弾薬が少ない弾倉を
何で素手で弾倉を分解できるのか、と。
弾丸を別の弾倉に込めつつ自分の力が異常なことを改めて噛み締める。
この身体は間違いなく人間の身ではない。『ミシガン』あたりならこんな芸当をできるかもしれないが、少なくとも『C-4 621』は生身ではできない。
こうなった原因は間違いなくコーラルリリースだろう。
『エア』が居ないため詳細がどうなっているのか分からないのももどかしい所。
そして、彼女の事を考えると寂しいと感じてしまう。
ぶんぶんと頭を振り余計な思考は今は追い出し、今後のことを考える。
廃墟とはいえ電気が通っているという事は人がいる可能性はある。外に出れば人に出会える可能性は非常に高い。
他者のと接触と、資金の獲得が今現在の最重要任務だ。
今はまだ大丈夫だが、いずれ空腹になり倒れてしまえばゲームオーバー、そして生きる意味も失ってしまえば二度と『エア』に会えなくなってしまう。
全てを賭けてコーラルリリースを見届けたのだ。その成果を見たいというちょっとした欲望もある。
しかし、装備も特に整っていないのが痛い。
弾倉をしまう鞄が無ければポーチもない。それに先ほどの戦闘も動くたびに乳が揺れて少々面倒だった。
それではどうするのか?死ににくい体とはいえ死ぬときは死ぬ、だろう。
片手で荷物を持ち、片手でアサルトライフルを持つ全裸スタイルというのは『C-4 621』にとって悪くはないのだが、実戦では不測の事態を予測しなければならない。
下手に捕らえられるのも癪なので、廃墟で何かないかを探索し始める。
そして、『とあるもの』が目についた。
使い捨てとはいえ、工夫すれば万能になりえるだろうと『C-4 621』は自身の脳(多分電脳)で勝手に考え、すぐに行動を映した。
それを使い自分でも万全だと思った『C-4 621』はついに廃墟の外へ出る。
新たな未来を見つけるための戦いが、今始まる。
「あーあ、なんでこんな暇なことしなきゃいけないんだ」
「仕方ないでしょ。ここを見張って変なのが出てこないか見ておかないと」
「ついでに廃墟で漁ってきたやつをしばいて略奪だ!」
ミレニアム近郊にて、『廃墟』を見張る生徒がいた。
名前は、特に記すことのないありふれた一般生徒だ。しいて言うなら素行が少々悪い程度だろう。
かなり楽な仕事の割に給料がいいことで知られているこの見張りの仕事もたまたま抽選で得られただけで、だらだらと見ているだけである。
「まあ代り映えしないからつまらないのは分かるんだけどね」
「こうしてスマホ弄りながらダラダラできるのはいいことじゃない?」
「こうして給料もらえるのはいいが、どうせなら臨時収入も欲しくない?」
「「欲しい」」
「でしょぉ?」
あまりにも余裕ある姿だが無理もない。この仕事は事故も滅多に起こらない。
勝手に侵入されたことを黙っていても勝手に逃げ帰ってくるので報告する手間も少ない。
確かに楽で幸運な仕事だ。
今日、不幸が起こる事を除けば。
ドカーーーン!
「な、何!?爆発音!?」
「みんな警戒して!あと本部にも連絡!」
「チッ、何があったんだよぉ!」
『廃墟』方面から爆発が起き、一気に厳戒態勢が引かれる。
爆発なんて研究者の誰かがやらかすか戦闘でしか起こらない。
つまり、あそこでは戦闘が起こっている証拠である。
「あそこで派手にやる馬鹿がいるなんて」
「とにかくいつでも撃てる準備!」
心拍が上がっているのを感じながら彼女達はいつ、誰がきても良いように銃を構える。
また爆発音が響く。何が戦っているのか、かなりの戦力が動いているのは分かるが、こんな芸当ができる人間は彼女達の中でも僅かにしか知らない。
じっと待つ。迎撃なんかして余計なものを引き連れてくるのは嫌だからである。
銃声が鳴り響き、未だに戦いが続いていることを示している。
何が出てくるのか、そんな心配をしていたら突然、音が止む。
このまま何も起きなければいいと願うが、その願いは通用しなかった。
何故なら彼女達に向かって歩く人影が見えてしまったからである。
その人影は女性だった。
高身長、巨乳、白い長髪、その上美人と彼女達が簡単に持ちえないものを持っていた。
手持ちの武器は機械兵から奪った銃を持っている。この銃がそこそこの威力を持っていることは全員が知っているため明確な脅威と言える。
だが、ある要素が全てを台無しにしていた。
それは…………
「ぜ、全身にダクトテープ…………?」
「弾倉を、身体に貼り付けて、いる?」
「へ、へへ…………」
「「「変態だーーっ!?」」」
『C-4 621』が見つけたもの、それはダクトテープである。
肉体に巻き付けた後に剝がしても痛みは全くなかった。なので体に巻き付けた。
しかも胸に巻いたら揺れがほとんどなくなったのでしっかり巻いた。後で剥がすことは考えていない。
さらにその上に弾倉を張り付けて力づくに剥がせばいつでもリロードできるようにしてある。
その弾倉の数、20個。滅茶苦茶に張り付けてあるので被弾すれば爆発する可能性は非常に高いだろう。
それでも問題ないと言わんばかりの堂々とした姿に監視していた3人はドン引きした。
明らかな不審者に銃を向けて警告する。
「だ、誰だお前は!?」
「変な格好して、恥ずかしくないの!?」
「帰って!本当に帰って!」
精一杯の警告。応援が来るまで足止めすることしかできないと直感が働いた。
その直感は正しいことはすぐに証明される。
「…………あそこを突破したら街に侵入できる」
完全に密入国するような感覚でいる『C-4 621』が3人を鋭い眼光で見た。
あの3人を排除したら、後は闘争するだけで中に入れるだろうと、ウォルターが居れば『甘い算段』と苦言を呈してくれただろう。
残念ながら『C-4 621』に賛同してくれる『エア』も居ないこの状況で、暴走を止める者は居なかった。
「メインシステム、戦闘モード…………ないんだった」
「「「こ、こないでーーーーっ!」」」
いつもの戦闘音声を自分で口にしつつ、そのような機能はないことにまた寂しさを覚え、見張りの悲鳴を聞きながら『C-4 621』は初めての対人戦を開始した。
10秒で終わった戦闘は、応援が駆けつけるよりも遥かに早く『C-4 621』をミレニアムに侵入させる余裕を与えてしまった。
明らかな変態が街をコソコソしていると通報が相次ぐことになることに関して『C-4 621』は想像もつかなかった。
強化人間に倫理観を求めてはいけない。あるのは殺伐とした独自の倫理観だけである。
『初めて会った時の姿に似ていますね。それでも肌面積は多いですが、寒くないですか?弾薬のリロードもACなら自動でしていましたが、手動だと不便ですね』
ダクトテープを巻きまくった結果、少し肌面積のある妖精達を刺激する生足魅惑のマーメイドもどきになりました。