ウルトラマンNewGenerationHero'sSaga   作:ichika

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追憶、相棒

 

惑星アブシッド

 

嘗て大きな争いの末に荒廃し、何も見当たらない惑星に、2人の女の姿が在った。

 

「ここに来た理由、分かってるわよね、ミソラ?」

 

長いブロンドを揺蕩わせた女性が、傍らに立つプラチナブロンドの女へ確認するように声を掛ける。

 

「分かっているわ、イルミナ、ばっちり片付けて酒盛りしましょ。」

 

ミソラと呼ばれた女性は、自身がイルミナと呼んだ女性に対して軽口で返す。

彼女達の間には緊張と、それ以上の信頼が窺えた。

 

ブロンドの女性はイルミナ、プラチナブロンドの女性は天都ミソラ、2人は宇宙を股に掛けるバウンティハンターだった。

 

宇宙警備隊や銀河連邦の手が及ばない星々に逃げ込み暗躍するならず者を、懸賞金と引き換えに討伐する役目を彼女達は担っているのだ。

 

尤も、そうやって懸賞金がかけられる手の者はそれなり以上の武力や組織力を持っている事もあり、バウンティハンター達もそれなり以上の力を求められるのだが、今の彼女達には関係の無い事だった。

 

そんな2人は今、とある組織から指名手配されている悪党を追い、この星にやって来ていたのだ。

 

「そんなお気楽な事言ってたら、足下を掬われるわよ?」

 

仕事を終えた後の事しか考えていないミソラに対し、イルミナは呆れながらも気を引き締めろと窘める。

 

彼女達の仕事柄、恨みを買う事など日常茶飯事、いつ何時襲われるかも分かったものではないのだ、気を張り過ぎて丁度いい、と。

 

「真面目ねぇ、真面目過ぎるんじゃない、イルミナ?今回だって、指名手配されてるのは所詮ナックル星人じゃない、怪獣引き連れて立って、あたし達の敵じゃないっての!」

 

イルミナの懸念を笑い飛ばす様に、ミソラは自分達の力に自信がある様だった。

これまで切り抜けて来れたし、苦戦する事など数えるほどしかなかったじゃないかと。

 

「貴女ねぇ……、そんな事だから私に勝てないのよ、油断して攻撃を止めるところとか、ねぇ?」

 

ミソラの様子に呆れてか、それとも半ば立腹か、イルミナはせせら笑いを浮かべながらも、自分の方が強いと宣った。

 

共に行動しているとはいえ、時折訓練で手合わせもする仲でもある様だ。

尤も、どちらに分があるかと言われれば、イルミナに軍配が上がる事が多い事は、共通認識である様だったが……。

 

「そ、それはそっちが不意打ちしてきたからじゃない……!それが無かったら、あたしが勝ってたわ!!」

 

しかしながら、勝負の決し方に納得がいっていないのだろう、ミソラは唇を尖らせて抗議する。

不意打ちやだまし討ちが無ければ、自分が勝っていたと。

 

その様子は何処か、姉に対して駄々をこねる妹の様に見えてしまって、イルミナは苦笑を浮かべながらも嘆息する。

 

「ハイハイ、それが実戦で通じるものなら、そういえば良いんじゃない?」

 

泣き言を言ったところで、実戦で敵は待ってなどくれないし、だまし討ちなど常套手段として使ってくることなど想像に難くなかった。

 

それなのにこのお嬢さんは、何と甘い事を言っているのかと呆れてしまうイルミナだった。

 

「貴女は本当に私より強いんだから、油断せずに決め切りなさいよ、そうしたら情けない負け方なんてしないわよ。」

 

呆れながらも窘める様に、イルミナはミソラに対して諭す様に告げる。

自分より強い力を持っている癖に、何処かツメの甘い相方を案じての言葉だった。

 

お互いが死なない様に、明日もまた2人で歩いていくために、戒めとしている様に。

 

「イルミナより強いって本当!?そうよねそうよねっ!!あたしの方が強いッ!!」

 

だが、その真意が果たしてどこまで届いているのやら、ミソラは喜色満面の笑みを浮かべ、調子に乗っている様だった。

 

