超昂大戦SS 閂市総力戦! ダイビートVSアルダーク ~優しき戦士は愛する街のために   作:環 藍河

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第1章 閂市壊滅! 奪われたタワーと希望の闘士たち

勇敢な紅蓮の超昂戦士が、悪夢の選択を申し出る数日前。

その日、青空は裂け、傷口から悪夢が舞い降りた。

 

《よく聞け、愚民どもよ。

これより我等アルダークは、閂市に総攻撃を下す。

ダイビートよ、人類よ、我らに仇なす者の帰結を…己の終焉を震えて待つが良い…!》

総帥ディストバーンが、人類に最後通牒を叩きつける。

 

フーマンが、コマンダーが、フラスト怪人が。

滅忍が、ザインが。

実りの大地を喰い荒らす雲霞のごとく、晴天を漆黒に覆い尽くす。

 

……

 

びいーっ、びいーっ、びいーっ…!!

「レールフラスト出現、戦力・フーマン15体! ポイントE-3、閂駅前です!」

「敵小隊さらに出現、戦力はコマンダー3・フーマン30体! ポイントC-5、閂学園!」

「滅忍出現…高エネルギー反応! 生体データ特定、ハガネです」

「市街地にザイン出現、一般市民が次々に石化・ザイン化しています!」

ダイビート司令室のサイレンが引っ切り無しに鳴り響き、オペレーターの報告はもはや悲鳴のようにこだまする。

 

「アイとメイ、マッハはE-3で駅前を防衛! エスカチームはそのまま学園を防衛!」

「スピカとアルデバラン、スケートルは市街地のザイン討伐に向かって。ポイントF-1、地上神騎を支援に回すわ!」

「ゴウカ・フウカ。ハガネを…滅忍を討て!」

矢継ぎ早の敵出現の報に即応し、トキサダとユーノが戦力を適宜投入していく。

 

だが…

 

《長官! こちらアイ! E-3の敵戦力がうじゃうじゃ増援を投入…キリがないっ!》

『こちらスピカ。ザインの増殖が止まりません。

 こちらも片っ端から誅伐していますが…追いつかない…くっ…!』

〔頭領っ…! 護衛の滅忍がしぶとくて…〕

〈ハガネに…届かないっ…!〉

 

「…トキサダ…!」

「…ああ。エスカレイヤー、出動せよ! ポイントE-3、アイたちの支援を!」

「閃忍ハルカは七閃を支援! エクシールはザイン討伐を!」

「『【了解!】』」

一般の超昂戦士だけで手こずる戦場に集中投下するつもりだった、レジェンド戦士たち。

それが、分散出撃を余儀なくされるとは…!

 

「…おかしいわ…。」

「ユーノもそう思うか。」

ダイビートの頭脳2人が、共に違和感を重ね合わせる。

敵の…アルダークの狙いが不可解すぎる。

 

駅、学園、市街地。離れた3カ所の同時襲撃だが…拠点制圧には少なすぎる。

これだけの戦力が揃うなら、一点集中で投下し、どこか1カ所を陥落させるのが自然。

それが、むざむざ戦場を分散させ、しかも戦力は逐次投入。

中心部に、施設に、郊外に…同時並行で戦線を拡大するアルダークの狙いは、一体…?

 

「こちらの戦力を分断させられていますね。」

「アルゴル…!」

天使長アズエルが率いる天上神騎の中でも怖れられる戦闘集団・アサシン団の参謀、アルゴル。

「前線が地平線のように伸び、しかも各前線への増援は、各ポイントの超昂戦士が疲弊したタイミング。

 我々の切り札・レジェンド3名を分散させざるを得ないように、計算しているのです!」

 

ダイビートの超昂戦士は、想破・久世・神騎を合わせてもまだ50余名。

たとえ雑魚のフーマンや滅忍・ザインたちでも、数で押されたら押しきられる危険を常にはらむ。

だからこそレジェンドを温存せざるを得なかったし、出来るならば一点集中で投入したかった。

 

「この3点に切り札を誘い出すなら、真の狙いは円弧の描く、最も離散したこの点…!」

「…そこはっ…!!」

「まずいっ!」

トキサダはレーダーを俯瞰し、4つの輝点を突き止める。

そこは、アルゴルの示唆する急所から離された超昂戦士たちの中で、それでも最短で急行できる4人の戦場。

 

「エスカチーム、フォーメーションF! 2名は学園防衛を継続、2名は離脱せよ!」

『なっ…!』【若頭領っ!】

〔何言ってんのよっ!? ここも…学園もフーマンだらけ、4人でもキツいってーの!〕

《…長官くん、わかってて言ってるのよね…?》

 

アメイズは察した。ここで私たちを戦力分散させれば、あるいは閂学園を護りきれなくなる。

だが、そのリスクを凌駕するほどの、真の危機が迫っているのだと…!

