超昂大戦SS 閂市総力戦! ダイビートVSアルダーク ~優しき戦士は愛する街のために 作:環 藍河
「ああ…またダメだっ…! 何でよお…!!」
ルビーたちの閂タワー奪還失敗から、時計の短針が何度真上を向いただろうか…。
ダイビート基地・ラボでは、技術主任・高円寺さやかが独り苦悶する。
そしてメディカルルーム最深部・集中治療ブースでも…
「う…うああ~~っ!!」
「い…淫力が…」「神力がっ…吸い上げられて…!」
「頭の奥に…ノイズが絡みついて…唄えないっ…!」
「へっ…9回裏で5点差…まだツーアウトだろ…!」
エスカレイヤー、閃忍ハルカ、神騎エクシール、ビートアイドル・マリナ、ビートBB・ミーナ…。
ビートポータルでの召還に応えてくれた、現界を護るため立ち上がってくれた志願兵たちの呻きが、痛々しく反響する。
切り札たる彼女たちを封じる怪電波の解析にかじりつき、さやかの不眠不休はもはや3徹目。
だが…その献身は効き目を持たない。
「怪電波の異界戦士弱体化! 発動プロセスも作用するチャネルも解析できた!
なのに、叩いても叩いてもキリが無いっ! こんなの…アルダークの掌で踊らされているだけじゃないっ!」
がんっ!!
端末のキーボードが跳ね上がるほど激しく、デスクに拳を叩きつけるさやか。
その憤りは敵よりむしろ、自身の無能をなじるものだった。
(……っ、ぐう~~~っっ!!!)
「何をしている。」「!?」
「ADDDは負けん。妨害を防ごうとするな。妨害を上回る力を生み出すんだ。」
「パ…パパ?!」
さやかの父…高円寺滝太郎博士の来訪だった。
ぱさっ。
「作れ。できるな。」「…これは…!!」
「2基要るだろうからな。片方はお前だ。」
……
…
その5時間後、夜明け前の基地指令室。
「は…ははっ…、こりゃ崖っぷちっスね…!」
「へへっ、アニキが言うなら、あたいはとことんやるだけでい!」
「こんな大きなお祭り、初めてだあ! あたし、燃えてきたよおっ!」
指令室に満身創痍の超昂戦士たちをかき集め、トキサダが最後の反攻作戦を告げる。
その数はせいぜい40名、いずれも重軽傷を負い、セラフィールやユユエルの治癒も、焼け石に水。
ボロ雑巾同然の戦士達にトキサダが告げる作戦も…また絶望的だった。
スケートルが、マッハが、ツルコが…極限を突きつけられ、息を呑み、あるいはやせ我慢を口にする。
「アルダークは間もなく、ダイビート殲滅戦を仕掛けてくるだろう。そこが作戦開始時刻だ。
全てのダイビート隊員は戦闘配備についてくれ。作戦…開始だ。」
……
…
夜明け間も無い閂市は、既に昨晩までの死闘空しく、その過半が陥落しアルダークの勢力下に墜ちていた。
今日の戦闘ではさらなる切り崩しは当然、あわよくばダイビート基地陥落も…!
多大な戦利品と褒賞を皮算用するアルダーク中隊長たちは、ダイビートの今朝の布陣を俯瞰し…
口々にあざけり笑っていた。
「ははっ、遂にダイビートも、破れかぶれの策に出たなあ!」
「追い詰めたぞ、女ネズミどもめえ! 貴様らのひと咬みが怖いかどうか、この圧倒的兵力差で確かめてくれるわあ!」
「配置完了など待つ必要なし! フーマン・滅忍・ザイン! 各自進撃だあ!」
『【〔《ブーーッ!! ブブーーッ!!》〕】』
「【〔《応っ!! 滅滅っ!!》〕】」
【「《ザイッ!! ザイザイッ!!》」】
どどどどっ、どどっ、どどどどど……!!
街を分け隔て、海へと繋がる大河にかかる、いくつかの橋。
ダイビートはその血路を断つように、入口に巨大爆弾をセットしていた。…ただ一つ、ダイビート基地へと直結する、いちばんの大橋を除いて。
「愚かな、実に愚かな! とっとと橋など爆破すればよかろうに! 街の被害の1つ2つを惜しんで、攻め口を自ら絞り込むとは!」
「実に殊勝なことだが、甘く見られたものだ! その躊躇こそが致命傷だったと悔やみながら、十字架の露となれいっ!!」
……
…
「…来ますね。」
「ああ、あとは頭領の作戦を信じよう。」
「我等七閃、もとより不惜身命!」
「この身全てを刃に代え、推して参る!」
《聞け、神騎たちよ! 創造神アマツ様の御名の下、天使長アズエルが命ずる!
