超昂大戦SS 閂市総力戦! ダイビートVSアルダーク ~優しき戦士は愛する街のために 作:環 藍河
勇敢な紅蓮の超昂戦士が、悪夢の選択を申し出る数日前。
その日、青空は裂け、傷口から悪夢が舞い降りた。
《よく聞け、愚民どもよ。
これより我等アルダークは、閂市に総攻撃を下す。
ダイビートよ、人類よ、我らに仇なす者の帰結を…己の終焉を震えて待つが良い…!》
総帥ディストバーンが、人類に最後通牒を叩きつける。
フーマンが、コマンダーが、フラスト怪人が。
滅忍が、ザインが。
実りの大地を喰い荒らす雲霞のごとく、晴天を漆黒に覆い尽くす。
……
…
びいーっ、びいーっ、びいーっ…!!
「レールフラスト出現、戦力・フーマン15体! ポイントE-3、閂駅前です!」
「敵小隊さらに出現、戦力はコマンダー3・フーマン30体! ポイントC-5、閂学園!」
「滅忍出現…高エネルギー反応! 生体データ特定、ハガネです」
「市街地にザイン出現、一般市民が次々に石化・ザイン化しています!」
ダイビート司令室のサイレンが引っ切り無しに鳴り響き、オペレーターの報告はもはや悲鳴のようにこだまする。
「アイとメイ、マッハはE-3で駅前を防衛! エスカチームはそのまま学園を防衛!」
「スピカとアルデバラン、スケートルは市街地のザイン討伐に向かって。ポイントF-1、地上神騎を支援に回すわ!」
「ゴウカ・フウカ。ハガネを…滅忍を討て!」
矢継ぎ早の敵出現の報に即応し、トキサダとユーノが戦力を適宜投入していく。
だが…
《長官! こちらアイ! E-3の敵戦力がうじゃうじゃ増援を投入…キリがないっ!》
『こちらスピカ。ザインの増殖が止まりません。
こちらも片っ端から誅伐していますが…追いつかない…くっ…!』
〔頭領っ…! 護衛の滅忍がしぶとくて…〕
〈ハガネに…届かないっ…!〉
「…トキサダ…!」
「…ああ。エスカレイヤー、出動せよ! ポイントE-3、アイたちの支援を!」
「閃忍ハルカは七閃を支援! エクシールはザイン討伐を!」
「『【了解!】』」
一般の超昂戦士だけで手こずる戦場に集中投下するつもりだった、レジェンド戦士たち。
それが、分散出撃を余儀なくされるとは…!
「…おかしいわ…。」
「ユーノもそう思うか。」
ダイビートの頭脳2人が、共に違和感を重ね合わせる。
敵の…アルダークの狙いが不可解すぎる。
駅、学園、市街地。離れた3カ所の同時襲撃だが…拠点制圧には少なすぎる。
これだけの戦力が揃うなら、一点集中で投下し、どこか1カ所を陥落させるのが自然。
それが、むざむざ戦場を分散させ、しかも戦力は逐次投入。
中心部に、施設に、郊外に…同時並行で戦線を拡大するアルダークの狙いは、一体…?
「こちらの戦力を分断させられていますね。」
「アルゴル…!」
天使長アズエルが率いる天上神騎の中でも怖れられる戦闘集団・アサシン団の参謀、アルゴル。
「前線が地平線のように伸び、しかも各前線への増援は、各ポイントの超昂戦士が疲弊したタイミング。
我々の切り札・レジェンド3名を分散させざるを得ないように、計算しているのです!」
ダイビートの超昂戦士は、想破・久世・神騎を合わせてもまだ50余名。
たとえ雑魚のフーマンや滅忍・ザインたちでも、数で押されたら押しきられる危険を常にはらむ。
だからこそレジェンドを温存せざるを得なかったし、出来るならば一点集中で投入したかった。
「この3点に切り札を誘い出すなら、真の狙いは円弧の描く、最も離散したこの点…!」
「…そこはっ…!!」
「まずいっ!」
トキサダはレーダーを俯瞰し、4つの輝点を突き止める。
そこは、アルゴルの示唆する急所から離された超昂戦士たちの中で、それでも最短で急行できる4人の戦場。
「エスカチーム、フォーメーションF! 2名は学園防衛を継続、2名は離脱せよ!」
『なっ…!』【若頭領っ!】
〔何言ってんのよっ!? ここも…学園もフーマンだらけ、4人でもキツいってーの!〕
《…長官くん、わかってて言ってるのよね…?》
アメイズは察した。ここで私たちを戦力分散させれば、あるいは閂学園を護りきれなくなる。
だが、そのリスクを凌駕するほどの、真の危機が迫っているのだと…!