 

「敵の狙いは閂タワーだ! 2名、急行してくれ!」

『【〔《!!》〕】』

 

文字通り、閂市のシンボルにして、街を一望できるそのタワー。

一見、敵襲撃のレーダー反応など皆無の、平和な摩天楼は、前線で闘うレジェンド達の誰一人として容易に近づけない、最遠点にそびえていた。

 

そこに最短最速で急行できる唯一の存在が、エスカチーム。

だが…そのためには2人をタワーに急行させ、残り2人だけで学園防衛。

分散した戦力で両面の戦いに挑む…それは戦闘経験の浅い彼女たちには、酷なミッションとなる…!

 

そのためらいを、その揺らぎを振り切るように、一人が叫ぶ。

『…復唱します! エスカ・ルビー、学園を離脱し、閂タワーに向かいます!』

〔ルビー?!〕【無茶だっ!】

『長官の采配を信じる! 私たちならタワーも学園も護れるって、長官が判断したんだ!』

既に何十ものフーマンを叩き潰し、疲労困憊、肩で息をするルビーだが、瞳の奥にもう一度ガッツの炎を灯し、気丈に答える。

 

【…わかった。ならば2人目は私だ。エスカ・サファイア、フォーメーションF!】

〔があーーーっ! わかったわよっ! 

 ルビー! サファイア! ここはあたし達に任せて、行きなさいっ!〕

《長官くんのギャンブル、ひと口乗ってあげるわっ!》

 

遠ざかる紅と蒼の光輝。泥沼の死闘にもがく金と紫の輝石。

学園死守を誓い、トパーズとアメイズはなおも増殖をやめない邪黒の軍団に、悲壮を隠して立ち向かう。

(タワーに敵がいるならば…)

(…きっとアルダークの悪巧みの、真の狙いが…!)

仲間とトキサダの思いに応えるため、不退転の決意でルビーとサファイアは陰謀の地へ駆ける。

 

……

 

 たたたたたっ…!

 

2つの疾風が街をつんざく。

その軽快な足取りと裏腹に、迫る敵への怖れと、残した仲間への躊躇いを胸に秘めて。

 

「…まだ、敵の気配は…」

「ルビー、油断大敵だ。必ず何かがある…!」

朝は清々しい青空に雄々しく伸びていた閂タワーだが、今やその青空はまがまがしく塗りつぶされ、タワーは一転、健気に瘴気から市民をかばうように、静かにたたずむ。

市民の避難が済んだ、誰一人いないプロムナードを駆け抜けながら、ルビーとサファイアは不気味な静けさをいぶかしがる。

 

「ダイビートの、超昂戦士さんですか?」

「!?」

タワー入口のインフォメーションブースから、軍服をまとう男が声をかける。

 

「タワーは既に我々国防陸軍が避難誘導をかけています。お客様もタワーの職員も、アルダーク襲撃の報せを受けて、もう避難完了していますよ。」

 

その情報は一見、正しく見えた。

既に国防陸軍がタワー周辺を囲み、一般市民がいなくなったタワーを警備している。

 

「ここは我々に任せて、戦線に復帰なさってください。お気を付けて。」

 

「…ルビー。」「うん。」

 こくり。

 

返事を聞くや、ルビーとサファイアは互いを見やり、うなずくと…

 

「道を空けてください! タワーの中を改めます!」

「なっ…困りますっ!」

 

 しゅっ…ばりばりばりっ。

 

「ひっ…な、何を…!」

ルビーの指示に抗い、入口に立ちはばかる男に、サファイアがビームクナイを飛ばす。

「ほう、その割りには冷静だな。」

眉間を狙った刃は、突如発動した電磁バリアに阻まれた。

 

「国防陸軍の軍人は、体術の邪魔になる防弾ベストなど着込みはしない!」

「!!」

僅かに着ぶくれ、肩まで不自然に張ったYシャツ。

のみならず、ルビーたちを友軍として歓迎せず、追い返そうと一瞬泳いだ視線。

重なる違和感を、ルビーとサファイアは見逃さなかった。

 

クナイをどう捌くかで正体がわかるよう、敢えて手加減して投げたサファイア。

手刀で落としたなら国防陸軍、体術で躱したなら滅忍、ザインなら脳天に刺さったまま暴れ狂うだろうか。

では、装備品で防いだ目の前の男は…!

