超昂大戦SS 閂市総力戦! ダイビートVSアルダーク ~優しき戦士は愛する街のために   作:環 藍河

3 / 6
第2章 届かない決意…絶望の避難所、崩れ落ちる戦士の心

「はあ…っ、はあ…っ…」

閂学園防衛戦は、底無し沼の様相を呈していた。

既に百体以上ものフーマンを切り刻み、過負荷に悲鳴を上げて垂れ下がり、言うことを聞かない利き腕。

斬撃を諦めたトパーズは、剣を両手持ちに切り替えて独りごちる。

(何体だって…突き刺して、蹴飛ばして、絶対追い払ってやる…!)

 

「くうう……、~~っ!!」

魔眼でフーマンの正気を失わせ、あわよくば同士討ちを狙うも、大半をウィップで打ち据え続けるアメイズも、もはや限界寸前。

「…頭脳労働の、CEOなんだけど、私…!

 単純労働は、キッツいなあ…。」

 

《トパーズ、アメイズ。…撤退しろ。》

「!!」

《防衛線を下げる。2名は基地まで帰還せよ。》

 

それはトキサダが、学園の放棄と敗走を選択したということ。

「何言ってんのっ! ここをあたしらで護らなきゃ、ルビーたちを行かせた意味が無いでしょーがっ!」

「長官くん…ルビーたちは大丈夫なのね? 答えてっ!」

「! アメイズ…?!」

《ああ…ルビーとサファイアにも撤退指令を出した。間もなく2人とも基地へ帰投する。》

「そんな…!」

 

エスカチーム4名への、撤退指令。

それはタワーが敵の手に落ち、学園防衛にも失敗したことを意味する。

 

《繰り返す。トパーズ、アメイズ! 帰還しろ!》

「…負け、たんだ…!」

「トパーズ?」

「あたしたち…負けたんだ…!」

張り詰めた闘志が、ぷつんと切れた。

フットワークを止め、トパーズは瞳の焦点を失い、悲嘆に心を支配される。

〔『【ブーーーッ!!】』〕

その隙を見逃さず、フーマンが黄輝の超昂戦士にたたみかける。

 

びしっ!〔『【ブーーーッ!?】』〕

「!?」

迫る肉弾を鋭くなぎ払う、妖蛇の一閃。

 

「トパーズ…負けじゃない。撤退は負けじゃないよ…!」

「…アメイズ?」

「…生き延びるの。たとえどんな屈辱でも、再起できない犬死によりは、ずっとマシ。

 だから…今日は帰って、落ち延びて、いーっぱい泣くの。

 明日は絶対勝つんだって、心に刻んで消えなくなるくらい…!」

 

それはまるで、大切な誰かをたくさん失ってきた、歴戦の戦士のような悲しみをたたえ…。

アメイズの説諭にトパーズは、一切の反発を失い…戦線離脱の退路を切り拓いた。

 

……

 

戦線が、決壊した。

レジェンドやビートアイドルを筆頭に、数多くの異界戦士が力を封じられ。

精鋭の戦士・閃忍・神騎すら、物量で押し切られて後退を余儀なくされ。

閂タワー、閂学園、駅前ロータリー…主要な拠点を、ことごとく放棄した。

国防陸軍との共同戦線で、ようやく踏みとどまる防衛線を築くのが精一杯。

それは閂市の生活区域のはるか後方…。

もはやダイビートは、アルダークの蹂躙を阻む術を失っていた。

 

「正直に言うね。怪電波への対策…全く目処がたたない。

ビートポータルへの干渉、DDDシステムの妨害、ダイナライト鉱石から得られるエナジーの脆化…あらゆる攻撃をいっぺんに仕掛けてきて、一つに対策を打っても、他の手段で割り込んできて、追いつかない…。」

「そうか…。」

未来のテクノロジーを具現化しビートポータルとADDDを実用化し運用するほどの天才科学者・高円寺さやかでさえ音を上げる、アルダークの怪電波装置。

「…わたしが3人…いや、2人いれば、少しは対抗できるのに…!」

ダイビートの技術スタッフもまた、マンパワーでアルダークに押し切られていた。

 

……

 

戦火に焼け出された市民のため、市営体育館・公民館・図書館…辛うじて侵略を免れた公共施設が、次々に避難所として開放されていく。

だが、防衛線の後退に反比例して、避難者数はうなぎ登り。増設が追いつかず、どの施設も次々に避難民で溢れかえっていった。

 

平穏な日常を奪われた市民の、やり場の無い悲しみと怨嗟が鬱積する避難所の一つに…

 

「…超昂戦士?」

ざわっ…!!

 

エスカ・ルビーは…変身コスチュームの姿で、市民の前に立つ。

撤退し、基地に帰投するも、負傷の治療もエナジーの回復も受けず、その足で避難所を訪れた。

 

「な…何しに来たんだっ、何のつもりだっ…?」

「…皆さん。」

 

 がばっ。

 

「閂市を…タワーも、閂学園も、商店街も…。

 護りきれなくて、本当に、申し訳ありません!!」

 

 直立し、謝罪の声とともに…ルビーは深く頭を下げ続けた。

 

…はっ。

「お…お前が頭を下げたってなあ、俺たちの生活は、帰ってこないんだよお!」

「俺は職場を潰された! 明日から給料も出やしない! もう貯金を使い果たして飢え死にするしかないんだよ!」

「俺だって、買ったばかりの新車を潰された! 住宅ローンが15年残ってる家だってぐしゃぐしゃだあ!」

「こんな暴動じゃ、火災保険もおりやしない! どうするんだよ、俺たちこれから!!」

 

平穏を奪われ、暗転した日常。

その不安を口々に吐露する避難者たちも、理性では理解していた。

超昂戦士が悪いのではない。真に憎むべきは侵略者たち。

…それでも、自らの崩れ落ちる精神の拠り所を求め、哀しく八つ当たりの叫びをぶつける。

 

「どうせお前等は、このまま負け続けても、基地ごとこの街を捨てて、逃げればいいもんな?!」

「えっ…?!」

「だってそうだろう! 未来から来たとかおかしなこと言って!

