不幸な事故で死んだオタク青年が転生してアイドルプロデューサーになるお話

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ある程度人気出たら続くかも知れない、だって息抜きだもの。


転生オタクの光源氏アイドル計画

 ある世界ではアイドルが世界を席巻する一大コンテンツであり、有名なアイドルともなれば総理大臣、大統領に並ぶ知名度と影響力を持つとさえ言われるまさにアイドル至上理論、それが同然のように存在するのだ。

 

 そんな世界に転生した者がいる、そう、私だ。

 

 私は自転車で坂道を下っていたらカーブで曲がりきれず奈落に落っこちたおっちょこちょいなオタク戦士……そのチャリの籠には推しグッズがしこたま詰め込まれていたので重心を崩したという一説もあるがそれは断じてありえない、私は推しで死んだのではない、あの日チャリに乗ったから死んだのだ。

 

 まぁ自分の死因なんて詳しく知ったところでどうにかなるものではないので置いておくとして、大事なのはその後、私は転生したのだ、死んだ次の瞬間には自分が赤ん坊になったいたので驚いたがまあ、そういうこともあるよねって冷静に対処出来たが。

 

 それよりも、だ。この世界が前世と変わらない文明レベルだったのは幸いして前世知識である程度楽している、もちろん勉強して働いてって部分も同じなのでどうせならファンタジーが良かったなんて思ったり願ったりしたが……この世界で20年も過ごせばそのへんどうでも良くなってくる。前世も足したら30後半だし。

 

 

 なーんて大人ぶっていたらある日テレビで見てしまった

 

 

『プリティーラッキー! 私たちキラメキクイーンズですっ!』

 

 

 こ、ここ、ここ、これだっーっ! 

 

 もう脳にビビっとその時脳に落雷が落ちたんだよ確かに。

 ビビっと来てしまったんだよなぁ! 

 

 在りし日においてきたオタクソウルがその時新たな力に目覚めて財布の紐を解き放ったんだ、気がつけば私は部屋をプリティーラッキーまみれにしていた、マジでプリティーラッキー!! 

 

 己の中にまだあったのかとさえ驚く程の熱いオタクソウルはそれだけでは足りない、もっと供給しろもっと推しに貢がせろもっと推させろと囁く……あぁ過去の私が帰ってくるどころか追い越した、だからより深くアイドルを知るために調べていった。

 

 そんな中で知ったのはこの世界に置けるアイドルの意義だ。

 

 この世界でアイドルがこれ程までに力を持つ、また人気である理由は……それは過去に宇宙人と戦争になりそうになった時、とあるアイドルグループがその宇宙人に歌を聴かせて、それに和んだ宇宙人が地球と和平を結んだ事から端を発するらしい

 

 マクロスかな? 

 

 それ以降アイドルという言葉が持つ意味合いが偶像と言う意味合いではなくキラキラと輝く歌とダンスの優れた人々に完全に置き換わって、それが世界に宇宙に浸透しているそうだ

 

 マクロスだわ。

 

 そんなマクロスチックな世界観ではアイドルが人気であることは平和の証でもある、そういう受け止められ方をしているので老若男女アイドルが好きだという環境が出来上がっているのだ

 

 と、ここまで調べて私は己の天命を悟った。

 

 なぜこの世界に転生したのか、何者かの意思が関わっているのか、それとも自然発生する現象なのかは置いておくとして、私が私なりに導き出した答えはこうだ

 

 前世に推し活をしまくった結果、それはアイドルに対する崇拝、巡礼、信仰となり知らぬ間に神格化された推しのお陰でこのようなアイドル世界に来られたんだと思う。やはり推し活は世界を救うんだな(大真面目)

 

 この無数にアイドルが存在する世界は私のようなオタクにとっては推し放題楽しみ放題だが、違う、そうじゃないと心の中で某鈴木さんがサングラス掛けて歌っている。

 

 オタクソウルが本当に求めているモノは、自らアイドルを育て上げることだった。そう、推し活の究極形態、アルティメット推し活は推しを作ることだったんだ! それに行き着いた私は涙が溢れ天を仰いだ。親になにやってんだと言われるまでがセット。

 

 とにかく私は己に忠実になり、アイドル、推しを作る事を始めた、だが推し、アイドルを作るとは即ちプロデューサーになるという事。今からできる話ではない……だがしかし、時代の潮流はそんなオタクに味方している! 