「敵の狙いは閂タワーだ! 2名、急行してくれ!」
『【〔《!!》〕】』
文字通り、閂市のシンボルにして、街を一望できるそのタワー。
一見、敵襲撃のレーダー反応など皆無の、平和な摩天楼は、前線で闘うレジェンド達の誰一人として容易に近づけない、最遠点にそびえていた。
そこに最短最速で急行できる唯一の存在が、エスカチーム。
だが…そのためには2人をタワーに急行させ、残り2人だけで学園防衛。
分散した戦力で両面の戦いに挑む…それは戦闘経験の浅い彼女たちには、酷なミッションとなる…!
そのためらいを、その揺らぎを振り切るように、一人が叫ぶ。
『…復唱します! エスカ・ルビー、学園を離脱し、閂タワーに向かいます!』
〔ルビー?!〕【無茶だっ!】
『長官の采配を信じる! 私たちならタワーも学園も護れるって、長官が判断したんだ!』
既に何十ものフーマンを叩き潰し、疲労困憊、肩で息をするルビーだが、瞳の奥にもう一度ガッツの炎を灯し、気丈に答える。
【…わかった。ならば2人目は私だ。エスカ・サファイア、フォーメーションF!】
〔があーーーっ! わかったわよっ!
ルビー! サファイア! ここはあたし達に任せて、行きなさいっ!〕
《長官くんのギャンブル、ひと口乗ってあげるわっ!》
遠ざかる紅と蒼の光輝。泥沼の死闘にもがく金と紫の輝石。
学園死守を誓い、トパーズとアメイズはなおも増殖をやめない邪黒の軍団に、悲壮を隠して立ち向かう。
(タワーに敵がいるならば…)
(…きっとアルダークの悪巧みの、真の狙いが…!)
仲間とトキサダの思いに応えるため、不退転の決意でルビーとサファイアは陰謀の地へ駆ける。
……
…
たたたたたっ…!
2つの疾風が街をつんざく。
その軽快な足取りと裏腹に、迫る敵への怖れと、残した仲間への躊躇いを胸に秘めて。
「…まだ、敵の気配は…」
「ルビー、油断大敵だ。必ず何かがある…!」
朝は清々しい青空に雄々しく伸びていた閂タワーだが、今やその青空はまがまがしく塗りつぶされ、タワーは一転、健気に瘴気から市民をかばうように、静かにたたずむ。
市民の避難が済んだ、誰一人いないプロムナードを駆け抜けながら、ルビーとサファイアは不気味な静けさをいぶかしがる。
「ダイビートの、超昂戦士さんですか?」
「!?」
タワー入口のインフォメーションブースから、軍服をまとう男が声をかける。
「タワーは既に我々国防陸軍が避難誘導をかけています。お客様もタワーの職員も、アルダーク襲撃の報せを受けて、もう避難完了していますよ。」
その情報は一見、正しく見えた。
既に国防陸軍がタワー周辺を囲み、一般市民がいなくなったタワーを警備している。
「ここは我々に任せて、戦線に復帰なさってください。お気を付けて。」
「…ルビー。」「うん。」
こくり。
返事を聞くや、ルビーとサファイアは互いを見やり、うなずくと…
「道を空けてください! タワーの中を改めます!」
「なっ…困りますっ!」
しゅっ…ばりばりばりっ。
「ひっ…な、何を…!」
ルビーの指示に抗い、入口に立ちはばかる男に、サファイアがビームクナイを飛ばす。
「ほう、その割りには冷静だな。」
眉間を狙った刃は、突如発動した電磁バリアに阻まれた。
「国防陸軍の軍人は、体術の邪魔になる防弾ベストなど着込みはしない!」
「!!」
僅かに着ぶくれ、肩まで不自然に張ったYシャツ。
のみならず、ルビーたちを友軍として歓迎せず、追い返そうと一瞬泳いだ視線。
重なる違和感を、ルビーとサファイアは見逃さなかった。
クナイをどう捌くかで正体がわかるよう、敢えて手加減して投げたサファイア。
手刀で落としたなら国防陸軍、体術で躱したなら滅忍、ザインなら脳天に刺さったまま暴れ狂うだろうか。
では、装備品で防いだ目の前の男は…!