「正体を現しなさい、アルダークのコマンダー!

 国防陸軍になりすましてタワーを乗っ取って、何をたくらんでいるんですか!」

 

 がばっ!

 

「思い上がるなっ、正義の味方ども! 騙されてのこのこ帰った方が幸せだったのになあーーー!

 2人ともぶっ潰して、フーマンどもの慰み者にしてくれるっ! 前から後ろから、ぐちゃぐちゃの白濁まみれにしてくれるわあっ!」

 それまでの慇懃な言葉遣いがどこへやら。国防陸軍の軍服をかなぐり捨て、臙脂色の軍服とガスマスクに身なりを改めた侵略者が、心まで醜いその正体を晒す。

「タワーは…みんなの大事な場所は、私たちが取り返しますっ!」

「粋がるなっ、クソガキ! フーマンどもっ、出撃だあ!」

 

 しゅいい……んっ!

「《【『ブブーーーッッ!!』】》」「『!!』」

 

 コマンダーの下卑たダミ声と共に、タワーを取り囲む警備の軍人たちが自らの軍服をびりびりに破裂させ、ことごとくフーマンと化す。

さらに転送された雑兵の群れは、ルビーとサファイア…2体の獲物を眼前に、けたたましくときの声を上げる。

 前線3カ所にあれほどの兵力を拡げながら、まだこれほどの数を…!!

「構うなっ、ルビー! こいつらはただの壁、真の敵はタワーの奥、展望台だ!」

「わかってるっ、突撃します!」

 

……

 

「かはあっ…はあっ…!」

「こいつら…討っても討っても…湧いてくるっ…!」

市民の憩いの閂タワーは、今やアルダークの要塞も同然だった。

低層階のフロアから展望台への道は、エレベーターを封じられた今では非常階段のみ。

一本道を駆け上がるルビーとサファイアは、質より量で押してくるフーマンたちに行く手を阻まれ…それでも正面突破で一段一段上り詰めるしか、最上階を目指す術が無かった。

上からの敵をルビーが一体一体突き飛ばし、後方からの敵をサファイアがなぎ払い…手こずりながらも少しずつ、陰謀の核心へ迫る2人。

 

 ばんっ!

『よお~こそ、超昂戦士。

我等のもくろみに気づいたことは褒め称えてやろう。』

【「!!」】

 

非常階段に倒したフーマンの山を築き、遂に辿り着いた最果ての地・展望台。

鉄扉を蹴破ったルビーとサファイアを迎えた、舌舐めずりをするようなコマンダーの挨拶が響く。

 

『だがなあ、遅かったあ! 僅かに遅かったのだよ、貴様等はあっ!』

 

 かちっ。

 ぶううう…んっ!

 

勝ち誇るコマンダーが掌に握ったスイッチを押し込むと、展望台に据え付けられた奇怪な装置が起動する。

コイン式双眼鏡と並んだその装置は、市街地の方角へ向けたアンテナから、妖しく鈍い光の放射を始め…

 

《ああっ…うああーーーーっっ!!》

《うっ…うぐううううっっ!!》

《ち…力が…っ…!!》

「なっ…!?」

「エ…エスカレイヤーさんっ!?」

 

ルビーたちは通信越しに、光の射す方角で闘う戦士たちの悲鳴を知る。

 

……

びいーっ、びいーっ、びいーっ…!!

「緊急! エスカレイヤー・閃忍ハルカ・エクシールのエナジーが急激に低下! 戦闘可能レベルを維持できませんっ!」

「何だとっ!?」

「タワーから発射される怪電波の影響で、D2エナジー・淫力・魔力が封じられていきます!」

 

ダイビート基地・司令室では、トキサダが最悪の現状を突きつけられる。

 

「他の超昂戦士への影響はっ!?」

 

《ぐ…あああああっ!!》

《きゃああーーーーっ!!》

《うあっ…ちっ…ちきしょうっ…!!》

 

「ショウコとマリナ、ミーナのエナジーが、同様に低下しています!」

「他の戦士・閃忍・神騎への影響、確認できません!」

「トキサダ…これは…」

「…そうか…!!」

 

……

 

『ククク…やはりまだ全員には効かないか。

 まあよかろう! 何しろ、いちばん潰したい戦士に効いてるからなあ!』

「…その装置は…!」

 ルビーが顔色を失う。

『気づいたかあ? この怪電波装置は、お前たちダイビートの切り札・異界超昂戦士のエナジーを根こそぎ封じる、アルダークの先端科学の結晶さあ!