 

 今やネット上での活動も立派なアイドル活動として受け入れられているのでそこからアイドルロードを上り詰めることは可能! 

 

 門戸は広く、されど頂は狭し。

 

 ネットアイドルプロデューサーとして始めても問題はいくつもある、でも、私の熱意が止まらない! 加速する! うぉっ! やるしかねぇ! 

 

 そうして私は機材を買い漁りネットアイドル活動を始める下準備を整えた、音響セットや特にマイクはない所から捻り出した……あぁ給料3ヶ月分……それに、スタジオもアイドル世界とあって格安で借りられた、それでもやっぱり一般人には高いが、必要な出費だよ! これも推し活だ! 

 ま、まぁいい……私はそれなりに良い会社で働いているからな、この程度の出費で狼狽える私でない、前世ありがとう、これからも使い倒すね! 

 

 

 というわけで準備はできたわけだ

 

 準備しか出来てないんだが。

 

 肝心のアイドルいねぇもん

 

 

 一体どこでスカウトしたら良いんですか……? 

 これだから素人はダメなんだ、見切り発車でダメなんだ、私はもう駄目だ。

 

 いやだってさぁアイドルになれる素質のある子はもうスカウトされている筈だし、アイドル目指す心意気ある子の場合ソロで活動してるのはままあるパターンだ。

 

 所詮勢い任せの敗北者じゃけぇ……! 

 

 ……仕方ねぇ、やるしかないな、あの方法を……! 

 

 

 

「君良いね、ちょっとアイドル目指さない?」

 

「誰ですか? 通報しますよ、それじゃ」

 

 

 メンタルに大ダメージ! 私は戦闘不能になったっ! 

 

 ではなくて、ご近所にある人通りの多い商店街で直接スカウトしようと手当たり次第に見栄えの良い人に声をかけていった、直感で、もろちん不審者扱いされ無いように身なりをキチッとね

 

 それから毎日朝から夕方になるまでめぼしい人を見つけては声をかけて、嫌がられたり面白半分に声を掛ける人だったり私を見るなり逃げる人ばかりで一向に前に進まなかった。スカウトも苦労するね

 

 

「お兄さんちょっといいかな」

 

「はいなんで……す……」

 

「近くの交番の者だけど、お話聴かせてもらおうかな?」

 

 

 お、おまわりさんだーッ!!! 

 1時間ほどこってり諭された、要約すると『商店街で無許可スカウトすんな』だった……Oh No正論過ぎて声が出ない、くぅ~展開が早すぎる商店街でファーストメンバー接触イベントがあると思ったのに! 世の中がオタクに優しくない! そりゃそうだ

 

 

「いやーしかし、困ったな〜」

 

「困ったのはこっちだよゲン君、いきなりプロデューサーになるとか言い出してさぁ」

 

 

 商店街には私の行きつけのカフェがある、喫茶アルペジオ、純喫茶風のモダンな店内が人気のお店だ。客は私しかいないのが玉に瑕。ここエブリデイで客が居ないんだよねぇ、だから来るんだけど。

 そして経営者にして唯一の店員、マスターの尾原さん、なんと二代目らしい。ヒゲがダンディーなナイスミドル、御年55歳。そんでもって気の合う私の友達さ、趣味はボルダリングらしい、スゲーッぜ! 