地上と天界の興亡、この一戦にあり!
地に降りしアマツ神の子たちよ、その総力をもって、魔に与し者どもをなぎ払うのです!》
「…私たちは肉体が滅しても、天界に還れるけどね~。」
「プラチネルやフローレル、デュエルには酷だよね…?」
「なーに言っているんだい。裏腹が読めなきゃ詐欺師は務まるもんかい!」
「わたくし達を案じる天使長さまの御心、十全に受け止めましたわ。」
「こんなに熱く身を灼くスリル…神騎に生まれてよかったぜ!」
上弦衆が、神騎が、そして戦士たちが…全てを賭して、命脈の橋へと踏み出していく。
わあああああ………っっ!!
……
…
「いやあっ!!」「ぐふっっ!!」
「ハザクラ! シリカ!」
思わず駆け寄るメイファールを、制止する2人。
「ま…まだ負けません…私だって…!」
「い…居合の真髄は…死中求活…これからですっ…!」
「はあーーっ、はっはっはっはあーーー!!
何のつもりだ、ダイビートお? この泥仕合の向こうに、何の希望があるんだあ?!」
フーマンたち雑兵の蠢く戦場に、コマンダーの高笑いが響く。
ダイビート側の…トキサダの策らしき策は、せいぜい橋を一本に絞る布陣くらい。
あとは残った勢力でひたすら、押し合いへし合いで侵攻を防ぐばかり。
敵の進路を絞ったおかげで、何とか持ちこたえているものの、このままでは物量で押し切られることに、変わりは無かった。
「きゃあっ!!」「がふっ…!!」
疲労で奪われたフットワークは、戦士たちの孤立を生む。
やがてファイティングポーズさえも崩れ、一人、また一人。
絶望の、各個撃破。
「あ…ああっ…」「ぐうっ…くっ…!」
「フーマンどもお! 捕獲した超昂戦士どもを、イデアの壁に放り込むのだ!
俺たちコマンダーが蹂躙したあと、お前達にもくれてやるからなあ!!」
『【〔《ブブーーッ!!》〕】』
力なく倒れ伏す戦士たちを貪ろうと、おぞましい欲望まじりの腕が十重二十重と迫る…!!
「そこまでですっ!!」 「『【〔《!!》〕】』」
「超昂戦士エスカレイヤー!」「ビートアイドル・マリナ!」「ビートBB・ミーナ!」
「悪の現場に、再び参上!」「この世界から…愛の歌は消させないっ!!」
「オレが倒れない限り、ゲームセットはお預けだあっ! いくぞおっ!!」
(はあっ、はあっ…!)
(ま…間に合った…の…?)
シズカが、メイファールが、アイ・メイ姉妹が…。
疲弊と大打撃に地を這う超昂戦士たちが、希望の増援戦士たちを祈るように見つめる。
…
……
《橋を一本に絞り、敵の進軍を遅らせて、できるだけ耐えしのぐ。
あとはさやかさんを信じて、レジェンドたちを蝕む怪電波の解除成功に賭ける。》
『【〔《…ええ……っ…?》〕】』
トキサダがブリーフィングで戦士達に授けた策は…悪く言えばただの時間稼ぎ。
スケートル・マッハ・ツルコの落胆は、察するに余りある。
……
…
そして、その賭けは…
ばきっ! どがあっ! ぐしゃっ!
「はぐううっ!」
「きゃあああっ!!」
「ぐへえっ!!!」
『【〔《ブーーーッ!!》〕】』
…成就しなかった。
「かははーーーっ!! 無様なり、エスカレイヤー!!」
「なあ~んだ、怪電波封じの秘策でも講じてきたのかと思ったぞ!」
「追い詰められて、手品のタネすら尽きたか、ダイビートおおおっ!!」
(あ…ああっ…!)
(さやかさん…やっぱり…ダメでしたの…?)
雑兵のたったの一撃でグロッキー、脂汗を滲ませ足をふらつかせるエスカレイヤーたちの姿に、戦士たちは最後の微かな希望が潰えたことを悟った。
《超昂戦士…プランCだ。》「『【〔《!!》〕】』」
通信の指示が…その絶望を確固たるものにした。
《プランC! 超昂戦士、全員撤退せよ! 基地での籠城戦に切り替える!
