呪術廻戦とまどか⭐︎まぎかのクロスもの。メインは呪術 作:かりん2022
後半反転術式を使うといいことあるかもしれません。
乙骨は頭を悩ませていた。
五条悟が終活をしているとしか思えない。
そして、意味ありげに呪術素材を集めては献上し、夜蛾学長にぬいぐるみを作らせている。親友をかたどらせたぬいぐるみを。
「悪いね、憂太! 思ったんだけど、僕の養子になんない? 今なら五条家次期当主の座をあげちゃうよ♪」
「ふざけてるんですか、五条さん」
「ここだけの話、ちょっと今、大きな案件を抱えててね。ちょっとやばいかなーなんて。その時の為に、準備させてよ♪」
そういう割には、五条の声は弾んでいる。
「その割には楽しそうですが」
「ちょっとねぇ♡ まあ、多少のフォローはするよ。どこまで持つかわからないし、十全にはできないけどね♡」
「案件って聞いてもいいですか?」
五条は恋する乙女のように微笑んだ。
「内緒♡ でもまあ、君なら僕の気持ちをわかってくれるかな? いいや、わかってくれない方がいいかも」
歌うような声から一転、低い声で呟く。
「これから多分、お菓子みたいに甘くて綿飴みたいにふわふわな……地獄の時代が訪れる。僕は守ってあげられない。ごめんね」
タガが外れたような、危うい感じ。
誰にもいうことが出来ずにいたが、その違和感は乙骨が妙な呪霊を倒して拾った呪物を五条に見せた時に決壊した。
「あー。参ったな。そっか。僕のせいだ」
「五条さん?」
呪いの籠った声に、首を傾げる。
「憂太。これ、もらっていいかな。大事に使うから」
「なんなんですか、これ?」
「そのうちわかるよ。同じの見つけたら大切に保管しておくといいよ。それを必要とする人が絶対に現れるから」
「わかりました。見つけたら全部五条さんに渡しますね。必要なんでしょう?」
「悪いからいい」
「僕から五条さんへの餞別です。これぐらいは渡させてください」
「……」
「決めているんでしょう?」
それが何かはわからないけれど。
多分、絶対に五条さんを止めなければいけない場面なんだと思う。
けれど、五条さんが、あまりにも「それ」に慕わしい様子を見せるから。
僕はそれを止められなかった。
ある日、一年生達が訓練中に聞いてきた。
「なあ、五条先生、大丈夫なん? 空気に溶けて消えそう」
「それな」
「あの時からよね、様子がおかしいの」
それに、真希さんもうなずく。
「一年もわかるか。おかしいんだよ、最近の悟。憂太は何か知ってるか」
「心の準備はしておいた方がいいかもね」
「明太子?」
「心の準備ってなんだよ」
「五条さんなしでやっていく覚悟」
「マジかよ、なんでだよ」
「ちょっと面倒な案件抱えてるみたい」
「はぁ? なんも聞いてないけど? 大事になんじゃねーの?」
「なあ! あれは絶対、今日なんかあるって! 最後の別れっぽいような意味深なこと言ってたし! 今日、五条先生の事つけようぜ!!」
「……そう、だね」
「はぁぁ!? 巻き込まれたら死ぬんじゃねーか!?」
「真希さんは残ってていいよ」
「行く!!」
浮かれきった五条は夜外出した際、跡をつけられるのにも構わず、そうして生徒達は想像を絶する最悪に遭遇することとなる。
傑を呪わなかったのは奇跡だった。本当は盛大に呪いたかった。
何より大切な人だから、かろうじて自分を制して呪わなかった。
なのに、なのに奴が僕の前に現れた。現れてしまった。
もはや傑を呪わずにはいられない。
願いを叶える術式。醜悪な縛りを加味しても、そんな術式あるかって思う。
でも実際にあるのだからしょうがない。
自分でも意外な程にグイグイと行った。
今ならまだ引き返せる。
それ、必要ある?
