ウルトラマンNewGenerationHero'sSaga   作:ichika

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過去からの侵略

 

店を飛び出したミソラは、人気の少ない公園にいた。

何時ものジーパンにジャケットという恰好で、ベンチに腰を下ろしていた。

 

ブラック司令の口から語られそうになった事が余程気に障ったか、彼女は一人でここにいたのだ。

 

その公園は、何処にでもある様なモノであり、遊具では子供たちが遊び、花壇には色とりどりの花が咲き誇っていた。

 

特に、黒い花と白い花が入り乱れる様に咲く事によって、他の花が更に強調されているようにも見えた。

 

「はぁ……。」

 

自身の中にある苛立ちを籠めて、彼女は重たいため息を吐く。

それは彼等に対するものか、それとも自分の煮え切らない態度に対するものか、分かる者などいなかった。

 

勿論、触れられたくない事に触れられそうになった事に対する怒りはあるが、それでもそれをうまくかわせなかった自分に対しても、至らなさと情けなさが混同して、何処にも吐き出せない、消化できないつっかえとして存在しているのだ。

 

飛び出してきたは良いが、これからどうしたものかといった風に見えた。

 

「まったく、もう……。」

 

切っ掛けは何にせよ、今の状態であの店にはなんとも戻りにくい。

どの面下げて還れというのだろうかと。

 

自分で勝手に飛び出しておいて、腹が減ったからとか、適当な理由を付けても帰りにくいったらありはしない。

 

思い悩みながらも空を見上げる彼女の頬に、何かひんやりとしたものが押し当てられた。

 

「ひゃうっ……!?」

 

素っ頓狂な声を上げて振り返ると、そこには袋に入ったアイスキャンディーを持った八幡が立っていた。

 

「は、八幡……!?」

 

「驚かせちまったかな、わりぃ。」

 

ベンチから飛び退きながらも後退り、毛を逆立てる猫の様に警戒していた。

そのあまりにも大きいリアクションに、八幡も何処か引き気味に苦笑し、アイスキャンディーを手渡していた。

 

どうやら、あの後すぐに彼女を追いかけてきたのだろう、服装はそのままで、軽く息も切らしている様子が見受けられた。

 

「詫びだ、受け取れ。」

 

「あ、ありがと。」

 

手渡されるアイスを受け取り、ミソラは礼を言いながらも袋を破りって頬張る。

 

その隣に腰かけて、彼もアイスを頬張った。

 

暫くは、2人とも無言のままアイスを食するだけだった。

いいや、八幡はあえて自然体に振舞っているのに対し、ミソラは何処から、何から話せばいいのかと、糸口を掴めずに視線を彷徨わせていた。

 

そんな時間がどれ程過ぎただろうか、アイスを食べきった八幡が口を開いた。

 

「さっきは悪かったな、詮索されたくなかった事なんだろ?」

 

店での件を詫び、デリカシーが無かったことを謝罪する。

触れられたくない過去など誰にだってあると。

 

自分は周りに支えられて乗り越えられた過去がある、それが嘗てどれだけ自分を苦しめていたモノだとしても、今は触りに行く事などしないが、それでも今に繋がる道の一つだったと語れるだろう。

 

だが、今のミソラは乗り越えられていないと八幡は直感していた。

だから、詮索されたくないならば触れる事はしないが、依頼された手前、自分に出来る事をしたいと、お節介かと思いながらも考えたのだ。

 

「……、そう聞く時点で、デリカシーの欠片もないわね。」

 

聞かれたくないと分かっているのに、まだ言及するかとミソラは表情を顰める。

謝っておきながら何をしたいのだと、不快感が手に取る様に伝わって来る。

 

お節介ならばいらないと、関わる事などするなと。

一匹狼の彼女からしてみれば、余計なお世話でしかないと。

 

「そうかな、あんたはそこで悩んでるんだろう?」

 

「……ッ!」

 

見透かすように放たれた八幡の言葉に、ミソラは反論が出来ずに言葉が詰まる。

 

何故分かると睨む視線で訴えかけるが、八幡にとってその程度を見透かすなど、既に通ってきた道であるが故に分かってしまうのだ。

 

何かを喪ったから戦えないと、先日語っていた、自分の姿を借り物でしか作れない時点で、察する事など容易に過ぎたのだった。

 

「自分の姿で戦えないって事も、その事が関係しているんだろ?」

 

故に、彼はその事を彼女に直視させ、乗り越える切っ掛けになる様にと、敢えて切り込むのだ。

 

自身の力で乗り越えなければならない事態が来た時に、後悔しないようにと。

 

「……。」

 

ミソラは応えない。

八幡もまた、目を逸らさずに無言を貫いた。

 

