ウルトラマンNewGenerationHero'sSaga   作:ichika

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銀河の光

 

「待たせたわね、立てる?」

 

膝を付くギンガに、オーブは右手を差し出す。

待たせてしまってすまない、もう大丈夫だと示すために。

 

「遅いぞ、死ぬかと思った。」

 

悪態を吐きながらも苦笑し、ギンガはその手を取った。

待たせてくれやがってと、待った甲斐はあったと。

 

彼の目の前には、ASTRAYの力を借りていないオーブの姿が在る。

さっきまで、自分の力で戦えないと言っていた彼女が、自分の足で立った事を示す姿だ。

 

それは、答えを得たと、これ以上無いほどに感じさせるものだった。

 

「悪かったわね、ここからは一緒に戦うわ。」

 

肩を竦めながらも、オーブは戦意を滾らせる。

待たせてしまった分は戦うと。

 

「もう大丈夫なんだな?」

 

その姿を見れば、そんな声かけは杞憂でしかない事など分かっている。

だけど、それでも言葉で示して欲しくなるのもまた仕方のない事だ。

 

「えぇ、あたしは戦えるわ、だって、八幡と、イルミナが示してくれたから。」

 

迷いのない瞳で、彼女は彼をしっかりと見据えていた。

在り方を、戦いの意味を示してくれたから、前を向けるのだと。

 

「そうか、なら、手を貸せ。」

 

「上等!」

 

ギンガと共にオーブはカリバーを構える。

共に戦うと、その姿勢を示すために。

 

それに呼応し、デスドラゴが先行してくる。

狙いは変わらずギンガに向かっており、怒りに猛り荒ぶっている事が窺えた。

 

それを受け、ギンガを庇う様にオーブが先行、カリバーを振りかぶり、叩き付ける様に振り下ろす。

その剣戟はデスドラゴの脳天に直撃し、強烈な斬撃となってデスドラゴにダメージを与え怯ませる。

 

距離が離れた瞬間にカリバーを握り直し、オーブは切り上げる形でカリバーを振るう。

それは違う事無くデスドラゴの頭部の角に直撃し、あっさりと斬り飛ばした。

 

『――――――!!』

 

あまりのダメージに、デスドラゴはダメージと怒りに咆える。

よくもやってくれたなと、本能的な怒りに打ち震えていた。

 

「ウォォッ!!」

 

それでもまだ足りないと、オーブは振り上げた勢いを利用して身体を捻って跳躍。サマーソルトの様な動きで蹴りを叩き込み、デスドラゴを吹っ飛ばした。

 

そこに来て、デスドラゴは先にオーブを倒すと決めたようだ、殺気がオーブへと集中する。

角が折れてもまだ雷撃を放てるのだろう、電撃のエネルギーを口腔部にチャージを開始、いつでも打てるぞと言わんばかりだった。

 

それを見て、オーブはカリバーを操作、光るエレメントの内、火のクリスタルを選択する

カリバーの円形部を回転させ、火のエネルギーを纏わせる。

 

「オーブフレイムカリバーッ!!」

 

振るわれる刀身から焔が放たれる。

それはデスドラゴから撃ち出された雷撃と衝突し、辺りにプラズマを発生させるも、一瞬も拮抗する事無く押し返し、一気に直撃する。

 

焔はデスドラゴを包み、一気に燃やし尽くし爆散させた。

断末魔さえ残さないほどの、超強力な一撃だった。

 

「やるな!良い技だ!」

 

その一撃に、ギンガは感嘆の声を上げながらも闇の靄と対峙、その攻撃の全てを捌き、カウンターとして投げ技を中心に繰り出していた。

体力を消耗しても相手の技の勢いを使って繰り出す技ならば、ある程度は戦えると判断してのカウンター攻勢だった。

 

『しつこい……!ウルトラマン共が……!!』

 

ギンガの抵抗とオーブの再起に苛立ちを隠せないのだろう、オーブダークは怒りに任せた攻撃を繰り出し続ける。

あまりにも凄烈な勢いに、ギンガですら捌くのが手いっぱいになりつつあった。

 

だが、今の彼は一人で戦っている訳ではない。

 

「はぁァッ!!」

 

2体の間にオーブが割込み、カリバー同士が衝突する。

強烈な剣戟がソニックブームを生み、周囲を襲うも、彼等には今顧みてやれる余裕はそこまでなかった。

 

『しつこいわね……!何度向かってくるつもりなのミソラッ!?』

 

鍔迫り合いの最中に、怒りが滲む声でオーブダークが叫ぶ。

イルミナの様なモノの声は、オーブに変身するミソラを責め続ける。

 

