ウルトラマンNewGenerationHero'sSaga 作:ichika
光の国、ウルトラコロセウム
「八幡!沙希ちゃん!!」
ボロボロになりながらも帰還したギンガとビクトリー達を、一足先に帰還していたXが駆け寄って出迎える。
既に回復はある程度終えた後なのか、その足取りに疲労は見られなかった。
自分達だけが出撃した訳ではないと知っていたが、それでもここまで傷ついているとは思いもしなかったのだろう、驚愕だけが浮かんでいた。
「彩加!無事だったか!」
「良かった……!!」
彼の姿を認め、ギンガとビクトリーもまた駆け寄り、互いの無事を喜び合う。
「こっちのセリフだよ!一体何が……!?」
自分達の置かれている状況が把握しきれていないが故に、互いに何があったかと混乱のさなかにあるようだった。
無理もない、それぞれの受け持ちが死線を超える程の脅威、如何に助力があったとて、死にかけるほどの激戦であった事に変わりは無いのだ。
「話は聞いている、ギンガとビクトリー達も、相当に危険な戦場だったんだな。」
3人を諫める様に、リブットが苦笑しながらも間に入った。
まさか彼等が邪神を討伐に向かったとは思わなかったが、こちらも大魔王獣を討滅してきたのだから、お互いに相当疲弊している事だけは確かだった。
「リブットさん、一体何が……?」
「それは、これからタロウ教官殿から語ってもらおうじゃないか、君達はネオスとセブン21と一緒に体力を回復させる事を優先してくれ。」
何があったか尋ねようと動くギンガに、リブットは焦る必要はないと制止する。
今は戦いの傷と疲れを癒す事が優先であると、そう物語っていた。
「分かりました、ほら八幡!あんたは石にされてたんだから、念のため診てもらうよ。」
「引っ張るなよ沙希……!なんともないって!!」
邪神に一度石化させられたギンガをそのままには出来んと、ビクトリーはネオスとセブン21が歩いて行った先に向かう。
どうやらクリニックに準ずる設備があるのだろう事が察せられた故に、少々乱暴でも連れて行くと言ったところだろう。
「X、君も少し休むと良い、何、時間はあるんだ。」
彼らを見送ったパワードが、Xに休む様に告げる。
若い彼等にここまでの戦場は酷ではないかと、老婆心とも取れる心配をしているのだろう。
「分かりました、2人を見てきます!」
「私もクリニックへ、Xの案内をします。」
Xとリブットはパワードたちに一礼してギンガ達の後を追う。
友を案ずるその心は、何年経とうとも、種族を超えても変わる事など無かったのだ。
その背が見えなくなったところで、その場に残っていたグレートとパワードの表情が緊張に強張った。
それは先刻、惑星ミカリトでの様子と、何ら変わることは無かった。
「……、彼等は行ったぞ、いい加減出てきたらどうだ?」
何もない筈の虚空へ、グレートは声を掛ける。
パワードも、緊張と同時に苦笑を浮かべている辺り、そこにいる何かに対して敵対の意志はないようだった。
「流石に、あんた達の事は誤魔化せないか、結構気張ってるんだけどなァ。」
苦笑するように声が響く。
刹那、グレートとパワードの見詰める先で空間が揺らめき、黒いローブを身に纏うウルトラマンがその姿を現した。
その姿、ウルトラマンマックス、またの名を神谷宗吾。
ASTRAY序列四位して、参謀を務める男のモノだった。
「久しぶりだな、大魔王獣の討伐ご苦労様、相変わらず良い腕をしているよ。」
「世辞は良い、一番の功労者はお前達の弟子だ、宗吾。」
不敵な笑みを浮かべるマックスに、パワードは肩を竦めながらも、彼の弟子を称賛する。
現に、逆転の切り札はASTRAYが育てた弟子達であり、二つの戦場でそれこそ鬼神の如き戦ぶりをみせつけたのだから。
「流石は我らが弟子ってところだな、本当に無事で何よりだよ。」
彼の言葉に、マックスは誇らしいような、それでいて安心したと言わんばかりの表情を見せる。
流石に、今回の件は予想すらしていなかった様だ、安堵の色が強く滲み出ていた。
「流石に、マガタノオロチとガタノゾーアはお前達すら予想していなかったか。」
その言葉に、グレートはASTRAYの予想や情報収集能力をも上回った事象、いや、敵の思惑に舌を巻く以外になかった。
全宇宙どころか、並行世界への情報網さえも持っているASTRAYを出し抜くなど、相当に厄介な相手がいると察する事が出来た。
「あぁ、だからこれは予想外、予想外だからこそ収穫は二つあった。」
「二つ、か。」
指を二つ立てるマックスに、グレートは苦笑と共に、やはりかという様に険しい表情を見せた。
実際に彼等にも分かっているのだ、一つはともかく、もう一つは由々しき事態である、と。
「一つは金色の戦士の事だな、俺も以前遭遇した事はあるが、お前たちの様に何処からか転移してきた様子を見たことが無かったからな、良い収穫だよ。」