自分より強いと思っている相棒から、自分の方が強いと褒められたら舞い上がってしまうのも無理はないが、それはミソラ自身が何処かイルミナに対してのコンプレックスや力の差を理解しているからこその事なのかもしれない。

 

舞い上がるミソラに対して、イルミナは苦笑を浮かべながらもため息を吐いた。

本当に、この調子乗りが無ければ、と……。

 

その様子はまるで、調子乗りの手のかかる妹に苦労させられる姉の様にも見えた。

相棒とはいえ、姉妹の様な上下関係はあるのだろうか、イルミナが姉で、ミソラが妹、2人の間でもそう思っているに違いなかった。

 

「はぁ……、もう良いわ、行くわよ。」

 

これ以上は暖簾に腕押しと切り捨てて、イルミナは目的のポイントへと向かって歩みを踏み出す。

 

このまま留まったところで事態が解決するわけでは無いと、ある意味で仕事モードに気持ちを切り替えたのだろう。

 

「あっ!待ってよイルミナ~!」

 

置いて行かないでくれと、ミソラは慌てて彼女の後を追う。

バディなのだから、独りぼっちにはしないでくれと。

 

そうやって、女2人の道中らしく騒がしく進みながらも、遂には目的の場所が目視できる付近まで彼女達はやって来ていた。

 

目的とする敵のアジトの付近にあった岩陰に身を隠し、見張りや監視装置がない事を確かめる。

 

ここまで来たのならばやるべき事は一つ、突入して殲滅する、それだけだ。

 

「覚悟は良い?」

 

「当然っ!」

 

互いに目配せし、同じタイミングで岩陰から飛び出した。

アジトに突入し、扉や防壁をけ破りながらも奥へ奥へと進んでいく。

 

だが……。

 

「妙ね、何の気配も、物音ひとつしないなんて……。」

 

防衛装置による妨害にさえ合わない事を不審に思ったか、イルミナは更に警戒を強める。

 

普通、悪党のアジトには罠や監視網が山の様に備わっているはず。

それなのに、妨害どころか人の気配すらない事に、何処かうすら寒い物さえ感じるほどだった。

 

「あたし達に恐れをなして逃げ出したとか?まーた追いかけないといけないってコト?」

 

イルミナの言葉に、ミソラは嫌そうにな表情を浮かべる。

目的の悪党に逃げられたかもしれないと考え、追いかける手間を考えると、無駄足を踏まされたと思っても仕方が無かった。

 

「いいえ、それにしては静かすぎる……、何か、何かがある……!」

 

嫌な予感に突き動かされるように、イルミナは更に奥へと歩みを進める。

そんな彼女において行かれまいと、ミソラもまた歩みを進める。

 

そして、アジトを抜け、最深部に到達する。

そこにいたのは……。

 

「な……ッ!?」

 

目の前にある光景に、ミソラは口元を覆って絶句し、イルミナも険しい表情を作った。

そこには、ターゲットであるナックル星人と、その使い魔的怪獣であるブラックキングが、上半身と下半身が泣き別れし、絶命している様子だった。

 

「惨い……!誰がこんなことを……!?」

 

一思いに爆散させてやるでもない、晒し者にするような光景に、ミソラは義憤に駆られて叫ぶ。

 

可笑しな話だ、自分達もこの者達を殺すために赴いたというのに……。

 

そう考えた刹那、亡骸が転がる空間の更に奥から、何かが煌めく。

 

「「……ッ!!」」

 

それが飛刃の様なモノであると気付いたか、2人は咄嗟にその場から飛び退く。

彼女達が元居た場所を回転鋸の様な何かが通り過ぎ、戻っていく途中で、転がっていたブラックキングとナックル星人の亡骸を細切れにしていく。

 

「あれは、まさか……!!」

 

想定もしなかった事態に、イルミナは絶句する。

 

それと同時に、闇が蠢き、その正体を露わにする。

這い出てきたのは、巨大な樹木の様な姿を持つ、長い首の先に髑髏を象ったような咢……。

 

体長は優に50メートルを超えるほどの巨体、それが今、彼女達を見下ろしていた。

 

「サンドロス……!!」

 