会話を交わすほどに確信する。
ああ、望まないなんて無理だ。
僕は願いを叶えたい。望みを叶えたい。祈りを叶えたい。
大体、呪いばかりが具現化して、祈りが具現化しないなんて馬鹿みたい。
こんなにこんなに頑張っているんだから、僕にも、ささやかな救いがあってもいいはず。ご褒美を頂戴よ。ささやかでいい。それひとつだけでいいからさ。
また青春を、今度こそはずっと、そう願わなかったと言ったら嘘になる。
でも、やっぱり並行世界の傑じゃなくて、僕の、正真正銘僕の傑がいいから。
その魂を縛る事にする。傑、怒るかなぁ。怒るよなぁ。
やっぱり呪術師としてけじめつけて、呪詛師に転向しないとだよなぁ。
希望と絶望の相転移。初めから諦めて絶望してる僕は、重さはあっても距離がないようなもの。大して強い魔法青年にはなれないだろう。
すぐに魔女になる可能性もあるかもね。
やっちゃいけない理由は山ほどある。やりたい理由は一つだけ。
それでも、天秤が傾いちゃったから。
乙骨からグリーフシードを渡された時、後戻りのつもりもなかったけれど、後戻りできなくなった事を知った。
あの子が、魔法少女を、魔女を量産しているとわかった。
おそらく、僕を魔法青年にするから。
僕がすぐに死なないようにするには、グリーフシードが必要だから。
だから、魔法少女を量産し始めたんだ。
罪と呪いが、たったの1ヶ月で雪みたいに降り積もっていく。
降雪量は一晩でも絶句するほど! 絶望は降り積もり、希望の雪どけは永遠に来ません!!
きっと、僕1人のせいで最悪な時代が来る。
それでも、望んでしまったから。
皆に別れの挨拶をして、僕は、「彼」の前に立つ。
人気のない夜の公園で、全ての罪を明らかにするかのように満月が僕らを照らす。
童顔で無表情、僕よりも遥にベビーフェイスな少年は、せめてもの抵抗か、お面をしていた。
ま、正解だね。直前でまいたけど、離れた場所に生徒達もいるし。多分すぐ見つかっちゃうんじゃないかな?
邪魔はさせないけど。
「いやぁー。苦労したよ、学長にぬいぐるみ作ってもらうの! さ、依代もバッチリ用意できたし、やってもらおうかな」
「本当に、本当にするんですか。既に胃が痛いんですけど」
ーー悟。やめろ。
わかっているくせに。すでに取り返しはつかない。僕も君も。
「またまたぁ。僕の為に準備させちゃってごめんね」
ーー君はこんなことする人じゃないだろ。そういうのは君じゃなくて、私だろ
「……地獄に堕ちろ」
「地獄に落ちるのは君だろ♪」
「そうだけど」
彼はこれみよがしに溜め息を吐いた。
僕は別に魔法少女を量産しろなんて言ってないから、僕も地獄行きだけど、彼も巻き添えなのは必然である。ごめんね。
ーーいやな予感がするんだ。絶対にこれは詐欺だ。
「術式を開示する」
「うん」
心して聞こう。少しでも、深く、ふかぁく、確実に僕に術式が効くように。
「俺の天与呪縛は無限!
嘘をつけない。
暴力を振るう事はできない。
前の死体は食わねばならない。
以上の縛りを以て幾度も現界に現れる」
ーーこんなの絶対まともじゃない。こいつは悪魔に違いないんだ。騙されるな、悟。
「そして、俺の術式は契約!
1、俺は契約者の願いを一個だけ叶える。
2、願いを叶える力は相手の呪力・世界への影響力・祈りと絶望の落差によって算定される。それ以下は可能だが、それ以上は不可である。
3、願いの代償として持ち主の魂からソウルジェムを生成する。
4、ソウルジェムを破壊される事は魂の破壊、死を意味する!
5、ソウルジェムは魂と感情のエネルギー、通称魔力を契約者に与える。
6、魔法の行使と絶望はソウルジェムを濁らせる。
7、ソウルジェムが濁り切った時、化け物、通称魔女になる。
8、ソウルジェムは、魔女を殺して手に入るグリーフシードによって清められる。
9、使用後のグリーフシードは放置すると魔女になる。
10、契約者は魔女を倒し、使用後のグリーフシードを俺に献上する義務を負う。
なお、グリーフシードに溜まった絶望エネルギーは俺の取り分とする」
そうして、彼は僕に手を差し伸べる。
ーー悟に触るな!! 馬鹿な真似はやめろ、悟! 私にそんな価値なんてない!!!
「さあ、祈れ! 汝が魂を捧げるに足る願いを! 祈りを振り撒き、絶望をばら撒く存在となるに足る願いを!!!」
彼の手が異形へと変貌していき、僕の胸に手を差し入れる。
ーー悟!!! 駄目だ、悟!!!!
「僕は願う。傑の魂の捕獲を。傑が側にいてくれることを!!!」
ーーああ……。もう手遅れだ。私のせいだ。悟をこんなに追い詰めてしまってたなんて。
ーー悟を絶望させるわけにはいかない。私が悟を守らなくては。
「悟。ずっと一緒だよ」
全てを飲み込み、小さな手で、よしよしと僕を撫でるぬいぐるみに、その聞きなれた声に、僕の胸は多幸感でいっぱいになった。
この一瞬の為だけでも、魂を犠牲にした甲斐はあったよ。
僕はぎゅっとぬいぐるみを抱きしめる。涙が溢れた。
ーー悟。1人にしてごめんね。