「転移、まさか、ゼロのウルティメイトイージスと同じ力がある、と?」
「そこまでは分からん、未だに尻尾すら掴めてないんだ、究明は奴らが手の内見せるまでお預けって事だ。」
マックスの言葉に、パワードは多重世界間移動能力を持つゼロの能力、ウルティメイトイージスの力を譬えに出す。
彼の想像が合致しているのならば、別の宇宙からの侵略とも考えられる。
しかしだ、それが事実であったとして、観測しきれない宇宙の何処かからの攻撃であったとしても、ASTRAYの持つ伝手を使えば、糸の様に細い縁であったとしても手繰れる可能性がある。
その事を踏まえた上で、マックスもまだ正体不明詳細不明であると断言せねばならないのは、それだけ情報がないという事の裏返しであった。
しかし、別の宇宙、いや、ともすれば異次元からの侵略であり、それが分かっただけでも対応の根本から変わってくる話だ、有意義である事に変わりは無いだろう。
そして、もう一つは……。
「それで、もう一つは?」
何か重大な事なのかと、パワードは固唾を飲みながらも尋ねる。
これ以上悪いことがあってたまるかと、そう言いたげな様子だった。
「もう一つは……。」
深刻な顔を見せるマックスの表情に、グレートもまた表情を硬くする。
張り詰めた空気が辺りを支配して……。
「我らが弟子達の力が、想定より何倍も強くなっていた事だな、嬉しい誤算だよ。」
そんなものなど無かったと言わんばかりに、マックスが破顔する。
そう、もう一つの収穫とは、自分達の弟子の想像以上の成長だった。
自分達を超えようとする戦士の成長、それは新たに運命を抉じ開ける力が育っている上に、想定よりも早くそれを予定に組み込めるという、望外の喜びであるに違いなかった。
肩透かしを喰らった形となった2人だが、その笑みを見て安堵の笑みを零す。
一時は笑みさえ見せずに敵の殲滅を行っていたマックスが、いいや、ひいてはASTRAY達が昔の様に笑って他人を、弟子を誇らしげに語っている。
それは、彼等が本当の意味で心救われたと言う証左なのだと、グレートとパワードも顔を見合わせて喜ぶ以外なかった。
「スフィアが憑りついたガタノゾーアを八幡君と沙希ちゃんが、マガタノオロチを彩加君がそれぞれ倒した、師匠として、これ以上に嬉しい驚きはないさ、良い土産話になる。」
今までにない程に晴れやかな笑みを浮かべながらも、マックスは再びフードを目深にかぶり直す。
用事は終わったと、たとえ旧友との再会であっても、このような場所に長居したくなどないという彼等の在り方なのだろう。
「もう行くのか?」
「あぁ、彼等に会うのはもっと先だ、お前達に情報を渡すついでに様子見してただけさ。」
グレートの言葉に、マックスはもう用事は済んだと言わんばかりに背を向ける。
だがそこで、何かを思い返したかのように足を止め、彼は掌に小さな光を生成、振り返りざまにグレートへそれを投げ渡した。
「それを彼等に、必要な場所へ導く鍵になるだろう。」
「試練を与えるつもりか?」
それが何を意図しているか察したか、グレートは表情を硬くして尋ねる。
ここから先、彼等に何をさせるつもりかと警戒しているのだろう。
「必要な場所に辿り着くためのお守り程度さ、それ以上でもそれ以下でもない、ま、頼んだぜ。」
話しは終わりと言わんばかりに、マックスの姿は蜃気楼の様に掻き消えた。
後に残されたのは、グレートとパワードの間に残る重苦しい沈黙が横たわるばかりであった。
しかし、それでも渡さないという選択肢が無いのは、一重に彼等がASTRAYを信頼しているからだ。
互いに目を合わせながらも、苦笑する以外になかった。
どうしても、彼等の先を見たいと思ってしまっている自分達に、愉快さと呆れを含んで……。
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「さて、この度の騒動に関しての情報だが、今一度確認しておこう。」
それから数刻の後、コロセウムに設けられた一区画に、邪神及び大魔王獣討滅に当たった者達が集められ、事情聴取を受けていた。
取り仕切るのはウルトラマンタロウであり、その表情は硬く、緊張を隠し切れないでいた。
彼の後ろに投影される映像には、ガタノゾーアとマガタノオロチ、そして、X達が目撃した金色の戦士達の姿が在った。
「ガタノゾーアとマガタノオロチは、嘗てASTRAYの関わる事件で目撃され、それぞれ撃破された存在、それがなぜ再び姿を現したか、未だに謎が多いままだ。」
「あぁ、マガタノオロチは卵さえあれば用意は出来るが、問題はガタノゾーアだ、スフィアを使ったとはいえ、なんであんなモンを用意するのかね?」