 今日もいつものカウンター席に座って尾原さんとあることないこと話してるんだが、今日の話題は私のスカウト話になっていた。まぁ、商店街に怪しいやつがいる! ってすぐ噂広まったからな、さもありなん

 因みにゲンってのは私のことだ、伊綱 玄人(いずな げんと)で、ゲン。よろしく

 

 

「だってよ〜尾原さん、やりたいって思ったら、今がその時だ! って気持ちにならない?」

 

「まぁ少しは分かるが、だからといって性急だったんじゃないかな? 俺も何度かそういう衝動があったがもう少し踏みとどまったさ」

 

「嘘だ〜アルペジオ継ぐ時即決だったって言ったくせに〜」

 

「それとこれとは別、そう思ってくれよ?」

 

 

 尾原さんは話しやすい、私も尾原さんも知り合って何年も経つから気兼ねなく話せる。あとコーヒーは美味い、自販機で買ったほうがね

 

 

「なぁいつになったらコーヒー美味くなるの?」

 

「うっ! も、もうすぐだよ? もうすぐ良いミルと豆が届く、それに淹れ方もプロに習ってきたし……」

 

「目が泳いでるぜ旦那ぁ、こりゃ今度も期待できませんぜぇ〜?」

 

「ふふふ、それはどうかな」

 

「そのセリフ5回は聞いたよ」

 

「ぐぅっ……!」

 

 

 尾原さんがいれるコーヒーは単純に苦いだけの黒い液体なら良いのに渋いし焦げ臭いし何よりお酢かと思うくらいに酸味が強すぎる、良い豆使ってもそうなる、なんでやねん

 それを指摘するたびに今度は大丈夫と言い続けて5回目、進化してるよ確かに、マイナス方向にさ。もうやり方変えたらって思うが私もプロではないのでそこまで口にはしない、いつか美味くなると思ってダメ出しするだけだ

 

 

「俺の失敗はもう見なかったことにしてくれ、それよりもゲン君聞いたよ〜? 昨日補導されたって」

 

「補導じゃなくて警告だったんじゃねぇかなぁ……あれ」

 

「結構キツく言われたのか?」

 

「まぁねぇ、やっぱりまともな事務所にプロデューサー志望で入ったほうがいいのかなぁ……」

 

「それはそうだよ、その為の事務所なんだから」

 

「でもそれじゃべらぼう遅いんでぃ!」

 

「おっといきなりのべらんめぇ口調」

 

 

 遅い! 今からアイドルの事務所に入るのは遅すぎる! 二十歳が何を言ってるんだと思われるかもしれないがそうじゃない! この世界は若ければ若いほど伸びしろがある! そして大成していったアイドル達は皆若いうちに何かしら話題になっている! 当たり前だな! それはプロデューサーも同じこと! 若さ=アドバンテージなのだァァァっ! 

 

 

「それにさ、近い世代じゃないと息が合わないの、息合わないと辛いよ」

 

「お、そうだな。俺とゲン君はそうじゃないだろ」

 

「例外ってのは存在するってばよ」

 

「例外か〜、そうか……おじさんまだいけると思っていました」

 

「ダメです」

 

「ぐふっ!?」

 

 

 尾原さんノリが良すぎる、感性が若いのは良いんだが仕草と考え方おっさんなんだよなー、よってもうダメです、若い子人気なんて気にするな、露骨さがあると避けられるぞ。

 

 ではなくて。

 

 

「それはゲン君もだろ、スカウト露骨だったろうね」

 

「うおーっ!?」

 

 

 刺されたぁ! 心の臓に深々と突き刺さったぁ! 

 そうだよなー露骨だと逃げられるよなーでもどうやってスカウトの露骨さを消すんだよアイドルになりませんか? って言わないでスカウトするのはもう犯罪一歩手前ではないか? 詐術の話になってこないか? 

 

 

「あの……お兄さんアイドル探してます?」

 

「あれ? 南瀬ちゃん今日はシフトないのに……どうした?」

 

 

 お兄さんって私のことだ……! 