「正体を現しなさい、アルダークのコマンダー!
国防陸軍になりすましてタワーを乗っ取って、何をたくらんでいるんですか!」
がばっ!
「思い上がるなっ、正義の味方ども! 騙されてのこのこ帰った方が幸せだったのになあーーー!
2人ともぶっ潰して、フーマンどもの慰み者にしてくれるっ! 前から後ろから、ぐちゃぐちゃの白濁まみれにしてくれるわあっ!」
それまでの慇懃な言葉遣いがどこへやら。国防陸軍の軍服をかなぐり捨て、臙脂色の軍服とガスマスクに身なりを改めた侵略者が、心まで醜いその正体を晒す。
「タワーは…みんなの大事な場所は、私たちが取り返しますっ!」
「粋がるなっ、クソガキ! フーマンどもっ、出撃だあ!」
しゅいい……んっ!
「《【『ブブーーーッッ!!』】》」「『!!』」
コマンダーの下卑たダミ声と共に、タワーを取り囲む警備の軍人たちが自らの軍服をびりびりに破裂させ、ことごとくフーマンと化す。
さらに転送された雑兵の群れは、ルビーとサファイア…2体の獲物を眼前に、けたたましくときの声を上げる。
前線3カ所にあれほどの兵力を拡げながら、まだこれほどの数を…!!
「構うなっ、ルビー! こいつらはただの壁、真の敵はタワーの奥、展望台だ!」
「わかってるっ、突撃します!」
……
…
「かはあっ…はあっ…!」
「こいつら…討っても討っても…湧いてくるっ…!」
市民の憩いの閂タワーは、今やアルダークの要塞も同然だった。
低層階のフロアから展望台への道は、エレベーターを封じられた今では非常階段のみ。
一本道を駆け上がるルビーとサファイアは、質より量で押してくるフーマンたちに行く手を阻まれ…それでも正面突破で一段一段上り詰めるしか、最上階を目指す術が無かった。
上からの敵をルビーが一体一体突き飛ばし、後方からの敵をサファイアがなぎ払い…手こずりながらも少しずつ、陰謀の核心へ迫る2人。
ばんっ!
『よお~こそ、超昂戦士。
我等のもくろみに気づいたことは褒め称えてやろう。』
【「!!」】
非常階段に倒したフーマンの山を築き、遂に辿り着いた最果ての地・展望台。
鉄扉を蹴破ったルビーとサファイアを迎えた、舌舐めずりをするようなコマンダーの挨拶が響く。
『だがなあ、遅かったあ! 僅かに遅かったのだよ、貴様等はあっ!』
かちっ。
ぶううう…んっ!
勝ち誇るコマンダーが掌に握ったスイッチを押し込むと、展望台に据え付けられた奇怪な装置が起動する。
コイン式双眼鏡と並んだその装置は、市街地の方角へ向けたアンテナから、妖しく鈍い光の放射を始め…
《ああっ…うああーーーーっっ!!》
《うっ…うぐううううっっ!!》
《ち…力が…っ…!!》
「なっ…!?」
「エ…エスカレイヤーさんっ!?」
ルビーたちは通信越しに、光の射す方角で闘う戦士たちの悲鳴を知る。
……
…
びいーっ、びいーっ、びいーっ…!!
「緊急! エスカレイヤー・閃忍ハルカ・エクシールのエナジーが急激に低下! 戦闘可能レベルを維持できませんっ!」
「何だとっ!?」
「タワーから発射される怪電波の影響で、D2エナジー・淫力・魔力が封じられていきます!」
ダイビート基地・司令室では、トキサダが最悪の現状を突きつけられる。
「他の超昂戦士への影響はっ!?」
《ぐ…あああああっ!!》
《きゃああーーーーっ!!》
《うあっ…ちっ…ちきしょうっ…!!》
「ショウコとマリナ、ミーナのエナジーが、同様に低下しています!」
「他の戦士・閃忍・神騎への影響、確認できません!」
「トキサダ…これは…」
「…そうか…!!」
……
…
『ククク…やはりまだ全員には効かないか。
まあよかろう! 何しろ、いちばん潰したい戦士に効いてるからなあ!』
「…その装置は…!」
ルビーが顔色を失う。
『気づいたかあ? この怪電波装置は、お前たちダイビートの切り札・異界超昂戦士のエナジーを根こそぎ封じる、アルダークの先端科学の結晶さあ!
