ウルトラマンNewGenerationHero'sSaga 作:ichika
新章開幕です
蒼穹の風来坊
???
「う、うぅ……。」
意識が混濁する。
何があったか、何がどうなっているのか……。
何も分からない。
自分の身体の感覚が、境目が何処にあるかすら曖昧で……。
ともすれば、次の瞬間には自分という存在が消えてしまうかも知れないと言う錯覚すら覚える程に……。
「――――――」
何か言葉を口にしようにも、唇が動かない。
力が抜けていく様な感覚だった。
これはまずい、自分の存在を証明する事が出来ていない。
このままでは意識が霧散し、存在自体が消滅してしまう恐れがある。
―――簡単にくたばってたまるか―――
故に、自身の全身の輪郭をイメージする。
指の先から足の先、爪先から頭頂部に至るまで隅々、光のエネルギーを巡らせ、滾らせる。
そうだ、自分は、俺はここにいるんだと。
「く……!うぅ……!!」
そこで、彼の意識は形を取り戻した。
目を開き、辺りを見渡し状況を把握せんとする。
自分は確か、ワームホールに飲み込まれ、妻と友人と分断されてしまった。
飲み込まれてからの記憶が曖昧だ。
今、彼の目の前、数光年先に銀河の瞬きがあり、恒星から僅かに届く光のエネルギーが、漆黒の宇宙に漂っていた彼を照らしていた。
いいや、それだけでは無い。
「誰だ……?」
何かが肌を撫ぜる様な感覚に、彼は顔を顰めるばかりだった。
何も無い筈の空間を、その先に煌めく光を睨む。
何かが、誰かが自分を呼んでいる様な感覚。
微かに感じる懐かしい気配……。
この気配は……。
「先生……?」
その相手を思い浮かべ、彼はその方向へと飛んだ。
呼び声の先に、誰かが待っているのだと、そう信じて……。
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街は、普段からそうであるかのように平和だった。
どこにでもある様な中核都市。
そこには幾万の人々が暮らし、穏やかな生活を送っていた。
街の名は、青雲町。
太陽系第3惑星地球、日本の都市の1つであった。
その日、空はどこまでも澄んだ青空が広がり、初夏の訪れを感じさせる陽気に照らされていた。
その街の外れ、公園や住宅街が広がる場所に、音楽が響く。
風の様に涼やかで、大地の様に雄々しく、篝火の様に暖かく、水の様に流麗な、ハーモニカに近い音色は、街の青空に溶けていく。
その音が流れてくる方向に、長い銀髪をストレートに下ろした女がいた。
カウガールの様な服装に、首元に赤いスカーフを巻いた彼女は、瞳を閉じてハーモニカの様な楽器を奏でている。
風に靡く銀の髪が、青空を背景に流れて、その光景は傍から見れば絵画のワンシーンの様な美しさを醸し出していた。
「ん……?」
その最中、何かを感じ取ったか、彼女は演奏を止め、空を見やる。
何も変わらない、ただ何処までも青く澄んだ、不気味なまでに青い空が広がるのみだった。
気の所為として片付けようにも、何か不快感が纏わりついて離れないのだ。
「何か、一荒れ来そうね……。」
溜息を1つ吐き、彼女はハーモニカをジャケットの内ポケットに片づけ、移動を始める。
ここではあまり場所が良くないと言わんばかりに、彼女は歩みを進める。
公園から出た彼女は、近くの雑居ビルが建ち並ぶ区画へと足を向ける。
露店やテナントに立ち寄る人々の合間を縫って、彼女は歩いていく。
喧騒が途絶え、不意に静寂が訪れる。
それは、嫌に不気味な雰囲気と共に訪れ、纏わりつく様にして場の空気を震わせていた。
弾かれる様に空を見やると、先程までの蒼天が嘘のように翳り、暗雲立ち込める様相となっていた。
それと同時に、イヤな風が纏わりつく様に吹き始める。
「これは……、嫌な予感が当たったって事かしら。」
その感覚に顔を顰めながらも、彼女は空の一点を睨みつける。
暗雲が渦を作り、風も勢いを増し、嵐の如き激しい突風となっていく。
刹那、一際大きい渦雲より白き翼を持った何かが飛び出し、上空を凄まじい勢いで飛翔する。
その速度が音速を超えていたからか、辺りはソニックブームに襲われる。
曇天を突き抜け現れるは、猛禽類を思わせる白い翼を持った怪獣、グエバッサー。
羽撃きの一往復のみで突風が巻き起こり、大小様々な粉塵が舞い散る。
巨大な台風と錯覚してしまうほどの強烈な風は、常人では立っていることすら出来ないだろう事は明白だった。
