しくは八木に聞け』……?」
記載内容を見て首をかしげる面々。
「八木ってあのたまに職員室にいる枯れ木みたいな先生だよな?」
「補助教員らしいけど……何の補助教員か誰も知らないあの先生の知り合いってこと……?」
「わざわざ詳細聞く相手を指定してるあたり、今の先生たちに面識ないってことだよな……」
「かなり昔のヒーローとかで今は活動ほとんどしてないとか……?」
「色々謎だな……」
「アタリなのか外れなのかわからねぇな」
しばらくガヤガヤした後に散らばる生徒。
緑谷は八木俊典ことオールマイトに話を聞くため職員室に向かっていった……。
時系列的に夏休み→映画(I・アイランド)→合宿だけど、映画編ほしい?
-
ほしい!
-
いらね