ウルトラマンNewGenerationHero'sSaga   作:ichika

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新たなる戦い

 

そこは、かつて光と闇の大いなる争いに巻き込まれ、光と出会った者達が暮らす地球……。

 

あの戦いから幾年月が流れたことだろう、その星は、彼等が住む世界は平和そのものであった。

 

「ん~!今日も良い天気だなぁ。」

 

初夏の風と太陽を感じながら、ぐーっと背伸びする1人の男の姿があった。

背は170後半あるいは180、身体はしっかりと鍛えられている事が窺えるが、スマートとも形容出来る出で立ち。

特徴的なアホ毛を持つ黒髪に少しタレ目気味ながらも整った目鼻立ちを持つ顔に笑顔を浮かべている。

齢は30手前と考えられるが、外見以上にとても若々しい印象を受ける。

 

彼の名は比企谷八幡、光を手にし、今は人間として故郷の地にて生きる者だ。

 

「仕込みは上々、掃除もOK!言うことなしだなぁ。」

 

掃き掃除をしていたのだろう、掃除用具を片付けて、彼は自分が出てきたであろう建物の中に足を踏み入れる。

カランコロンと、ドアに取り付けられていた鐘が小気味良い音を立てて彼を出迎える。

 

そこは、彼が受け継いだ思い出の場所にして、彼とその愛する者達が今も守る大切な場所だったのだ。

 

「お帰り、掃除終わった?」

 

キッチンの奥から、青みかかった黒髪の女性が顔を覗かせて尋ねてくる。

齢は彼と同じく、だが実年齢よりも若々しく見える容姿からは、穏やかながらも強い芯を持った気概が窺える。

 

彼女の名は比企谷沙希、旧姓川崎、光を手にし、今は八幡の妻として共に生きている。

 

彼等が棲む地にて起こった光と闇の戦いが幕を閉じた後、彼等は師がアジトとして使っていた店を譲り受け、人としての生活を営んでいた。

 

その店の名はASTRAY、彼等の青春と共に刻まれた、何よりも大切で思い出深い名だった。

 

「ただいま、いつでも開店出来る、バッチリだ。」

 

愛する妻に笑って返し、彼は表の掛札を<close>から<open>へと掛け変える。

喫茶店としての営業開始、この10年以上の時間を変わらず続けてきた、彼等の営みであった。

 

「ん、今日も頑張っていこう、先生達が残してくれた想いを繋ぐためにも。」

 

八幡に笑み返し、沙希は恩人であり師でもある者達に想いを馳せた。

 

最後に別れてから既に10年、いや、一度だけ顔を見せに来て、一瞬で去っていったあの日から更に1年は経とうとしている。

 

最後に会ったあの日から、彼等に会うことは叶っていない。

だけど、何時か再び巡り会うその時まで、彼等は人として、ウルトラマンとして生きていくのだ。

 

「あぁ、何時も通り、精いっぱい、な。」

 

妻の言葉に笑み返し、馴れた手付きでエプロンを身に付けていく。

喫茶店のマスターとして働いてもう長い。

今までそうしてきた様にティーポットとカップを温め、茶葉を用意しておく。

 

学生時代に師である貴人から教わった淹れ方を忘れず、しっかりと薫りを立たせる。

この薫りと味わいを求めて足を運んでくれる常連は少なくなく、店の名物として街に浸透していたのだ。

 

それに驕ることなく、師が淹れるモノの方が美味かったと、一層の研鑽を積んだが故の成果であった。

 

「いつか、あの人達にも飲んで欲しいね。」

 

彼の手際に、嘗ての師の面影を見た沙希は、柔らかく微笑みながらも、何時かの願いを口にする。

 

「あぁ、いつの日か、あの人達に追い付いた時にな。」

 

頷き返し、今はもう遥か彼方の空へ行った、敬愛する者達を思い浮かべる。

 

彼等は今、何処の宇宙を飛んでいるのだろうかと。

戦闘だけではなく、人としての生き方を示してくれた、7人の師の姿は、今も彼等の脳裏に、瞳に焼き付いている。

 

そんな人達にまたいつの日か巡り合い、もう一度自分達を弟子と呼んで欲しいと、そう心から願って……。

 

そう願った時だった。

 

「「ッ……!!」」

 

地響きと共に感じる、氷で背中をなぞられたかの様なひやりとした感触。

いつぞやから久しく感じる事の無かった、恐ろしく不快な感覚が2人の意識を外に向けた。

 

揃って外に飛び出した彼等の目に飛び込んで来たのは、禍々しいオーラを纏った、ささくれだった体表に右手の鎌、左手の鉄球を持つ怪獣の姿があった。

 

「タイラント……!」

 