それは破滅魔超獣の異名を持つ高度生命体、サンドロス。

自身に課した弱肉強食の掟の下、惑星や生命を喰い滅ぼす生命体だった。

 

困惑する2人に対し、サンドロスは大鎌を振り下ろす。

咄嗟に左右に躱す事で直撃を回避、すぐさま臨戦態勢を整える。

 

「なんで此奴がこんなところに……!?」

 

何故惑星を食い潰す存在がなぜここにいるのか、何故自分達の標的を殺したのか、と。

 

だが、一つだけ言えることはある。

此奴をここで見逃せば、全宇宙の惑星が、生命が危険に晒される。

 

賞金稼ぎであっても、今の彼女達にそれを見過ごす事は出来ない。

何故なら……。

 

「さぁね!どうせデカいエネルギーに惹かれたんでしょう!!」

 

自分達を狙って撃ち出される波動弾や、吐き出される火炎を回避しながらも、悪党や怪物がやる事などたかが知れていると断じる。

向ってくるのならば、こちらに害をなすというのならば、容赦はしないと。

 

「行くわよミソラ!!」

 

「オッケー!!」

 

マントから同時に剣の様なモノを取り出し、天に突きあげる様に掲げる。

 

「「オーブッ!!」」

 

刹那、切っ先から光が迸り、彼女達の身体を包み、変質させていく。

 

光が晴れた時、そこには同じ姿をした青い巨人と、赤い巨人の姿が在った。

 

イルミナが変身するのは青と黒と銀、ミソラが変身するのは赤と黒と銀、色以外は全く同じの、二体のウルトラマンだった。

 

「「我らはオーブ!!銀河の光が、悪を討つ!!」」

 

名乗りをあげるそのウルトラマンは、オーブ。

オーブイルミナと、オーブミソラ、2人はウルトラマンオーブ!!

 

2人は同じ構えを取り、サンドロスと相対する。

敵は相当あくどい手を使うと噂の魔超獣、一瞬の油断も許されない。

 

「行くわよ!!」

 

「勿論ッ!」

 

まったくの同時に駆け出し、2人は一気にサンドロスとの間合いを詰めていく。

 

打ち出される波動弾を左右に躱す事で回避、ミソラはそのまま突っ走り、イルミナが飛び上がる。

 

「「はァッ!!」」

 

ミソラが繰り出す拳は胴を、イルミナの跳び蹴りは顎を捉える。

全く同時に叩き込まれたからか、その威力にサンドロスは痛みに咆える。

 

堪らず薙ぎ払いで2人を弾き飛ばそうとするが、2人は身を屈める事で回避、立ち上がる勢いをつけてまったく同時に顎へアッパーカットを叩き込む。

 

その威力は推して測るべしだろう、サンドロスは僅かに後退する。

少しでも間合いを開け、巻き返すための攻撃を繰り出そうとしている様子だった。

 

だが、2人は逃がさない。

拳に光を纏わせ、胴に突き刺す様に叩き込んだ。

 

一糸乱れぬ連携、コンビネーションはすさまじく、サンドロスに一切の隙を与えなかった。

 

「よっしゃ!」

 

自分達が押していると理解し、少し余裕が生まれているのだろう、ミソラが歓喜の声を上げる。

ヤバい奴と出くわしたとは思ったが、それでも自分達のコンビネーションが負けるはずがないと。

 

「気を抜かないでミソラ!一気に畳みかけるわよ!!」

 

たとえ自分達が優勢とはいえ、相手は強力な魔超獣、何かの拍子に逆転されないとも限らない。

 

「任せて!!」

 

イルミナとミソラは横並びになり、2人揃ってカラータイマーの前で両手をO字に象る。

 

エネルギーがそのO字から両腕にチャージされ、それが最大になった時、2人は腕を十字に組んだ。

 

「「ツインオリジウム光線ッ!!」」

 

二つの十字から放たれた光線は真っすぐ突き進み、違う事無くサンドロスの咢を捉え炸裂する。

 

激しい火花を上げ、周囲の土埃を巻き上げて爆発する。

 

「やった……!?」

 