 どうだエスカ・ルビー! 大先輩たちが無力化され、もがき苦しむ様はあ?!』

「…ああっ…!」

異界からの助太刀を…とりわけ、最強の3人を封じられたという現実に直面し…

戦局が絶望的に悪化したことを悟ったルビーの全身から、血の気が引いていく。

 

「若頭領…ご判断を…」

「…諦めない…っ!」

「なっ!?」

指示を仰ぐサファイアを横目に、ルビーは自らを奮い立たせ、無謀にも敵陣へ…フーマンの大群目がけてひとり吶喊する。

「いま私が装置を壊せばいいっ…!

 壊さなければ、ダメなんだあっ!!」

「バカっ、一人で行くなっ、ルビー!!」

 

『ふん。やれっ、フーマン、フーナイトっ!!』

「《【『ブブーーーッッ!!』】》」

 

このタワーを陥落させ、電波塔として異界戦士弱体化の拠点にする…そんな一大作戦のための兵力が、雑兵フーマンだけのはずが無く。

上級兵のフーナイトが手厚くルビーを囲み、サファイアのもとを離れて孤立したルビーをじっくり嬲り物にしようと、距離を詰めていく。

 

《撤退だあっ!!》「【!?】」

通信越しの強い声は、我を失ったルビーに冷静を取り戻す。

《防衛線を下げる! エスカ・ルビー、エスカ・サファイア、基地まで速やかに退くんだ!》

「長官!! でも、このままじゃエスカレイヤーさんたちがっ…」

「6人を、既に撤退させた。

 防衛線の維持さえ苦しくなった今、タワーを奪還する戦力は割けない。

 今の俺たちでは…ダメなんだ…!」

 

(…!!)

その呻くように響く声は、ルビーの胸を掻きむしった。

(私じゃ…護れない…タワーも、街も…!)

 

「ルビー! 若頭領の命令だ!」

 はっ!

 

再び正気を取り戻したルビーは、ジャンプ一閃、取り囲むフーナイトの群れを飛び越え…

サファイアと共に、非常口から戦場を離脱する。

 

『逃げるかあ。そうだろうなあ、それしかないよなあーーーっ!

 貴様等はこれから毎朝このタワーを、我等の新たな戦略拠点を見上げるがいい。

 そして噛みしめろ、我等の戦略に屈した己の無力をなあ!

 ハアーッハッハッハアーーー!』

 

眼前の悪に、拳が届かなかった。

エスカレイヤーなら、ハルカなら、エクシールなら…本当の超昂戦士なら、きっと阻めた陰謀。

駆け出しの私は…長官の期待に応えられなかった。

 

非常階段を敗走する、紅蓮の超昂戦士。

無念と屈辱、非力への悔恨。

溢れそうな想いを、噛み締めてこらえながら…

今はただ、ルビーは駆ける。

 

【第1章 完】




改めまして、筆者です。
超昂大戦専門・2次創作SS書きで3年目の中堅トキサダですが、すっかり投稿ペースが落ち、先月(2024年6月)のハーメルン様のサーバダウンも、書かない奴には無影響(自虐)。
そんな中で、プロットだけ温めていたこちらの新作「閂市総力戦」。筆者が本業でようやく2ヶ月ぶりのまとまった休みが取れたのをいいことに、書き散らかして世に問う運びと相成りました。

…ええ、今回は序章でもはやバレバレの「超昂大戦ifルートSS」であります。
元ネタは超昂天使エスカレイヤーの鬼畜ルート分岐点。…ということは…?

【前提】この作者、ここまでHの描写の深入りを避けてきております。(それで18禁ゲームの二次創作SS書きという誰得な立ち位置)
しかし前作「究極の初体験!」シリーズで微エロ表現に手を染め、中ヒット(当社比)を得たのに味を占めたようです(読者諸兄に感謝)。

そんなわけで…今回もこの路線を踏襲します。
ただし、基本はマジメ方面のつもりでして…過度な期待はご容赦ください。
なお、現在は第3章~4章を書き溜めストック制作中。
前後の整合をとり次第、数日おきペースで第2章以降も公開して参ります。乞うご期待。
読者の皆さまが楽しく熱くお読みいただけますように。
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