だが、その突風を受けて尚、彼女は立っていた。
風に靡く髪がその凄まじさを感じさせるが、彼女にはなんの関係もない事だった。
「空の敵、相手に不足はないわ!」
懐より赤と銀の混じるリングを取り出し、彼女は構える。
その刹那、リングから強烈な光が溢れ出しのミソラを包み込む。
「ティガさん!!」
その光の中で、彼女は腰のホルスターの様な容れ物からカードを2枚引き抜き、1枚ずつ読み込ませていく。
1枚目はウルトラマンティガ、マルチタイプのカード。
「ダイナさん!!」
2枚目はウルトラマンダイナ、フラッシュタイプのカード。
その2枚が読み込まれ、彼女の両サイドにティガとダイナの幻影が姿を現す。
「覇道の光、お願いします!!」
『フュージョンアップ!!』
リングを掲げ、取っ手の脇にあるスイッチを押し込む。
その瞬間、彼女と同じ動きを取ったティガとダイナの幻影が輝きを放つ。
刹那、彼女の身体も光に包まれ、ウルトラマンとしての姿を取る。
その上から、ティガとダイナの力が重なり、新たな力を齎すのだ。
『ウルトラマンオーブ!ゼペリオンソルジェント!!』
光が晴れた時に、そこに現れたのは光の巨人。
ティガとダイナが意匠を持つ、О字のカラータイマーが特徴的なウルトラマン。
その名は……。
「アタシは銀河の風来坊、オーブ!!もっと高く、光の輝きとともに!!」
名乗り口上と共に構えを取り、上空に対空するグエバッサーを睨みつける。
今から引き摺り下ろしてやると、そう言わんばかりに。
「シュワッ!!」
飛び上がり、一気に上空へ飛翔、音速を超えた速度でグエバッサーに迫る。
その接近を許すまいと、グエバッサーは翼をはためかせる事でソニックブームを発生させる。
それは衝撃波となってオーブに迫るが、彼女はグエバッサーへの最短コースを保ちながらも最低限の体捌きで回避する。
一気に迫る事で逃げ場を無くすつもりか、オーブは速度を上げてグエバッサーに肉薄、地上に叩き落とそうと取っ組み合う。
浮力を生み出していた翼を掴まれた事で、グエバッサーの身体が徐々に地上に向けて落下を始める。
だがみすみすヤラれてやるかと藻掻き、クチバシによる攻撃でオーブの顔面を狙う。
直撃は不味いと片手で受け止めるが、片側の翼がフリーになった事で再び飛翔を開始、その力強い羽撃きに、オーブは僅かに弾かれてしまう。
その隙に、グエバッサーは距離を取るべく飛び、オーブも追う形で飛翔する。
速度は僅かにオーブが速い様だ。
すぐさま追いつき、蹴りや殴打を叩き込む。
しかし、クリーンヒットらしき物は無く、グエバッサーは鬱陶しいと言わんばかりに、翼がによる打撃やクチバシの突きを繰り出し、攻撃を仕掛ける。
オーブもそれを食らうものかと防御の体勢を取り、ダメージを最小に抑えながらも距離を取る。
ドッグファイトと言えば聞こえは、良いがジリ貧である事は確かだ。
故に、彼女は1つ手札を切る。
胸の前で腕をたたみ、右腕にエネルギーを集中させる。
直後、振りかぶった右手に丸ノコの様な形状のエネルギー刃を形成、それを連続して打ち出した。
それは、グエバッサーの軌道を囲う様にして追尾しながらも飛び、一気に迫っていく。
エネルギー刃、マルチフラッシュサイクラーの2つが、グエバッサーの右翼に直撃し、その翼を切り裂いた。
飛ぶ力を奪われたグエバッサーは、苦悶の叫びを上げながらも失速し、地に堕ちていく。
それを追い、オーブも一気に地表に向けて急降下、グエバッサーに追いつき、首を掴みながらも更に勢いを付けて地表へと突き進む。
そしてそのまま、グエバッサーの頭を地表に叩きつけ、大ダメージを与える。
辺りは強烈な震動に見舞われるも、オーブは颯爽と地に降り立ち、構えを取る。
グエバッサーは大ダメージのせいか、それでもフラフラと立ち上がる。
しかし、ヤラれてばかりではないと、グエバッサーは怒りの咆哮をあげながらもオーブへ向かっていく。
オーブもそれに対し、迎え撃つ構えを取る。
クチバシによる攻撃を躱しながらも膝蹴りを胴に叩き込む。
怯んだ隙をみて、一気に拳打を叩き込み、グエバッサーの体力をどんどん奪っていく。
距離を取り、ケリを着けるために必殺技を叩き込まんと構えを取る。
両腕を腰だめにし、胸の前でクロス、右腕を斜め上へ、左腕を斜め下へ広げながらもエネルギーをチャージ、それが最大まで高まった刹那、腕をL字型に組む。