『侵略者と闘う』んなら、ここじゃなくてもいいんだろう! ここで負けたって、見捨てて隣町でも他の国でも行って闘えればいいんだろう? 違うか!?」

「そんなこと…(あ…!)」

 

ルビーは言葉に詰まった。

エスカ・ルビーは出自不明の超昂戦士でなくてはならない。

この街を最後まで護り抜く…その真心からの決意には、何の担保も添えることができなかった。

 

「…何だよ、図星かあ!?」

「あんなこれ見よがしな基地まで建てたくせに、この街と心中する覚悟も無かったのかよ!」

「何で黙ってるんだ! 何とか言えよ!」

 

「…護ります…!」「あん?」

「必ず、皆さんの生活は私たちが…ダイビートが、取り返します…。

 今は…今は、それしか言えません…!」

 

ルビーの精一杯の誠意と覚悟を込めた、静かな宣誓。

気圧される市民達だが…その言葉には何の確約も無く。

再び、鉛の沈黙が避難所を窒息させる。

 

「…あんた、エスカ・ルビーって言ったか。」

(…あっ…!)

重い空気を破り、老人が一人、前に出る。

(商店街の…肉屋のおじさん…。)

それはアカリが幼い頃からよく知る、閂市を誰より愛する市民。

 

「あんた…園崎アカリちゃんって知ってるか?」

「な…なっ?!」

あまりにも不意にでたその名に、ルビーは喉から心臓が飛び出るほど狼狽える。

(バ…バレちゃったああああっ!?)

 

「あんた達の戦いを見て、自分も超昂戦士になるんだー、なんて言って。

 今はあんたらの基地で、倉庫係をしてる女の子だよ。」

「えっ……は、はいっ、あの子ですね! 知っています!」

身バレの危機を回避したことを悟り、内心で安堵のため息を深く吐きながら、取り繕うルビー。

 

「…俺はどうなってもいい。肉屋なんて跡継ぎもいねえし、閉店が数年早まったくらいさ。」

「そんな…」

「…でもよ。この街を誰よりも好きな女の子が…未来ある子が、あんたらを信じて頑張っているんだ。

 万が一にもあんたら、あの子をたぶらかして、信じるだけ信じさせてよお…

 負けそうになったら街ごと見捨ててポイ、なんてやってみろ、ただじゃ済まさねえぞ。」

「そ…そんなこと、絶対しませんっ! 信じてください!!」

 

「…言葉が過ぎた。あんただって、戦ってぼろぼろになってんのに、真っ先にここに来たってのにな。」

タワーでフーマンに何度も引き倒され、戦闘服はずたぼろに破れ、腕も足も顔も汗と埃にどろどろにまみれ…ルビーは戦闘直後そのままの姿で、汗も拭わず市民の前に立っていた。

 

すっ…がばっ。

「えっ…!?」

 

やおら老人はルビーに深々と頭を下げ、言葉を継ぐ。

「頼むよ、エスカ・ルビー。アカリちゃんみたいないい子を…悲しませないでくれ。

 それが俺の…老いぼれのなけなしの願いだ。」

(…おじさんっ…!!)

 

この人だけじゃない。

閂市に生まれ育ち、平凡でも静かな生活をこの街で重ねてきた人たち。私を慈しみ、絶望の淵でも未来を、希望を示してくれた人たち。

そんな素敵な人たちに護られ、私は私になれた。

その恩を返したくて飛び込んだ超昂戦士の世界だったのに…!

 

「あなたの…皆さんの思い…重く受け止めます。心に刻み込みます。

 …失礼します!」

 

 …だっ!

 

……

 

たたたたたたっ…

 

みんなの思いに応えられない、非力な自分を突きつけられたルビーは居たたまれず…

老人へ一礼するや否や、避難所から全力ダッシュで基地へと駆け抜ける。

 

(私…うぬぼれてた…。

 何が超昂戦士だ。何が正義のヒーローだ。

 こんなに弱くて。こんなに惨めで…!)

 

どんなに、自分の想いが強くても。

決意なんか、何の意味も持たないじゃないか。

そんなもの、護れなきゃ…護る力がなけりゃ、ゴミクズ同然だ…!

 

弱者の烙印に心を灼かれ、痛ぶる心を振り切ろうと、そのブーツで地を蹴る少女戦士。

最後の理性で慟哭を抑えながら…

 

(力が…欲しい…!)

 

ルビーは翠の瞳を熱く腫らし…悲壮な決意で涙を吹き飛ばす。

 

【第2章 完】




筆者です。第2章は残念ながらマジメパートであります。
微エロは次章でたっぷり。現在鋭意執筆中ですが…ヘタすると2章分のボリュームになるかも…?
ただ、20年前に超昂戦士エスカレイヤーの鬼畜ルートに衝撃を受けた一人ですが、あれを超える表現力など、この筆者にはあろうはずもございません。
自己ベストめざして頑張りますが。過度な期待はナシでよろしく、です。
…それでも、乞うご期待、です。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。