何故向かってくる、何故立ち上がる。

そのまま失意の底で死ねばいいのに、何故そうしないのだと、その声は憤怒と困惑に満ちていた。

 

『あなたの生に何の価値もない……!早く死んで頂戴なッ!!』

 

「そう思ってたわ、ついさっきまではねッ!!」

 

怒りに任せて押し込まれる闇のカリバーを、オーブは受け流す事で逸らし、右の拳をその顔面に叩き付けた。

 

『ぐぅ……ッ!?』

 

防御すら出来ない一撃に、オーブダークは堪らず吹っ飛んでいく。

さっきまでのオーブとは明らかに何かが違うと、そう感じざるを得ない一撃だった。

 

「やっぱり、今のあなたはあたしの弱さが生み出した幻に過ぎないのね。」

 

少し残念そうに彼女は呟く。

本物が生きて来てくれていたのかと、一瞬は錯覚した。

 

だけど、それはまやかしでしかないと分かっていた。

何かが幻を見せているだけだと。

 

そうでなければ、自分を責め立てる彼女も、昔と変わらない笑顔で送り出してくれた彼女、相反するものが同時に現れるはずなどないと。

 

「でも、会えて嬉しかった、貴女の声を忘れないでいられるから。」

 

それでも、それでもまた会えて嬉しかった。

自分の罪を改めて直視し、嘗ての温もりを感じ、立ち上がる力をもらえたのだから。

 

だから、それだけは嘘ではなかったのだ。

故に、この奇蹟を、この悪夢を本当の意味で終わらせるのだと。

 

「ミソラ、恐らくあの靄は黒い花から産み出されている。」

 

オーブの傍に駆け寄り、ギンガは足下に咲く黒い花に目をやる。

最初にいた公園でも咲いていたあの花が花粉を巻き散らした時から、目の前に居る靄は現れたと、彼はそう辺りを付けた様だ。

 

彼の直感は正しかった。

その花の名は宇宙植物メージヲグ、生命体の恐怖を感じ取り成長し、巻き散らすその花粉にその者が恐れるモノを実体化させる能力を持つ。

 

ミソラの心を読んだためにオーブダークは、ミソラを恨んでいるイルミナは生み出されたという事になる。

八幡の心の中にある恐怖を読み取れなかったのは、それだけ彼が光に近くなり、恐れを隠し通せるだけ強靭な力を持った、何よりの証左だったのだ。

 

「あの花は無数にある、この街全てを覆う程の浄化が必要だ、出来るか!?」

 

故に、浄化の技であるならばその闇を祓えるだろうと。

浄化の力を持っているかと問うているのだ。

 

「勿論、水のエレメントなら!!」

 

「心強い、俺もやってやるぜ!」

 

オーブの力強い返答に、ギンガもまた強く応じる。

ならばやるべき事は一つ、力を合わせて浄化を行うだけだと。

 

オーブがカリバーに刻まれる水のエレメントを選定し、その力を発動させる。

ギンガもまた、全身のクリスタルが緑の光を放ち、浄化の技を発動する。

 

「ギンガコンフォート!」

 

「オーブウォーターカリバー!!」

 

ギンガは両手から淡い緑の光を放ち、オーブはカリバーを地に突き刺し、癒しの水を生み出した。

 

2つの浄化技は街を覆う瘴気となっていた靄を呑み込み、根付くように狂い咲いていた黒い花をすべて浄化し消し去っていく。

 

その浄化の光によって力を供給していた大本が断たれたのだろう、オーブダークは悶える様に胸や頭を掻きむしるような仕草を見せる。

 

どうやら、消し去るまで至らないまでも、相当効いているであろうことが窺えた。

 

『なぜ……!なぜェぇぇぇっ!!』

 

悲鳴のような声と共に、オーブダークは最後に一矢報いてやろうと光線の発射体勢に入る。

一人では滅ばない、お前達もこの街も、全て道連れにしてやると。

 

チャージされる闇のエネルギーは、先の戦いの比ではない。

存在するためのエネルギー全てをかけているほどの、凄まじいエネルギー量だった。

 

「しぶてぇ野郎だ……!」

 

ギンガは吐き捨てながらも迎撃しようと構える。

ギリギリとは言え体力は何とか残している、撃ち返すくらいならばやってやると言わんばかりの様子だった。

 

だが、そんな彼をオーブが前に歩み出る事で制する。

 

「最後はあたしにやらせて、ケジメ、付けさせてよ。」

 