300秒後、シェルターを全起動する! それまでに何としても到達するんだ!!》
それは、裏を返せば…落伍者は見捨てる、非情の選択。
そして…
「エ…エスカレイヤー…撤退します…!!」
たたたっ……!!
「『【……っっ!!】』」
その光景に、力尽きた戦士も。辛うじて踏みとどまる閃忍も。翼折れた神騎も、我が目を疑った。
希望の超昂戦士が。愛の歌姫が、不屈のブレイクボール戦士が…。
地に伏す現界戦士たちを放置して、我が身かわいく基地へと逃走していく…!!
「う…うああああーーーーっっ!!」
「ちくしょうっ、ちくしょおおおっ!!」
ダイビートを信じ、痛くても怖くても辛くても拳を握り、武器を取って立ち上がった戦士たちが嗚咽する。
敗戦の屈辱と、憧れを裏切った異界戦士の醜態。
そして何より、この身を預けた長官に見捨てられた、その背信に…!
《撤退だ! みんな、撤退しろ! あと280秒!》
「…もう、ダメだ…。」
「終わりだ…ダイビートも、地球も…!!」
先ほどまでの闘志は立ち消え、立てる者も地に伏す者もうつむきうなだれ、遁走する者は皆無。
「ひゃーーーーっ、はははあああーーーっっ!! 滑稽、滑稽だなああっ!」
「あのエスカレイヤーがあっ、異界を救った超昂戦士があっ!! 後輩どもを見捨てて逃走っ!!」
「逃がすかあっ!! フーマン、滅忍、ザインっ!! 3人を捕縛しろおおおっ!!」
【ブブブフーーーーッ!!】
「ひいいいっっ!!」
焦土に膝を付き、生気を失った瞳で空を仰ぐアケビをねぶり尽くそうと襲いかかるフーマン。
どしゅっ…ばごおおおっ!!!(!?)
【ブブーーーーッ?!】
バズーカ砲は、フーマンの後頭部へのフレンドリーファイアー。
「馬鹿たれがああっ!! そんな雑魚戦士、後にしろおおっ!!
エスカレイヤーたちを捕縛しろと言っただろうがっ!!
今夜はレジェンドを嬲り放題だああーーーっ!!」
総崩れの超昂戦士たちは、しんがりに立って仲間をかばおうとする者などいるはずもなく…!
敵に背を向け走る者も。
捕縛すらされず、地べたにへたり込む者も。
踏みにじられまいと横に転がり、フーマンの動線から外れるのが精一杯の者も。
(えぐっ…ぐすっ…!)(勝てない…勝てないんだ…!)(見限…られたよお…!)
…誰も彼も、悔し涙にむせぶばかりだった。
「はははははーーーっっ!! 突撃だああっ!! 全軍、進撃だああああっ!!」
「ダあイ、ビートおおお~~~っ!! 籠城などさせるかあっ!
引きずり出してぐちゃぐちゃに潰して撃ち抜いてやるぞおおおっっ!!」
……
…
《戻ってこいっ、戻ってこいいいっ!!》
《シェルター起動まで、あと30秒…29…28…》
トキサダがいかに声を枯らそうと、無情のカウントダウンは止まらない。
超昂戦士たちは、ある者は立ちすくんで泣きじゃくり、ある者は涙も既に涸れ果て、理由も無く走り続ける。
その間にもフーマンたちの増援は収まるところを知らない。
いや…おこぼれの敗残兵たちを慰み者にしようと、ハイエナの獲物漁りを狙う後方待機のフーマンたちが迫っていた。
《…ここだ。》『うんっ!!』
がちっ。
…ぽおおおおっ……!!!
コバルトブルーに輝くその装置が、さらなる光を街に放つ。
そして…
がっ…どしゅっ。
『【〔《ブフーーーッ!!?》〕】』
どどどどどどどどどどどっ……
どごおおおおおん!!
ぱらぱらぱらぱら……っ…。
(《『……えっ…?』》)
「青い地球を護るため、胸の鼓動が天を衝く!
超昂戦士エスカレイヤー、決して仲間を見捨てはしませんっ!!」
敗残兵の視界には再び、目を疑う光景が飛び込んだ。
百両編成の暴走列車を正面からぐしゃぐしゃに吹き飛ばすような、真珠色の拳の軌道が悪を貫く。
先ほどまで怪電波に身体の芯まで蝕まれ、意気地無く敗走していたエスカレイヤー。
今は違う。
誰もが知る、勇気と覇気をみなぎらせ、見る者全ての心を震わせるレジェンド戦士が降臨した…!