手応えはあった、今の攻撃ならばただでは済まないだろうと、ミソラは勝利を信じて疑わなかった。

 

だが……。

爆煙の中から、何かが飛び出してくる。

 

「うわっ……!?」

 

「イルミナッ!?」

 

その何か、いいや、正体が分からない何かはイルミナの身体を捉え、大きく吹っ飛ばした。

 

全く見えなかった、分かったのは、爆煙から飛び出してくる時の煙の動きで、何かが来たという事だけ。

正に、不可視の弾丸そのもの……。

 

「ま、まさか、サイコキネシス……!?」

 

痛みに呻きながらも、イルミナはその攻撃の正体を見極めた。

なるほど、超能力の類か、それを縦横無尽遠慮なしに使われたならば堪ったものではない。

 

何せ、避けようも無ければ防ぎようもないのだから。

 

「それなら使わせないまで!!」

 

イルミナを庇うつもりか、サンドロスに近かったミソラが飛び掛かる。

 

「ミソラ!待ちなさいッ!!」

 

迂闊に飛び出すなというがもう遅い、ドロップキックを叩き込まんと飛び掛かったミソラの身体が、空中でピタリと制止させられる。

 

「く、うぅ……!この、放せ……ッ!!」

 

サイコキネシスのパワーに捕まってしまったのだろう、幾ら藻掻いても逃れる事は出来なかった。

 

その抵抗を嘲笑う様に、サンドロスは哄笑の様な咆哮をあげながらもミソラを何度も地に叩き付ける。

その勢いは凄まじく、地震と紛う程の揺れが辺りを、ミソラの身体を襲った。

 

「あぁぁ……ッ!?」

 

「ミソラっ!!」

 

ダメージに藻掻くミソラを救わんとイルミナが駆けだすが、それすらサンドロスは見ていた。

 

せせら笑う様に、ミソラを滞空させ、弾丸の様にイルミナの方へと撃ち出す。

 

「「きゃぁぁっ……!?」」

 

飛んできたミソラの身体を受け止めきる事が出来ず、イルミナは諸共地に叩き付けられた。

そのあまりにも強烈なダメージに、2人は起き上がる事すら出来ずに倒れ悶えた。

 

一瞬の攻撃から逆転されてしまっている。

そう思えども、今の彼女達に逆転の目は回って来ていなかった。

 

その証左に、彼女達2人のカラータイマーが赤く点滅する。

長く戦っていられないと、そう告げる危険信号だ。

 

そんな彼女達を嘲笑うかのように、咆哮と共にサンドロスが動く。

サイコキネシスを発動させ、ミソラの身体をまたしても宙へと浮かせる。

 

「ぐぅ……ッ!!」

 

「ミソラ……ッ!!」

 

助けようとイルミナが手を伸ばすも届かない、ミソラの身体はそのままサンドロスの目の前まで連れてこられる。

 

「こ、の……ッ!!」

 

放せと藻掻くが、今の彼女にそんな力が出せる筈も無かった。

 

一体ずつ確実に殺すつもりか、サンドロスの右腕からは長大な槍の様なエネルギーが迸る。

この距離ならば直接串刺しにしてやると、そういわんばかりの様相だった。

 

「は、なせ……ッ!!」

 

藻掻けど藻掻けど、拘束は緩まる気配など微塵もない。

逃れられないまま、ミソラの胸、カラータイマー目掛け槍が突き刺され――――――

 

 

「ミソラ―ーーーーッ!!」

 

刹那、ミソラの身体が何かに大きく弾き飛ばされ、そして、肉を裂く生々しい音が、彼女を耳朶打つ。

 

「あ―――――」

 

真横へ弾かれながらも、ミソラは目の前の光景を受け入れる事が出来なかった。

 

自分が元居た空間に、青い巨人の姿が在り、その背からは、エネルギー槍がまるで生得てきたかの様に突き刺さっていた。

 

「あぁ――――――。」

 

嘘であって欲しい、夢であって欲しい。

だって、だって、その背は―――――――」

 

「ぐ、あっ……!」

 

ミソラを庇い、回避できなかったイルミナは胸を貫かれ、苦悶の表情を浮かべている。

貫かれた胸からは、まるで血が流れるかのように光が溢れ出す。

 