「ゼペリジェント光線ッ!!」
刹那、凄まじい光が迸り、グエバッサーに直撃する。
それはグエバッサーの皮膚を削り、内部を侵し破壊する。
数瞬の後、グエバッサーは光線の威力に耐えることが出来ずに倒れ込み爆発四散する。
爆炎が晴れた時、天候を狂わせていたグエバッサーが消えたからか、雲が晴れ、陽の光と晴天が顔を覗かせる。
それは、彼女の勝利を告げる福音であったに違いない。
「コレで一件落着、って感じね。」
溜息を1つ吐き、変身を解こうとした、その時だった。
『あぁご苦労さんなこってな。』
「なに……ッ!?」
彼女の目の前に、金色のワームホールが突如として開く。
その中より、金色の鎧を纏う戦士、アブソリューティアンの兵士が姿を現した。
「お前達、何者だっ……!?」
『ハッ!言った所で無駄だろうさ!お前はコイツに喰われて終わるのさ!』
オーブの問いかけに、兵士は鼻で笑い飛ばしてワームホールの奥から何かを呼び出す。
それは、けたたましい咆哮をあげながらもその姿を現していく。
体長は60mほどの、牡鹿の様な角が特徴的な怪獣が、大地を揺らしながらも歩み出る。
怪獣の名はデスドラゴ、その特徴的な角から放つ電撃が厄介な存在だ。
『さらばだ、ウルトラマンオーブ!』
「くっ……!待て……っ!」
金色の兵士は閉じゆくワームホールの中へ消えていく。
追い縋ろうと動くが、既に1戦交えた後のオーブに残された体力は少なかった。
現に今、カラータイマーが点滅を始め、融合しているティガとダイナの幻影が藻掻く様に身体から離れようとしていた。
それは端的に、残された猶予が少ないことを何よりもわかり易く示していた。
だが、目の前に脅威が存在している以上、撤退する訳にはいかない。
故に、彼女は構えを取ってデスドラゴの進撃を食い止める。
力はそこまで強くは無いのだが、デスドラゴの猛りは凄まじく、角から電撃を放ち、オーブに襲いかかる。
雷撃を回避しながらも接近を試みるが、その激しさ故に接近しきれずにいた。
「くっ……!厄介な……!!」
何とか組み付こうとするも、デスドラゴも自己防衛のために抵抗する事を止めない。
デスドラゴはタックルのように頭突きを食らわせ、怯んだオーブに尻尾による振り払いを叩き付ける。
「うわっ……!?」
何とかガードするものの、勢いを殺しきれずに後退してしまう。
それが、大きな隙となってしまった。
『――――――!!』
デスドラゴは咆哮を上げ、今まで以上に強力な雷撃を放ち、オーブに浴びせかけた。
バリアを展開する事さえ間に合わない、雷撃はオーブの胸部に直撃、その身体を侵し、ダメージを与えていく。
「あぁぁ……ッ!!」
ダメージに呻き、オーブは盛大に吹っ飛ばされ、近くの雑居ビルを押し潰しながらも倒れ込んだ。
「ぐ、この……ッ!!」
立ち上がろうにも、身体から力が抜けていく感覚に、思う様に力が入らない。
そんな彼女にトドメを刺さんとするデスドラゴは一歩、また一歩と倒れ込んだオーブに向かってくる。
あと一歩踏み込めば、その爪がオーブを切り裂ける位置だ。
既に逃げる事も防ぐ事も出来ない距離にまで入られたと、オーブは何とか対処しようとするも、それも遅かった。
オーブはダメージで動く事が出来ず、トドメを刺そうと爪を振りかぶって―――――――
「うォォォッ!ギンガセイバーッ!!」
刹那、上空より何かが急降下し、オーブとデスドラゴの間に割り込みながらも、右腕に発生させた光の剣でデスドラゴの腹を斬りつけ後退させる。
「う……!?あ、あんたは……!?」
ダメージに呻きながらも、目の前に降り立った光に、その中から現れた巨人の背に声を掛ける。
一体何者だと、何故助けたと、疑問が頭を占めていた。
「久々の地球なのに、また怪獣か!」
その光の巨人は、背後のオーブを庇いながらもデスドラゴと相対する。
赤い身体に、蒼い光を放つクリスタルが身体の各所で輝いている。
そのウルトラマンは――――――
「ここからは、俺が相手だ!!」
未来を掴むべく走り続けるウルトラマン。
比企谷八幡が変身する光の巨人、ウルトラマンギンガだった。
次回予告
オーブの窮地を救ったギンガは、訪れた地球で思いもしない再会を果たす。
それは、彼のこれまでとこれからを交錯させる序章そのものだった
次回ウルトラマンNewGenerationHero'sSaga
再臨編 巡り合い
お楽しみに