終末トレインどこへいく?Train to the End of the World a novel 作:磯野米平
7G回線の暴走による世界の異変、通称7G事件から2年後のある日。
21歳3か月を超えた人々が動物に変身してしまう異変に見舞われた吾野に住む女子高生・千倉静留は、ひょんな事から2年前に行方不明となった友人、中富葉香の行方に関する情報を入手する。世界の異変後も発行を続けている池袋新聞なるものに葉香が写った写真が掲載されていたのだ。
それに基けば吾野から西武池袋線で30駅先の池袋に葉香はいるらしい。
異変が起こる前の世界なら電車で1時間ちょっとで行けた池袋だが、異変後の世界では隣の町に行くのでさえ何日かかるか解らないうえに、どんな危険が潜んでいるのかもしれない有様となっているのだ。
その夜、静留は葉香の飼い犬である秋田犬のポチさんが訪ねてきたついでに共に散歩に出るのであった。
そして吾野駅近辺で善治郎を発見する。
かつて都会で働いていた青年だが2年前に吾野に戻って来た時には、すっかり老人の姿になってしまっており、今ではコミュニケーションもろくに取れない状態である。
どうやら彼は帽子を探しているようで、静留はポチさんに帽子の紐の匂いでその在処を探らせてみる。
するとポチさんは一目散に吾野駅へと向かっていくのであった。
そこには2両だけの電車が長い事放置されていた。ポチさんはその車両の乗務員室付近でしきりに吠えている。
静留は何とかドアをこじ開けて車内に入ると運転席付近に落ちていた鉄道員の帽子を手に取り善治郎に被せたのであった。
その途端、老人の姿から青年の姿に早変わりする善治郎。
「ポンタローのクソ野郎うんこマンめ!あれほど7Gはやめておけと言ったのに!あんな規格が通るわけないんだ!」
「ええー!?」
今までとは一転して雄弁に語りだす若き善治郎の姿に驚嘆する静留。
「池袋を拠点にしてはいかーん!」
「待って!?池袋って言った?」
静留の問いに答えるでもなく善治郎は、この2000系に乗って池袋に!いやしかし・・・などと語り続けるのであった。
改めて静留は彼に電車が運転できるのか?と尋ねる。
「運転できるのかだって?無論・・・」とまで口にした途端、身体が捻じれだしたかと思うと再び老人の姿に戻ってしまっていた。
「えー!なんでなんで、ちょっともう一回!」
静留は帽子を手に取り再び善治郎に被せるが、何度試しても先程の姿に戻ることは無かった。
そして翌日から2日間、静留は学校を欠席し続けた。
3日目の朝、静留はレッサーパンダへと変化した母と向き合っていた。
「もしイキっているクズリがいたら、馬鹿な事やってないでとっとと帰って来い!って伝えてね」
「わかった。必ずお父さんに伝える」
そう静留は答えると大きなリュックサックを背負い自宅を後にするのであった。
その頃、吾野高等学校の教室ではイグアナと成ったイグチ先生が出席を取っていた。
星撫子、久我玲実、東雲昌と出席を取り、中富葉香は休学中として処理をし続けて静留の名を呼ぶが席に彼女の姿は無い。
3人の生徒に静留の様子を問いかけているうちに、当の本人が教室の戸を開けて入ってきたが開口一番「イグチ先生お世話になりました。学校辞めます!」と一礼をして伝えると再び教室を出て行ってしまった。
ところ変わって吾野駅に放置され続けていた電車、西武2000系の乗務員室に静留はいた。各種の制御盤にメーター、運転台と指さし確認を行っていく静留。その傍らには青年の姿の善治郎がいた。
「7G崩壊のこの世界をその目で確かめてくれ、報告を心待ちにしている。いいか生き残るために最も重要なのは・・・」とまで口にしたところで再び身体が捻じれだして老人の姿に戻ってしまった。
「また中途半端な所で・・・でも、まあいいや大体解ったし」呆れ気味に静留が口にしたところで、撫子、玲実、昌が乗務員室入り口に駆けつけてきた。
「学校辞めるってなに?」と玲実たちが問うと「あとよろしく、ちょっと行ってくる」と答える。
どこへ?と尋ねられ静留は「池袋」と力強く伝える。
電車の行き先幕が池袋に合わせられると運転席に座った静留はブレーキを解除しマスターコントローラーを回していくのであった。
徐々に加速していく電車に、一緒に行くと言って玲実がまず乗り込むと続いて撫子、昌、最後にポチさんと続いていく。
こうして4人と1匹が乗り込んだ電車は善治郎とモルモットに成ってしまった葉香の祖母、中富小雪に見送られて吾野駅を出発したのであった。
池袋まであと30駅