お前が話してくれるまで待つと、嘗て師の一人にしてもらった対応で、彼は姿勢も視線もそらすことは無かった。

 

「本当に、勝手な人……。」

 

その姿勢に折れたか、ミソラはため息を吐きながらも苦笑する。

 

戦士として、自分よりも格上だと感じているからこそ、信用しないまでも、何かのきっかけになればいいと。

 

「あぁ、俺は勝手なヤツだよ、そうやって生きてきたんだ。」

 

ウルトラマンンになって、ウルトラマンとして戦うと、妻と親友を巻き込んで宇宙に旅立った。

そうだからこそ、今の出会いがあるのだと。

 

「こうなったのも何かの縁だ、力になりてぇってのは、嘘じゃないぜ。」

 

「あぁもう、分かったわよ、本当にもう……。」

 

降参だと言わんばかりに、ミソラは一つ大きくため息を吐き、気持ちを整理するように空を見上げ、目を瞑る。

 

まるで、痛みを堪える様に、そして、吐き出すように。

覚悟を決めた様に、彼女は語り始める。

 

「あたしには昔、相棒がいたの、あたしより強くて、誰よりも頼もしかった相棒が……。」

 

語られる声には、吐き出される声には痛みが混じっていた。

 

「彼女は、本当に強かった、あたしなんかよりも、ウルトラマンとして正しかった、本当に、素敵な人だったの。」

 

嘗ての相棒の事を思い出し、彼女は在りし日を思い浮かべる。

様々な任務で共に戦い、共に苦難を乗り越えてきた、勇ましく美しく、気高かった彼女の事を。

 

ウルトラマンとしての力を、自分よりも引き出していた彼女がいたからこそ、ミソラは走っていられたのだ。

 

「優しい人だったんだな。」

 

「分かる?ちょっと厳しかったけど、それでも誰よりも優しかったヒトよ。」

 

八幡の言葉に、ミソラは相棒が褒められていると表情を綻ばせる。

それだけ、彼女はその者を誰よりも信頼し、慕っていたのだ。

 

だから、今の彼女は……。

 

「でも、彼女は―――――――。」

 

『あなたが殺したのよ。』

 

その先を語ろうとして、何処からともなく放たれた声に遮られた。

 

生温く嫌な風が吹き荒び、黒い花から花粉の様な何かが辺りに飛び散っていく。

 

それと同時に感じる、途轍もなく邪な気配。

それは彼等に危機を感じさせるには充分過ぎるものだった。

 

「あ、貴女は……!?」

 

飛び跳ねる様に立ち上がり、ミソラは驚愕のあまり硬直する。

その声は、そんな筈がないと言わんばかりの、恐怖に震えていた。

 

視線の先には、黒く禍々しいオーラを纏う何かがいた。

 

そこにある存在に、彼女の呼吸は荒くなり、足取りも覚束なくなっているようにも見えた。

 

「ミソラ……!?」

 

彼女の様子に違和感を感じたのだろう、八幡もまた立ち上がって身構える。

 

だが、視線は彼女と、その先にある何かの間を行き来していた。

 

「そんな筈はない……!だって、だって貴女は……!!」

 

そんな筈はない、目の前に居るそれは、嘗て自分の目の前で―――――

 

『そうよミソラ、私は死んだのよ、貴女のせいでね。』

 

それは、ミソラの名を呼んだように、彼女には聞こえた。

自分を嘲笑うように、そして責める様に、それは、その女は口元に笑みを浮かべた。

 

ミソラと対を為す、長いブロンドの髪が靡く。

それは不気味な美しさを醸し出すも、ミソラにそれを感じ取る余裕はまるでなかった。

 

「やめて……ッ!!」

 

「しっかりしろミソラっ!!お前、あれが一体何に見えてるんだ!?」

 

頭を抱え、見たくないと言わんばかりに頭を振るミソラに、八幡は身体を揺さぶりながらも叫ぶ。

 

自分には闇の靄にしか見えぬそれが、彼女には一体何に見えているのかと。

 

『そうよミソラ、貴女が私を殺したのよ、まさか、恨んでないとでも思っていたの?』

 

「やめて……!!どうして……、イルミナッ!?」

 

蝕む様に、責める様に紡がれる言葉に、ミソラは苦悶の表情を浮かべながらも叫ぶ。

何故自分の前に現れた、何故自分を……。

 

『どうして?情けない事を聞くわね、簡単な事よ。』

 

せせら笑うように、イルミナと呼ばれた女は薄い笑みを浮かべながらも、ミソラに見せつける様に黒いリングを掲げる。

 