その怪獣のやりあった事があったか、八幡は歯噛みし、沙希は苦虫を噛み潰したように顔をしかめた。

 

あまり良い思い出がないのだろう、やりあいたくないと言わんばかりの色が見て取れた。

 

「厄介な奴が来たもんだ……!」

 

「ホントにね……!」

 

だが、逃げていられないのも事実だ。

この街が自分達の生まれ育った街で、大切な人達が沢山いるからこそ、彼等は戦ってきた。

 

今までも、そしてこれからも。

 

「行くぞ、沙希!!」

 

「勿論!」

 

彼らは互いに頷き、懐から銀色の短刀の様なアイテムと、朱色の銃の様なアイテムをそれぞれ取り出し掲げる。

 

短刀は両サイドのハネが開き、銃は銃身が回転して短刀の様な形へ変形した直後、その先端より光の巨人を象った人形が現れる。

 

2人は躊躇なくそれを掴み、八幡は短刀の先端に、沙希は腹の部分に人形の左足を押し当てる。

 

『ウルトライブ!ウルトラマンギンガ!!』

 

『ウルトライブ!ウルトラマンビクトリー!!』

 

「ギンガーーーーっ!!」

 

「ビクトリーィ!!」

 

光に包まれ、彼等は光の巨人、ウルトラマンの姿へと変身し、大地へと降り立ったのだ。

 

『「ショウラッ!」

 

蒼く輝くクリスタルを持つ赤き巨人、比企谷八幡が変身するウルトラマンギンガ!

 

「ディアッ!!」

 

額に煌めくVの意匠を持つ黒き巨人、比企谷沙希が変身するウルトラマンビクトリー!

 

彼等は今も、ウルトラマンとしてこの地を、この星を守っているのだ。

 

敵の出現を察知し、タイラントは威嚇するように吼え、脇目もふらずに突進してくる。

 

「行くぞ!!」

 

「勿論!!」

 

構えを取り、2体のウルトラマンは向かってくる大怪獣向けて駆け出す。

 

ビクトリーが先行するように飛び上がり蹴りを、ギンガが身を屈め足元を狙ってのタックルを繰り出す。

それは違うことなくタイラントを捉え、その突進を抑え込む。

 

しかしながら、タイラントのパワーは並の怪獣のそれとは違う、止まりはしても怯みはしない。

更に猛り、咆哮と共に鉄球と斧を振り回して向かってくる。

 

「ぐっ……!」

 

「ちぃっ……!」

 

受け止め、流しながらも殺しきれない威力が彼等を襲う。

微かに痺れを伴う痛みに表情をしかめるが、その程度で彼等は止まるつもりなど微塵もなかった。

 

「喰らえ!ギンガスラッシュ!!」

 

後退しながらも放たれた光線がタイラントの喉元に突き刺さる。

 

たまらず呻くタイラントだが、そのタフネスは侮れない、反撃しようと動く。

 

「ビクトリウムスラッシュ!!」

 

ギンガ目掛けて振り下ろされる斧を、カポエラキックと共に発せられた光線で弾き、今度こそ後退させることに成功する。

 

「サンキュー沙希!」

 

「あいよ!次!!」

 

体勢を立て直したギンガが直ぐ様駆け出し、タイラントの腹に連続パンチを浴びせかける。

その威力は強烈であり、たまらずタイラントは叫びをあげる。

 

「あたしもいるよ!!」

 

反撃しようと動くタイラントの動きを阻害するかのように、蹴り技を主体としたビクトリーの技が、斧を、鉄球を蹴り飛ばす。

 

相手に反撃の隙を与えない、完璧に息の合ったコンビネーションに、タイラントは大きく後退を余儀無くされた。

 

だが、その劣勢がタイラントの逆鱗に触れたのだろう、これまでに無い咆哮をあげ、腹から冷凍光線を、口からは灼熱大火炎を吐き、2人のウルトラマンを襲う。

 

「っ!!」

 

「沙希!」

 

それがビクトリーに迫っていることを察知し、ギンガが前に立ち、バリアを展開して防ぐ。

 

だが、冷気と火炎の反発作用か、大気が歪み、ソニックブームが発生する。

巻き込まれた車や自販機が宙を舞い、倒壊しかけていたビルが崩れ落ちていくほどの風圧にも関わらず、それさえも完全に耐えきってしまう自力を、今の彼等は身につけているのだ。

 

「沙希!」

 

「はいよ!!」

 

バリアの影から飛び出しながらも、ビクトリーランサーに聖なる獣の力をリード、その力を呼び出す。

 

『ウルトランス!シェパードンセイバー!!』

 

「シェパードンセイバー!!」

 