タロウの言葉に、ネオスは同意を示しながらも、何故このような事件が起きたかに疑問を示した。
彼の言葉通り、宇宙規模の災いが同時に発生したのか、その理由が分からない。
自然発生とするには、あまりにも不自然で、あまりにも都合が良過ぎるのだ。
「自然発生とするには、あまりにも不自然過ぎる、そして、人為的だと思わせる目撃例もある。」
その言葉にタロウが頷き、自然発生ではないと裏付ける。
金色の戦士達の映像を拡大し、彼等の行動を記録した映像を再生する。
「惑星ミカリトでグレート達が目撃した金色の戦士、彼等はマガタノオロチを護っていたスラン星人と怪獣達を利用し、食わせる事で進化させた。」
「先生達が言ってたのはこいつ等か……?」
戦士達に見覚えがあったか、ギンガは何処か納得したように呟く。
地球を発つ直前に見せられた映像に映っていた戦士達の姿は、惑星ミカリトで目撃されたそれと同一であると理解できた。
「君達も知っての通り、同一星系の異星人と思われる戦士達はASTRAYと接触している、交戦状態に入った事も確認済みだ。」
その情報は既にタロウ達にも共有されていたのだろう、深く頷きながらも話を続ける。
「所在を明かしていない彼等へも攻撃を仕掛けているとなると、これは宇宙規模での波乱を呼び込む可能性がある、これを看過することは出来ない。」
宇宙規模での事件がこれからも引き起こされる恐れがあるというのならば、警戒態勢を取り、戦力を整える事が要される。
「我々宇宙警備隊は、謎の異星人に対抗するために戦力増強を図りたい、ネオスとセブン21は勇士司令部を束ね、グレートとパワードは後進の育成を行ってほしい。」
「了解した。」
タロウからの依頼に、セブン21を筆頭とした古強者が頷く。
今の状況で一枚岩に纏まらねばロクなことが起きないと分かっているからか、色々と呑み込んだと言わんばかりの表情でもあった。
「リブットはギャラクシーレスキューフォースに出向し、全宇宙からの情報を集めてほしい。」
「ギャラクシーレスキューフォース……!あの全宇宙から精鋭が集まるという組織……!!」
自身に下された辞令に、リブットは驚きの声を上げる。
ギャラクシーレスキューフォース、宇宙規模の災害や人命救助のための和平交渉や武力行使を行う特殊組織の総称である。
宇宙警備隊からも、戦術指南や合同演習のために出向する事がある、同盟関係にあると読んでも差し障りない組織でもあった。
そこに出向させるということは、光の国の思惑を離れ、自由に動ける様にすると言う考えの下だった。
「そこでお前のレスキュースピリッツを燃やしてくると良い、さて、次は八幡、君達に依頼したい任務がある」
「「「はい!」」」
リブットへの指示を出し終えた彼は、ギンガ達に向き直る。
その手には何処から取り出したか、いつぞや見た、ASTRAYが使っていた端末が握られていた。
ギンガ達は知る由もないが、そこには宗吾が置いていった光の加護が宿っているのだが、それを口外するほど野暮ではなかった。
それを、タロウはギンガ達3人へ手渡す。
まるで、それはお前達のモノであると、そう言わんばかりに。
「ASTRAYから預かっていた、次の場所へとお前達を導く鍵となるだろう。」
「次の場所……、それって……?」
タロウの言葉に、Xはその場所へと想いを馳せる。
ここではない何処か、そこで待ち受ける誰か。
一体何があるのか、期待と不安が入り混じる表情をしていた。
「案ずる事は無い、我々の下に来たように、お前達が行く先には必ず出会いがある。」
彼等に、タロウは優しい笑みを浮かべて諭す。
必ず善き出会いが、良き経験が待っていると。
そこで学び、彼等に追い付くのだと。
その為に行くのだと。
「行くがいい、ウルトラマンギンガ、ビクトリー、X!!」
遥か彼方を指さし、彼等にその道を行く様に指し示す。
光の国中央に聳える光り輝く塔、プラズマスパークタワーの輝きの向こう、遥かその先へ……。
「あぁ、行こう、俺達で!」
「「勿論!」」
皆まで言うなと、ギンガ達3人は強く頷き、互いに右の拳を突き合わせる。
何も恐れる事など無い、きっと誰かが待っている、そんな声がするのだから。
「短い間でしたが、お世話になりました!」
「あぁ、行ってこい、お前達の進化、楽しみにしている。」
3人揃って頭を下げ、世話になった者達へと礼を示す。
それを受けて、タロウ達も深く頷き、彼等を見送る。
僅かな間ながらも、戦場を共にした仲である事に変わりはない。
そこには確かな絆があった。
その絆を胸に、3人は飛び立っていく。
何処かの空へ、その先に待つ、新たな出会いを、絆を求めて……。
次回予告
光と闇の抗争が燻る宇宙の何処かで、彼らもまた、動き出そうとしていた
次回ウルトラマンNewGenerationHero'sSaga
裏話 弟子想う師
お楽しみに