それはオーブリングと対を為すように存在し、正に闇のリング、ダークリングとでも呼ぶべきものだった。

 

『変身するのよ、ウルトラマンオーブ!その命、もらい受ける!!』

 

挑発するような言葉と共に、リングが闇の力を放つ。

イルミナの身体が闇へと包まれ、それを巨人の姿へと変えた。

 

「なんだ……!?闇が、デカくなった……!?」

 

靄のまま大きく膨れ上がったように見えているのか、驚愕しながらもギンガスパークを取り出し構える。

正体が分からなくとも、それでも対処しなければならないと。

 

『厄介な奴がいるのね、お前の相手はこいつ等がしてくれるわ!!』

 

イルミナの声と共に、八幡を取り囲む様に黒い靄が現れ、怪人たちの姿を形作る。

それは、三面怪人ダダ、水棲怪人ディゴン、サーベル暴君マグマ星人、その他にも様々な宇宙人や怪人が彼を殺すために向かってくる。

 

「ちっ……!デカブツは任せたぞ、ミソラ!!」

 

ギンガへと変身しながらも、彼は向かい来る怪人たちを往なしていく。

周囲へと被害を広めたくないという想いで、巨大化したものはミソラに任せると。

 

だが、ミソラは驚愕と恐怖に引きつったままの表情で、呆然と巨大化した靄を見上げているだけだった。

 

呆然自失、そう表現する事が当て嵌まるほどに……。

 

「ミソラっ!!」

 

「……ッ!!」

 

ギンガからの叱咤に、ミソラは漸く現実に引き戻される。

そうだ、呆けている場合ではないと、現実を直視する。

 

向き合わなければならない、その覚悟を以て……。

 

「オーブ……!!」

 

オーブリングを掲げ、彼女は光に包まれる。

それは戦うための姿になるためのシーケンスだ。

 

「ティガさん!!マックスさん!!」

 

ティガとマックスのカードを読み込ませる。

彼女の傍らに、ティガスカイタイプと、マックスの幻影が姿を現す。

 

それは戦うために力を借りるためのモノだった。

 

「神速の力!お借りします!!」

 

リングを掲げた刹那、ティガとマックスの幻影が彼女に被さる様に重なる。

 

その姿を、ティガとマックスの意匠を持つフォームへと変えていく。

 

『ウルトラマンオーブ!スカイダッシュマックス!!』

 

音もなく、彼女は降り立つ。

蒼いストール《マックストール》をはためかせるその姿、ウルトラマンオーブ、スカイダッシュマックス。

 

音速を遥かに超える速さを誇る姿であり、何者にも捉えられないほどの動きで敵を翻弄し、一気に倒すのだ。

 

『へぇ?そんな借り物で、私に挑もうって言うのかしら、嘗められたモノね。』

 

嘲笑う声と共に、霞は彼女の前で形取る。

一人の巨人の姿へ、赤い目に赤いO字のカラータイマーを持つ、黒い巨人へ……。

 

「そ、それは……!!」

 

そんな筈はない、その姿は……!

 

『失くしたもの、失くしたと思っているモノ、そして、貴女が私を殺した力よ。』

 

闇から姿を現したのは、黒いウルトラマン……。

 

『さしずめ、オーブダークという所かしら、この力で、貴女を殺す!」

 

巨人、オーブダークは構えを取った。

殺すという言葉の通り、その構えからは殺気が滲み出ていた。

 

「く……ッ!!」

 

構えを取り、オーブはオーブダークの隙を伺う。

 

ひりつくような緊張の末に、マックストールをはためかせながらもオーブが哨戒する。

 

「おぉぉっ!!」

 

残像が残るほどの速さで、オーブはオーブダークへ攻撃を繰り出す。

四方八方からの、拳や蹴りなどの連撃を次々に叩き込む。

 

その動きを、常人では捉える事すら出来ないだろう、その連撃にはすさまじい勢いがあった。

 

だが、オーブダークは防御の構えすら取らない。

打たれるがまま、やられるがままの様相だった。

 

「あぁァァァッ!!」

 

それに構う事無く、オーブは攻撃を叩き込み続ける。

過去を振り払うために、目の前にある嘗てを、打ち倒そうと必死だった。

 

「うォォォッ!!」

 

力を籠めた蹴りが胸に突き刺さり、オーブダークが大きく吹っ飛ぶ。

 

その隙を見逃さずに、彼女は右腕に光のエネルギーを貯め込んだ。

この一撃でとどめを刺してやると、振り払ってやると。

 

「マクバルトアタック……ッ!!」

 

一瞬の加速と共に駆け出し、オーブダークへと追い付く。

そして、光を籠めた拳を突き出し、その赤く染まったカラータイマーへと突き立てた。

 