自分の弱さと向き合うために、彼女は最後のトドメを任せてほしいと頼み出る。

これを乗りこえてこそ、自分はもう一度独り立ちできると。

 

その想いを受けて、ギンガは静かに頷きながらも彼女の後ろに下がる。

 

「オーブの光よ、私に、もう一度光を!!」

 

カリバーの円形部を強く回転させ、全てのエレメントをセレクト、オーブの光を呼び起こす。

 

頭上にカリバーを掲げ、O字を描く様に回転させ光をチャージ、そのエネルギーを収束させるていく。

 

『消えされぇぇ!!』

 

突き出されたオーブダークのカリバーから、闇の奔流が迸る。

先程よりも強いそれは、不安定に歪みながらもオーブ達へと突き進んでいく。

 

「オーブスプリームカリバーァァァッ!!」

 

同じモーションで、オーブもまた強烈な光を撃ち出した。

その光は奔流となって迸り、闇の奔流とぶつかり合い拮抗する。

 

だが、徐々に、ゆっくりとオーブの光が闇を押し返していく。

それは、彼女の想いが強く、咆哮をあげている証左だった。

 

『あ、あぁぁぁぁ……!!』

 

闇も、オーブダークもやられてたまるかと力を強めようとする。

だが、街中に散らばっていた大元の黒い花をすべて浄化されてしまった影響か、大して出力は上がらなかった。

 

「いけ、決着を着けてやれ!」

 

ケリを着けろと、ギンガは残った力をオーブへと譲り渡す。

その力で、この街と世界を護って見せろと。

 

首だけで振り返り、彼女はギンガに頷き返す。

分かっていると、この光も使わせてもらうと。

 

「さようなら、大好きだった人……、そして、ありがとう!」

 

決別と感謝を織り交ぜて、彼女は光のエネルギーを爆発させる。

それは撃ち出していたエネルギーにも上乗せされ、一気に闇の奔流を押し返していく。

 

堪える暇も無かった、その光の奔流は、オーブダークを呑み込む。

 

『あぁぁあぁ……!!』

 

断末魔と共に、その闇は光の中へと消えて行った。

光が収まった時、周囲には静寂だけが残り、闇の気配は欠片も感じることは無かった。

 

「終わったな。」

 

オーブの肩に手を置き、ギンガは彼女の勝利を讃える。

背負う荷は、少しでも軽くなったかと、そう尋ねている様でもあった。

 

「えぇ、ありがとう、助けてくれて。」

 

その言葉は、八幡と、そして幻の中にいるイルミナへ向けられていた。

 

背を押してくれた二人に、彼女は感謝を湛えていた。

2人のお陰で自分はまた立ち上がる事が出来たと、感謝しかなかったのだ。

 

ギンガに頷きながらも、彼女は先程まで自分がいたビルの屋上を見た。

そこに誰もいないと分かっていても、それでも……。

 

「……ッ!」

 

そこで、彼女は幻視する。

笑顔で手を振る、在りし日のイルミナの姿を。

 

歩いて行けと、お前なら大丈夫だと、送り出す様に。

 

瞬きの間に、その姿は掻き消えていた。

最初からそこにはいなかったのかもしれない、だが、それでも意志は確かにそこに在ったのだ。

 

その意志に、彼女は涙を浮かべながらも頷く。

もう迷わない、だから安心してくれと。

 

「さよなら……、ありがとう。」

 

だから、本当の意味でのさようならを、今度こそ贈る事が出来ていた。

 

紆余曲折を経て、漸く彼女達の別れはなったのだ……。

 

 

 

―――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――

 

 

 

「ただいま戻りました、マスター。」

 

ミソラを伴って、八幡はブラック司令の店に戻ってきた。

どうやら戦闘が終わってから、少し休んで帰ってきたようだ。

 

「お帰りなさい、見ていましたよ。」

 

店を飛び出して職務放棄していた2人を、彼は笑顔で出迎えた。

どうやら彼は見ていた様だ、先程の戦いを、その中での経緯を……。

 

「オーブ、どうやら掴めたようですな。」

 

「心配かけたわね、もう、大丈夫。」

 

彼の言葉に、ミソラは笑顔で答える。

もう大丈夫だと、お陰様で、自分は立てたと。

 

その答えに、ブラック司令は笑顔で頷く。

本当に良かったと、心の底からの祝辞代わりに笑顔を浮かべていた。

 

「ギンガ、貴方にも苦労を掛けましたね、ありがとうございます。」

 

「俺がやった事なんてそんなにないですよ、ミソラが自分で掴んだ結果ですよ。」

 