「イルミナぁァァァァ!!」

 

相棒の名を、姉の様に慕った者の名を、ミソラは絶叫する。

 

止めてくれと、どうして庇ったのだと、理解が追い付かないが故に、言の葉を紡ぐことが出来ずに叫ぶことしか出来ない。

 

目論見は外れたが、それでも一人葬れると、サンドロスは哄笑する。

次はお前だと、ミソラを視線に捉えたまま嗤った。

 

「よくも……!よくもォォォッ!!」

 

憤怒と共に、ミソラは立ち上がろうとする。

だが、予想以上にダメージが膝に来ているのだろう、上手く立ち上がれずに膝をついた。

 

この状況、誰が見ても絶体絶命、絶望的な状況に他ならなかった。

このままでは、2人ともヤラれてしまう、そう思われた……。

 

「ぐ……、あぁァァァッ!!」

 

痛みに歪む表情のまま、イルミナは絶叫しながらもサンドロスの右腕をしっかりとホールドする。

それと同時に、自身の右腕に大剣の様なモノを呼び出し、下卑た笑みを浮かべるサンドロスの口へと突き刺した。

 

「イルミナ……ッ!!」

 

何をしているのだと、早く逃げてくれと。

このままでは死んでしまうと、ミソラは彼女の名を叫んだ。

 

「ミソラ……!!私ごと……!コイツを討って……!!」

 

「――――――ッ!!」

 

イルミナの叫びに、ミソラは絶句する。

自分諸共討てと、その叫びからは相打ちを覚悟した痛々しい想いが伝わって来る。

 

確かに、今のサンドロスはイルミナを貫いた右腕を引き抜くことも、口に突っ込まれた剣を跳ね除ける事さえ出来ない。

トドメを刺すのならば、ケリを着けるのならば今しかない。

 

だけど、だけど……。

 

「出来ない……!出来ないよイルミナ……!!今助けるから……!だから……!!」

 

そんな非常な事が出来ようモノか。

相棒を、姉の様に慕う女性を殺せと、そう言いたいのかと。

 

出来るはずがない、そんなことなどしたくない。

2人で何度も戦いを切り抜けてきた、だから、今回だって……!

 

諦めないでくれと叫ぶ彼女の前で、更に槍がイルミナの身体を抉じ開け刺し貫く。

 

「ぐぅっ……!!」

 

想像を絶する痛みがイルミナを襲う。

カラータイマーは貫かれ、既にその機能を果たしていない。

 

その証左に、徐々に身体が光の粒子へと還りかけている。

変身を維持するどころではない、最早命すらない、イルミナは解ってしまっていたのだ。

 

「イルミナぁぁっ!!」

 

「ミソラ……!!」

 

助けようと手を伸ばすミソラへ、イルミナは首だけで振り返りながらも、強い口調で名を叫ぶ。

 

分かっているだろうと、コイツを逃がす訳にはいかない。

ならば、やるべき事は一つだろうと、何を悩むのだと。

 

分かっている、分かってい無いワケないじゃないか。

悲愴な顔で、ミソラは頭を振る。

 

今までの旅路がフラッシュバックする。

O-50で、戦士の頂で二人揃ってウルトラマンになれた日を。

ファーストミッションを協力して乗り越えた惑星での日々を。

 

友として、相棒として、妹みたいに姉に甘える様にじゃれたあの夜を。

 

何時だって、何時だってイルミナは彼女を優しく守って、導いてくれた。

 

そんな人を、喪いたくなかった。

 

だから、彼女はその手にある力を使う事を躊躇ってしまう。

やるべき事は解っている、それでも……。

 

「撃って……!撃つのよ……!!」

 

叫ぶイルミナの身体は、最早崩れかけていた。

サンドロスもそれを理解し、押し込まんとしていた。

 

このままでは自分は無駄死にだと、そうしてくれるなと。

その想いを籠めて、イルミナは全身全霊力を振り絞る。

 

「撃ちなさい!!ウルトラマンオーブゥゥッ!!」

 

「……ッ!!」

 