それは見事に炸裂し、オーブダークの身体は地に叩き付けられ、盛大な土埃を巻き上げた。

 

「やった……!?」

 

土埃を背に、オーブは地に降り、戦果を確かめる。

 

クリーンヒットしたと手ごたえはあった、倒しきれないにしても、それなりのダメージはある、と……。

 

だが……。

 

『こんな程度なのかしら、ウルトラマンオーブの力って?』

 

粉塵が晴れた時、そこにはまるでダメージを負ていないと言わんばかりの様子で、オーブダークが立っていた。

あぁ、効かないし、面白くもないと、何処までも蔑むかのような響きがあった。

 

「そ、んな……!」

 

まったく効いていないと、オーブは愕然と瞠目する。

フルパワーを籠めた一撃が、傷一つすらつける事が出来なかったと。

 

それほどまでに、自分は……。

 

『もう終わりだというなら、今度はこちらから行かせてもらうわ!!』

 

オーブダークが動き、一気にオーブとの距離を詰める。

まるで瞬間移動の如きその動きに、反応が一瞬遅れる。

 

「しまっ……!!」

 

ガードしようとするも遅い、既に背後に回り込まれ、後頭部を鷲掴みにされてしまう。

そのままの勢いで、オーブは顔面から地に叩き付けられる。

 

「あぁぁ……ッ!!」

 

受け身を取る事さえままならない、叩き付けられたダメージがオーブを襲った。

 

『どうしたの?やり返してみなさいな!』

 

叩き付けられたオーブの背を、オーブダークは容赦なく踏みつける。

そのあまりのダメージに呻きながらも、オーブは何とか逃れようと藻掻くが、それを赦す相手ではない。

 

『情けないわねッ!!』

 

「ぐぁぁぁぁ……ッ!!」

 

振り上げるようなサッカーキックが、体勢を変えようとしていたオーブの腹に突き刺さる。

 

オーブの身体は大きく吹っ飛ばされ、近くにあったビルを何棟も巻き込み倒壊させながらも地に倒れ込んだ。

 

「う、あぁ……っ。」

 

あまりのダメージに、すぐに立ち上がる事さえ出来ない。

オーブのカラータイマーは点滅を始め、エネルギーが底を尽きかけている事を示していた。

 

「どうした!?しっかりしろミソラぁーッ!!」

 

ギンガスラッシュやギンガセイバーなどの技で向かい来る怪人たちを蹴散らしながらも叫ぶ。

何をしているのかと、一体何と戦っているのだ、と。

 

助けに回りたくとも手が回らないのだ、彼の表情には焦りがあった。

 

『フン、助けになど来させない、ここで終わらせてやるわ!!』

 

ギンガの助太刀を警戒してか、闇はオーブへとトドメを刺さんと動く。

 

腹の部分が丸くなっている長大な剣を呼び出し、刀身へエネルギーを充填させる。

それはトドメの一撃を放つための予備動作、その闇が放てる最大級の技だった。

 

「……ッ!!」

 

背筋に奔る悪寒に、オーブはスタイルを切り替える。

現状最も強い火力を出せる姿へ、ゼペリオンソルジェントとなる。

 

『この一撃で……!あの世を拝みなさいッ!!』

 

オーブダークが突き出す切っ先から、途轍もない質量のエネルギー波が放たれる。

そのエネルギー量は凄まじく、回避も防御も出来ないと察することが出来た。

 

「……ッ!ゼペリジェント光線……ッ!!」

 

L字型に組まれた腕から光が迸る。

それはオーブダークから放たれたエネルギー波とぶつかり、辺りへ閃光を巻き散らしながらも拮抗する。

 

「う……!おぉぉぉ……!!」

 

振り払うように、逃れる様に声を張り上げながらも、オーブは更に力を絞り出す。

負けじとオーブダークも力を籠め、光と闇の力はぶつかり合い、凄まじい明滅を生み出す。

 

そして、遂にその時は訪れた。

拮抗していたエネルギーが、遂には空間さえ歪ませたか、辺りに強烈なソニックブームと爆発を引き起こす。

 

「う……!あぁぁぁ……ッ!!」

 

「ミソラぁぁーーーーッ!!」

 

爆発に呑まれるオーブに、ギンガは叫ぶことしか出来なかった。

 

何せ、彼にも立ち入れぬ因縁が、そこにはあったのだから……。

 

 




次回予告

迫りくる魔の手、逃れられない過去。
そのすべてがミソラを責め立て窮地へと追い込んでいく。

次回ウルトラマンNewGenerationHero'sSaga
再臨編、暗澹

お楽しみに
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