自身に向けられる謝辞に、八幡は謙遜ではなく、心の底からそう思って返す。

自分は所詮切っ掛けを与えたに過ぎない、そこから何かを掴み、力を取り戻したのはミソラ自身の力だと、そう思っているから。

 

「そうですか、いやはや、ティガと似たようなことを言いなさる。」

 

彼の様子に、ブラック司令は八幡の師である一夏を思い返し微笑んだ。

彼も嘗て、自身の手柄と誇る人ではなかったから。

 

師と似ていると言われて、八幡は苦笑しながらも、何処か嬉しそうだった。

目指す目標に、憧れる偉大な男の背に近付いていると言われて、誇りに思わない訳が無かったから。

 

そんな八幡の様子に、ミソラもまた微笑んで彼を見る。

まだこの世に憧れている者が生きている事への羨望と、純粋な微笑ましさからの笑みだった。

 

暖かい空気が店内を包んでいた、正にその時だった。

 

八幡の羽織っていた上着の懐が光を放つ。

その光は、ギンガスパークが放つ光。

 

まるで何かに呼ばれているかのように、強く強く、鳴動していた。

 

「これは……、俺を導いているのか?」

 

店の外へと、いいや、そのはるか向こうへ、光は路を作っている様に見えた。

 

仮に、誰かが自分を呼んでいるのならばその意志に、呼び声に応える事は本望ではある。

時空を超えるかもしれない出立ならば、離れ離れになった妻と親友ともまた会える可能性があると、そう感じているのだろう。

 

「どうやら、お別れの様ですな。」

 

それを察したのだろう、ブラック司令は微笑みながらも問うた。

本音を言えば、もう少し話をしてみたかったが、呼ばれているのならば引き留めることは出来ないのだ。

 

その光の意味を知るブラック司令だからこそ、今は八幡を送り出すという選択肢が取れたのだ。

 

「はい、短い間でしたけど、お世話になりました。」

 

エプロンと制服をちゃんと畳んで返し、彼は店の外へ出ていく。

そんな彼を見送るために、ブラック司令とミソラは後を追って外に出た。

 

「もう、行くの?」

 

まだ教えて欲しい事があるのにと、少しだけ残念そうにしながらもミソラが尋ねる。

彼の強さの本質を知りたいと、八幡の戦ぶりに魅せられていたから。

 

戦士としての、そして人としての懐の深さに、彼女は惹かれたのかもしれない。

 

「悪いな、まだ旅の途中なんだよ、修行の旅のな。」

 

まだまだ修業中の身、だから、これからも進んでいくだけだと。

だから、ここで立ち止まる事など出来る筈もなかった。

 

「あぁ、そうだ、これ、お前に預けとくよ。」

 

何かを思い返したように、彼は掌から3つの光を浮かばせ、ミソラが持つオーブリングに向けて撃ち出す。

 

光はオーブリングに読み込まれ、カードの形となってミソラの手に収まった。

彼女が見るカードの絵柄にはビクトリー、X、そしてギンガの姿が描かれている。

 

それは、別れる前に再び会うためにと託し合った光。

今度はその光を、信じられるウルトラマンへ託す。

 

繋がりの証として、絆を結んだ友への餞だった。

 

「フュージョンすることは何も悪い事じゃない、自分の力と他のウルトラマンの力、どっちも上手く使って戦ってくれ。」

 

「最後まで、なんだか教師みたいね。」

 

「師匠が教師だったからな。」

 

上手く戦えと力を託す八幡に、ミソラは教師みたいだと苦笑し、それにつられて八幡も苦笑する。

 

この短期間で、彼等は互いに気を許せる仲となったと、このやり取りから察することが出来た。

 

「それじゃあ、またいつか。」

 

見送る2人へ一礼し、八幡はギンガへとその姿を変える。

この地球ともお別れであると、すれ違っただけの一瞬でも降り立った地の、恒久なる平和を願いながらも飛び立った。

 

その背を、ミソラは見えなくなるまで見送った。

路を示してくれた偉大な先人へ、感謝を込めて……。

 

「ありがとう八幡、また会いましょう、その時は、きっと……。」

 

遥か彼方へ、ミソラは手を伸ばす。

星の様に煌めくその光へ、その中心にいる者に追い付きたいと心から願って……。

 

 




次回予告

別の宇宙でも、巡り合う者達がいた。
自身の在り方を模索する、新たな戦士の下へ、光は舞い降りる。

次回ウルトラマンNewGenerationHero'sSaga

探求編、運命に抗いし者

お楽しみに
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