「唱います!『恋に翼を』!!」
「必殺うううーーーっ、キャッチャー殺しいっ!!」
~~……。
~~~……!
~~~~……!!
『【〔《ザイーーーッ!!?》〕】』
どぼっ…!!
『【〔《滅ーーーッ!!?》〕】』
「ビートアイドル・マリナ、アンコールで…オンステージっ!!」
「ビートBB・ミーナ! 逆転するまで何度でも、ホームベース突撃だあっ!!」
異界戦士たちの完全復活…いや、超回復を経たかのように、遙かなる強者のオーラをまとう3人…!!
…いや、彼女たちだけじゃなかった。
(…あれっ?)
(た…立てるぞ、あたい…?)
(な…何故じゃ…!)
ハザクラが、マッハが、ノノノが…戦士たちが次々と立ち上がる。
《みんなっ! どうよどうよ、私の新発明「エナジーコア」はあっ!!》
《…儂のだがな。》
《いいじゃんっ! パパの設計図のそれより5%出力アップさせたからっ!!》
《みんな、すまなかったな。》
「『【…長官っっ!?】』」
《全部ウソなんだ。ブリッジ防衛作戦も基地撤退も、レジェンド戦闘不能もシェルター封鎖も…そもそも俺たちに残された策が無い、崖っぷちだというのも、全部ウソだ。》
……。
「……なっ……」
〘「《『【何だってえええーーーーーーーーーーーっっ!?】》』」〙
〘敵を騙すには味方から…兵法の常道さ。
みんなが戻ったら謝罪する。だが…それより先に。
戦士諸君、君たちのADDDはどうだ?〙
(えっ…?)
……。
………?
…………!!!
「み…みなぎる…すげえっ…!」
「な…何じゃ、この力はああっ!?」
「わ…私の力じゃ、ないみたいですうっ…!!」
《説明しようっ!!》
「『【ぎゃあーーーっっ!?】』」
《エナジーコアは異界戦士・現界戦士を問わず、DDD・ADDDをオーバーブーストさせる固定型チートデバイスなのっ!! 有効範囲が限られるけど、怪電波の影響以上のブーストで、今のみんなは漏れなく☆☆☆☆☆級の最強超昂戦士なんだからっ!!》
……!!
ぽきっ、ぱきっ。
「そっかあ~、じゃあ、今のあたいなら、お前等なんかにゃ負けねえってことだなあ!!」
「い…今までのお返し…しても、いいですか…?!」
「護符も榊も大盤振る舞いっ! 我を踏んづけたバチあたりどもめ、成敗じゃあっ!!」
…………!!
『【〔《ブ~~ッ!? ブブブーーーッッ!?》〕】』
どごおおおおっ!! ぼがあああんっ!!!
ひゅうううーーーーっっ……ぐしゃっ、どしゃっ、ぶちゅっ。
ショウコ、ツクモ、リンドウ、フェリニ、チマ…超昂戦士たちの逆転の狼煙が、長く伸びきったアルダーク軍の行軍路の道すがら、あっちでこっちで打ち上げられる。
フーマンが、滅忍が、ザインたちが…打ち上げ花火の乱れ打ちのごとく、宙を舞っては弧を描いて墜落していく…!!
……
…
「て…撤退だあっ!! ちきしょうっ、一旦退けええっ!!」
「か…怪電波装置近く、タワー下ならば…レジェンドどもも近づけまいっ…!」
「タワー待機の第12中隊っ! 今から部隊を戻すっ! そこで軍勢を立て直すんだあっ!!」
……?
「だっ、第12中隊っ!! 応答しろおおおっっ!!」
《ストライクうううっっ!! エスカレーションっっっ!!!
【ぎゃあああーーーっっ!!】》
「な…なっ? …この声はああああーーーっっ!!」
……
…
「ルビー…行けっ、最上階へ! 私たちの勝利へっ!!」
「ここはあたしたちに任せてっ! あんたは上へ行きなさいっ!!