聖なる剣、シェパードンセイバーが煌めき、タイラントの頭部を斬り付ける。

その威力に耐えきれず、タイラントは攻撃の手を緩めてしまう。

 

それが、戦闘では大きな隙となり、チャンスとなるのだ。

 

「ギンガスパークランス!!」

 

バリアを解き、ギンガは光の槍を展開、素早い動きで突きを繰り出す。

 

それは違うことなくタイラントの腹を突き、冷気を吐き出していた腹の口を貫き無効化した。

 

あまりにも強烈なダメージに、ついにタイラントは悲鳴にも似た咆哮をあげ、勢い良く地に倒れ伏した。

 

「「トドメだ!!」」

 

これで終わらせると、2人は得物を納め、必殺の光線の溜めに入る。

 

「ギンガクロスシュート!!」

 

「ビクトリウムシュート!!」

 

2条の光線がそれぞれL字に組まれた腕から放たれた、それは狙い違わず、何とか起き上がったタイラントに直撃し、一切の抵抗さえ許さないままに爆散させた。

 

爆炎の中、青い光の粒子が集まり、タイラントを構成していた6体のスパークドールズへとその姿を変えた。

 

「よっしゃ!」

 

「何とかなったね、お疲れ様。」

 

自分達の勝利を喜ぶように、ギンガとビクトリーはクロスタッチを交わす。

 

危機が去ったとはいえ、追撃があるかも知れぬと警戒しているのだろう、喜んではいてもそこに1分の緩みもなかったのだ。

 

故に気づいていた、遥か空の彼方より、何かが彼等に向かって来ている事も……。

 

「これは……。」

 

「この感じ……?」

 

敵意は感じない上にいつか感じたことのある気配に、2人は揃って首を傾げるしかなかった。

 

困惑する彼等の前に、一筋の光が舞い降りる。

それはヒト型のシルエットを持ち、青くはためくマントと、頭部の特徴的な一対のスラッガー……。

 

「ま、まさか……!」

 

「あなたは……!?」

 

その姿に、2人の声は喜悦に震える。

見紛う筈がない、その姿は彼等にとって、師である者達に次いで恩ある者のそれ……。

 

「「ゼロさん!」」

 

「おう!久し振りだな八幡!沙希!」

 

喜色に染まった声をあげる2人に、ゼロと呼ばれたウルトラマンもまた笑みを浮かべて応じる。

 

彼こそ、八幡と沙希を鍛えてくれたウルトラマンであり、2人の師であるASTRAYと繋がりも深い存在だった。

 

「惑星メイザー以来ですね、お久し振りです!」

 

「あぁ、更に腕上げたみてぇだな、流石だぜ。」

 

久方ぶりの再会を喜び、ゼロはギンガとビクトリーとクロスタッチを交わす。

そこにあるのは、共通の目標を持つ同志としての暖かい情だった。

 

「見ていたなら加勢してくださいよ。」

 

だが、それは先程の戦いを傍観していた証しに他ならないと、沙希は少々文句を垂れる。

 

実際なんとかなったとはいえ、タイラントは強敵中の強敵、2人より3人でかかった方が余裕があったと言うものだ。

 

「お前達の成長を見せて貰ったんだよ、悪かった。」

 

「相変わらずですね、でもまた会えて嬉しいです。」

 

「おう!」

 

悪びれないゼロに苦笑しつつ、八幡は純粋に再会を喜んでいた。

 

「積もる話もあります、良かったら俺達の店に来てください、茶でも出しますよ。」

 

だからこそ、せっかくこの地球に来てくれたのだから、少しの間でも近況を語らう場を作りたいと申し出る。

久方ぶりに、師の現在を知るゼロの話を聞かせて欲しいという想いからの提案だった。

 

「あぁ、一夏達の店だな、そうさせて貰う。」

 

「じゃあ行きましょう。」

 

「あぁ、少し待ってくれ、先に伝えときたい事がある。」

 

変身を解こうとするギンガとビクトリーを制し、ゼロは居住いを正していた。

 

それを見て、八幡と沙希もまた何かを察して居住いを正す。

半端な気持ちで聞いて良い物ではないと、直感したのだろう。

 

「お前達に任務の依頼がある、一夏達ASTRAYからのな。」

 

「「……ッ!!」」

 

重々しく放たれた言葉に、2人は驚愕から硬直した。

 

それは、彼等に訪れる事になる、新たな旅と戦いを告げる、開幕の音だったのだ……。

 

 




次回予告
ウルトラマンゼロから齎される情報は、八幡達に次なる選択を迫る。
人として生きるか、ウルトラマンとして生きるか、彼等は1つの決断を下す。

次回ウルトラマンNewGenerationHero'sSaga
第2話 決断の時

お楽しみに
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