 背後から聞こえた声に応えるためにカウンター席特有の回転椅子を回転させながら振り向くと、そこにいたのは

 

 

「おっ可愛い」

 

「えぇっ!!」

 

「初手カワイイはおじさんハードル高いかな~……ってうちのコを口説くんじゃない!」

 

 

 桜色の爽やかな色合いの髪を短く切りそろえ、服装は白いフリル付きワンピース、その上から薄い上着も着ちゃったりして全体的に可愛いと思わせるまとめ方をしている……しかしうむ……出る所は出るが、服装でそれを隠れてしまっているのが勿体無いと思う男心

 

 

「あ、あの……はじめまして」

 

「はじめまして……えと、どちら様?」

 

「その子は俺の知り合いの娘だよ、南瀬 美南(みなせ みな)ちゃんさ、最近ここでバイトしてくれる子だよ」

 

 

 へぇ……こんな所にか……

 

 

「今こんな所とか思ったか?」

 

「思った」

 

「ゲン君の正直な所嫌いじゃないぜ、特別苦いコーヒーサービスしてやろうな」

 

「やめろぉ!」

 

 

 なんてことするんだ普段から不味いのにさらによりをかけるな! お前はコーヒーをどうしたいんだ!? 黒魔術の道具にでもしたいのか!? 

 

 

「えーと、あのー」

 

「あ、ごめんね、南瀬さんそっちのけで話ししちゃってさ、で、アイドル興味ある?」

 

「はい……そうなんです」

 

 

 うっひょー良い子だ……! うーんアイドルの素質ある! なくても作る! この子はやれる子だ! ハイ決定! アイドルにしまーす! 採用採用! 

 

 

「採用!」

 

「え、良いんですか? その、審査とか……?」

 

「いらないよ? だって昨日の今日で始めたようなもんだし、ネットアイドル想定だしね」

 

「それでも何か見たりしません?!」

 

 

 おっこれは尾原さんの血を継ぐものだ、突っ込むタイミングが似ている……影響されたな、こんな純朴な乙女をよくも染めてくれてありがとう! お礼は無いが。

 

 

「イマドキ個人プロデューサーって珍しくないし、南瀬さんならすぐにファンが付くよ、本当にそう思う」

 

「そうですか……? へへ……、前から憧れてたんですよ……、アイドル」

 

 そう言って肩から下げていた小さなカバンで顔を隠した、恥ずかしさで少し顔が赤くなっていたように見える、でも笑っていた

 

 あーとことん可愛いな……これが普通の仕草ってマジ? 推せる! 

 

 推して参る! 

 

 

「あの、いつから活動しますか? 私はいつでも良いですよ! あ、でも平日は学校があって、それ以外の土日が休みなので活動はその日ってことになりますけど……?」

 

「良いよ良いよ、まだ仕事も何も無いし、レッスンだってするわけじゃないし……よし来週の朝、ここに集合って事でいいかな? アイドルとしてやってほしいこと纏めとくよ」

 

「は、はい! えと……あのお名前は?」

 

「あ、名乗ってなかった。玄人、伊綱玄人だ、ゲンって呼んでね」

 

「いきなりフランクな呼び方は無理ですよ〜……あの、個人プロデューサーなんですよね? ならプロデューサーさんって呼んでも良いですか?」

 

「ダメです」

 

「ええっ!」

 

 

 所属アイドルにプロデューサーって呼ばせたらそれはもうアイドルをマスターしちゃう方のプロデューサーなのでダメです、私は己の為にアイドルを推す者……フィクサー、そう呼ぶと良いのだ

 

 

「フィクサー、ですか……なんだか悪そうな言い方ですね」

 

「フィクサーってなんだよ……ゲン君それって洋画に影響された?」

 

「フィクサーで良いんだよフィクサーで、プロデューサーって呼ばれるよりしっくりくるからさ」

 

「「えぇ……」」

 

 

 なにはともあれドン引かれ、それでも私はフィクサーなのです。

 そう言うことですのでこれからはフィクサー・ゲンと呼び給え。

 

 

 それはそれとして、色々始まる予感がする。

 

 アイドル活動、始まるんだなって。

 

 私の究極の推し活が始まるんだなって。

 

 

 


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