みんなで運んだエナジーコアは、絶対護り抜くからあっ!」
「ぶち抜いちゃえっ、ルビー! あの日の悔し涙は、今日の喜びのためなんだからあっ!!」
エスカレイヤーたちに敗走を装わせた理由は2つ。
敵勢力を一直線に間延びさせ、線を点で切り落として孤立させるため。
そして、アルダークの総攻撃を誘い、最後方のタワーまでもを手薄にさせるため。
索敵されないよう変身を封じた悪条件のもと、タワーの真下に2基目のエナジーコアを運び、妨害せんと駆け寄るフーマンたちから護り抜くのは、3日前この地と学園で一敗地にまみれたエスカ・チームの3人。
そして、屈辱の敗走ルートとなった、タワーの螺旋階段を…
勝利を掴む紅きトルネードとなり、エスカ・ルビーが駆け上る!!
「どきなさいっ! 全力っ、フルパワーあっ!!」
どごおおおおっ!! どがあっ!! ずどどどどおおっ!!
『【〔《ブ~~ッ!! ブブブーーーッッ!!》〕】』
閂タワーの峰から、西へ、東へ。
しだれ花火のようにフーマンが叩き落とされる。
【な…何でだあああっ!!
我らアルダークの勝利は…揺るがぬ勝利はああああっっ!!
何でこうなったああーーーーーっっ!?】
ばんっ!!
【ちょ…超昂戦士…っ!!】
「紅蓮の光は不滅の炎!! 超昂戦士エスカ・ルビー、悪の拠点に再び参上っ!!」
きっ。【ひっ…!?】
「こんなものに…」
残されたコマンダー・第12中隊長がかばう怪電波装置を、ルビーは鋭く一瞥する。
「こんなものに、エスカレイヤーさんたちは、苦しめられてっ…!!」
忘れるものか。
閂市の美しい街並みを壊し、人々を嘆き苦しませた、この忌まわしき装置を。
その災厄を目の前に、尻尾を巻いて逃げた屈辱を。
取り戻すんだ、街を。
そして、弱く情けない自分に、落とし前をつけるんだ…!!
「砕け散れっ、怪電波あああっ!!!」
ぼきっ、どごおおっっ!! …ふわっ。
ハイキックの1撃目で装置の根元を砕き、2連目で数百キロはあろう装置そのものを展望台の天井高く打ち上げる。
「これで、最後だあっ!! ストライクうううっっ……」
【や…やめろおおおおおっっっ!!!】
身を挺して装置を護る気概ももたず、眼前を貫く蹴撃に腰を抜かすコマンダー。
その素っ頓狂な悲鳴など構わず、ルビーは背面跳びで閂市の最高峰へ。
ががががががががが………!!
故障し、軌道を外れた人工衛星のようにふらふらと虚空を泳ぐ、装置の亡骸に…
「エスカレーーーーーションっっっ!!!」
どごおっ!!!
……ぐしゃっ!! ひゅううう………
ずがががががががががががーーーーっっっっっ!!!!
ルビーのオーバーヘッドキックでさらなる高みに打ち上げられ、ついに装置はタワー天井を突き破る。
刹那、ダイビートの逆転勝利を祝福する紫紺の爆風が、エスカ・チームの頭上に燦然と輝いた。
【ああっ…装置がっ、怪電波がああ……?】
《上弦流奥義! 穿・四門五月雨っ!!》
『闇よ滅せ! ドーン・パニッシャーっっ!!』
ざしゅっ!! ずしゃあああっっ!!!
『滅ーーーッ!!?』『〔《ザイーーーッ!!?》〕』
【ひ…ひぎゃああああーーーーーっっっ!!】
レジェンドを鞭打つ怪電波が潰された、当然の帰結。
「悪鬼彷徨う現の闇を、祓うは月影…我、上弦なり!」
「罪に穢れしその魂…神に代わりて誅滅します!」
【ハ…ハルカあっ!】【エクシールううううっっ!!!】
『ブブっ…』〔め…滅っ…!〕[ザイッ…?]
《全・超昂戦士に告ぐ! 奴らに退路は無い!
フーマンを、滅忍を、ザインを…全コマンダーを殲滅するんだあっ!!》
……。
…………!
「…うっ……!」
「『【うおおおおおおおおおおーーーーーーーっっっ!!!】』」
戦士達を阻むもの、その全てが薙ぎ払われた。
閂市を余さず埋め尽くし、草の根一本残らず踏みにじるほどの、アルダーク侵略兵団。
だがその末路は…
【ショ~~~~~テ~~~~~ン!!!】
どごおおおおおおおおおおおおっっっっっ!!!!!