どうだエスカ・ルビー! 大先輩たちが無力化され、もがき苦しむ様はあ?!』
「…ああっ…!」
異界からの助太刀を…とりわけ、最強の3人を封じられたという現実に直面し…
戦局が絶望的に悪化したことを悟ったルビーの全身から、血の気が引いていく。
「若頭領…ご判断を…」
「…諦めない…っ!」
「なっ!?」
指示を仰ぐサファイアを横目に、ルビーは自らを奮い立たせ、無謀にも敵陣へ…フーマンの大群目がけてひとり吶喊する。
「いま私が装置を壊せばいいっ…!
壊さなければ、ダメなんだあっ!!」
「バカっ、一人で行くなっ、ルビー!!」
『ふん。やれっ、フーマン、フーナイトっ!!』
「《【『ブブーーーッッ!!』】》」
このタワーを陥落させ、電波塔として異界戦士弱体化の拠点にする…そんな一大作戦のための兵力が、雑兵フーマンだけのはずが無く。
上級兵のフーナイトが手厚くルビーを囲み、サファイアのもとを離れて孤立したルビーをじっくり嬲り物にしようと、距離を詰めていく。
《撤退だあっ!!》「【!?】」
通信越しの強い声は、我を失ったルビーに冷静を取り戻す。
《防衛線を下げる! エスカ・ルビー、エスカ・サファイア、基地まで速やかに退くんだ!》
「長官!! でも、このままじゃエスカレイヤーさんたちがっ…」
「6人を、既に撤退させた。
防衛線の維持さえ苦しくなった今、タワーを奪還する戦力は割けない。
今の俺たちでは…ダメなんだ…!」
(…!!)
その呻くように響く声は、ルビーの胸を掻きむしった。
(私じゃ…護れない…タワーも、街も…!)
「ルビー! 若頭領の命令だ!」
はっ!
再び正気を取り戻したルビーは、ジャンプ一閃、取り囲むフーナイトの群れを飛び越え…
サファイアと共に、非常口から戦場を離脱する。
『逃げるかあ。そうだろうなあ、それしかないよなあーーーっ!
貴様等はこれから毎朝このタワーを、我等の新たな戦略拠点を見上げるがいい。
そして噛みしめろ、我等の戦略に屈した己の無力をなあ!
ハアーッハッハッハアーーー!』
眼前の悪に、拳が届かなかった。
エスカレイヤーなら、ハルカなら、エクシールなら…本当の超昂戦士なら、きっと阻めた陰謀。
駆け出しの私は…長官の期待に応えられなかった。
非常階段を敗走する、紅蓮の超昂戦士。
無念と屈辱、非力への悔恨。
溢れそうな想いを、噛み締めてこらえながら…
今はただ、ルビーは駆ける。
【第1章 完】
改めまして、筆者です。
超昂大戦専門・2次創作SS書きで3年目の中堅トキサダですが、すっかり投稿ペースが落ち、先月(2024年6月)のハーメルン様のサーバダウンも、書かない奴には無影響(自虐)。
そんな中で、プロットだけ温めていたこちらの新作「閂市総力戦」。筆者が本業でようやく2ヶ月ぶりのまとまった休みが取れたのをいいことに、書き散らかして世に問う運びと相成りました。
…ええ、今回は序章でもはやバレバレの「超昂大戦ifルートSS」であります。
元ネタは超昂天使エスカレイヤーの鬼畜ルート分岐点。…ということは…?
【前提】この作者、ここまでHの描写の深入りを避けてきております。(それで18禁ゲームの二次創作SS書きという誰得な立ち位置)
しかし前作「究極の初体験!」シリーズで微エロ表現に手を染め、中ヒット(当社比)を得たのに味を占めたようです(読者諸兄に感謝)。
そんなわけで…今回もこの路線を踏襲します。
ただし、基本はマジメ方面のつもりでして…過度な期待はご容赦ください。
なお、現在は第3章~4章を書き溜めストック制作中。
前後の整合をとり次第、数日おきペースで第2章以降も公開して参ります。乞うご期待。
読者の皆さまが楽しく熱くお読みいただけますように。