その叫びに、自身の名ではなくウルトラマンとして呼ばれたミソラの、戦士としての部分が動いた。

 

「あァァァァ―――――――ッ!!」

 

最早声にもならぬ絶叫と共に、ミソラも自身の武器を呼び出し、エネルギーをチャージ。

それは、彼女達オーブに与えられた武器にして、最大の技の発動だった。

 

武器を、剣を頭上で円を描く様に振り回し、オーブの力をすべてそこへと乗せる。

そして、叩き付ける様に突き出した切っ先から、先程の十字光線の比ではないほどに、途轍もないエネルギーが迸る。

 

アディオス、ミ・アマード(さようなら、大好きなひと)。」

 

ミソラの技を見て微笑み、イルミナもまた最後の力を振り絞って自身も剣にエネルギーを集中させる。

最後のコンビ技だと、サンドロスの体内へと強力なエネルギーをぶち込んだ。

 

それと全く同時に、サンドロスの胴にミソラが放ったエネルギー波が突き刺さる。

内と外からの凄まじい威力の光線に、さしものサンドロスも耐え切る事は出来ない様子だ。

 

体内でスパークする閃光が、外殻を削る光条が、その強固な生命体を侵し、滅ぼさんとしていく。

 

だが―――――

 

「あァァァァァァッ!!」

 

絶叫と共に、怒りと哀しみの涙を流しながらも、理性が本能に呑まれてしまったのだろうか、リミッターが外れたミソラから放たれるエネルギーは更に勢いを増す。

まるで、壊れた蛇口から水が勢いよく溢れ出るかのように、止め処なく撃ち出され続けた。

 

そして、最後の一撃と言わんばかりに、ミソラの手から光り輝く剣が弾け飛び、豪弓から撃ち出された矢の様に突き進み、サンドロスへと突き刺さる。

 

刹那、内外のエネルギーが爆発的に膨れ上がり、サンドロスを爆発四散させる。

だが、それでもとどまる事を知らないエネルギーの暴走は、サンドロスに肉薄していたイルミナを呑み込み、その姿を掻き消してしまった。

 

爆発の余波は辺りの地形を変え、ミソラさえも吹っ飛ばしてしまった。

 

爆発が収まった時、ミソラは人間体に戻り、地に叩き付けられていた。

身体のあちこちがダメージに軋みをあげている、だが、それでも動かなければならなかった。

 

「イルミナ……、イルミナ……ッ!」

 

痛みに軋む身体を引き摺って、彼女は相棒の姿を探す。

無事でいてくれと、生きていてくれと、絶望を押し殺してその名を叫び続けける。

 

爆心地へ近付き、周囲を見渡す。

元々荒廃していた土地は大きく穿たれたクレーターにより更に酷い有り様だった。

 

その中心、そこにはサンドロスの亡骸も、イルミナの身体もない。

 

あるのはただ、地に突き刺さった、イルミナの剣だけ……。

 

「あ―――――」

 

手を伸ばそうとして、クレーターの淵から足を滑らせて滑落する。

錐揉み状態になり、身体のあちこちを打ち付けながらもそこまで落ちていく。

 

それでも、彼女の瞳は、突き刺さる剣の、その消滅を見ていた。

 

その剣はオーブの力の源、それが壊れ消えていくという事は、変身していた者は――――――

 

「あぁ――――――」

 

頭から地に叩き付けられても、痛みよりも現実を受け入れられなかった。

 

死んだ、死んでしまった。

彼女は、自分が慕ったイルミナは、もう……。

 

「あぁぁ……!!うぁぁぁぁぁぁぁぁ……ッ!!」

 

自身の無力さと喪失感にに打ちひしがれ、彼女の慟哭は曇天の空に木霊する。

それに答える者も、涙を拭う者も、ここにはもう、いないのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この日から、彼女は自分の姿を喪った。

喪失感と、無力さと共に、自分の力を扱えなくなったのだ……。

 

 

 

 

 

 

 




次回予告

過去からの呼び声は、今の想いは、未来への足掛かりは……。
それを見つける事が、今の彼女に与えられた使命なのだろうか。

次回ウルトラマンNewGenerationHero'sSaga

再臨編、超えていく力
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