逃げ場を失い、僅か50人ばかりの超昂戦士たちに挟撃され、12中隊もの戦力が一体残らず灰燼と帰す、絶望の行軍であった。
戦闘開始から実に4日。
ダイビートの完全勝利であった。
……
…
「サファイア、トパーズ、アメイズ! 作戦成功だねっ!!」
「さやかさん…エナジーコア、確かに護り抜きました。」
「うん、みんな頑張った! じゃあ解体撤収を…」
………。
「おおおおおおおおおんっっ!?」
びくうっ!!!
がくがくがくがくがくがく…
「こ…コレっ、配線…間違えてるよ…?」
「なっ!?」
100kg超えのエナジーコアを、変身できない4人でタワー下まで運ぶには、分解して現地で組み立てるしかなかったのだが…。
「これじゃ供給エナジーが…水平方向にしか拡がらないんだけど…!」
………??
コアを囲み防衛に徹した3人は、その恩恵に浴して果敢に戦い、幾百ものフーマンを掃討した。
だが…
「じゃあ、タワー戦のルビーは…。」
「パワーアップ、ゼロってこと…?」
「い…いやいやいやっ! あいつ、あたしらよりたくさんフーマンぶっ飛ばしてたでしょ!?」
逆転劇の立役者・エナジーコアに、まさかの動作異常が判明。
「あれは…ルビーの自力だったってことか…!!」
「……うん。自前のD2エナジーで、勝っちゃったんだ…!」
「ルビー…恐ろしい子…!!」
……
…
(やりました…エスカレイヤーさん…)
…こてっ。
(あはは…もう…立てないなあ…!)
タワー最上階、展望台を穿つ大穴から差す陽光が、尻もちをつく紅き勇者を照らす。
全てを出し尽くすも、その表情に充足感は無かった。
(長官に…すごいDチャージで、すごいエナジーをもらったけど…
結局はさやかさんのエナジーコアのおかげ…なんだよね。)
近い将来、彼女は超昂変身アステライズ・フォームを身に纏い、人類滅亡の危機を救うヒーローに登り詰めることになる。
だが、今は駆け出しの超昂戦士、エスカ・ルビーは…
(はあ…やっぱり私…まだまだだなあ…。)
逆転劇を実現した自らの力を、長官が与えてくれた真の力を…今は知らない。
【超昂大戦SS 閂市総力戦! ダイビートVSアルダーク ~優しき戦士は愛する街のために 完】
第4章から3週間ものブランクを経て、最終第5章をお届けします。
ですが、この5章は実質2日で書き上げました。他の19日間は何してた、作者。
純愛も鬼畜も描いて、あとは伏線回収だけかと思いきや…意外と燃える王道エピローグにできそうだと一念発起し、6時間×2日で一気にフィニッシュでした。
それでは完結記念チラシの裏を。
①着想はとあるX(旧Twitter)の「広域戦ってつまんね?」的カキコミ。
弊ダイビートも広域戦実装(2023年5月)時点で150人ほどの大軍団、優先3チームに主力を5人ずつ配置してあとは「大量」出撃でがんがん進撃できる戦力でしたから、正直ヌルいコンテンツだったわけです。
でも、旗揚げ直後で戦力数十人のダイビートなら、圧倒的火力差をいかに頭脳で補うか…ギリギリの死闘があったのではないか、と思い、コンセプトを策定しました。
仕上げは鬼畜/純愛ルートからの友情努力勝利…超昂シリーズの美味しいところ全部ジェネリックに詰め込みました(贋作)。
②敗走して伸びた兵站をケツから叩く兵法は、かのマッカーサーの「クロマイト作戦」を参考にしました。兵力差をひっくり返す知謀を考える人って凄いですね。
③後日談的に、広域戦でイノリとライカが、アルダークを兵力差でなぎ倒すダイビートを見て「なんか…えらくヌルい出撃っスね。」「むう…もはや蹂躙。」とこぼす中、多勢に無勢の屈辱を知るルビーが苦笑いして、「…みんなが来てくれたおかげだよ。イノリちゃん、ライカちゃん、ダイビートに力を貸してくれて、ありがとう。」とつぶやくシーンを締めに考えていましたが、蛇足なのでカットしてます。
さあ、まだ道半ばの超昂SS書き、環藍河の修行は続きます。
ペースは落ちても、書きたい超昂大戦ワールドが、まだあるのです。行くぞ第3部!
…引退フラグではございませんので、気長にお待ちいただければ幸いです。
あっ、アリスソフト放送局第3回で採用の栄誉に浴しました~。
独りよがりな文面でしたが、御苑生さんと榎本さんのフォローと掛け合いで、何とか全トキサダのお耳汚しにならずに済みました~感謝。